世界総人口の約八割が何らかの『特異体質』である超人社会となった現在。混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れたであろう職業の『ヒーロー』。そして、その職業に僅かに遅れをとる形で現れた職業がもう一つ。絵本や昔話にでしか現れることが無かった『鬼』という存在を滅殺するために発足された政府公認の『鬼殺隊』。
この二つの職業が脚光を浴びていた。



鬼殺隊は現当主である産屋敷耀哉を中心に発足された団体。今から四百年前この世界には『鬼』という存在があり、当時鬼を滅殺する団体の『鬼殺隊』があったと記された書物が発見されたことが全ての始まりだった。まるでその書物が発見された事が合図だったかのように、現代でも次々に『鬼』の存在が確認されていった。それも世界各地で。
鬼はヒーローだけでは対処しきれないと判断された末に産屋敷耀哉を中心にした世界のお偉い様方がその書物を元に『日輪刀』を作りあげ、鬼を滅殺する為に『鬼殺隊』を発足させたのだ。それ以降「ヒーローは敵（ヴィラン）を、鬼殺隊は鬼を」というように区切られ、世界は再び動き出した。
ヒーローに比べ年間の死亡者が圧倒的に多い鬼殺隊は子供にこそ憧れられても大人達からの支持は少ない。それこそ鬼殺隊を目指そうとした子供を止める親も少なくない。では鬼殺隊に入隊する人とはどのような人達なのかというと、実の家族を鬼に殺された人や親に捨てられた子供などが主な人員である。
ヒーローを『光』と表すのなら、脚光を浴びていても鬼殺隊の存在はまさに『影』。どちらも「将来なりたい職業」のトップ2に入るものなのにも関わらず自然と表裏一体になってしまう。唯一異なるのは倒すものだけ。それなのに鬼殺隊という組織が大人達に煙たがられるという世の中に疑問を感じて鬼殺隊から脱退する者も少なくなかった。しかし誰かがやらなければこの世界は破滅への道を進むだけ。

時には罵声を
時には怒りを
時には殺意を
時には死を

背中に『滅』の文字を掲げ、それら全てを背負って戦うのが鬼殺隊である。


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私、乙藤納豆はこの春から雄英高校に通うことになった。雄英といえば数々のスーパヒーローを輩出してきた超名門校。そんな高校に通うくらいなのだから当然私もヒーローを目指していると思われがちだが、実はそうではない。乙藤納豆は「現・鬼殺隊員」である。私が鬼殺隊に入隊したのは14歳の時、つまり一年前。両親を鬼に食われて亡くした私は、引き取ってくれたお爺さんが育手だったので無理を言って稽古をつけてもらい見事呼吸を修得。そしてすぐに最終選別を受けに行き合格。晴れて鬼殺隊に身を置くことになった。鬼殺隊に入ると鬼を狩ることになる。命懸けで。そのため、私達のような子供でも階級に伴った給料が毎月支給されるのだ。しかもわりと高額。別にお金目当てだった訳じゃないけどその金額にはさすがに驚かされた。そのお金は基本的に貯めて、たまの息抜きに使わせてもらっています。
そしてじゃあなぜそんな私が雄英高校に行くのかというと雄英高校のヒーロー科には『鬼殺隊枠』というものがあり、私はお館様の命によりその枠に入って雄英高校に通うことになったのだ。ちなみにこの鬼殺隊枠に入るのも簡単なことではなくて、まず『ヒーローを目指すことの出来る個性を持っている者』、『鬼の討伐数が五体を超えている者』という最低条件がある。この条件をクリアした人達の中からお館様や柱によって選ばれた者がその枠に入ることが出来るのだ。そして私は見事、選ばれました。ラッキー！
ヒーロー科は一学年に二クラスあると聞いたから、鬼殺隊員は私を含めて四人いるはず。どんな人達なんだろう……。優しくて強い人がいいな。
そんな期待を胸に真新しい雄英高校の制服に腕を通し、支度を終えて私は新しい高校生活への一歩を踏み出した。