未来への約束
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アリスがクレイドルにやってきてから、セントラル地区の宝石専門店に入ったのは今日が初めてのことだった。
ラグジュアリーな落ち着いた雰囲気の店内に、ショップ店員が接客スマイルを浮かべている。
贅沢すぎるほどの宝石をあしらったジュエリーがショーケースの中で精緻な美と華やかさを競うように輝いている。
完全に場違いだと思っているアリスとは正反対に、エドガーは店員顔負けなほどの隙のない笑顔を浮かべていた。
「これはこれは、エドガー様。恋人同伴とは珍しいですね。本日はどのような物をお探しですか?」
「婚約指輪です」
エドガーが即答したとき、意味が違うとわかってかいてもアリスは赤面せずにいられなかった。
意識しているのがバレないように、取り澄ますのが精一杯だった。
エドガーは軍服の内側から小さな箱を取り出した。
蓋を開けた彼の白い手袋の上で光るのは、凝ったデザインのエンゲージリングだった。
永遠の愛を誓う証として贈られる指輪。
大粒のダイアモンドの固く気高い輝きが遠目でも眩しかった。
プロポーズするときに手にするはずのエンゲージリングをなぜかエドガーはいま持っている。
あまりにもスマートにリングを店長に見せる姿はどこからどう見ても白馬の王子様で、惚れ惚れしてしまう。
(まさか、婚約指輪をくわえていたなんて。びっくりだな)
とんでもない落し物を拾ってきたクリーク一家。
そのとき、エドガーは
「俺が一旦、預かります」と言ったが、アリスはすぐにでも持ち主を探したほうが良いと思った。
「エドガー、持ち主を探そう! 絶対どこかで困ってるはずだよ」
「……そうですね、貴女がそう言うのでしたら」
さっそくエドガーとアリスは、ランスロットに許可を得て、持ち主を探すために指輪を購入したとおぼしき宝石店にやってきたのだった。
ショーケースの中に並ぶ様々なデザインのエンゲージリング。
この指輪をいつかエドガーから受け取れる日はくるのだろうか。
その相手は自分なのだろうか。
エドガーに思いを寄せる女性が過去にも多くいたことを聞いているし、今だって充分すぎるほどモテているのは知っている。
家柄、容姿、才能、すべてを揃えたエドガーからのプロポ―ズ。想像するだけで胸の鼓動が速くなり、顔が熱くなる。
エドガーはいったいどんなエンゲージリングを贈るのだろう。
ふと、ショーケースの中でアリスの目を惹いた宝石があった。
イエローダイアだった。太陽の光りのような優しく壮麗な輝きに目も心も灼かれる。
(この色と輝き、なんだかエドガーみたい)
なんとなくそんなことを思っていると、隣から会話が聞こえてきた。
「それで、先ほどもお話した通り、この指輪の購入者を探しています。店長、ご協力願えませんか?」
「かしこまりました。こちらは当店のオーダーメイド商品ですので、すぐに確認いたします。少々お時間をいただけますか?」
「ええ、構いません」
店長に指輪を預けると、エドガーがこちらを向いた。目が合った瞬間、いろいろ妄想していたことを見抜かれたくなくて、アリスはぱっと目をそらした。
(ちょっとわざとらしかったかな)
「何か、見ていたのですか?」
「ううん、なんでもないよ」
「指輪と持ち主の照合が終わるまで、店内を見て待ちましょう」
「うん」
(あまりにも高級すぎて見ているのも正直いたたまれないんだけど……)
どのジュエリーも手の届きそうな値段ではない。
(普段使えそうなアクセサリーはさすがにこういうお店では置いてないよね)
どこか遠慮した態度のアリスに気づいたのか、エドガーはあるピアスをそっと手に取った。
「そうですねー。これなんか貴女に似合いそうです」
不意に、耳元を触れられてドキっとする。
「え、なに?」
「アリス、目の前の鏡を見てください」
言われるまま視線を移すと、鏡の中でエドガーがピアスを合わせてくれていた。
耳元で煌めくのは、さっき気になっていたイエローダイアの宝石が埋め込まれたシンプルなデザインのピアスだった。
「気品があって、優しい輝きが貴女にとてもよくお似合いですよ」
今度はエドガーのうっとりするような甘い囁きと吐息が首筋をかすめていく。
「エドガー……っ」
(距離が近い!)
「そんなに照れなくても、本当に貴女は可愛い人だ」
「だって、店長さんが…」
「今は誰も見ていませんよ。ですから、こんなことをしてもバレません」
エドガーのエメラルドの瞳にまっすぐ見つめられ、気づけは顎を掬われて、あと少しでキスされそうになる。
「そ、そういう問題じゃなくて!」
迫ってくるエドガーの胸板を押し返し、アリスは火照った頬を両手で覆った。
(もう、エドガーったら。本当はすごく嬉しいけど…)
エドガーのからかいに、いちいちときめいて動揺してしまう自分が悔しい。
「もしかして、このピアスは気に入りませんでしたか?」
真顔でしょんぼりしたように見えなくもないエドガーに、アリスは慌てて首を振った。
「違うよ。そのピアスはすごく素敵だなって思う。でも、こんな高そうなものはつけられないから。それに今は指輪の持ち主を探してるところだし」
突然、背筋をぴんと伸ばしてアリスはショーケースから離れた。
「アリス…?」
きょとんとするエドガーに、これ以上、乙女心を見透かされたくなかった。
ラグジュアリーな落ち着いた雰囲気の店内に、ショップ店員が接客スマイルを浮かべている。
贅沢すぎるほどの宝石をあしらったジュエリーがショーケースの中で精緻な美と華やかさを競うように輝いている。
完全に場違いだと思っているアリスとは正反対に、エドガーは店員顔負けなほどの隙のない笑顔を浮かべていた。
「これはこれは、エドガー様。恋人同伴とは珍しいですね。本日はどのような物をお探しですか?」
「婚約指輪です」
エドガーが即答したとき、意味が違うとわかってかいてもアリスは赤面せずにいられなかった。
意識しているのがバレないように、取り澄ますのが精一杯だった。
エドガーは軍服の内側から小さな箱を取り出した。
蓋を開けた彼の白い手袋の上で光るのは、凝ったデザインのエンゲージリングだった。
永遠の愛を誓う証として贈られる指輪。
大粒のダイアモンドの固く気高い輝きが遠目でも眩しかった。
プロポーズするときに手にするはずのエンゲージリングをなぜかエドガーはいま持っている。
あまりにもスマートにリングを店長に見せる姿はどこからどう見ても白馬の王子様で、惚れ惚れしてしまう。
(まさか、婚約指輪をくわえていたなんて。びっくりだな)
とんでもない落し物を拾ってきたクリーク一家。
そのとき、エドガーは
「俺が一旦、預かります」と言ったが、アリスはすぐにでも持ち主を探したほうが良いと思った。
「エドガー、持ち主を探そう! 絶対どこかで困ってるはずだよ」
「……そうですね、貴女がそう言うのでしたら」
さっそくエドガーとアリスは、ランスロットに許可を得て、持ち主を探すために指輪を購入したとおぼしき宝石店にやってきたのだった。
ショーケースの中に並ぶ様々なデザインのエンゲージリング。
この指輪をいつかエドガーから受け取れる日はくるのだろうか。
その相手は自分なのだろうか。
エドガーに思いを寄せる女性が過去にも多くいたことを聞いているし、今だって充分すぎるほどモテているのは知っている。
家柄、容姿、才能、すべてを揃えたエドガーからのプロポ―ズ。想像するだけで胸の鼓動が速くなり、顔が熱くなる。
エドガーはいったいどんなエンゲージリングを贈るのだろう。
ふと、ショーケースの中でアリスの目を惹いた宝石があった。
イエローダイアだった。太陽の光りのような優しく壮麗な輝きに目も心も灼かれる。
(この色と輝き、なんだかエドガーみたい)
なんとなくそんなことを思っていると、隣から会話が聞こえてきた。
「それで、先ほどもお話した通り、この指輪の購入者を探しています。店長、ご協力願えませんか?」
「かしこまりました。こちらは当店のオーダーメイド商品ですので、すぐに確認いたします。少々お時間をいただけますか?」
「ええ、構いません」
店長に指輪を預けると、エドガーがこちらを向いた。目が合った瞬間、いろいろ妄想していたことを見抜かれたくなくて、アリスはぱっと目をそらした。
(ちょっとわざとらしかったかな)
「何か、見ていたのですか?」
「ううん、なんでもないよ」
「指輪と持ち主の照合が終わるまで、店内を見て待ちましょう」
「うん」
(あまりにも高級すぎて見ているのも正直いたたまれないんだけど……)
どのジュエリーも手の届きそうな値段ではない。
(普段使えそうなアクセサリーはさすがにこういうお店では置いてないよね)
どこか遠慮した態度のアリスに気づいたのか、エドガーはあるピアスをそっと手に取った。
「そうですねー。これなんか貴女に似合いそうです」
不意に、耳元を触れられてドキっとする。
「え、なに?」
「アリス、目の前の鏡を見てください」
言われるまま視線を移すと、鏡の中でエドガーがピアスを合わせてくれていた。
耳元で煌めくのは、さっき気になっていたイエローダイアの宝石が埋め込まれたシンプルなデザインのピアスだった。
「気品があって、優しい輝きが貴女にとてもよくお似合いですよ」
今度はエドガーのうっとりするような甘い囁きと吐息が首筋をかすめていく。
「エドガー……っ」
(距離が近い!)
「そんなに照れなくても、本当に貴女は可愛い人だ」
「だって、店長さんが…」
「今は誰も見ていませんよ。ですから、こんなことをしてもバレません」
エドガーのエメラルドの瞳にまっすぐ見つめられ、気づけは顎を掬われて、あと少しでキスされそうになる。
「そ、そういう問題じゃなくて!」
迫ってくるエドガーの胸板を押し返し、アリスは火照った頬を両手で覆った。
(もう、エドガーったら。本当はすごく嬉しいけど…)
エドガーのからかいに、いちいちときめいて動揺してしまう自分が悔しい。
「もしかして、このピアスは気に入りませんでしたか?」
真顔でしょんぼりしたように見えなくもないエドガーに、アリスは慌てて首を振った。
「違うよ。そのピアスはすごく素敵だなって思う。でも、こんな高そうなものはつけられないから。それに今は指輪の持ち主を探してるところだし」
突然、背筋をぴんと伸ばしてアリスはショーケースから離れた。
「アリス…?」
きょとんとするエドガーに、これ以上、乙女心を見透かされたくなかった。