思い出の部屋
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ここはシュタイン城のユーリがかつて使っていた部屋。
男の子にしては可愛らしい内装で、ユーリがここで過ごした日々がほぼそのままの形で残っていた。
私の知らなかったユーリの過去に触れられることは嬉しかったけれど、この部屋に戻ってきてからユーリの顔色はあまりよくなかった。
理由はいくつか私にも思い当たる。
ひとつは、シュタインの公爵夫人のこと。もうひとつはユーリのお父様、ジェラルド様のこと。
「はあ、やっと今日のスケジュールが終わったね。クレアは疲れてない?」
「私は大丈夫だよ……ユーリは?」
「俺……? 俺は平気だよ」
平気な顔をしているようには見えなかった。
(なんだろう、普段のユーリと同じようにみえるけど、どこか無理してるような……いま何を思っているのかな、ユーリは……)
そんな心配が胸を覆って、私は不安げにユーリを見つめた。
私達がシュタイン城に滞在している間、宿泊用の客間があてがわれていた。だけど、ユーリはなぜか私部屋に私を連れてきた。
「ユーリ……?」
二人の間に沈黙が訪れる。それはユーリから醸し出される緊張感を私が肌で感じているからだった。
「……この部屋に入れた人は、ゼノ様とアル以外ではクレアが初めてだよ」
すると、ユーリは私の手を引いて、ベッドに押し倒した。
「きゃっ……」
不意に天井とユーリのピンクブロンズの髪が視界に入ってきて、私はドキっとした。
コクっと喉を鳴らして私はユーリを見上げた。
「この部屋に、好きな人を連れてくることなんて一生ないと思ってた……このベッドでこんな風に触れることも……」
「え……」
伸ばされたユーリの指が私の前髪を愛おしげに避ける。あらわれた額にキスが落とされた。
「クレア……」
名前を呼ばれて、今度は唇にキスされる。
ユーリの熱を持った唇は触れては離れてを繰り返して、徐々に強引になる。
「んっ…ぁ…」
思わず甘い吐息を零してしまい、私は慌てて声を堪えた。
こうやってキスされることは嬉しいのに、なぜか罪悪感のようなものが込み上げてきたから。
(いいのかな、ユーリの思い出がつまった部屋でこんなことして……)
チラっと視線を動かして、部屋を見渡す。
あどけない少年時代のユーリが部屋のどこかにいるような気がして、なんだか落ち着かない。
「なんでだろう。いつも王宮でしてることなのに、子供の頃から使ってた俺の部屋だからかな……なんかこうしてるとちょっとだけ悪いことしてる気分」
同じことを私も思っていた。
だけど、ユーリは私よりもこの状況を楽しんでいるように見えた。
「この部屋の前はよく人が通るんだよね……ほら、誰かの足音が聞こえるでしょ?」
そう囁かれて私は耳を澄ました。確かに、靴音が遠くで聞こえる。
「本当だ…聞こえる」
「この廊下を通ると最短距離で中庭に出られるからね」
「そうなんだ……」
「だから、声は抑えないとね」
「うん……え?」
はっとして目線を上げると、目を細めて妖しく笑うユーリと目が合った。
「抑えなくてもいいけど。でも、その方が燃えるでしょ?」
「えっ……」
急に男らしい顔をしたユーリに胸が高鳴る。いつからか、ふとしたときに見せるユーリのこういう顔に私は弱い。
「ねえ、クレア。俺のわがまま聞いてくれる?」
「……うん」
(いきなりどうしたんだろう……)
ユーリの顔に影が落ちて、大きな瞳が魅惑的に煌めいた。
「俺……いまね、ほかのことを考えられないくらいクレアで頭をいっぱいにしたいんだ」
つぶやかれた言葉の意味を理解するのに、私は少し手間取った。
「この前はクレアが俺に夢中になってたでしょ? だから今度は俺の番」
この前、そう言われて私は数日前の甘い時間を思い出して赤面した。
「赤くなってる……可愛いな。いますごく俺にドキドキしてるでしょ?」
「……してるよ」
「俺も……でも、さっきも言ったけど今夜はもっとドキドキしたいな。嫌なこと忘れるくらい」
普段よりも声のトーンが低くて、切なげな瞳をしているユーリ。
(やっぱりユーリは何か悩んでいたんだ……)
そう思い至ると、私は自然と口にしていた。
「うん、いいよ。ユーリが少しでも嫌なことを忘れてくれるなら……」
「本当は嫌なことじゃないんだけどね……でも、いまはちょっとそれを考えたくないんだ」
きっとユーリにとって、負担なことなのだろう。
ベッドが軋む音を聞いて、ユーリが覆いかぶさってきたことを知った。
胸と胸が重なる。右手はユーリの手で繋がれシーツに押し付けられた。
その力強さに、男を感じてクラクラする。
(ユーリってこんな大きな手をしていたっけ?)
反対側の手で、ドレスの肩紐がするりと落とされ、あらわになった肩口にユーリが顔をうずめる。
唇が肌に触れるだけで、悦びに震えてしまう。
「んっ……」
(ユーリ、どんどん男らしくなっていく気がする……背もまた伸びたのかな)
長い前髪の合間からのぞく顔はまだベビーフェイスではあるけれど、執事の頃よりも精悍さが増していた。
(どうしよう、ユーリがかっこいい……前は少年っぽくて可愛かったのに……)
そう思ったら今度は恥ずかしくなって、私は目をそらした。
思い出の中のユーリが天真爛漫に微笑んだ。
「クレア様」って、最後に読んでもらったのはいつだっただろう。
今目の前で組み敷いてくるユーリと同一人物だとは思えなくて、いつだって私の好きなユーリには変わりない。ずっと連続して私はユーリにドキドキさせられてきた。
「どうしたの、クレア?」
「え……」
「もしかして、照れてるの? 今夜はクレアでいっぱいにさせて……」
おわり
男の子にしては可愛らしい内装で、ユーリがここで過ごした日々がほぼそのままの形で残っていた。
私の知らなかったユーリの過去に触れられることは嬉しかったけれど、この部屋に戻ってきてからユーリの顔色はあまりよくなかった。
理由はいくつか私にも思い当たる。
ひとつは、シュタインの公爵夫人のこと。もうひとつはユーリのお父様、ジェラルド様のこと。
「はあ、やっと今日のスケジュールが終わったね。クレアは疲れてない?」
「私は大丈夫だよ……ユーリは?」
「俺……? 俺は平気だよ」
平気な顔をしているようには見えなかった。
(なんだろう、普段のユーリと同じようにみえるけど、どこか無理してるような……いま何を思っているのかな、ユーリは……)
そんな心配が胸を覆って、私は不安げにユーリを見つめた。
私達がシュタイン城に滞在している間、宿泊用の客間があてがわれていた。だけど、ユーリはなぜか私部屋に私を連れてきた。
「ユーリ……?」
二人の間に沈黙が訪れる。それはユーリから醸し出される緊張感を私が肌で感じているからだった。
「……この部屋に入れた人は、ゼノ様とアル以外ではクレアが初めてだよ」
すると、ユーリは私の手を引いて、ベッドに押し倒した。
「きゃっ……」
不意に天井とユーリのピンクブロンズの髪が視界に入ってきて、私はドキっとした。
コクっと喉を鳴らして私はユーリを見上げた。
「この部屋に、好きな人を連れてくることなんて一生ないと思ってた……このベッドでこんな風に触れることも……」
「え……」
伸ばされたユーリの指が私の前髪を愛おしげに避ける。あらわれた額にキスが落とされた。
「クレア……」
名前を呼ばれて、今度は唇にキスされる。
ユーリの熱を持った唇は触れては離れてを繰り返して、徐々に強引になる。
「んっ…ぁ…」
思わず甘い吐息を零してしまい、私は慌てて声を堪えた。
こうやってキスされることは嬉しいのに、なぜか罪悪感のようなものが込み上げてきたから。
(いいのかな、ユーリの思い出がつまった部屋でこんなことして……)
チラっと視線を動かして、部屋を見渡す。
あどけない少年時代のユーリが部屋のどこかにいるような気がして、なんだか落ち着かない。
「なんでだろう。いつも王宮でしてることなのに、子供の頃から使ってた俺の部屋だからかな……なんかこうしてるとちょっとだけ悪いことしてる気分」
同じことを私も思っていた。
だけど、ユーリは私よりもこの状況を楽しんでいるように見えた。
「この部屋の前はよく人が通るんだよね……ほら、誰かの足音が聞こえるでしょ?」
そう囁かれて私は耳を澄ました。確かに、靴音が遠くで聞こえる。
「本当だ…聞こえる」
「この廊下を通ると最短距離で中庭に出られるからね」
「そうなんだ……」
「だから、声は抑えないとね」
「うん……え?」
はっとして目線を上げると、目を細めて妖しく笑うユーリと目が合った。
「抑えなくてもいいけど。でも、その方が燃えるでしょ?」
「えっ……」
急に男らしい顔をしたユーリに胸が高鳴る。いつからか、ふとしたときに見せるユーリのこういう顔に私は弱い。
「ねえ、クレア。俺のわがまま聞いてくれる?」
「……うん」
(いきなりどうしたんだろう……)
ユーリの顔に影が落ちて、大きな瞳が魅惑的に煌めいた。
「俺……いまね、ほかのことを考えられないくらいクレアで頭をいっぱいにしたいんだ」
つぶやかれた言葉の意味を理解するのに、私は少し手間取った。
「この前はクレアが俺に夢中になってたでしょ? だから今度は俺の番」
この前、そう言われて私は数日前の甘い時間を思い出して赤面した。
「赤くなってる……可愛いな。いますごく俺にドキドキしてるでしょ?」
「……してるよ」
「俺も……でも、さっきも言ったけど今夜はもっとドキドキしたいな。嫌なこと忘れるくらい」
普段よりも声のトーンが低くて、切なげな瞳をしているユーリ。
(やっぱりユーリは何か悩んでいたんだ……)
そう思い至ると、私は自然と口にしていた。
「うん、いいよ。ユーリが少しでも嫌なことを忘れてくれるなら……」
「本当は嫌なことじゃないんだけどね……でも、いまはちょっとそれを考えたくないんだ」
きっとユーリにとって、負担なことなのだろう。
ベッドが軋む音を聞いて、ユーリが覆いかぶさってきたことを知った。
胸と胸が重なる。右手はユーリの手で繋がれシーツに押し付けられた。
その力強さに、男を感じてクラクラする。
(ユーリってこんな大きな手をしていたっけ?)
反対側の手で、ドレスの肩紐がするりと落とされ、あらわになった肩口にユーリが顔をうずめる。
唇が肌に触れるだけで、悦びに震えてしまう。
「んっ……」
(ユーリ、どんどん男らしくなっていく気がする……背もまた伸びたのかな)
長い前髪の合間からのぞく顔はまだベビーフェイスではあるけれど、執事の頃よりも精悍さが増していた。
(どうしよう、ユーリがかっこいい……前は少年っぽくて可愛かったのに……)
そう思ったら今度は恥ずかしくなって、私は目をそらした。
思い出の中のユーリが天真爛漫に微笑んだ。
「クレア様」って、最後に読んでもらったのはいつだっただろう。
今目の前で組み敷いてくるユーリと同一人物だとは思えなくて、いつだって私の好きなユーリには変わりない。ずっと連続して私はユーリにドキドキさせられてきた。
「どうしたの、クレア?」
「え……」
「もしかして、照れてるの? 今夜はクレアでいっぱいにさせて……」
おわり