はじまりはここから
「負けたこっちがスカッとするほど気持ちええ勝負なんやもん」
勝敗が決まった。
四天王の一人に勝った。勝てた。
目の前のチリさんの笑顔と言葉がたまらなく嬉しかった。
「ありがとうございます!」
思った以上に大きな声が出てしまったけれど言わずにいられなかった。
チリさんは少し驚いた顔をしてすぐに真剣な顔になって四天王戦はまだこれからだと言う。
私は緩んだ顔を軽く叩いて気合いを入れる。
そんな私の目の前まで歩いてきたチリさんは少し屈んで顔を覗き込んできた。
「どない?チリちゃんのこと大好きになった?」
『ポケモンは好きですか?』
面接の時のチリさん。バトルの時のチリさん。
そしてバトルが終わってとびきりの笑顔を見せてくれたチリさん。
パルデアに来て、みんなに出会って強くなってここまで来た。
そして出会えたあなた。
あなたに会えたことが本当に嬉しい。
幸せな気持ちが溢れて私はまた自分の顔がふにゃりと緩むのがわかった。
「チリさん大好きです」
チリさんは少し目を逸らしてからまたこちらを見て笑ってくれた。
「ほんま素直にまっすぐ伝えるんが上手いわ自分。戦ってる間も大好きーってビシバシ伝わってきたで」
「私も伝わってきましたよ。チリさんが仲間のポケモン達のこと大好きって思っているの」
知ることが、知られることが気持ちよくて。
もっとこの時間が続けばいいのに、なんて思ってしまうくらい。
「あーほんまずるいわ」
そう言いながら彼女は定位置に戻って行く。
頑張るんやで、小さな声で言うと彼女は二人目の四天王を呼んだ。
オモダカさんは誰よりも強く輝いている人だった。
出会った時からその輝きが少し怖かった。
こんな人に勝てるのかなって思った。
でも勝たなきゃ、この人の更に向こうにネモがいる。ネモの本当の輝きを知ることができる。
負けられない。
届いて、届け。私たちの光。
オモダカさんの最後のポケモンが倒れモンスターボールに戻っていく。
「パルデアにあなたが来てくれたこと、そしてこの地を巡り愛してくれたことを本当に嬉しく思います」
大切なものを見るようなその目は優しかった。
この人もパルデアが、ポケモンが、ここに暮らす人々が大好きで私たちはバトルでそれを伝え合った。
強くなろうと頑張って良かった。
そのきっかけをくれた大事な友達に本気で戦える資格をやっと得ることができた。
チャンピオンになれた。もう手加減はいらない。ネモも私も全力でぶつかれるんだ。
「ほんまにおめでとさん、やな」
振り向くと四天王の皆が揃っていて私を祝ってくれた。
応援してくれた皆に胸を張れる結果を出せた。
嬉しくて私の顔はさっきからずっと緩みっぱなしだ。
オモダカさんにずっと待ってくれている友達のいる場所へ連れて行ってもらえる事になった。
四天王の皆さんに一人ずつお礼を言う。
ありがとうございます。あなたと戦えて良かった。
最後にチリさんの前に立つ。
「皆のことめっちゃ好きになったんちゃう?」
チリさんが私の頭を撫でながら小さな声で言った。
「もちろんです。皆さんのこと大好きになりました。ポケモンリーグに挑んで本当に良かったです。チリさんもありがとうございます」
面接の時、私の話を聞いてくれて。
「忘れんとってな」
「え?」
「トップにごっつい愛情ぶつけられて、次はネモやろ。チリちゃん負けてもたけどめっちゃ頑張って自分に伝えたんやで。大好きやって」
大好きを伝えると宣言して、教えてくださいとお願いした。
思えばそんなことをバトルの相手に直接言葉で伝えたのは初めてだった。
目の前のこの人は私の気持ちを聞いてくれて受け取ってくれた。
それは今思うと少し恥ずかしいような、でもすごく嬉しいことで。
「もっと伝えたかったし、知りたかったわー」
私ももっと。
「んーっじゃ、また会おな、チャンピオンアオイ」
「そろそろ参りましょうかアオイさん」
チリさんが私の体をくるっとオモダカさんの方へ向かせてそっと背中を押す。
私は振り返って言った。
「また、必ず!」
先を行くオモダカさんを追いかける私の背中に「またなー」と柔らかい声が返ってきた。
「またなー……」
ひらひらと手を振る自分の足元にポピーがやってきた。
「チリちゃん、おねーちゃんとなにかやくそくしたんですの?」
「んーまた会おなって言うただけやで」
「珍しいですね」
アオキも近くに寄ってきて無表情に呟く。
「何がや?」
「いつもはテストが終わると一仕事終えた顔でいたでしょう。そんなあなたがチャンピオンと約束を交わすのが珍しいと思いまして」
「久しぶりの新チャンピオンやで?一度のバトルじゃ足りへんやろ」
「あなたそんなにバトルが好きでしたか」
「あらーまだまだちょうせんしゃはきますのよー。チリちゃんはつゆはらいだからいちばんいーっぱいたたかえますわ」
「ちゃうねんな」
アオイが去った方角を見つめたままだったチリは二人にニコーっと笑って言った。
「チリちゃん、ポケモンが好きやねん」
二人はわからないという顔でこちらを見てくるが特に気にしない。
ポケモンが好きやから強くなった。
それを知りたい言うから思いっきり大好き込めてをバトルしたったら。
あなたが大好きです、そう返してきた少女。
そんなん嬉しくなってまうし、一度のバトルじゃ全然足りひん。
もっと教えてな、うちももっと教えたるから。
だから、また会いたいなって思ったんや。
勝敗が決まった。
四天王の一人に勝った。勝てた。
目の前のチリさんの笑顔と言葉がたまらなく嬉しかった。
「ありがとうございます!」
思った以上に大きな声が出てしまったけれど言わずにいられなかった。
チリさんは少し驚いた顔をしてすぐに真剣な顔になって四天王戦はまだこれからだと言う。
私は緩んだ顔を軽く叩いて気合いを入れる。
そんな私の目の前まで歩いてきたチリさんは少し屈んで顔を覗き込んできた。
「どない?チリちゃんのこと大好きになった?」
『ポケモンは好きですか?』
面接の時のチリさん。バトルの時のチリさん。
そしてバトルが終わってとびきりの笑顔を見せてくれたチリさん。
パルデアに来て、みんなに出会って強くなってここまで来た。
そして出会えたあなた。
あなたに会えたことが本当に嬉しい。
幸せな気持ちが溢れて私はまた自分の顔がふにゃりと緩むのがわかった。
「チリさん大好きです」
チリさんは少し目を逸らしてからまたこちらを見て笑ってくれた。
「ほんま素直にまっすぐ伝えるんが上手いわ自分。戦ってる間も大好きーってビシバシ伝わってきたで」
「私も伝わってきましたよ。チリさんが仲間のポケモン達のこと大好きって思っているの」
知ることが、知られることが気持ちよくて。
もっとこの時間が続けばいいのに、なんて思ってしまうくらい。
「あーほんまずるいわ」
そう言いながら彼女は定位置に戻って行く。
頑張るんやで、小さな声で言うと彼女は二人目の四天王を呼んだ。
オモダカさんは誰よりも強く輝いている人だった。
出会った時からその輝きが少し怖かった。
こんな人に勝てるのかなって思った。
でも勝たなきゃ、この人の更に向こうにネモがいる。ネモの本当の輝きを知ることができる。
負けられない。
届いて、届け。私たちの光。
オモダカさんの最後のポケモンが倒れモンスターボールに戻っていく。
「パルデアにあなたが来てくれたこと、そしてこの地を巡り愛してくれたことを本当に嬉しく思います」
大切なものを見るようなその目は優しかった。
この人もパルデアが、ポケモンが、ここに暮らす人々が大好きで私たちはバトルでそれを伝え合った。
強くなろうと頑張って良かった。
そのきっかけをくれた大事な友達に本気で戦える資格をやっと得ることができた。
チャンピオンになれた。もう手加減はいらない。ネモも私も全力でぶつかれるんだ。
「ほんまにおめでとさん、やな」
振り向くと四天王の皆が揃っていて私を祝ってくれた。
応援してくれた皆に胸を張れる結果を出せた。
嬉しくて私の顔はさっきからずっと緩みっぱなしだ。
オモダカさんにずっと待ってくれている友達のいる場所へ連れて行ってもらえる事になった。
四天王の皆さんに一人ずつお礼を言う。
ありがとうございます。あなたと戦えて良かった。
最後にチリさんの前に立つ。
「皆のことめっちゃ好きになったんちゃう?」
チリさんが私の頭を撫でながら小さな声で言った。
「もちろんです。皆さんのこと大好きになりました。ポケモンリーグに挑んで本当に良かったです。チリさんもありがとうございます」
面接の時、私の話を聞いてくれて。
「忘れんとってな」
「え?」
「トップにごっつい愛情ぶつけられて、次はネモやろ。チリちゃん負けてもたけどめっちゃ頑張って自分に伝えたんやで。大好きやって」
大好きを伝えると宣言して、教えてくださいとお願いした。
思えばそんなことをバトルの相手に直接言葉で伝えたのは初めてだった。
目の前のこの人は私の気持ちを聞いてくれて受け取ってくれた。
それは今思うと少し恥ずかしいような、でもすごく嬉しいことで。
「もっと伝えたかったし、知りたかったわー」
私ももっと。
「んーっじゃ、また会おな、チャンピオンアオイ」
「そろそろ参りましょうかアオイさん」
チリさんが私の体をくるっとオモダカさんの方へ向かせてそっと背中を押す。
私は振り返って言った。
「また、必ず!」
先を行くオモダカさんを追いかける私の背中に「またなー」と柔らかい声が返ってきた。
「またなー……」
ひらひらと手を振る自分の足元にポピーがやってきた。
「チリちゃん、おねーちゃんとなにかやくそくしたんですの?」
「んーまた会おなって言うただけやで」
「珍しいですね」
アオキも近くに寄ってきて無表情に呟く。
「何がや?」
「いつもはテストが終わると一仕事終えた顔でいたでしょう。そんなあなたがチャンピオンと約束を交わすのが珍しいと思いまして」
「久しぶりの新チャンピオンやで?一度のバトルじゃ足りへんやろ」
「あなたそんなにバトルが好きでしたか」
「あらーまだまだちょうせんしゃはきますのよー。チリちゃんはつゆはらいだからいちばんいーっぱいたたかえますわ」
「ちゃうねんな」
アオイが去った方角を見つめたままだったチリは二人にニコーっと笑って言った。
「チリちゃん、ポケモンが好きやねん」
二人はわからないという顔でこちらを見てくるが特に気にしない。
ポケモンが好きやから強くなった。
それを知りたい言うから思いっきり大好き込めてをバトルしたったら。
あなたが大好きです、そう返してきた少女。
そんなん嬉しくなってまうし、一度のバトルじゃ全然足りひん。
もっと教えてな、うちももっと教えたるから。
だから、また会いたいなって思ったんや。