目覚めるは棺の中
図書館、食堂、教室
ここは…学校?
僕は黒と紫の豪華な衣装を見に纏っていた。
金色の刺繍も施されている。
着た覚えはない。誰かに着せられたのだろうか?
誰もいない井戸のある庭を覗き込むと、ゆらゆらと水面に浮かぶ不気味な月と僕の顔が映った。
それにしても誰もいないみたいでよかった。
あまりにも広いところだから警備のような人がいることだろう。あまりうろうろできないがなんとか門を探して抜け出さないと。
「ねー、とうとう俺達も2年生かぁ」
「だな。どんな後輩ができるか楽しみだ」
人の声が遠くから聞こえた僕は、井戸の陰に隠れる。
「ん?さっきそこに何かいなかった?」
「え?何にも見えなかったが。それより、新入生歓迎会の準備を俺たちがしてやらないと──」「あ、そうだね!お互い、元の寮に戻らなきゃじゃん」
明らかに僕が一瞬でも見えたであろう人の発言に腰を抜かしそうになったがなんとか耐えて聞き耳を立てた。
新入生、ということはここは確実に学校だ。
歓迎会とか寮とか話してる辺り、寮生活の学校で、今日が入学式?
怪しい団体に売り飛ばされたと思ってた妄想は吹っ飛び、安心する。
でも、何故こんなところに僕が……
怪しいところではないと確信して僕は堂々と歩き出した。
フードを深く被って、先程声のしたところへ向かった。
ガヤガヤ…ザワザワ…
人のたくさんいる方へ足を運ぶと、棺の浮かんだあの部屋にたどり着いた。
僕が抜け出したあの時と違い、僕と同じ服を着た人が沢山いた。
ズラリと横一列に並んでる人がいれば、部屋の隅の椅子に座っている大人(多分教師)もいた。
僕は目立たないように横一列に並んでる緊張気味の新入生の隣に紛れ込んだ。
フードを深く被ってる人は少ないが、新入生は特に気にしていないみたいだ。
数分後、全ての生徒が揃ったみたいで人の出入りが無くなった。
「えー、おほん。これから、入学式を始めます。時間通りに進められそうで大変よろしい!」
あれは──ペストマスク?
大きな鍵のような杖を持った男がこの場を仕切る。
なんとも胡散臭い言葉を並べた祝いの話をすれば、部屋の隅の空いた椅子に腰掛けた。
魔法という言葉が耳に残り、嫌な感じが体を這う。魔法って、なんだ。そんなのありはしない。
そう思った瞬間、大きな鏡に仮面の男の顔が浮かび上がり、その男は喋った。
一瞬、魔法というのも信じそうになったが直ぐに最先端の技術に感動する。
科学はとうとうここまで来たみたいだ。プロジェクションマッピングというものだろう。
そして、僕の嫌な考えがまたも浮かび上がる。
学校の体をしたカルト教団───
新入生というのも、新しく会員になった人のことを言うのか!
そこまで納得して、僕は列からはみ出し、偉そうに話していたマスクの男にお手洗いだと告げてこの場からなんともないように出て行った。
そこからはもう、また全速力だ。
走って、転んで、走って、走って、走って
着いたのは、大きな門の前。
『ゼェ……ハァ……』
門に手をかけて呼吸を整えながら、揺らす。
前後に引っ張ってみるものの、びくともしない
鍵をかけられたみたいだ。
「そこの貴方。トイレに行くのではなかったのですか?」
『…………』
大人の力に敵わないことは、この僕がよく分かってる。マスクをした男は不思議そうな顔で僕を見た。
敵わない争いって分かってるのなら、下手に反抗して恥晒すより、惨めったらしくやられていようか。
僕はその人に向かい合ってフードを外した。
『──Buona Sera』
ここは…学校?
僕は黒と紫の豪華な衣装を見に纏っていた。
金色の刺繍も施されている。
着た覚えはない。誰かに着せられたのだろうか?
誰もいない井戸のある庭を覗き込むと、ゆらゆらと水面に浮かぶ不気味な月と僕の顔が映った。
それにしても誰もいないみたいでよかった。
あまりにも広いところだから警備のような人がいることだろう。あまりうろうろできないがなんとか門を探して抜け出さないと。
「ねー、とうとう俺達も2年生かぁ」
「だな。どんな後輩ができるか楽しみだ」
人の声が遠くから聞こえた僕は、井戸の陰に隠れる。
「ん?さっきそこに何かいなかった?」
「え?何にも見えなかったが。それより、新入生歓迎会の準備を俺たちがしてやらないと──」「あ、そうだね!お互い、元の寮に戻らなきゃじゃん」
明らかに僕が一瞬でも見えたであろう人の発言に腰を抜かしそうになったがなんとか耐えて聞き耳を立てた。
新入生、ということはここは確実に学校だ。
歓迎会とか寮とか話してる辺り、寮生活の学校で、今日が入学式?
怪しい団体に売り飛ばされたと思ってた妄想は吹っ飛び、安心する。
でも、何故こんなところに僕が……
怪しいところではないと確信して僕は堂々と歩き出した。
フードを深く被って、先程声のしたところへ向かった。
ガヤガヤ…ザワザワ…
人のたくさんいる方へ足を運ぶと、棺の浮かんだあの部屋にたどり着いた。
僕が抜け出したあの時と違い、僕と同じ服を着た人が沢山いた。
ズラリと横一列に並んでる人がいれば、部屋の隅の椅子に座っている大人(多分教師)もいた。
僕は目立たないように横一列に並んでる緊張気味の新入生の隣に紛れ込んだ。
フードを深く被ってる人は少ないが、新入生は特に気にしていないみたいだ。
数分後、全ての生徒が揃ったみたいで人の出入りが無くなった。
「えー、おほん。これから、入学式を始めます。時間通りに進められそうで大変よろしい!」
あれは──ペストマスク?
大きな鍵のような杖を持った男がこの場を仕切る。
なんとも胡散臭い言葉を並べた祝いの話をすれば、部屋の隅の空いた椅子に腰掛けた。
魔法という言葉が耳に残り、嫌な感じが体を這う。魔法って、なんだ。そんなのありはしない。
そう思った瞬間、大きな鏡に仮面の男の顔が浮かび上がり、その男は喋った。
一瞬、魔法というのも信じそうになったが直ぐに最先端の技術に感動する。
科学はとうとうここまで来たみたいだ。プロジェクションマッピングというものだろう。
そして、僕の嫌な考えがまたも浮かび上がる。
学校の体をしたカルト教団───
新入生というのも、新しく会員になった人のことを言うのか!
そこまで納得して、僕は列からはみ出し、偉そうに話していたマスクの男にお手洗いだと告げてこの場からなんともないように出て行った。
そこからはもう、また全速力だ。
走って、転んで、走って、走って、走って
着いたのは、大きな門の前。
『ゼェ……ハァ……』
門に手をかけて呼吸を整えながら、揺らす。
前後に引っ張ってみるものの、びくともしない
鍵をかけられたみたいだ。
「そこの貴方。トイレに行くのではなかったのですか?」
『…………』
大人の力に敵わないことは、この僕がよく分かってる。マスクをした男は不思議そうな顔で僕を見た。
敵わない争いって分かってるのなら、下手に反抗して恥晒すより、惨めったらしくやられていようか。
僕はその人に向かい合ってフードを外した。
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