未来への約束
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その後、指輪の購入者は赤の軍の兵士だと判明した。
さっそく二人が兵舎に戻ると、廊下でヨナに呼び止められた。
「待ちなよ、君たち」
「ああ、ヨナさん。ちょうど良いところに」
レッドカーペットの上をヨナが淡いライトブルーの髪をなびかせ優雅に歩いてくる。その後ろをヨナの親衛隊の一人と思われる若い兵士が追従してきた。彼の顔は青ざめていた。
「ランスロット様から聞いたよ。君たちが彼の婚約指輪を拾ってくれたんだってね」
ヨナが促すと、若い兵士はエドガーに向かってどこか縋るような目をしてから恭しく頭を下げた。
「ということは、貴方が指輪を落としたハンス=ベルメールですね」
「はい、エドガー様」
「貴方が失くしたのは、この指輪で間違いありませんか?」
エドガーが箱を開いて見せると、ハンスと呼ばれたヨナの部下は、感極まったように瞳をうるませた。
「はい、そうです。この指輪です。もう見つからないと思っていました。本当によかった…! エドガー様、アリス様、見つけていただきありがとうございます」
「彼の上司として、赤のクイーンの俺からも君たちに感謝の意を表すよ。ハンスは今夜のデートで、幼馴染にプロポーズする予定だったんだ。プロポーズの練習中にうっかり指輪を庭園に落としてしまってね。一晩中探していたという訳さ」
「それは不運でしたね。なるほど、そのせいで目の下の隈が凄いんですね。では、貴方の大事な指輪をお返しいたします」
エドガーから箱を受け取ると、ハンスは宝物のように胸に抱いた。
いくら裕福層の出身であっても、この指輪は彼が入隊後に必死に稼いだ給料で購入したエンゲージリングに変わりない。
この高価な指輪に、彼の男としての一生の決意が込められている。心に決めたたった一人の女性を伴侶として迎えるために、一世一代の舞台にこれから向かう。
そう思うと、アリスの胸にも迫るものがあった。
「ハンスさん、プロポーズ頑張ってくださいね」
「アリス様、ありがとうございます」
ハンスは礼儀正しく何度もお辞儀をしてから、立ち去っていった。
数日後、エドガーとアリスは再び、アフタヌーンティーの時間を楽しんでいた。
「どうやら、ヨナさんいわく、プロポーズは成功したようですよ」
「ハンスさん、よかったね」
「ええ、クリーク一家のお手柄です」
エドガーは、芝生の上でご褒美の野菜を食べているクリーク一家を眺め、和やかに微笑んだ。
その横顔をアリスは盗み見た。
サラサラとエドガーの髪が風に揺れている。クリーク一家を見つめる瞳は、宝石のように凛然と輝いている。
(こうやって優しい顔をしてるエドガーも大好きだな…)
すると、ゆっくりとエドガーがこちらを向いた。目が合うだけで、鼓動がトクンと脈打つ。
「そんな羨ましそうな顔しなくても、頑張った貴女にもご褒美をあげますよ」
「なっ……そんな顔してないよ! それに私は何もしてないし」
「いいえ、貴女があのとき、指輪の持ち主を探そうと言わなかったら、ハンスはプロポーズができなかった」
「あ…」
「ですから、貴女のあの正義ある行動を讃えて、俺からプレゼントをさせてください」
真摯な表情のエドガーに手を引かれて、アリスは彼の部屋に連れて行かれた。
ソファに座らされると、目の前でエドガーが黄色のリボンでラッピングされた小箱を差し出してきた。
本当にプレゼントが用意されているなんて思わなかったアリスは、エドガーを食い入るように見つめた。
「これを受け取ってもらえますか?」
なかなか手を出してくれないアリスに焦れたのか、エドガーは余裕なさげに訊いてくる。
その頬は、緊張しているのかいつもより淡く色づいていた。
自分だけにしか見せない、エドガーの飾らない素顔。
(どうしよう、こんなエドガーが見られるなんて……ジャンケンで勝つより嬉しいよ)
また恋に落ちる。
エドガーに心を芯から射抜かれる。
「エドガー、ありがとう。開けてもいい?」
「どうぞ」
ラッピングを解いて、小さな箱を開ける。
中に収まっていたのは、ハートをモチーフにしたピアスだった。
「わあ…可愛い!」
パールと黄色い花も散りばめられている。キュートでオシャレなデザインで、アリスはすぐに気に入った。
「私ね、こういうのが欲しかったの! デートでつけられるような。どうしてわかったの?」
「答えは単純です。貴女の喜ぶ顔が見たくて、俺なりに推測しました。こんなに誰かのことで悩むなんて初めての経験です。貴女に俺は一生解けない恋の魔法にかけられてしまいましたから」
「……そんなこと言ったら私だってそうだよ」
エドガーに喜んで欲しいと常に思っている。エドガーとの未来に幸せが降り注いで欲しい、神様がいるのなら、どうか彼を見守ってほしいと、心からそう思う。
不意に、アリスはパールの横に控えめに配置された小さな煌めく黄色の宝石の存在に気づいた。
「あれ? この黄色の宝石って…」
「気づきましたか? それはイエローダイアです。すごく小さいですけど、どうしても入れたくて」
「それじゃ、このピアスはエドガーがわざわざ作ってくれたの?」
「ええ、このデザインなら、つけてもらえますか?」
「うん、もちろん。嬉しい……!」
感動で鼻の奥がツンとした。
エドガーからのプレゼントはどうしてこんなにも嬉しくて幸せな気持ちになるのだろう。
ピアスを見つめていると、視界が涙でぼやけてくる。
「さっそく、つけてみてください」
「うん」
鏡の前で、エドガーが器用にピアスをつけてくれる。
「お似合いですよ……綺麗だ、凄く」
揺れるハート型のピアスとエドガーの指先が耳たぶや首筋に触れてくすぐったい。
鏡の中で、笑顔を向けてくるエドガーに、アリスも微笑み返した。
「それにしても、さっきはさすがに不安になりました」
「え?」
「貴女がプレゼントをなかなか受け取ってくれなかったので。こういうのは心臓に悪いですね……」
「エドガー、やっぱり緊張してたの?」
「俺も男ですからね。ですが、良い予行練習になりました」
「え?」
そのまま、後ろからエドガーに抱きしめられる。
温もりに包まれて目眩がする。
エドガーは王子様のようにそっとアリスの左手を持ち上げると、
「ちゃんとした物はいずれ……ここに」
薬指の先に、誓いのキスを落とした…
おわり
さっそく二人が兵舎に戻ると、廊下でヨナに呼び止められた。
「待ちなよ、君たち」
「ああ、ヨナさん。ちょうど良いところに」
レッドカーペットの上をヨナが淡いライトブルーの髪をなびかせ優雅に歩いてくる。その後ろをヨナの親衛隊の一人と思われる若い兵士が追従してきた。彼の顔は青ざめていた。
「ランスロット様から聞いたよ。君たちが彼の婚約指輪を拾ってくれたんだってね」
ヨナが促すと、若い兵士はエドガーに向かってどこか縋るような目をしてから恭しく頭を下げた。
「ということは、貴方が指輪を落としたハンス=ベルメールですね」
「はい、エドガー様」
「貴方が失くしたのは、この指輪で間違いありませんか?」
エドガーが箱を開いて見せると、ハンスと呼ばれたヨナの部下は、感極まったように瞳をうるませた。
「はい、そうです。この指輪です。もう見つからないと思っていました。本当によかった…! エドガー様、アリス様、見つけていただきありがとうございます」
「彼の上司として、赤のクイーンの俺からも君たちに感謝の意を表すよ。ハンスは今夜のデートで、幼馴染にプロポーズする予定だったんだ。プロポーズの練習中にうっかり指輪を庭園に落としてしまってね。一晩中探していたという訳さ」
「それは不運でしたね。なるほど、そのせいで目の下の隈が凄いんですね。では、貴方の大事な指輪をお返しいたします」
エドガーから箱を受け取ると、ハンスは宝物のように胸に抱いた。
いくら裕福層の出身であっても、この指輪は彼が入隊後に必死に稼いだ給料で購入したエンゲージリングに変わりない。
この高価な指輪に、彼の男としての一生の決意が込められている。心に決めたたった一人の女性を伴侶として迎えるために、一世一代の舞台にこれから向かう。
そう思うと、アリスの胸にも迫るものがあった。
「ハンスさん、プロポーズ頑張ってくださいね」
「アリス様、ありがとうございます」
ハンスは礼儀正しく何度もお辞儀をしてから、立ち去っていった。
数日後、エドガーとアリスは再び、アフタヌーンティーの時間を楽しんでいた。
「どうやら、ヨナさんいわく、プロポーズは成功したようですよ」
「ハンスさん、よかったね」
「ええ、クリーク一家のお手柄です」
エドガーは、芝生の上でご褒美の野菜を食べているクリーク一家を眺め、和やかに微笑んだ。
その横顔をアリスは盗み見た。
サラサラとエドガーの髪が風に揺れている。クリーク一家を見つめる瞳は、宝石のように凛然と輝いている。
(こうやって優しい顔をしてるエドガーも大好きだな…)
すると、ゆっくりとエドガーがこちらを向いた。目が合うだけで、鼓動がトクンと脈打つ。
「そんな羨ましそうな顔しなくても、頑張った貴女にもご褒美をあげますよ」
「なっ……そんな顔してないよ! それに私は何もしてないし」
「いいえ、貴女があのとき、指輪の持ち主を探そうと言わなかったら、ハンスはプロポーズができなかった」
「あ…」
「ですから、貴女のあの正義ある行動を讃えて、俺からプレゼントをさせてください」
真摯な表情のエドガーに手を引かれて、アリスは彼の部屋に連れて行かれた。
ソファに座らされると、目の前でエドガーが黄色のリボンでラッピングされた小箱を差し出してきた。
本当にプレゼントが用意されているなんて思わなかったアリスは、エドガーを食い入るように見つめた。
「これを受け取ってもらえますか?」
なかなか手を出してくれないアリスに焦れたのか、エドガーは余裕なさげに訊いてくる。
その頬は、緊張しているのかいつもより淡く色づいていた。
自分だけにしか見せない、エドガーの飾らない素顔。
(どうしよう、こんなエドガーが見られるなんて……ジャンケンで勝つより嬉しいよ)
また恋に落ちる。
エドガーに心を芯から射抜かれる。
「エドガー、ありがとう。開けてもいい?」
「どうぞ」
ラッピングを解いて、小さな箱を開ける。
中に収まっていたのは、ハートをモチーフにしたピアスだった。
「わあ…可愛い!」
パールと黄色い花も散りばめられている。キュートでオシャレなデザインで、アリスはすぐに気に入った。
「私ね、こういうのが欲しかったの! デートでつけられるような。どうしてわかったの?」
「答えは単純です。貴女の喜ぶ顔が見たくて、俺なりに推測しました。こんなに誰かのことで悩むなんて初めての経験です。貴女に俺は一生解けない恋の魔法にかけられてしまいましたから」
「……そんなこと言ったら私だってそうだよ」
エドガーに喜んで欲しいと常に思っている。エドガーとの未来に幸せが降り注いで欲しい、神様がいるのなら、どうか彼を見守ってほしいと、心からそう思う。
不意に、アリスはパールの横に控えめに配置された小さな煌めく黄色の宝石の存在に気づいた。
「あれ? この黄色の宝石って…」
「気づきましたか? それはイエローダイアです。すごく小さいですけど、どうしても入れたくて」
「それじゃ、このピアスはエドガーがわざわざ作ってくれたの?」
「ええ、このデザインなら、つけてもらえますか?」
「うん、もちろん。嬉しい……!」
感動で鼻の奥がツンとした。
エドガーからのプレゼントはどうしてこんなにも嬉しくて幸せな気持ちになるのだろう。
ピアスを見つめていると、視界が涙でぼやけてくる。
「さっそく、つけてみてください」
「うん」
鏡の前で、エドガーが器用にピアスをつけてくれる。
「お似合いですよ……綺麗だ、凄く」
揺れるハート型のピアスとエドガーの指先が耳たぶや首筋に触れてくすぐったい。
鏡の中で、笑顔を向けてくるエドガーに、アリスも微笑み返した。
「それにしても、さっきはさすがに不安になりました」
「え?」
「貴女がプレゼントをなかなか受け取ってくれなかったので。こういうのは心臓に悪いですね……」
「エドガー、やっぱり緊張してたの?」
「俺も男ですからね。ですが、良い予行練習になりました」
「え?」
そのまま、後ろからエドガーに抱きしめられる。
温もりに包まれて目眩がする。
エドガーは王子様のようにそっとアリスの左手を持ち上げると、
「ちゃんとした物はいずれ……ここに」
薬指の先に、誓いのキスを落とした…
おわり
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