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Jade
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『小さい頃は田舎の山で遊ぶことも多かったので、山は好きですね!とはいえ、海や川も身近でしたけど。』
「なるほど。あなたさんがそれほど山がお好きだなんて、嬉しい限りです。よろしければその知識を活かして、山を愛する会に入りませんか?」
ひょんなことから、ジェイド先輩が所属している山を愛する会のことを耳にしたので、チャンスとばかりに話を振ってみれば、思惑通り!
お力になれるかわかりませんが、という常套文句に続き、もちろん入りたいですと伝えれば。
「それはありがたいです。そういえば、僕は部屋でキノコの栽培もしているのですよ。ぜひ一度見にいらしてください。」
と喜んでくださった先輩。
いいえ、こちらが願ったり叶ったりなのですよ!!ありがとうございます!
ジェイド先輩に初めて出会ってから数ヶ月。
やっと掴んだこの機会。手放すまい!と、うんうん大きくうなづいた。
部屋にまで入る約束を取り付けて、それでは放課後にオクタヴィネル寮で、と話を終えると、これまでにない程にルンルンした気持ちで授業に勤しむこと数時間。
やってきました放課後!今からいくぞー!と気合いも十分、身なりも整えて、いそいそ歩いていると、目の前からエーデュースが歩いてきた。
『お疲れ~!』
「よっすあなた!ちょうどいいところに!」
「今からオンボロ寮に帰るのか?それなら…」
『あ、今日はダメ!』
「なんだよー付き合い悪りぃな!」
「どうした?何か用事か?」
二人の前では惜しみなくジェイド先輩を崇拝していることを告げているので、なんの問題もなくこれからの予定を自慢する私。
『うん。今からジェイド先輩のキノコ見に行くよ!お誘いいただいたの!』
「「は?!!!」」
「え…あなた、おまえそれ、大丈夫なのか?!」
「監督生…、意味わかってて行くんだよな?」
『へ?』
思っていた反応が返ってくることがないばかりか、エーデュースは二人して眼を白黒させながら私の肩をガクガクと揺らす。
『ちょ…やめてよ!なんなの?!もう!私は今からジェイド先輩の部屋行かないといけないんだから!』
「部屋?!!お前、部屋に二人きりはだめだろ!!!」
「エース…こいつは本気みたいだ…俺たちじゃ止められない」
『はぁ?よくわかんないけど、私、もう行くね!?あ!言っとくけど、ジェイド先輩はエーデュースたちよりもずっとずーっと私に優しいんだから!!』
ふんっ!と鼻息荒く、私は寮へ続く道へと歩を進めた。
その後ろで、あいつはジェイド先輩とどこまでいってるんだ、と呟かれていたことも知らずに。
*
「ジェイド~!小エビちゃん来たよ~!」
『ジェイド先輩~きました~』
「ああ、いらっしゃいませ」
「んじゃ、小エビちゃん、俺はキノコきらいだからあっちにいるね~。なんか面白いことあったら絶対呼んでね?」
『ありがとうございました、フロイド先輩。はい、面白いキノコがあったら呼びますね!』
「ゲー…それだったら来ないかんね!」
フロイド先輩に寮のお部屋まで案内してもらって、辿り着いた部屋には、いくつもテラリウムが飾られていて、思ったよりも物が多い印象をうけた。
「今いつものリラックスできるお茶を用意しますから。少しかけておまちいただけますか」
『そんな!お構いなく…って、わぁ…!本当にキノコがたくさんある…これ全部一人で面倒みているんですか?』
「はい。以前は寮のみなさんも、すごいだのおいしいだのと褒めてくださって、育てがいがあったのですが、今となっては邪魔者扱いで…。悲しい限りです」
コポポ、と小さなポットが音をたてる。
「なので、あなたさんに興味をもっていただけて、本当に嬉しく思っています」
『そうなんですか…こんなに育てられるなんて、純粋にすごいですけどね。あ、そうえば、さっき、エーデュースにも言われました!』
「へぇ?なんと?」
『やめとけ、とか、意味わかっていってんのか、とか。失礼ですよね。ジェイド先輩のキノコを見せてもらいに行くの、って言っただけでやめとけなんて。だからジェイド先輩は二人よりずーっと優しいんだからって言っておきました!』
と言うと、一瞬眼を見開いた先輩は、続いてふふっ、と笑い声を漏らした。
「ふふっ…そう、ですか…ふふふっ」
『?先輩?』
「いえ…失礼しました、ジェイド先輩のキノコこ、ね…これは男子高校生が好きそうな話題だっ」
『???』
「ふふふっ…言葉って、難しいですね」
何か言い間違えたかな、と頭を動かそうとしたところで、お茶が入りましたよ、と思考を中断させられた。
「さ、て。どのキノコの話からしましょうかねぇ。」
『うーん、そうですね…あ!前から聴きたかったことがあったんですけど』
「?なんでしょうか」
『ジェイド先輩が一番好きなのを教えてください!』
「好き、なの」
『はい!』
ふむ、と口に当てられた指が、ああ、と口から離れたと思った、その瞬間。
長いその指は、私の頬に触れた。
小動物でも撫でるかのように、すりすりと。
「好きなのは、あなた」
『ふぁ?!!!』
ふわりと微笑みをたたえるジェイド先輩。
対する私は、突然の100%スマイルを真正面から向けられて、頭から火が吹きそうなくらい、カッ!と熱を上げた。
『え…え…?!ジェイ、ド、せんぱ』
「...の後ろにあるその子です。」
『へ?』
「そちら、最近育て始めたばかりのキクラゲというキノコでして、愛着がありますね。」
グルリと後ろに顔を向ければ、比較的小さな苗床の横から、ちょろりとキクラゲの頭が覗いていた。
『あ、あっ、は、ひ!!そ、こ、これ、そっ、そです、ね、あはっ、かわ、かわい~!!!!』
「そうでしょう?」
ニコッ
いい音がしそうなスマイルをもう一つ。
それから手を離して、「山を愛する会に興味がおありなら、今度一緒に登ってみませんか?」と、何事もなかったかのように続けられる会話。
(な、な、なん…っ?!!すきですか、の返しで、あなた、は反則でしょっ?!!言葉って難しい…って、どの口で言うのよ!)
という忙しい心の内も、きっとバレた上で遊ばれているんだろうな。
侮れぬ、ジェイド先輩。
真っ赤になってしまったほっぺたを自分の掌でさすりながら、私は、キクラゲを見つめるしかないのであった。
「なるほど。あなたさんがそれほど山がお好きだなんて、嬉しい限りです。よろしければその知識を活かして、山を愛する会に入りませんか?」
ひょんなことから、ジェイド先輩が所属している山を愛する会のことを耳にしたので、チャンスとばかりに話を振ってみれば、思惑通り!
お力になれるかわかりませんが、という常套文句に続き、もちろん入りたいですと伝えれば。
「それはありがたいです。そういえば、僕は部屋でキノコの栽培もしているのですよ。ぜひ一度見にいらしてください。」
と喜んでくださった先輩。
いいえ、こちらが願ったり叶ったりなのですよ!!ありがとうございます!
ジェイド先輩に初めて出会ってから数ヶ月。
やっと掴んだこの機会。手放すまい!と、うんうん大きくうなづいた。
部屋にまで入る約束を取り付けて、それでは放課後にオクタヴィネル寮で、と話を終えると、これまでにない程にルンルンした気持ちで授業に勤しむこと数時間。
やってきました放課後!今からいくぞー!と気合いも十分、身なりも整えて、いそいそ歩いていると、目の前からエーデュースが歩いてきた。
『お疲れ~!』
「よっすあなた!ちょうどいいところに!」
「今からオンボロ寮に帰るのか?それなら…」
『あ、今日はダメ!』
「なんだよー付き合い悪りぃな!」
「どうした?何か用事か?」
二人の前では惜しみなくジェイド先輩を崇拝していることを告げているので、なんの問題もなくこれからの予定を自慢する私。
『うん。今からジェイド先輩のキノコ見に行くよ!お誘いいただいたの!』
「「は?!!!」」
「え…あなた、おまえそれ、大丈夫なのか?!」
「監督生…、意味わかってて行くんだよな?」
『へ?』
思っていた反応が返ってくることがないばかりか、エーデュースは二人して眼を白黒させながら私の肩をガクガクと揺らす。
『ちょ…やめてよ!なんなの?!もう!私は今からジェイド先輩の部屋行かないといけないんだから!』
「部屋?!!お前、部屋に二人きりはだめだろ!!!」
「エース…こいつは本気みたいだ…俺たちじゃ止められない」
『はぁ?よくわかんないけど、私、もう行くね!?あ!言っとくけど、ジェイド先輩はエーデュースたちよりもずっとずーっと私に優しいんだから!!』
ふんっ!と鼻息荒く、私は寮へ続く道へと歩を進めた。
その後ろで、あいつはジェイド先輩とどこまでいってるんだ、と呟かれていたことも知らずに。
*
「ジェイド~!小エビちゃん来たよ~!」
『ジェイド先輩~きました~』
「ああ、いらっしゃいませ」
「んじゃ、小エビちゃん、俺はキノコきらいだからあっちにいるね~。なんか面白いことあったら絶対呼んでね?」
『ありがとうございました、フロイド先輩。はい、面白いキノコがあったら呼びますね!』
「ゲー…それだったら来ないかんね!」
フロイド先輩に寮のお部屋まで案内してもらって、辿り着いた部屋には、いくつもテラリウムが飾られていて、思ったよりも物が多い印象をうけた。
「今いつものリラックスできるお茶を用意しますから。少しかけておまちいただけますか」
『そんな!お構いなく…って、わぁ…!本当にキノコがたくさんある…これ全部一人で面倒みているんですか?』
「はい。以前は寮のみなさんも、すごいだのおいしいだのと褒めてくださって、育てがいがあったのですが、今となっては邪魔者扱いで…。悲しい限りです」
コポポ、と小さなポットが音をたてる。
「なので、あなたさんに興味をもっていただけて、本当に嬉しく思っています」
『そうなんですか…こんなに育てられるなんて、純粋にすごいですけどね。あ、そうえば、さっき、エーデュースにも言われました!』
「へぇ?なんと?」
『やめとけ、とか、意味わかっていってんのか、とか。失礼ですよね。ジェイド先輩のキノコを見せてもらいに行くの、って言っただけでやめとけなんて。だからジェイド先輩は二人よりずーっと優しいんだからって言っておきました!』
と言うと、一瞬眼を見開いた先輩は、続いてふふっ、と笑い声を漏らした。
「ふふっ…そう、ですか…ふふふっ」
『?先輩?』
「いえ…失礼しました、ジェイド先輩のキノコこ、ね…これは男子高校生が好きそうな話題だっ」
『???』
「ふふふっ…言葉って、難しいですね」
何か言い間違えたかな、と頭を動かそうとしたところで、お茶が入りましたよ、と思考を中断させられた。
「さ、て。どのキノコの話からしましょうかねぇ。」
『うーん、そうですね…あ!前から聴きたかったことがあったんですけど』
「?なんでしょうか」
『ジェイド先輩が一番好きなのを教えてください!』
「好き、なの」
『はい!』
ふむ、と口に当てられた指が、ああ、と口から離れたと思った、その瞬間。
長いその指は、私の頬に触れた。
小動物でも撫でるかのように、すりすりと。
「好きなのは、あなた」
『ふぁ?!!!』
ふわりと微笑みをたたえるジェイド先輩。
対する私は、突然の100%スマイルを真正面から向けられて、頭から火が吹きそうなくらい、カッ!と熱を上げた。
『え…え…?!ジェイ、ド、せんぱ』
「...の後ろにあるその子です。」
『へ?』
「そちら、最近育て始めたばかりのキクラゲというキノコでして、愛着がありますね。」
グルリと後ろに顔を向ければ、比較的小さな苗床の横から、ちょろりとキクラゲの頭が覗いていた。
『あ、あっ、は、ひ!!そ、こ、これ、そっ、そです、ね、あはっ、かわ、かわい~!!!!』
「そうでしょう?」
ニコッ
いい音がしそうなスマイルをもう一つ。
それから手を離して、「山を愛する会に興味がおありなら、今度一緒に登ってみませんか?」と、何事もなかったかのように続けられる会話。
(な、な、なん…っ?!!すきですか、の返しで、あなた、は反則でしょっ?!!言葉って難しい…って、どの口で言うのよ!)
という忙しい心の内も、きっとバレた上で遊ばれているんだろうな。
侮れぬ、ジェイド先輩。
真っ赤になってしまったほっぺたを自分の掌でさすりながら、私は、キクラゲを見つめるしかないのであった。
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