二番煎じな内容が多いです。
霊感少女の怪奇奇譚
空欄の場合は「納豆」になります。
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懐かしい思い出を、久しぶりに夢にみた。
幼い頃、とある人に連れられて地元で有名な心霊スポットに行ったことがある。私はそこで一生忘れることのできない怖い体験をした。
当時私達の間では一時期心霊ブームが巻き起こり、すぐ近くに心霊スポットがあるという環境はその心霊ブームを更に助長させた。子供同士で秘密裏に肝試しをやり、その場所が心霊スポットなんてことはざらにあった。むしろその心霊スポットに行ったことが無い人の方が珍しいと思われるくらい。勿論私も行ったことがある……と言いたいのだけれど、怖いものがちょっぴり苦手だった私は数人の友達の誘いを上手くかわして逃げていた。心霊スポットを遠巻きに見ても近寄ることはない。そんな感じで過ごしていたのだが、そんなある日、ついにとある人に捕まってしまい「行くよ」と強引に腕を引っ張られ、私は初めて心霊スポットの中に足を踏み入れた。
季節は夏でこの頃は30度を超えるような猛暑日だというのに、心霊スポットの中は鳥肌がたつほど空気が冷たく明らかに建物の雰囲気は可笑しかった。私達二人以外誰もいないはずなのに見られているような視線を感じ、そのあまりの不気味さに耐えられなくなった私はその子に「早く帰ろう」と言った。しかしその子は「もう少し奥に行こう」と私の話を全く聞かずに進んでいく。もう一人で帰ってしまおうかと考えた瞬間もあったが、そんな薄情なことはできないと、奥に進み続ける友達の背中を追いかけて私も奥に進んだ。
壁にされたスプレーの落書き、部屋に捨てられたゴミ、派手に割れた壺。どれもこれも気味の悪いものにしか見えない。歩き続ける友達。奥に進むにつれてだんだんと空気が重くなる。今更だけど、その心霊スポットというのは元は病院だった。それが廃病院となり、いつの間にかそこで「幽霊を見た」という数多くの心霊体験談が寄せられ、その廃病院は心霊スポットとなったのだ。
私達は一階、二階……と順番に上に行くようにして進んでいた。最上階まで見終わったから私はてっきりこれで帰るのかと思っていた。しかしその子は私の方を全く見ずに抑揚の無い声でこう言った。
「地下の霊安室に行こう」
有無を言わさないというようにその子は私の手をガッチリと握り、逃げようとする私を強引に引きずりながら歩きだした。それは子供の力だとは考えられないほど強い。廊下だけでなく階段を下りるときまで引きずられたせいで膝を強く打ち付けてしまい、地下まで下りると、膝は青アザだらけになっていた。ズキズキと青アザが痛みを訴える。その子は地下の一番奥に位置する霊安室の方を指差し、「ねぇ、行こうよ納豆ちゃん!」と無邪気にはしゃぎながら霊安室に向かって走り出す。
「待って……っ、ーーくん!」
恐怖と戸惑いで視界が涙でいっぱいになる中、ーーくんは……一人で霊安室へと入っていった。パタンっと、閉まった霊安室の扉。それから30秒程の静寂。耳が痛くなるほど静まり返った。……が、
────ガシャンッ!!
それは、ほんの僅かな静寂にしか過ぎなかった。ガタンッ、パリンッ、と霊安室の中で酷く暴れる音が聞こえる。
ーーくんだ。ーーくんが、霊にとり憑かれて暴れているんだ。私にはそうとしか思えなかった。霊安室の中で起こっている事を確認しに行く勇気も怖がりの私には無かった。
大人を呼ぼう。きっと心霊スポットに入ったってことで凄く怒られるだろうけどこのままじゃ、ーーくんも私も幽霊に殺されちゃう!……そう思った。
霊安室に背を向けて、一階へと上がる階段を上ろうとした──そのとき。
「あぁああああァ"ア"ア"!!!」
「……ッ!!」
ーーくんの、とても苦しそうな呻き声が地下いっぱいに響き渡った。
幽霊に襲われているんだ、勝手に病院に入ったから幽霊が怒ってーーくんを殺そうとしている。私は階段を登ろうとしていた足を止めていた。そしてゆっくり踵を返し、霊安室の方へと一歩一歩進んでいく。頭の中で「行っちゃダメだよ」と警報が鳴り響いているのを無視した。霊安室の扉に手をかける。後は力を込めればこの扉が開く。あと少し、なのに……。手が震え、足も震え、冷や汗が背中を伝っていく。中にはーーくんがいる。早く助けなきゃ。
ゆっくり、ゆっくり、力を込める。少しずつ扉が開いていき────
「こらァ!!!」
「きゃあああ!!!」
背後から急に怒鳴られたことに驚いた私はパッと手を扉から離してしまった。そのせいで少しだけ開きかけていた扉が再びパタンっと閉じる。後ろを振り返るとそこには、私達の地域で『一番の頑固親父』と言われて子供達から怖がられているおじさんが般若のような表情で立っていた。あまりにも目の前の扉に集中しすぎていたせいで背後に迫るおじさんの気配に気づけなかったらしい。いつもなら私もこのおじさんが怖くて近づくことは無かったが、この時ばかりはおじさんが来てくれたことに心の底からホッとした。
「最近、ガキ共が肝試しで勝手に此処に入っているという話を聞いて見回りに来たが……どうやら本当のことだったらしい」
「ぁ……ご、ごめんなさい……」
「お前は新垣 さん家の娘だったな?お前の親にはこの事を伝えてたっぷりお説教してもらうからな」
「はい……」
「全く……最近の子はこんな場所に一人で 来るような時代なのか……。教育がなっていない!この件は学校にも報告させてもらうからな!!」
おじさんの言葉に、私は首を傾げてしまった。
「おじさん、私一人じゃないです…」
「何だと?他にも仲間がいるのか?」
「私、ーーくんと一緒にここに来たんです。そうしたらーーくんが霊安室に入っちゃって……」
私はすぐ後ろの霊安室を指差した。しかし、今度は私の発言におじさんが首を傾げる番だった。そして私に向かってこう言ったのだ。
「『ーー』なんて名前の子供はこの地域にはいないぞ?」
後日知ったのだが、昔この廃病院がまだ病院として残っていたとき、その子と同じ名前の男の子が入院していたが手術が失敗してしまい命を落としてしまった子がいたらしい。
…………そういえば、友達からはよくあの心霊スポットに一緒に行こうと誘われることはよくあった。でもよく考えたら、心霊スポットに誘ってくる私の友達の中にあんな子はいなかった。
どうして私はあの子の名前を知っていたのか。
どうしてあの子は私の名前を知っていたのか。
どうしてあの子と一緒に居ることに違和感を覚えなかったのか。
約10年経った今、改めて考えるとそれが不思議でならない。
今ではもう『ーーくん』という名前を思い出そうとしても肝心の名前の部分だけに霧がかかったようになって思い出せなくなってしまった。これは遠回しに思い出すなという警告なのか。
思えばあの出来事をきっかけに、怖いものが苦手だった私を取り巻く環境全てがガラリと変わってしまったのだ。
もしもあの日、ーーくんを追いかけて霊安室の中に入っていたら
私は今頃どうなっていたのかな。
幼い頃、とある人に連れられて地元で有名な心霊スポットに行ったことがある。私はそこで一生忘れることのできない怖い体験をした。
当時私達の間では一時期心霊ブームが巻き起こり、すぐ近くに心霊スポットがあるという環境はその心霊ブームを更に助長させた。子供同士で秘密裏に肝試しをやり、その場所が心霊スポットなんてことはざらにあった。むしろその心霊スポットに行ったことが無い人の方が珍しいと思われるくらい。勿論私も行ったことがある……と言いたいのだけれど、怖いものがちょっぴり苦手だった私は数人の友達の誘いを上手くかわして逃げていた。心霊スポットを遠巻きに見ても近寄ることはない。そんな感じで過ごしていたのだが、そんなある日、ついにとある人に捕まってしまい「行くよ」と強引に腕を引っ張られ、私は初めて心霊スポットの中に足を踏み入れた。
季節は夏でこの頃は30度を超えるような猛暑日だというのに、心霊スポットの中は鳥肌がたつほど空気が冷たく明らかに建物の雰囲気は可笑しかった。私達二人以外誰もいないはずなのに見られているような視線を感じ、そのあまりの不気味さに耐えられなくなった私はその子に「早く帰ろう」と言った。しかしその子は「もう少し奥に行こう」と私の話を全く聞かずに進んでいく。もう一人で帰ってしまおうかと考えた瞬間もあったが、そんな薄情なことはできないと、奥に進み続ける友達の背中を追いかけて私も奥に進んだ。
壁にされたスプレーの落書き、部屋に捨てられたゴミ、派手に割れた壺。どれもこれも気味の悪いものにしか見えない。歩き続ける友達。奥に進むにつれてだんだんと空気が重くなる。今更だけど、その心霊スポットというのは元は病院だった。それが廃病院となり、いつの間にかそこで「幽霊を見た」という数多くの心霊体験談が寄せられ、その廃病院は心霊スポットとなったのだ。
私達は一階、二階……と順番に上に行くようにして進んでいた。最上階まで見終わったから私はてっきりこれで帰るのかと思っていた。しかしその子は私の方を全く見ずに抑揚の無い声でこう言った。
「地下の霊安室に行こう」
有無を言わさないというようにその子は私の手をガッチリと握り、逃げようとする私を強引に引きずりながら歩きだした。それは子供の力だとは考えられないほど強い。廊下だけでなく階段を下りるときまで引きずられたせいで膝を強く打ち付けてしまい、地下まで下りると、膝は青アザだらけになっていた。ズキズキと青アザが痛みを訴える。その子は地下の一番奥に位置する霊安室の方を指差し、「ねぇ、行こうよ納豆ちゃん!」と無邪気にはしゃぎながら霊安室に向かって走り出す。
「待って……っ、ーーくん!」
恐怖と戸惑いで視界が涙でいっぱいになる中、ーーくんは……一人で霊安室へと入っていった。パタンっと、閉まった霊安室の扉。それから30秒程の静寂。耳が痛くなるほど静まり返った。……が、
────ガシャンッ!!
それは、ほんの僅かな静寂にしか過ぎなかった。ガタンッ、パリンッ、と霊安室の中で酷く暴れる音が聞こえる。
ーーくんだ。ーーくんが、霊にとり憑かれて暴れているんだ。私にはそうとしか思えなかった。霊安室の中で起こっている事を確認しに行く勇気も怖がりの私には無かった。
大人を呼ぼう。きっと心霊スポットに入ったってことで凄く怒られるだろうけどこのままじゃ、ーーくんも私も幽霊に殺されちゃう!……そう思った。
霊安室に背を向けて、一階へと上がる階段を上ろうとした──そのとき。
「あぁああああァ"ア"ア"!!!」
「……ッ!!」
ーーくんの、とても苦しそうな呻き声が地下いっぱいに響き渡った。
幽霊に襲われているんだ、勝手に病院に入ったから幽霊が怒ってーーくんを殺そうとしている。私は階段を登ろうとしていた足を止めていた。そしてゆっくり踵を返し、霊安室の方へと一歩一歩進んでいく。頭の中で「行っちゃダメだよ」と警報が鳴り響いているのを無視した。霊安室の扉に手をかける。後は力を込めればこの扉が開く。あと少し、なのに……。手が震え、足も震え、冷や汗が背中を伝っていく。中にはーーくんがいる。早く助けなきゃ。
ゆっくり、ゆっくり、力を込める。少しずつ扉が開いていき────
「こらァ!!!」
「きゃあああ!!!」
背後から急に怒鳴られたことに驚いた私はパッと手を扉から離してしまった。そのせいで少しだけ開きかけていた扉が再びパタンっと閉じる。後ろを振り返るとそこには、私達の地域で『一番の頑固親父』と言われて子供達から怖がられているおじさんが般若のような表情で立っていた。あまりにも目の前の扉に集中しすぎていたせいで背後に迫るおじさんの気配に気づけなかったらしい。いつもなら私もこのおじさんが怖くて近づくことは無かったが、この時ばかりはおじさんが来てくれたことに心の底からホッとした。
「最近、ガキ共が肝試しで勝手に此処に入っているという話を聞いて見回りに来たが……どうやら本当のことだったらしい」
「ぁ……ご、ごめんなさい……」
「お前は
「はい……」
「全く……最近の子はこんな場所に
おじさんの言葉に、私は首を傾げてしまった。
「おじさん、私一人じゃないです…」
「何だと?他にも仲間がいるのか?」
「私、ーーくんと一緒にここに来たんです。そうしたらーーくんが霊安室に入っちゃって……」
私はすぐ後ろの霊安室を指差した。しかし、今度は私の発言におじさんが首を傾げる番だった。そして私に向かってこう言ったのだ。
「『ーー』なんて名前の子供はこの地域にはいないぞ?」
後日知ったのだが、昔この廃病院がまだ病院として残っていたとき、その子と同じ名前の男の子が入院していたが手術が失敗してしまい命を落としてしまった子がいたらしい。
…………そういえば、友達からはよくあの心霊スポットに一緒に行こうと誘われることはよくあった。でもよく考えたら、心霊スポットに誘ってくる私の友達の中にあんな子はいなかった。
どうして私はあの子の名前を知っていたのか。
どうしてあの子は私の名前を知っていたのか。
どうしてあの子と一緒に居ることに違和感を覚えなかったのか。
約10年経った今、改めて考えるとそれが不思議でならない。
今ではもう『ーーくん』という名前を思い出そうとしても肝心の名前の部分だけに霧がかかったようになって思い出せなくなってしまった。これは遠回しに思い出すなという警告なのか。
思えばあの出来事をきっかけに、怖いものが苦手だった私を取り巻く環境全てがガラリと変わってしまったのだ。
もしもあの日、ーーくんを追いかけて霊安室の中に入っていたら
私は今頃どうなっていたのかな。
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