未来への約束
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ある日のアフタヌーンティータイム。
中庭では赤のエースことゼロが隊を率いて剣術の訓練中だった。
身の引き締まる訓練の空気とは裏腹に、中庭の木陰で隠れるように座っているのは、アリスとエドガーだった。
「エドガー、訓練はいいの? ゼロはまだやってるみたいだけど」
「ええ、俺の隊は休憩時間にしました。ゼロの隊とは関係ありません。よそはよそ、うちはうちです」
「それならよかった」
素直にアリスはエドガーの言葉を信じたが、実際は恋人との束の間の癒しタイムをもぎ取るために、『優しき悪魔の教官エドガー』となってスパルタ訓練で終わらせたのだ。
が、そんなことはアリスに知らせる必要もない。
訓練場から苛立ったゼロの視線が突き刺さるがエドガーは華麗に無視した。
二人は紙袋の中を交互に覗き込み、クスクスと嬉しそうに微笑みを交わす。
中身はもちろん、身体に悪そうなジャンクなお菓子だ。
赤のクイーンが見たら
「エドガー、君はまたこんな俗悪な食べ物を口にしているの? 気が知れないよ」
と、眉をしかめるに違いないが、いまここに自分達を咎める者は誰もいない。
悪戯が成功した子供のようにエドガーは得意げに袋からレインボーカラーのチョコソースと七色の摩訶不思議なトッピングがかかったドーナツを取り出した。
「それではアリス、どちらが大きい方を食べるか、恒例のジャンケン大会をしましょうか」
「うん、いいよ。今日こそ絶対にエドガーに勝ってみせるから」
「その意気です。そろそろこの辺で挽回してみせてください。毎回俺が勝つのはさすがに忍びないですから。それに今日のおやつは貴女が好きそうな味ですよ」
ふっくらとして見るからに甘そうなドーナツをエドガーが半分に割り、大きい方を見せつけるようにひらひらとさせる。
ちょうど小腹がすいて甘いものが欲しかったアリスは、チョコレートの香りにつられて目を輝かせた。
本気でジャンケンに勝とうと、彼女が手をグーの形にして意気込むのをエドガーは微笑ましい顔で見つめていた。
「よーし、エドガー、いくよ。ジャンケン……ポン!」
「おっとっと、またまた俺の勝ちですね」
「嘘、また負けた…! なんで勝てないの? これでエドガーに十連敗…もしかしてエスパーなの?」
「そうだと言ったらどうします?」
「えっ…私の心が読めるの?」
ミステリアスに揺れるエドガーの瞳に、心を丸裸にされている気がして、アリスは恥じらうように我が身を搔き抱いた。
信じそうになっているアリスが可愛くてエドガーはくすっと笑いをこぼした。
「ふふ、冗談ですよ。貴女の心だけは、俺ですら計り知れない。だから、気に入っているんです。一生見ていて飽きない」
実に、エドガーらしい褒め言葉だった。嬉しいが、ジャンケンにはなぜ勝てないのだろう。
アリスは面白くなくて頬を膨らませた。
「そんな可愛い顔されると、俺に勝つための必勝法を教えてあげたくなりますね。知りたいですか?」
「うん、知りたい」
「本当は内緒にしたかったんですけど、そうですねー。今から俺の言うことを聞いてくれたら教えてあげてもいいですよ?」
「…っ、言うことって?」
吐息が耳に触れて、甘く胸を高鳴らせながら尋ねると、エドガーは大きい方のドーナツをアリスの顔の前に掲げた。
「それでは、あーんしてください」
「え?」
「貴女にこのドーナツを食べさせてあげたいんです、俺の手ずから」
まるで餌付けしたいみたいな言い草だった。
「いいの? 私はジャンケンに負けたのに…」
けれど、アリスはもう食べたくて口元が自然と緩んでいた。それを見越して、エドガーがドーナツを近づけてくる。
(恥ずかしいけど、食欲には勝てない)
好奇心剥き出しのエドガーにじっと見つめられながらも、パクっとかじる。
「あ、美味しい! エドガーも食べてみ…――」
ふいに、唇にペロリと何かが触れた。
アリスはそっと顔を離したエドガーを見上げた。
「本当だ。とても美味しいです。甘くて柔らかくて……俺好みの感触」
妖艶に微笑んだエドガーを見て、アリスは我に返った。
唇についたチョコソースを舐め取られたのだ。
「もう、エドガーっ…」
かあっと頬に熱がのぼる。
「もっと欲しがってもいいですか?」
「もうダメ!」
アリスの恥ずかしがっている顔をエドガーは見たかった。作戦は成功。
くすくすとエドガーが満足げに笑っていると、ふと視界の端を何かが動いた気がした。
「おや?」
その声にアリスも気づいたのか、視線を足元に下げる。
「エドガー、見て。クリーク一家が歩いてきたよ」
「ええ。おやつを貰いにきたのかと思ったのですが、なんだか動きが妙にソワソワしていますね。何か可笑しな物でも食べたのでしょうか」
飼い主に似てと、自分で付け足したエドガーにアリスは
「ぷぷっ」と笑った。
そういうお茶目なところがエドガーは本当に可愛いと思う。
「クリーク一家の皆さん、お揃いでどうしたのですか? ひとまず、こちらへおいでなさい」
エドガーが声をかけると、親子のカモたちは
「クワッ」と鳴きながらトテトテとこちらにやってきた。
「ん、何かくわえているようですね」
「え?」
アリスも屈んで、父親であるMr.クリークの口ばしを凝視した。
口ばしから何かはみ出している。それは、太陽の光を反射してキラリと光った。
「金属か何かでしょうか」
エドガーが訝しげに手をかざすと、Mr.クリークは何かを吐き出した。
コロンと転がった小さな小さな金属の塊。
それが何かわかった瞬間、二人は大きく目を見開いた。
中庭では赤のエースことゼロが隊を率いて剣術の訓練中だった。
身の引き締まる訓練の空気とは裏腹に、中庭の木陰で隠れるように座っているのは、アリスとエドガーだった。
「エドガー、訓練はいいの? ゼロはまだやってるみたいだけど」
「ええ、俺の隊は休憩時間にしました。ゼロの隊とは関係ありません。よそはよそ、うちはうちです」
「それならよかった」
素直にアリスはエドガーの言葉を信じたが、実際は恋人との束の間の癒しタイムをもぎ取るために、『優しき悪魔の教官エドガー』となってスパルタ訓練で終わらせたのだ。
が、そんなことはアリスに知らせる必要もない。
訓練場から苛立ったゼロの視線が突き刺さるがエドガーは華麗に無視した。
二人は紙袋の中を交互に覗き込み、クスクスと嬉しそうに微笑みを交わす。
中身はもちろん、身体に悪そうなジャンクなお菓子だ。
赤のクイーンが見たら
「エドガー、君はまたこんな俗悪な食べ物を口にしているの? 気が知れないよ」
と、眉をしかめるに違いないが、いまここに自分達を咎める者は誰もいない。
悪戯が成功した子供のようにエドガーは得意げに袋からレインボーカラーのチョコソースと七色の摩訶不思議なトッピングがかかったドーナツを取り出した。
「それではアリス、どちらが大きい方を食べるか、恒例のジャンケン大会をしましょうか」
「うん、いいよ。今日こそ絶対にエドガーに勝ってみせるから」
「その意気です。そろそろこの辺で挽回してみせてください。毎回俺が勝つのはさすがに忍びないですから。それに今日のおやつは貴女が好きそうな味ですよ」
ふっくらとして見るからに甘そうなドーナツをエドガーが半分に割り、大きい方を見せつけるようにひらひらとさせる。
ちょうど小腹がすいて甘いものが欲しかったアリスは、チョコレートの香りにつられて目を輝かせた。
本気でジャンケンに勝とうと、彼女が手をグーの形にして意気込むのをエドガーは微笑ましい顔で見つめていた。
「よーし、エドガー、いくよ。ジャンケン……ポン!」
「おっとっと、またまた俺の勝ちですね」
「嘘、また負けた…! なんで勝てないの? これでエドガーに十連敗…もしかしてエスパーなの?」
「そうだと言ったらどうします?」
「えっ…私の心が読めるの?」
ミステリアスに揺れるエドガーの瞳に、心を丸裸にされている気がして、アリスは恥じらうように我が身を搔き抱いた。
信じそうになっているアリスが可愛くてエドガーはくすっと笑いをこぼした。
「ふふ、冗談ですよ。貴女の心だけは、俺ですら計り知れない。だから、気に入っているんです。一生見ていて飽きない」
実に、エドガーらしい褒め言葉だった。嬉しいが、ジャンケンにはなぜ勝てないのだろう。
アリスは面白くなくて頬を膨らませた。
「そんな可愛い顔されると、俺に勝つための必勝法を教えてあげたくなりますね。知りたいですか?」
「うん、知りたい」
「本当は内緒にしたかったんですけど、そうですねー。今から俺の言うことを聞いてくれたら教えてあげてもいいですよ?」
「…っ、言うことって?」
吐息が耳に触れて、甘く胸を高鳴らせながら尋ねると、エドガーは大きい方のドーナツをアリスの顔の前に掲げた。
「それでは、あーんしてください」
「え?」
「貴女にこのドーナツを食べさせてあげたいんです、俺の手ずから」
まるで餌付けしたいみたいな言い草だった。
「いいの? 私はジャンケンに負けたのに…」
けれど、アリスはもう食べたくて口元が自然と緩んでいた。それを見越して、エドガーがドーナツを近づけてくる。
(恥ずかしいけど、食欲には勝てない)
好奇心剥き出しのエドガーにじっと見つめられながらも、パクっとかじる。
「あ、美味しい! エドガーも食べてみ…――」
ふいに、唇にペロリと何かが触れた。
アリスはそっと顔を離したエドガーを見上げた。
「本当だ。とても美味しいです。甘くて柔らかくて……俺好みの感触」
妖艶に微笑んだエドガーを見て、アリスは我に返った。
唇についたチョコソースを舐め取られたのだ。
「もう、エドガーっ…」
かあっと頬に熱がのぼる。
「もっと欲しがってもいいですか?」
「もうダメ!」
アリスの恥ずかしがっている顔をエドガーは見たかった。作戦は成功。
くすくすとエドガーが満足げに笑っていると、ふと視界の端を何かが動いた気がした。
「おや?」
その声にアリスも気づいたのか、視線を足元に下げる。
「エドガー、見て。クリーク一家が歩いてきたよ」
「ええ。おやつを貰いにきたのかと思ったのですが、なんだか動きが妙にソワソワしていますね。何か可笑しな物でも食べたのでしょうか」
飼い主に似てと、自分で付け足したエドガーにアリスは
「ぷぷっ」と笑った。
そういうお茶目なところがエドガーは本当に可愛いと思う。
「クリーク一家の皆さん、お揃いでどうしたのですか? ひとまず、こちらへおいでなさい」
エドガーが声をかけると、親子のカモたちは
「クワッ」と鳴きながらトテトテとこちらにやってきた。
「ん、何かくわえているようですね」
「え?」
アリスも屈んで、父親であるMr.クリークの口ばしを凝視した。
口ばしから何かはみ出している。それは、太陽の光を反射してキラリと光った。
「金属か何かでしょうか」
エドガーが訝しげに手をかざすと、Mr.クリークは何かを吐き出した。
コロンと転がった小さな小さな金属の塊。
それが何かわかった瞬間、二人は大きく目を見開いた。
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