お前はどっちとデートする？
〜クレコレ • ファッショニスタ！〜

「OK、ばっちりお互いの写真も撮れたことだし、俺たちもさっそくこの『着こなしクレコレ』に投稿しようぜ、レイ」

「え…てか、フェンリル、マジでやんの？」

「あたり前だろ、相棒。How do I look?」

パーカーをマントみたいに靡かせて、片目を閉じて見せる俺に、レイは呆れた顔をしたけど、結局は俺の提案に乗っかってくれた。

俺とレイは、セントラル地区の見晴らしの良い公園で（いつもは遊んでる）、写真を撮りあっていた。気分はまるでトップモデル。

パシャ！　パシャ！　パシャ！

ファッションショーのランウェイのノリで、coolに決めポーズ。明るい春の自然光がイイ感じだった。

撮り終えると、缶ジュースでちょいと休憩。
俺たちの撮影には、気づけば観客が集まっていた。

女の子達の「なにあの2人カッコいい♡」の声に嬉しくなって手を振る俺。←無自覚のチャラさ
レイもまんざらでもなさそうに髪を掻き上げて微笑み返していた。（よっ、このモテ男！）←お前もな

スマホを片手に2人で、『クレコレ（SNS）』のアプリを起動した。

「フェンリル、いまお前の写真を選んでコーディネート投稿を押したけど、これで完了？」

「そのはずだぜ。俺もいまレイの写真上げたわ。さっそくトップから見てみよーぜ。お、出てる。服の購入先リンクも表示されてるし、完璧じゃね！？」

新着一覧には、レイと俺の写真が隣合わせでアップされていた。

知り合いのデザイナーとコラボして、俺とレイがデザインしたブランド服。
ついでに、モデルとして俺らがオシャレ着こなしを披露するのが目的。
ブランド名は【freedom Lilly】
百合の花と黒い翼がモチーフ。コンセプトは、『自由』だ。

ロゴつきのインナー、春をイメージしたベージュピンクのパーカーが今回のメイン。
で、レイの着こなしは、文句なくカッコ良かった。

（ま、負ける気ねーけどな）


「おー、やば、このフェンリルってヤツ、マジでスタイル抜群じゃねーの？　レイってヤツにも、いいねを押してやるか」←棒読み

「ぶっ、馬鹿（笑）」

頭突きしてくるレイに応戦しながら、人気コーデランキングをタップすると、すぐに目を引く画像を見つけた。すげー俺好みのコーデ。

「お、こいつの着こなし、色味とか渋くてかっけー。参考にしよ」

「待て、フェンリル。よく見ろ、これ着てんのーー赤のエース」

「え？　は？　赤のエース！？」

拡大してよく見ると、褐色肌と黒髪には見覚えがあった。
鍛えられた体つきも軍人と言われたら納得できる。このモデルは、間違いなく【赤のエース、ゼロ】しかも、うっすら写真では微笑してる。

「うわ、マジかよ。あいつ硬派だからこーゆーのやらないと思ってたわ。けど、私服はなかなかセンスいいじゃん。（←上から）で、どこのブランドだ？　【CROWN ROSE】…聞いたことねーな」

首を捻ってると、今度はレイが画面をスクロールする。

「CROWN ROSEでブランド検索もかけられるな。いくつか画像が出てきた。ふーん…あ、こいつの着こなしけっこう好きかも。シンプルだけどシックでいい感じ」

「どれどれ？…レイ様のお眼鏡にかなう品のあるコーデってやつは。って、おい、よく見ろよ」

レイは不審そうに画面を二度見した。そして、エメラルドの目を見開き…

「モデルは、…ランスロット＝キングスレー！？嘘だろ…しかも、微妙に視線そらして笑み浮かべて写ってんだけど。カリスマモデルかよ」

「なんだよ、すげーじゃん。赤の軍の幹部！　マジでびびったけど、俺らもオシャレコーデ、ガンガンしようぜ！　ルカとセスとオッサンも総動員して」

「やだ」

クレイドルのファッショニスタ（オシャレ番長）の戦いは、まだ始まったばかりだ。

end