HAPPY EVER AFTER
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-your eyes tell- Side.アズール
行き場のない気持ちが僕を侵食する。
これまで集めてきた契約書を全て破棄された。その上に、渾身のユニーク魔法も使うなと封じられた。
あんな、魔力もない女子一人の手によって全部全部、無にされた。
新しくポイントカード制度を思い付いたから経営の方はどうにかなったものの、それとこれとは話が別だ。僕は自分でなんでもできるし、そもそも魔力だって一般生徒より段違いにあることを自負している。
が、他人の弱みを手中に収められなくなったという点は、今回の事件の最大の痛手だった。
陸に出てきてからこの2年。学園長を丸め込みモストロ・ラウンジの経営をはじめ、寮長の座も手に入れた。自分の手によって作り上げてきた何もかもをゼロに帰される気持ち、誰がわかるだろうか。
それなのに、その上に彼女は僕に言った。
『努力はアズール先輩だけの力ですよ』
そんなの僕自身が一番よくわかっている。結局取り上げた力なんて使うことはない。自分の方ができるのだから。
けれど、なぜか、その一言に心が震わされてしまったのだ。
どうしてだ。わからない、わからないと、ずっと悩んだ。
時に蛸壺に引きこもって。時に彼女を見張って。見つけた答えに驚愕する。
それは、僕がずっと欲しかった一言だったのだ。
僕という存在そのものを認めてくれる言葉。
たったその程度のことに、気づいた時には、もう遅かった。
僕自身を見てくれる人間がこれまでにいただろうか。あるものは力を欲し、あるものは私利私欲で押さえ込もうとし、あるものは媚びて、僕を支配下に置こうとしたのに。
彼女は。
彼女の瞳はいつも僕だけを映して、言った。
『アズール先輩はすごいですね』
『どうしてそんなことがわかるんですか』
『集中してやればアズール先輩みたいにできるかな』
『なんでも知っているんですね』
いつしか、その笑顔を僕だけに向けてほしくて、彼女が好きそうなものを準備したり、興味を持ちそうなことを練習しておいたりするようになった。それを知ってか知らずか、僕の姿を見るだけで、パッと表情を明るくするようになった彼女。その華の綻ぶような瞬間は僕の心を満たし、踊らせ、それから不安にさせた。僕は「何か」がなくては振り向いてもらえないのではないか。彼女が見ている先の景色には「僕」はいるのだろうか。
ねぇ、お願いです。そばにいてください。
そして僕が過去を超え、未来を作り上げていくその様を見ていてください。
それから願わくば、ずっと笑っていてほしい。
どうしたらこの想いを伝えられるだろうか。
* * *
-I wanna be....- Side.監督生
先輩。アズール先輩。
友達を助けるためとはいえ、あの日はとてもひどいことをしてしまったと、ずっと、謝りたいと思っていました。盗みこそ犯罪だったとはいえ、その他のことに関しては悪いのはこちら側でしたよね、本当にごめんなさい。
でもそんな私に対して、どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?
私は愚かな人間だから、優しくされると、勘違いをしてしまいます。
こんな世界で、誰かを想うなんて、いけないことだと思っていました。だって私は、ここに存在してはいけない人間だし、魔力もないから、迷惑をかけることしかできません。いつ自分がいなくなってもいいように、準備をしておかないとならないのに。
アズール先輩のことを想うたび、胸が苦しい。
貴方の淡いブルーの瞳が私を映すたび、飛び上がるくらい嬉しいのに、同じくらい苦しいんです。
きっと私はもう、先輩のことが、好きで。
だから、もう戻れない。
でも、このまま、アズール先輩が幸せになっていくところをこの目に焼き付けたいとも考えるんです。きっと私とどうにかなってもらうよりも、先輩はその方が幸せになれると想うから。
…せめてこの想いだけは失いたくないのですが、きっとそうもいかないんでしょうね。なんとなく、ですが、元の世界に戻れたら、記憶はなくなる気がしているんです。
私の心だけでもおいていけないでしょうか、なんて。
ポイントを貯めて相談したら、叶えてもらえるでしょうか?
でもダメですね。
そんなことをしたら、聡い貴方のことだから、私の気持ちも見透かされてしまうかも、と思うと、やっぱりできません。
隠し通すことができるかな。
話しかけられると頬が緩むのが自分でもわかるんです。バレていないといいけれど。
離れ離れになって悲しむことがあるなら、そんな思いをするのは私だけで十分です。貴方には、いつまでも凛と佇んでいてほしい。それから、世界で一番幸せになってほしい。
そこに私がいなくてもいいから。
ねぇ、約束です。一人になっても泣かないでくださいね。
大丈夫。アズール先輩ならなんでもできます、絶対。
私は、貴方の幸せを願っています、永遠に。
どうしたら、私のこの気持ちが伝わるでしょうか。
行き場のない気持ちが僕を侵食する。
これまで集めてきた契約書を全て破棄された。その上に、渾身のユニーク魔法も使うなと封じられた。
あんな、魔力もない女子一人の手によって全部全部、無にされた。
新しくポイントカード制度を思い付いたから経営の方はどうにかなったものの、それとこれとは話が別だ。僕は自分でなんでもできるし、そもそも魔力だって一般生徒より段違いにあることを自負している。
が、他人の弱みを手中に収められなくなったという点は、今回の事件の最大の痛手だった。
陸に出てきてからこの2年。学園長を丸め込みモストロ・ラウンジの経営をはじめ、寮長の座も手に入れた。自分の手によって作り上げてきた何もかもをゼロに帰される気持ち、誰がわかるだろうか。
それなのに、その上に彼女は僕に言った。
『努力はアズール先輩だけの力ですよ』
そんなの僕自身が一番よくわかっている。結局取り上げた力なんて使うことはない。自分の方ができるのだから。
けれど、なぜか、その一言に心が震わされてしまったのだ。
どうしてだ。わからない、わからないと、ずっと悩んだ。
時に蛸壺に引きこもって。時に彼女を見張って。見つけた答えに驚愕する。
それは、僕がずっと欲しかった一言だったのだ。
僕という存在そのものを認めてくれる言葉。
たったその程度のことに、気づいた時には、もう遅かった。
僕自身を見てくれる人間がこれまでにいただろうか。あるものは力を欲し、あるものは私利私欲で押さえ込もうとし、あるものは媚びて、僕を支配下に置こうとしたのに。
彼女は。
彼女の瞳はいつも僕だけを映して、言った。
『アズール先輩はすごいですね』
『どうしてそんなことがわかるんですか』
『集中してやればアズール先輩みたいにできるかな』
『なんでも知っているんですね』
いつしか、その笑顔を僕だけに向けてほしくて、彼女が好きそうなものを準備したり、興味を持ちそうなことを練習しておいたりするようになった。それを知ってか知らずか、僕の姿を見るだけで、パッと表情を明るくするようになった彼女。その華の綻ぶような瞬間は僕の心を満たし、踊らせ、それから不安にさせた。僕は「何か」がなくては振り向いてもらえないのではないか。彼女が見ている先の景色には「僕」はいるのだろうか。
ねぇ、お願いです。そばにいてください。
そして僕が過去を超え、未来を作り上げていくその様を見ていてください。
それから願わくば、ずっと笑っていてほしい。
どうしたらこの想いを伝えられるだろうか。
* * *
-I wanna be....- Side.監督生
先輩。アズール先輩。
友達を助けるためとはいえ、あの日はとてもひどいことをしてしまったと、ずっと、謝りたいと思っていました。盗みこそ犯罪だったとはいえ、その他のことに関しては悪いのはこちら側でしたよね、本当にごめんなさい。
でもそんな私に対して、どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?
私は愚かな人間だから、優しくされると、勘違いをしてしまいます。
こんな世界で、誰かを想うなんて、いけないことだと思っていました。だって私は、ここに存在してはいけない人間だし、魔力もないから、迷惑をかけることしかできません。いつ自分がいなくなってもいいように、準備をしておかないとならないのに。
アズール先輩のことを想うたび、胸が苦しい。
貴方の淡いブルーの瞳が私を映すたび、飛び上がるくらい嬉しいのに、同じくらい苦しいんです。
きっと私はもう、先輩のことが、好きで。
だから、もう戻れない。
でも、このまま、アズール先輩が幸せになっていくところをこの目に焼き付けたいとも考えるんです。きっと私とどうにかなってもらうよりも、先輩はその方が幸せになれると想うから。
…せめてこの想いだけは失いたくないのですが、きっとそうもいかないんでしょうね。なんとなく、ですが、元の世界に戻れたら、記憶はなくなる気がしているんです。
私の心だけでもおいていけないでしょうか、なんて。
ポイントを貯めて相談したら、叶えてもらえるでしょうか?
でもダメですね。
そんなことをしたら、聡い貴方のことだから、私の気持ちも見透かされてしまうかも、と思うと、やっぱりできません。
隠し通すことができるかな。
話しかけられると頬が緩むのが自分でもわかるんです。バレていないといいけれど。
離れ離れになって悲しむことがあるなら、そんな思いをするのは私だけで十分です。貴方には、いつまでも凛と佇んでいてほしい。それから、世界で一番幸せになってほしい。
そこに私がいなくてもいいから。
ねぇ、約束です。一人になっても泣かないでくださいね。
大丈夫。アズール先輩ならなんでもできます、絶対。
私は、貴方の幸せを願っています、永遠に。
どうしたら、私のこの気持ちが伝わるでしょうか。
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