Hug me Kiss me Everyday!
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小エビちゃんが学校を休んだ。かにちゃんに聞いたところによれば、風邪をひいたとのことらしい。
あの寒い部屋に通い詰めてもらったのだから、大方予想できたことではあったが、申し訳ない気分ではあった。
ついでに「フロイド先輩、あいつのところ行ってやってくださいよ」と、そんな事を言われては、お見舞いに行かないという選択肢はなかった。
ヒトのお見舞いって何を持っていけばいいんだっけ?なんて考えるようになった自分が少し笑えたし、くすぐったかった。
絞られた恨みもあって、アズールやジェイドに相談するのも癪だったが、放課後はすぐそこに迫っていたため、素直に声を上げれば、あれやこれやと言われてメモが追いつかない。
結局、病人でも食べれそうな軽い賄いを作り、それから購買部でドリンクと冷却シートのようなものを買い、オンボロ寮へと向かった頃には17時を回っていた。差し押さえの時に見たよりは、かなり整備された気がするオンボロ寮は、それでも扉を開ければ、キィ、と古めかしい音を立てた。
「小エビちゃん、入るよ〜」
声はかけたが、病気と聞いていたので、大きさはいつもより抑えめに。
自分が治った途端、相手が寝込んでしまうとは、バランスがいいのか悪いのか。
ボロ切れと化しているカーテンがあまり意味をなしていないせいで、オレンジ色の光が大きな窓から談話室に差し込んでいた。
のぞいたそこに人がいる様子はない。それじゃあやはり自室か、と、キシキシきしむ階段を登って小エビちゃんの部屋に向かった。
暖かい光は、自分を通して反対側に暗い影を作った。
沈む夕陽を海面から見たことはあったが、それは「差し込む」というよりかは「降り注ぐ」類のもので、今見る景色とはまるで違う。
素直に綺麗だと思ったが、同時に寂しくも思った。
海の中では見れない世界。あの子がずっと見てきた世界。
圧倒的に違うそれらを越えていくだけの気持ちはあったが、小エビちゃんにとってはどうだったろう。
立ち止まって、今やあることが当たり前になった自分の脚を見つめる。
「同じでも、同じじゃねぇんだよなぁ〜」
ガシガシと頭を掻き毟る。考えても仕方のないことだし、考えたりするのは自分らしくもないとはわかっているのだが。
ハァと一つ、大きく息を吐くことで、悩みを頭から追い出した。気を取り直して、小エビちゃんの部屋の前でもう一呼吸。
「小エビちゃーん?」
声をかけてからそっと扉から顔を覗かせれば、ベッドの上に小エビちゃんの姿が見えた。
寝てんのかな…起こしてはいけないと、なるべく静かに身体を滑り込ませる。
「あ、やっぱ寝てる」
スヤスヤと音がしそうなほどよく眠っている小エビちゃんは、それでも熱が出ているようで、少し汗ばんだ額に赤らんだ頬をしていた。
命に別状がなさそうでまずはホッとする。一方で、いつもの学生服姿とは違う、少し前の夜に見た、大きめのパーカーにショートパンツを身につけた小エビちゃんは、目に毒でもあった。
細く頼りない二本の足が、無防備に投げ出されていて、トクリと心臓が波打つ。
当たり前だが、自分とは大きさが全く異なる小さな足。細く艶かしい足首。筋肉がついていない太ももにふくらはぎ。
この間は暗がりの元だったのでさして注目していなかったが、これは、と、ゴクリと喉が嚥下した。
ギッ、とベッドに腰掛けて、小エビちゃんを囲うように両手をついた。
自分の影が、小エビちゃんに重なって少し暗がりになる。
「小エビちゃん…」
もう一度、声をかけたけれど、起きる様子はない。
今なら、チューしてもいいかなとも思ったけど、それじゃ俺の負けだなって。
ここまで我慢してきた。大切にしてきた。だから、早まっちゃだめだ。
「…ユウ……」
初めて呼ぶ、この子の名前。
それだけのことなのに、心臓がうるさいほどばくばくと音を立てた。
手を伸ばせば届く距離なのに、なんでだろう、遠く遠くにいるようなユウ。
「クッソ…無防備すぎじゃね…」
自分だけが心を乱されているのが無性に恥ずかしくて、でも病人にデコピンなどできるはずもなく。
仕方なしに額に張り付いた髪を梳いてやると、ふ、とユウの目が開いた。
『…?』
「あ…起こしちゃった?ごめん、小エビちゃん」
『…ふろいどせんぱい…?』
「うん。俺。小エビちゃん、病気だって聞いて、見舞いに来たよ」
いつもの半分くらいしか開いていない虚ろな目は、まだ夢うつつであるかのように俺を映した。
怠い?と聞くが、返事はない。
ぼーっと見つめられて、どうしようかなとぁと考えていると、不意に暖かいものが頬に触れた。
柄にもなくビクッとして、それが何か確認すると小エビちゃんの掌だった。
それは、すり、と動いて、頬を撫でた。触れられた箇所が火傷しそうに熱く感じる。
『ほんもの…?』
「あは、偽物な訳ないじゃん。本物だよ」
『…ずっと、言いたかったことが、あって』
「ん、何?」
『言えなくて』
もどかしいくらいにゆっくりと発される言葉。
熱い掌を自分の手で握り返して、続きを待った。
『ほんとうは…、…今更遅いかもしれないけれど、』
小エビちゃんからも、弱く握り返される、手。
『…ずっと、好き、でした…好き、だったよ、フロイドせんぱい』
「、は」
『でも、怖くて』
「え、ちょ、」
『いつか、飽きられてしまうかもって…私、元の世界に帰れるかもって…』
「まって、ちょっと」
『だからそれなら、本気にならなければって』
こんなタイミングでいきなり告白タイムがやってくるなど思いも寄らなかった自分の頭は、全然言葉の処理が追いつかない。
え?小エビちゃん、ずっと俺を好きだったって言った?ドユコト?
『散々、ごめんなさい…もう届かないかもしれないけど…』
ポロ、と頬を伝うのは涙。
小エビちゃんの瞳に映る俺の姿は朧げで。
これは白昼夢なんじゃないかと思わせる。
『でも、言葉を、気持ちを、貰うだけもらって返さないのは、失礼だと思ったから』
「それほんとなの…?小エビちゃん…」
『…いつも…いつも、大切にしてくれて、ありがとうございます…』
「だって、好きだから俺も。好きな子のこと、大事にしなくてどうすんの」
『フロイド先輩から貰う気持ち、嬉しかった、いつも、とっても』
「ねぇ、小エビちゃん」
その言葉、本当に信じていいの?
風邪引いてて現状良くわかってないとかだったら、流石に怒るよ、俺も。
「もう一回、言ってくれね?」
『…』
「俺のこと、小エビちゃん、どう思ってんのか」
『すき』
「もっかい」
『…好きです、フロイド先輩』
「…っ、俺も、大好き。大好きだよユウ」
『!』
「ッこれ…はずいな…小エビちゃん」
『先輩でも、恥ずかしいこと、あるんですね』
「ねぇ、小エビちゃんさ、本当に本当に、これ夢じゃないってわかってるよね?」
『はい…フロイド先輩にお見舞いに来てもらったの、嬉しくて、言えちゃったみたいです』
ふにゃ、と笑った小エビちゃんは、まだ辛そうだったけど、さっきよりは意識もはっきりしているみたいだし、信じても良さそうだ。
ただ、こっちだけこんなにドキドキさせられてしまって、なんだか癪だから、病人には悪いけど、少しからかおうと思ってしまった。
「でも俺、小エビちゃんに焦らされてきたし。小エビちゃん寝込んでるみたいだし。ちょっと現実味ねぇや」
『…む…ちゃんと起きてるって言ってるじゃないですか…。確かに寝込んでいるけど、ただの風邪ですよ』
「ん〜でもなぁ〜小エビちゃんだしなぁ〜」
『これでも勇気を振り絞ってるのには変わりないのに…ひどいです…。それにせっかく名前…呼んでくれたのに…』
「…あは。かわいーね。名前で呼んで欲しいの?」
『そりゃあ…まぁ…』
「ならさ、取引」
怪訝な顔で次の言葉を待つ小エビちゃんに、ぐっと顔を近づけて言ってやる。
「小エビちゃんからキスしてよ」
『っ?!、な、』
「誓いのキスってやつ〜。俺そんくらいないと信じらんねぇ」
『んなっ、だっ、わ、たし、風邪、引いて、ますし、うつりますよ?!』
「小エビちゃんから貰うんなら別にどーってことねぇし、それに俺ジョーブだから多分大丈夫」
ねぇ、とニッコリ笑ってやれば、枕に埋もれたままの小エビちゃんの顔が、さっきよりも赤く染まって美味しそうだ。
あと一押しかなーと思いながらも、このくすぐったさがたまらなく愛しいと思えて、止まりどころを見失っていた俺。
狼狽えたように視線をあっちこっちに動かしていた小エビちゃんも、そんな俺を見て諦めたように言った。
『本当に…知りませんよ…』
「はーやく」
『…目くらい…つむってください…』
「ん!」
可愛いお願い一つくらいなら聞いてあげよう。目を瞑ってやって、一秒、二秒。
ふと、熱い吐息が唇にかかって。ちゅ、とそのまま熱が、触れた。
『っ、』
「ん。よくできましたぁ〜…でも足りねぇから、今度は俺から」
『ぇ、ン!?』
「ン、…ふ、」
『!!』
枕に落ちた小エビちゃんの顔を追っかけて。今度は俺から唇を重ねた。
角度を変えて何度も落とした口づけは、甘くて愛しくて、とろけるくらいの幸せを俺にくれた。
「っ、は…ゴチソーサマ」
『、ッ〜〜〜!!』
「キスっていーね。でも今日はここまでかな〜」
『…き、今日はって、そな、』
「続きは、治ってからね ユウ」
『!!』
「そしたら、何度でも名前、呼んであげるよ」
今度は額に口づけを落として。
これは約束。
飽きるくらいに名前、呼んであげるからさ。ずっと一緒にいようね、小エビちゃん。
あの寒い部屋に通い詰めてもらったのだから、大方予想できたことではあったが、申し訳ない気分ではあった。
ついでに「フロイド先輩、あいつのところ行ってやってくださいよ」と、そんな事を言われては、お見舞いに行かないという選択肢はなかった。
ヒトのお見舞いって何を持っていけばいいんだっけ?なんて考えるようになった自分が少し笑えたし、くすぐったかった。
絞られた恨みもあって、アズールやジェイドに相談するのも癪だったが、放課後はすぐそこに迫っていたため、素直に声を上げれば、あれやこれやと言われてメモが追いつかない。
結局、病人でも食べれそうな軽い賄いを作り、それから購買部でドリンクと冷却シートのようなものを買い、オンボロ寮へと向かった頃には17時を回っていた。差し押さえの時に見たよりは、かなり整備された気がするオンボロ寮は、それでも扉を開ければ、キィ、と古めかしい音を立てた。
「小エビちゃん、入るよ〜」
声はかけたが、病気と聞いていたので、大きさはいつもより抑えめに。
自分が治った途端、相手が寝込んでしまうとは、バランスがいいのか悪いのか。
ボロ切れと化しているカーテンがあまり意味をなしていないせいで、オレンジ色の光が大きな窓から談話室に差し込んでいた。
のぞいたそこに人がいる様子はない。それじゃあやはり自室か、と、キシキシきしむ階段を登って小エビちゃんの部屋に向かった。
暖かい光は、自分を通して反対側に暗い影を作った。
沈む夕陽を海面から見たことはあったが、それは「差し込む」というよりかは「降り注ぐ」類のもので、今見る景色とはまるで違う。
素直に綺麗だと思ったが、同時に寂しくも思った。
海の中では見れない世界。あの子がずっと見てきた世界。
圧倒的に違うそれらを越えていくだけの気持ちはあったが、小エビちゃんにとってはどうだったろう。
立ち止まって、今やあることが当たり前になった自分の脚を見つめる。
「同じでも、同じじゃねぇんだよなぁ〜」
ガシガシと頭を掻き毟る。考えても仕方のないことだし、考えたりするのは自分らしくもないとはわかっているのだが。
ハァと一つ、大きく息を吐くことで、悩みを頭から追い出した。気を取り直して、小エビちゃんの部屋の前でもう一呼吸。
「小エビちゃーん?」
声をかけてからそっと扉から顔を覗かせれば、ベッドの上に小エビちゃんの姿が見えた。
寝てんのかな…起こしてはいけないと、なるべく静かに身体を滑り込ませる。
「あ、やっぱ寝てる」
スヤスヤと音がしそうなほどよく眠っている小エビちゃんは、それでも熱が出ているようで、少し汗ばんだ額に赤らんだ頬をしていた。
命に別状がなさそうでまずはホッとする。一方で、いつもの学生服姿とは違う、少し前の夜に見た、大きめのパーカーにショートパンツを身につけた小エビちゃんは、目に毒でもあった。
細く頼りない二本の足が、無防備に投げ出されていて、トクリと心臓が波打つ。
当たり前だが、自分とは大きさが全く異なる小さな足。細く艶かしい足首。筋肉がついていない太ももにふくらはぎ。
この間は暗がりの元だったのでさして注目していなかったが、これは、と、ゴクリと喉が嚥下した。
ギッ、とベッドに腰掛けて、小エビちゃんを囲うように両手をついた。
自分の影が、小エビちゃんに重なって少し暗がりになる。
「小エビちゃん…」
もう一度、声をかけたけれど、起きる様子はない。
今なら、チューしてもいいかなとも思ったけど、それじゃ俺の負けだなって。
ここまで我慢してきた。大切にしてきた。だから、早まっちゃだめだ。
「…ユウ……」
初めて呼ぶ、この子の名前。
それだけのことなのに、心臓がうるさいほどばくばくと音を立てた。
手を伸ばせば届く距離なのに、なんでだろう、遠く遠くにいるようなユウ。
「クッソ…無防備すぎじゃね…」
自分だけが心を乱されているのが無性に恥ずかしくて、でも病人にデコピンなどできるはずもなく。
仕方なしに額に張り付いた髪を梳いてやると、ふ、とユウの目が開いた。
『…?』
「あ…起こしちゃった?ごめん、小エビちゃん」
『…ふろいどせんぱい…?』
「うん。俺。小エビちゃん、病気だって聞いて、見舞いに来たよ」
いつもの半分くらいしか開いていない虚ろな目は、まだ夢うつつであるかのように俺を映した。
怠い?と聞くが、返事はない。
ぼーっと見つめられて、どうしようかなとぁと考えていると、不意に暖かいものが頬に触れた。
柄にもなくビクッとして、それが何か確認すると小エビちゃんの掌だった。
それは、すり、と動いて、頬を撫でた。触れられた箇所が火傷しそうに熱く感じる。
『ほんもの…?』
「あは、偽物な訳ないじゃん。本物だよ」
『…ずっと、言いたかったことが、あって』
「ん、何?」
『言えなくて』
もどかしいくらいにゆっくりと発される言葉。
熱い掌を自分の手で握り返して、続きを待った。
『ほんとうは…、…今更遅いかもしれないけれど、』
小エビちゃんからも、弱く握り返される、手。
『…ずっと、好き、でした…好き、だったよ、フロイドせんぱい』
「、は」
『でも、怖くて』
「え、ちょ、」
『いつか、飽きられてしまうかもって…私、元の世界に帰れるかもって…』
「まって、ちょっと」
『だからそれなら、本気にならなければって』
こんなタイミングでいきなり告白タイムがやってくるなど思いも寄らなかった自分の頭は、全然言葉の処理が追いつかない。
え?小エビちゃん、ずっと俺を好きだったって言った?ドユコト?
『散々、ごめんなさい…もう届かないかもしれないけど…』
ポロ、と頬を伝うのは涙。
小エビちゃんの瞳に映る俺の姿は朧げで。
これは白昼夢なんじゃないかと思わせる。
『でも、言葉を、気持ちを、貰うだけもらって返さないのは、失礼だと思ったから』
「それほんとなの…?小エビちゃん…」
『…いつも…いつも、大切にしてくれて、ありがとうございます…』
「だって、好きだから俺も。好きな子のこと、大事にしなくてどうすんの」
『フロイド先輩から貰う気持ち、嬉しかった、いつも、とっても』
「ねぇ、小エビちゃん」
その言葉、本当に信じていいの?
風邪引いてて現状良くわかってないとかだったら、流石に怒るよ、俺も。
「もう一回、言ってくれね?」
『…』
「俺のこと、小エビちゃん、どう思ってんのか」
『すき』
「もっかい」
『…好きです、フロイド先輩』
「…っ、俺も、大好き。大好きだよユウ」
『!』
「ッこれ…はずいな…小エビちゃん」
『先輩でも、恥ずかしいこと、あるんですね』
「ねぇ、小エビちゃんさ、本当に本当に、これ夢じゃないってわかってるよね?」
『はい…フロイド先輩にお見舞いに来てもらったの、嬉しくて、言えちゃったみたいです』
ふにゃ、と笑った小エビちゃんは、まだ辛そうだったけど、さっきよりは意識もはっきりしているみたいだし、信じても良さそうだ。
ただ、こっちだけこんなにドキドキさせられてしまって、なんだか癪だから、病人には悪いけど、少しからかおうと思ってしまった。
「でも俺、小エビちゃんに焦らされてきたし。小エビちゃん寝込んでるみたいだし。ちょっと現実味ねぇや」
『…む…ちゃんと起きてるって言ってるじゃないですか…。確かに寝込んでいるけど、ただの風邪ですよ』
「ん〜でもなぁ〜小エビちゃんだしなぁ〜」
『これでも勇気を振り絞ってるのには変わりないのに…ひどいです…。それにせっかく名前…呼んでくれたのに…』
「…あは。かわいーね。名前で呼んで欲しいの?」
『そりゃあ…まぁ…』
「ならさ、取引」
怪訝な顔で次の言葉を待つ小エビちゃんに、ぐっと顔を近づけて言ってやる。
「小エビちゃんからキスしてよ」
『っ?!、な、』
「誓いのキスってやつ〜。俺そんくらいないと信じらんねぇ」
『んなっ、だっ、わ、たし、風邪、引いて、ますし、うつりますよ?!』
「小エビちゃんから貰うんなら別にどーってことねぇし、それに俺ジョーブだから多分大丈夫」
ねぇ、とニッコリ笑ってやれば、枕に埋もれたままの小エビちゃんの顔が、さっきよりも赤く染まって美味しそうだ。
あと一押しかなーと思いながらも、このくすぐったさがたまらなく愛しいと思えて、止まりどころを見失っていた俺。
狼狽えたように視線をあっちこっちに動かしていた小エビちゃんも、そんな俺を見て諦めたように言った。
『本当に…知りませんよ…』
「はーやく」
『…目くらい…つむってください…』
「ん!」
可愛いお願い一つくらいなら聞いてあげよう。目を瞑ってやって、一秒、二秒。
ふと、熱い吐息が唇にかかって。ちゅ、とそのまま熱が、触れた。
『っ、』
「ん。よくできましたぁ〜…でも足りねぇから、今度は俺から」
『ぇ、ン!?』
「ン、…ふ、」
『!!』
枕に落ちた小エビちゃんの顔を追っかけて。今度は俺から唇を重ねた。
角度を変えて何度も落とした口づけは、甘くて愛しくて、とろけるくらいの幸せを俺にくれた。
「っ、は…ゴチソーサマ」
『、ッ〜〜〜!!』
「キスっていーね。でも今日はここまでかな〜」
『…き、今日はって、そな、』
「続きは、治ってからね ユウ」
『!!』
「そしたら、何度でも名前、呼んであげるよ」
今度は額に口づけを落として。
これは約束。
飽きるくらいに名前、呼んであげるからさ。ずっと一緒にいようね、小エビちゃん。