第1話
夢小説設定
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* * *
『全く、あの駄目人間は……』
皆さん、こんにちは。三宅花圃と申します。ボクは今、ある男性を捜して鶴見川まで来ています。
ソイツは自殺愛好家で、先刻も「良い川だね」と云いながら、白昼堂々入水を仕出かす阿呆です。誠に恥ずかしいものです。
それで上司に命じられて、川べりまで来たは善いものの当人は見つからず仕舞い。しかし、思わぬ収穫があったのだ。
十代後半であろう少年が、蹲っていた。ボロボロの衣服を見るに、孤児のようだ。
そんな少年を放っておけず、気付いたらボクは彼の元まで駆けて行った。
『おーい、こんな処で如何したんだい?』
「うぅ…」
良かった、少し気を失っていただけのようだ。ボクの呼び掛けに気付いた少年は、此方を見るや素早く身構えた。
恰好を見るに、如何やら盗みをしようとしてるようだ。大事な物多いから、止めて欲しい……。
『止めなさい。そんなこと、君には向いていない』
「五月蠅い!僕は死ぬ訳にはいかないんだ、だから──」
死ぬ、そんな言葉を軽々と口にした彼がどんな人生を送ってきたかは、ボクには解らない。
それでも、彼を悪人にさせることだけは絶対に嫌だ。
『解った。丁度、此処にお握りと水がある。其れで手を打とう』
そう云って、肩に掛けていたミニリュックからお握りとペットボトルを取り出す。
あまりにもあっさりと出したせいか、ポカンとする少年。
「善いんですか、本当に?」
『別に大丈夫だよ。見たところ、何も食べてないんだろう?遠慮せず、厚意に甘えなさい』
「それじゃあ…。頂きます」
そう云うや、勢い良く食べる少年。多少の元気はあるようだ。
チラリと視線を向けると、既にに食べ切ってしまったらしい。若いなあ。
「済みません、本当に空腹で……」
『それじゃあ仕方がないね。処で君、名前は?』
「あッ、中島…敦です」
『善い名前だね、ボクは三宅花圃。よろしくね、敦君』
「あッ…よろしくお願いします。花圃さんは如何して此処に?」
敦君の言葉で思い出した。そうだった。
あの唐変木を捜していたのだ。
幼気な少年に気を取られて、すっかり忘れてた。
『人を捜して此処まで来たけど……。見つからなくて』
「人?僕以外は特に見てませんが……」
だよねぇ……。川を探すのも楽じゃないし。
何処かに変わったものでも無いかと、辺りを見渡した。そうしたら、何という事だろう。
お目当ての人物が、上流から流れてきたのだ。しかもスケキヨで。
『見ていないボクは何も見ていない、ボクは何も見ていない!』
「如何したんですか、花圃さん?……アレは?」
『マジで勘弁して……』
しかもカラスも群がってきた。これは流石に不味い。
些かやる気が出ないけど…。そう考えてたら、先に敦君が川にザブンと飛び込んでいた。
……仕方ない、引き上げるのを手伝うか。此処で何もしなかったら罪悪感がヤバい。
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