二番煎じな内容が多いです。
門出ノ章
空欄の場合は「納豆」になります。
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念の為に回りに他の鬼がいないかどうかを確認しながら来た道を走って戻る。だが特に鬼の気配が感じられないことから、この山はあの五体の鬼が占領していたのだと気づく。下手に鬼の数が増えるのも嫌だからそれはそれで運が良かったのかもしれないが十二鬼月が住み着いている時点で色々と厄介。
走っていると、先程の戦闘の時に勢いよく木にぶつけた背骨辺りが酷く傷む。やはり折れているみたい。でも肺には刺さっていないから呼吸自体に影響は無さそう。とりあえず良かった。
恋柱様達との距離が近づいているのか、次第にドンッ!ザザッ!という音が聞こえてくる。どうやらまだ決着はついていないみたいだ。でも十二鬼月だものね……。単純に強いだろうし血鬼術も厄介なものを持っていそう。もしかしたら恋柱様も苦戦しているのかもしれない!早く助けに行かなきゃ!
────そんなことを思いながら必死に走っていた私はこの後、色んな意味で戦慄することになる。
「大丈夫ですか恋柱様……!」
激しい戦闘が行われていたのか土煙が立ち込める。何故か私が来た途端に妙に静かになってしまい、今戦況がどうなっているのか分からなくなってしまう。せめて視界が良くなれば…と思ったとき、その静寂を引き裂くかのように恋柱様の高めの声が辺りに響いた。
「恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき」
その声と共にブワッと風が吹き荒れ、視界を覆っていた土煙が全て取り払われた。
が、目を開けていたせいで風で飛ばされた土が目に入ってしまった。
「い゙ったぃ……!」
目の中から異物を取り除こうと勝手に涙が溢れる出る。そんなことよりも恋柱様のことが気になる私は必死に涙を拭う。そしてまだ少しピリピリとした痛みが残る目を開く。
「あ、あれ……?」
目の前に広がった光景が想像していたものとあまりにも違いすぎたせいで私は思わず握っていた刀を落としてしまった。
「──……よし、これで任務完了!うんうん!悪鬼滅殺ね♡」
羽織についた土の汚れを落としながら笑う恋柱様と、恋柱様の足下で頸どころか体までバラバラになった消えかけの下弦の参がいた。
「あら納豆ちゃん!良かった…そっちの鬼も無事に倒したのね!流石だわ納豆ちゃんっ…キュンキュンしちゃう♡♡」
「い、いえ……恋柱様もご無事で何よりです」
「十二鬼月でも下弦の鬼で良かった…。もしも上弦の鬼だったら今回と比べ物にならないくらい大変だったに違いないよね……うん。良かった良かった!」
「凄くお強いんですね、恋柱様……」
「んーそうねぇ。一般隊士の人達よりはちょっとだけ強いかも!」
ちょっとどころじゃない気が……。
十二鬼月でさえ無かった私が戦ったあの鬼でさえ私は勝てる自信があまり無かったというのに、それより上の十二鬼月を相手にしてここまで余裕そうにしていられる恋柱様を見て私は格の違いを目の前で突きつけられてしまった。走っている時もそうだったけど、やっぱり私はまだまだ弱い。弱すぎる。師範と手合わせをしていたときだって、まだ一本も取れていないし……。鬼殺隊士として名を上げるには今の状態じゃ力が無さすぎる。
強くなりたい。今よりももっと。人を助けられる力や師範の代わりに仇をとれる力が欲しい。それでいつかこの
地面に落とした刀を拾い、鞘に戻す。今となっては慣れた動作だけどあの炭治郎の家の事件が無かったら私がこうやって刀を握ることも無かったんだ。やっぱり家を出て正解だった。だって今はこんなにも鬼殺隊員であることへの誇りと喜びに満ち溢れているのだから。
だが少し、母と父のことが気にかかった。
「これでこの任務は終わりですよね」
「そうよ!でも、私はこれから別件でまた任務があるからこのまま行かなきゃダメなの……。一緒に山を下りれなくてごめんなさい……」
「いえ!謝られることではありません!!柱の方は忙しいでしょうし、むしろ今回恋柱様と同じ任務に当たれて良かったです!もっともっと強くなろうって思えました!!だから、ありがとうございました!」
「納豆ちゃん……っ、はぁああ♡なんて可愛いのかしら!もういっそのこと私の『継子』になって欲しいくらい!!!……はっ!どうかしら納豆ちゃん、私の継子にならない!?」
「つ、継子ってなんですか……?」
「そうね〜。簡単に言ってしまうと次期・柱として柱に直々に育てられる隊士の事!」
「なるほどぉ〜…………え゙っ!!!わ、わた、私が恋柱様の継子にですか!?!?」
「そう!納豆ちゃんまだまだ伸び代があるし、ちゃんと鬼の気配を察知できていたし、なにより十二鬼月に近い鬼を単独で倒すこともできる!十分継子としての才覚はあるわ!ね、どうかしら?」
期待するように笑う恋柱様が私をジーッと見つめている。それとは対照的に私はかつてないほど混乱していた。
え?私が?柱の継子に??まだ常中もできないような弱い私が???こんなに強い恋柱様の後継になるってこと??え?無理くない??期待に応えられないよ???
ぐるぐると回る思考回路に目まで回ってくる。すると、?だらけの私を見て恋柱様が気を使ってくれたのか優しく声をかけてきた。
「納豆ちゃんが自分の事を弱いと思っているのなら尚更伸び代があるし、強くなりたいと思うのなら私も鍛錬に協力できる。きっと今、納豆ちゃんは常中を覚えたいと思っていると思うんだけど、その鍛錬だって私の屋敷でやれば良いじゃない。私は納豆ちゃんのこと弱いなんて思わないわ!」
「恋柱様……」
「……うん、やっぱり『恋柱様』って呼ぶのはやめて欲しいかな!何度も言うようだけど『蜜璃さん』って呼んで欲しいなあ」
この人はとても温かいと思った。笑った顔もそうだけど、言動一つ一つに優しさが溢れているみたいで恋柱様を見ているだけで自然と私も笑えていた。
継子になるならないは別として、図々しいが恋柱様と親しくなりたいと思ってしまう。良いのだろうか。簡単に甘えてしまって。やっぱり柱と一般隊士としてある程度の距離感はあったほうが良いのかもしれない。
────……でも、それはとても寂しいかな。
簡単に揺らいでしまった自分に笑いが込み上げた。
「み、……蜜璃さん」
「!……ぁ、あぁあああッ♡♡か、かわいっ!!!!可愛らしいッ!!!!もう私……納豆ちゃんにメロメロだわ♡♡♡」
感極まった蜜璃さんが私を抱き締める。そうなると勿論、蜜璃さんの豊満な胸に顔を埋めることになるわけで。嬉しいような悔しいような複雑な気持ちになった。いやだってこの大きさはズルいでしょう……。
蜜璃さんの胸から顔を上げ、思ったよりも至近距離にあった蜜璃さんの顔に驚きつつも、口を開く。
「それで継子の件ですが……もう少し考えさせて貰えないでしょうか。私には師範がいまして、もしも蜜璃さんの継子になるのなら先に師範と話してからが良いんです。我儘なお願いですが、よろしくお願いします」
「ええ勿論。継子の話自体いきなりだったから仕方がないわ!ゆっくり考えて、答えを出してね」
「ありがとうございます、蜜璃さん!」
「ん〜〜可愛いっ♡♡」
「あ、あはは……」
今日何度目かも分からない「可愛い」に苦笑いする。
そして蜜璃さんはもう次の任務に行かなければならないということで、かなり渋っていたが私に手を振りながら去って行った。
さて……私も移動しなくちゃね。
蜜璃さんがいなくなったからか、一人がとても静かに感じた。
「カー!藤ノ家デ休息!怪我ヲ直セー!」
「あ、怪我してたんだった」
折角忘れていた怪我の痛みが意識したことによってまた痛み出してしまった。
そんなわけで、私はしばらく藤の家という所で怪我を治していきたいと思います。