HAPPY EVER AFTER
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アズール先輩とお付き合いし始めて数週間が過ぎたこの日、私はモストロ・ラウンジで窓の向こうの海を眺めつつ、新作のアフタヌーンティーセットを口にしていた。
「はぁ~…本当に綺麗。いいなぁオクタヴィネル寮は。私もずっとここにいたい…」
「ならば泊まって行かれたらどうですか?お客様用のゲストルームもございますよ」
「一泊一万マドルだけどねぇ~」
「そんなお金どこにあるっていうんですか…もう!」
オンボロ寮を担保に取られた時も思ったけれど、彼らはいつでも抜け目がなく、商才もありすぎだ。
ちょっと膨れっ面になりながら、スタンプカードを取り出して眺める。
「いいですよーだ!このスタンプカード貯めたら無料で泊まらせてくれるか頼んでみようっと…まだ時間はかかりそうだけど…」
「ああ…それなら泊ま…いいえ、そんな方法を取らずとも、良い案があるかもしれません」
「一万マドルかからない方法があるんですか?…あっ、掃除道具入れに泊まるとかなしですよ?」
「嫌ですねぇ、ユウさん。いくら僕でも女性に対してそんな提案しませんよ。そんな風に思われていたなど、心外です」
「あー!ジェイド泣いちゃったじゃん!小エビちゃんのせいだー」
「しくしく」
「私はその流れには騙されませんからね!それでジェイド先輩!どうやったらお泊まりできるんですか?!」
お得意の嘘泣きは華麗に流して、話の先を急ぐ。
「えぇ。端的に言いますと、アズールの部屋に泊まればいいんです」
「はい?」
「一般寮生の部屋からは大々的に見ることができないのですが、アズールの…寮長の部屋だけは特別仕様で、壁がガラス張りの部分がありまして、海が見渡せるようになっているんです。ですから」
「あ~!小エビちゃんはアズールの彼女な訳だしぃ~頼めば入れてくれるんじゃね?」
「…いや、それはちょっと」
「嫌なんですか?」
「嫌、というか…アズール先輩が許してくれると思います?無理ですよ…」
「おや?どうしてそう思うんです?」
「聞いてみようよぉ~、あー噂をすればなんとやら アズーーールー!!!!」
こういう時の行動の速さは天下一品のフロイド先輩に、『いや、あ、やめ、ちょ』と言葉にならない言葉を発しているうちに、アズール先輩がこちらまできてしまった。
「いらっしゃいませ。ユウさん。新作のお味はいかがですか?」
「こんにちは、アズール先輩。ティーセット、とっても美味しいです!」
「お口にあって何よりです」
「アズールちょーどいいところにきたぁ~」
「いいところ、ですか?」
「ねぇ、フロイド先輩、その話はいいですから、もういいです!!」
「はい。ユウさんがアズールの部屋に泊まらせてほしいそうですよ」
「!?んなっ!?」
奇声を発したアズール先輩を横目に、私は『そんなドストレートに言ってもいないことを言わないで!!』と怒れども、先輩に向かってそのような言葉を吐けるはずもなく、頭を抱えることしかできない。もうどうにでもなれと、机に突っ伏した。
その間にも、かくかくしかじかと理由を語って聞かせる、楽しそうなジェイド先輩の声が耳に届いて恥ずかしいことこの上ない。
「…と言うわけなんです。どうです?何も問題ありませんよね?」
「じ、ジェイド、貴方、問題って、いいも何も…」
「そうですか、OKと!ではユウさん、ゲスト用の宿泊セットはアズールに免じて無料でご提供いたしますので、そちら食べ終わりましたらお声がけくださいね。」
「え?!良いって言ってませんよね今?!」
「や~良かったねぇ小エビちゃん、海見放題だよー」
「どう聞いても良いって言ってませんでしたよねフロイド先輩?!」
もはや思考を手放したように固まったアズール先輩を半ば抱えるようにして引きずっていくリーチ兄弟。
残された私は、今後のことを考えながらいつもの倍以上の時間をかけて、アフタヌーンティーを食べたのであった。
それから数時間後。
さっと逃げようとしたけれど、そんなことが許されるはずもなく、やんわりと拘束された私は、リーチ兄弟に先導されて寮長の部屋の前に立っていた。
自分では叩けない扉も、兄弟にかかれば簡単にノックされてしまう。
「アズール。連れてきましたよ」
「小エビちゃんきたよ~」
しばらくして、扉が開く。
「ようこそ、いらっ、しゃいました、ユウさん」
「…アズール緊張してね?」
「そ!!んなことは!!断じてありません!!」
「フロイド、そんなことは言ってはいけませんよ。それでは僕たちはここで。ごゆっくり、ユウさん」
「あ…、はい、いえ、いや、あの……おやすみなさい…」
「はい。おやすみなさい」
がちゃん。
扉が閉まると同時に鍵がかかったところを見ると、どうやら自動ロックのようだ。
ついに密室に二人きりになってしまった…と思うと、勝手に顔が熱っぽくなってしまうのだけれど、それよりも。目の前の光景の素晴らしさに心を奪われてしまったゲンキンな私は、大きな窓に走り寄った。
ラウンジや廊下から見える景色とはまた違うそれに、思わず感嘆の声が漏れる。
「わ…ぁ…!!すごい…!!」
海が見たいと言ったためか室内の照明は少し落とされており、海の方が明るく見えてとても神秘的だ。
「綺麗…」
吸い込まれそうな青に引き寄せられて、うっとりと見つめていること、どのくらいだったろうか。ほぅ、と大きなため息が聞こえたので振り返れば苦笑交じりのアズール先輩が、いつ近づいてきたのか真後ろに立っていた。
「…!す、すみません、わたしっ」
「ふ…良いんですよ。むしろ、こんなことになってしまったことをどう謝罪すれば良いやら迷っていたので、少し救われました」
「借りは作りたくないから、ですか?」
「いえ、…なんと言いますか…その…嫌、じゃないんですか、男と一夜を」
「っ、そ、ういう言い方がからかわれる元なんですよ!そりゃあ…少しは…考えましたけど…そもそも一応…お付き合いしてるんですし…良いんじゃないですか…?一緒に旅行にでもきたと思えば」
あの態度から、こんなことを考えてるんだろうなと思わなかったのかと言えば嘘になる。
そういう人だと言うのは、もうだいぶわかりきったことだから『何にも気にしてないよ』と言う風に取り繕って、はっきりと伝えることにしてみた。
本音は、そうなったらどうしようと思わなくもなかった。でもアズール先輩がそんな非常識なことをするとも考えにくかったので安心していたのもちょっとある。
もう一度聞こえた溜息に、少しだけ不安になって、その意図を尋ねてみた。
「…ホイホイ男の部屋に来る尻軽女、と失望しました?」
「…いいえ」
「じゃあ、一人の時間を邪魔されてうっとおしい?」
「いいえ」
「単純に、うるさい、とか」
「違います」
はて。これ以外に何か溜息の元になるような言動をしただろうか。
うーん、と小首をかしげて考えていると、今度は控えめな笑い声が聞こえた。
「時間切れです。正解は」
ヒヤリ、何かが私の顎を捉えたかと思えば、そのまま唇を奪われた。
ちゅ、と態とらしく音を立てて少しだけ開いた隙間。
「ん………?」
「残念ながら、僕は一度したことがあることを尻込みするような男ではありませんよ」
「、…?!」
そうだ、私としたことが失念していた。
この、私が好きになった人は。
誰よりも努力家で、誰よりも負けず嫌い。
「陸の世界では、結ばれた相手とのキスは軽いものではないんだとか。せっかく二人きりになれたんですから、色々と試したいと思いまして」
「へ、ぁ、ちょ、ま」
「逃がしませんよ」
「んんっ…!!」
再び唇を塞がれたと思えば、瞬間、にゅるりと入ってきた舌。驚いて瞼を開けば、まさかの観察していたのか、挑戦的なアズール先輩と目があって。
(死ぬ…死んじゃう!!死ぬほど恥ずかしいこれは!!)
反射的にぎゅっと目を瞑るとさらに深く咥内を探ってこられて息ができない。
(なんでこんなに息が長続きするの?)
頭がクラクラ、脚も地についている気がしなくなってきた。
私の腰を支える腕が体重を感じ取ったのか、そこでやっとひっついていた唇が離れた。
「っは、」
「ハ、ふっは…はふッ…!」
「ふっ…軟弱ですねぇ、ユウさん」
「こっ、ちは、ふ、ふつうのっ、にんげ、ん、なんですよっ!?ハァ…、はぅ…手加減してください…」
「大丈夫ですよ。ユウさんなら、何が起きても朝まで介抱してあげますから。もちろんお代はいただきますけどね?」
心底楽しそうに、ニヤリと口の端を持ち上げるその表情。
こちらはもう脚も満足に動かせないと言うのに。
「ず、るい…!」
「なんとでも。しかし、これ…ディープキスというのは、癖になりそうです。なんだかゾクゾクしませんでしたか?」
「!?!?!?!?!!!!」
「おやおや。これではどちらがタコと揶揄われるんだか。さ、歩けなくなったユウさんは、僕がベッドに寝かせて差し上げましょうか」
「ひ!?わ、私、はっ、椅子で寝ます、からっ!!」
「いえいえ。レディーには優しくしなさいとも、陸の書物にはたくさん書いてありましたから。それにここのベッドは広いんですよ」
暴れようにも力が出ないとは、気づいた頃にはすでに俎板の鯉ではないか。
「大丈夫ですよ。準備する時間もありませんでしたから、今日試すのは、ディープキスだけです。朝まで付き合ってもらいますからね」
「ひ…!」
涼しい顔をしているつもりだろうアズール先輩の頬も実は真っ赤だったなんて、私しか知らないんだろう。
それをみたら、なんだか抵抗する気もなくなってしまった。
ああ、これでは、海を見るどころではない。
好きになったこの人は、海の底で私を窒息死させたいらしい。
「はぁ~…本当に綺麗。いいなぁオクタヴィネル寮は。私もずっとここにいたい…」
「ならば泊まって行かれたらどうですか?お客様用のゲストルームもございますよ」
「一泊一万マドルだけどねぇ~」
「そんなお金どこにあるっていうんですか…もう!」
オンボロ寮を担保に取られた時も思ったけれど、彼らはいつでも抜け目がなく、商才もありすぎだ。
ちょっと膨れっ面になりながら、スタンプカードを取り出して眺める。
「いいですよーだ!このスタンプカード貯めたら無料で泊まらせてくれるか頼んでみようっと…まだ時間はかかりそうだけど…」
「ああ…それなら泊ま…いいえ、そんな方法を取らずとも、良い案があるかもしれません」
「一万マドルかからない方法があるんですか?…あっ、掃除道具入れに泊まるとかなしですよ?」
「嫌ですねぇ、ユウさん。いくら僕でも女性に対してそんな提案しませんよ。そんな風に思われていたなど、心外です」
「あー!ジェイド泣いちゃったじゃん!小エビちゃんのせいだー」
「しくしく」
「私はその流れには騙されませんからね!それでジェイド先輩!どうやったらお泊まりできるんですか?!」
お得意の嘘泣きは華麗に流して、話の先を急ぐ。
「えぇ。端的に言いますと、アズールの部屋に泊まればいいんです」
「はい?」
「一般寮生の部屋からは大々的に見ることができないのですが、アズールの…寮長の部屋だけは特別仕様で、壁がガラス張りの部分がありまして、海が見渡せるようになっているんです。ですから」
「あ~!小エビちゃんはアズールの彼女な訳だしぃ~頼めば入れてくれるんじゃね?」
「…いや、それはちょっと」
「嫌なんですか?」
「嫌、というか…アズール先輩が許してくれると思います?無理ですよ…」
「おや?どうしてそう思うんです?」
「聞いてみようよぉ~、あー噂をすればなんとやら アズーーールー!!!!」
こういう時の行動の速さは天下一品のフロイド先輩に、『いや、あ、やめ、ちょ』と言葉にならない言葉を発しているうちに、アズール先輩がこちらまできてしまった。
「いらっしゃいませ。ユウさん。新作のお味はいかがですか?」
「こんにちは、アズール先輩。ティーセット、とっても美味しいです!」
「お口にあって何よりです」
「アズールちょーどいいところにきたぁ~」
「いいところ、ですか?」
「ねぇ、フロイド先輩、その話はいいですから、もういいです!!」
「はい。ユウさんがアズールの部屋に泊まらせてほしいそうですよ」
「!?んなっ!?」
奇声を発したアズール先輩を横目に、私は『そんなドストレートに言ってもいないことを言わないで!!』と怒れども、先輩に向かってそのような言葉を吐けるはずもなく、頭を抱えることしかできない。もうどうにでもなれと、机に突っ伏した。
その間にも、かくかくしかじかと理由を語って聞かせる、楽しそうなジェイド先輩の声が耳に届いて恥ずかしいことこの上ない。
「…と言うわけなんです。どうです?何も問題ありませんよね?」
「じ、ジェイド、貴方、問題って、いいも何も…」
「そうですか、OKと!ではユウさん、ゲスト用の宿泊セットはアズールに免じて無料でご提供いたしますので、そちら食べ終わりましたらお声がけくださいね。」
「え?!良いって言ってませんよね今?!」
「や~良かったねぇ小エビちゃん、海見放題だよー」
「どう聞いても良いって言ってませんでしたよねフロイド先輩?!」
もはや思考を手放したように固まったアズール先輩を半ば抱えるようにして引きずっていくリーチ兄弟。
残された私は、今後のことを考えながらいつもの倍以上の時間をかけて、アフタヌーンティーを食べたのであった。
それから数時間後。
さっと逃げようとしたけれど、そんなことが許されるはずもなく、やんわりと拘束された私は、リーチ兄弟に先導されて寮長の部屋の前に立っていた。
自分では叩けない扉も、兄弟にかかれば簡単にノックされてしまう。
「アズール。連れてきましたよ」
「小エビちゃんきたよ~」
しばらくして、扉が開く。
「ようこそ、いらっ、しゃいました、ユウさん」
「…アズール緊張してね?」
「そ!!んなことは!!断じてありません!!」
「フロイド、そんなことは言ってはいけませんよ。それでは僕たちはここで。ごゆっくり、ユウさん」
「あ…、はい、いえ、いや、あの……おやすみなさい…」
「はい。おやすみなさい」
がちゃん。
扉が閉まると同時に鍵がかかったところを見ると、どうやら自動ロックのようだ。
ついに密室に二人きりになってしまった…と思うと、勝手に顔が熱っぽくなってしまうのだけれど、それよりも。目の前の光景の素晴らしさに心を奪われてしまったゲンキンな私は、大きな窓に走り寄った。
ラウンジや廊下から見える景色とはまた違うそれに、思わず感嘆の声が漏れる。
「わ…ぁ…!!すごい…!!」
海が見たいと言ったためか室内の照明は少し落とされており、海の方が明るく見えてとても神秘的だ。
「綺麗…」
吸い込まれそうな青に引き寄せられて、うっとりと見つめていること、どのくらいだったろうか。ほぅ、と大きなため息が聞こえたので振り返れば苦笑交じりのアズール先輩が、いつ近づいてきたのか真後ろに立っていた。
「…!す、すみません、わたしっ」
「ふ…良いんですよ。むしろ、こんなことになってしまったことをどう謝罪すれば良いやら迷っていたので、少し救われました」
「借りは作りたくないから、ですか?」
「いえ、…なんと言いますか…その…嫌、じゃないんですか、男と一夜を」
「っ、そ、ういう言い方がからかわれる元なんですよ!そりゃあ…少しは…考えましたけど…そもそも一応…お付き合いしてるんですし…良いんじゃないですか…?一緒に旅行にでもきたと思えば」
あの態度から、こんなことを考えてるんだろうなと思わなかったのかと言えば嘘になる。
そういう人だと言うのは、もうだいぶわかりきったことだから『何にも気にしてないよ』と言う風に取り繕って、はっきりと伝えることにしてみた。
本音は、そうなったらどうしようと思わなくもなかった。でもアズール先輩がそんな非常識なことをするとも考えにくかったので安心していたのもちょっとある。
もう一度聞こえた溜息に、少しだけ不安になって、その意図を尋ねてみた。
「…ホイホイ男の部屋に来る尻軽女、と失望しました?」
「…いいえ」
「じゃあ、一人の時間を邪魔されてうっとおしい?」
「いいえ」
「単純に、うるさい、とか」
「違います」
はて。これ以外に何か溜息の元になるような言動をしただろうか。
うーん、と小首をかしげて考えていると、今度は控えめな笑い声が聞こえた。
「時間切れです。正解は」
ヒヤリ、何かが私の顎を捉えたかと思えば、そのまま唇を奪われた。
ちゅ、と態とらしく音を立てて少しだけ開いた隙間。
「ん………?」
「残念ながら、僕は一度したことがあることを尻込みするような男ではありませんよ」
「、…?!」
そうだ、私としたことが失念していた。
この、私が好きになった人は。
誰よりも努力家で、誰よりも負けず嫌い。
「陸の世界では、結ばれた相手とのキスは軽いものではないんだとか。せっかく二人きりになれたんですから、色々と試したいと思いまして」
「へ、ぁ、ちょ、ま」
「逃がしませんよ」
「んんっ…!!」
再び唇を塞がれたと思えば、瞬間、にゅるりと入ってきた舌。驚いて瞼を開けば、まさかの観察していたのか、挑戦的なアズール先輩と目があって。
(死ぬ…死んじゃう!!死ぬほど恥ずかしいこれは!!)
反射的にぎゅっと目を瞑るとさらに深く咥内を探ってこられて息ができない。
(なんでこんなに息が長続きするの?)
頭がクラクラ、脚も地についている気がしなくなってきた。
私の腰を支える腕が体重を感じ取ったのか、そこでやっとひっついていた唇が離れた。
「っは、」
「ハ、ふっは…はふッ…!」
「ふっ…軟弱ですねぇ、ユウさん」
「こっ、ちは、ふ、ふつうのっ、にんげ、ん、なんですよっ!?ハァ…、はぅ…手加減してください…」
「大丈夫ですよ。ユウさんなら、何が起きても朝まで介抱してあげますから。もちろんお代はいただきますけどね?」
心底楽しそうに、ニヤリと口の端を持ち上げるその表情。
こちらはもう脚も満足に動かせないと言うのに。
「ず、るい…!」
「なんとでも。しかし、これ…ディープキスというのは、癖になりそうです。なんだかゾクゾクしませんでしたか?」
「!?!?!?!?!!!!」
「おやおや。これではどちらがタコと揶揄われるんだか。さ、歩けなくなったユウさんは、僕がベッドに寝かせて差し上げましょうか」
「ひ!?わ、私、はっ、椅子で寝ます、からっ!!」
「いえいえ。レディーには優しくしなさいとも、陸の書物にはたくさん書いてありましたから。それにここのベッドは広いんですよ」
暴れようにも力が出ないとは、気づいた頃にはすでに俎板の鯉ではないか。
「大丈夫ですよ。準備する時間もありませんでしたから、今日試すのは、ディープキスだけです。朝まで付き合ってもらいますからね」
「ひ…!」
涼しい顔をしているつもりだろうアズール先輩の頬も実は真っ赤だったなんて、私しか知らないんだろう。
それをみたら、なんだか抵抗する気もなくなってしまった。
ああ、これでは、海を見るどころではない。
好きになったこの人は、海の底で私を窒息死させたいらしい。