二人でメイクアップ ~フェンリルBD☆SS~
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明るくなった空に、春のほがらかな陽気を感じるクレイドルの朝。
いつもの「黒の兵舎」は、朝から鍛錬やら軍事演習やらで騒がしい。
が、訓練場には一番乗りのルカの姿がぽつんとあるだけだった。
わらわらと兵士達が訓練場に集まってくる。
「フェンリルが来ない……あ、今日は非番だった」
だいたいフェンリルは、ルカの次に訓練場へやってきて、兵士たちを鍛えるために声を張り上げたり、魔法銃をぶっ放して楽しそうに笑っているのだが、そんな戦闘狂の彼がいない朝はいつもより静かだ。
と、ルカはネックカバーに触れながら思った。
同じ頃、フェンリルは訓練場では見せない種類の晴れやかな笑みをアリスの部屋の前で浮かべていた。
前回のデートで一緒に選んだお揃いの服を着て、身支度中であろう恋人に声をかける。
「迎えに来たぜ、アリス……って、どーしたんだ、その髪型!?」
鏡の中で慣れない髪色を気にして、しきりに毛先を整えているアリスと目が合う。
「フェンリル、おはよう……この髪、変かな?」
アリスが振り返ると、緩やかなウェーブを描くロングヘアの途中から毛先までパープルピンクのグラデーションで染まっていた。
いつもと違うアリスの姿に惹かれて、フェンリルは彼女の柔らかい髪を一房すくった。
染まったところはフェンリルの髪色と似ているが、それよりもピンクが強めの配色が可愛いらしい印象を与えていた。
よく見ると内側と前髪の一部に、さりげなくライムグリーンに染まったメッシュの毛束を見つけた。
それが良い差し色になってオシャレ上級者に見える。
まさに春らしい色合いでフェンリルとお揃いのイエローグリーンとブラックのワンピースに、はっとするような華やぎを添えている。
「へえ、こういうのもイイな。それにココ俺の好きな色じゃん。いや、マジで可愛いわ……これ、セルフで染めたのか?」
「うん、一日で落ちちゃうんだけど今日のデートはフェンリルの誕生日だから、服も髪もお揃いにしたくて」
はしゃぐように袖を広げてくるりと周り、ワンピースの裾がふわりと広がる。チラリと見えた膝や太ももの白さが眩しい。
「ねえ、今日の私はフェンリルの恋人っぽく見えるかな?」
手でピストルの形を作り、はにかんだアリスの笑みに、フェンリルは目を奪われ心はぐっとくすぐられた。
「見える。つか、オシャレすぎて俺の方が負けてるわ。お前にもっと釣り合うように着替え直してくるか」
「そんなことないよ。フェンリルはいつだってオシャレでカッコいい。今日だって…とびきりカッコいいよ」
「…っ、おう」
ストレートに褒められるとさすがに照れる。
「んじゃ、せっかくだし、もちっと俺っぽくしてみる?」
アリスが不思議そうに目を瞬かせると、フェンリルは「Let’s make up!」と
意気揚々と鏡台に広げられたメイク道具を手にした。
「知ってると思うけど、俺のコレ実はメイクなんだわ」
自分の瞳(下まつげ)を指さしてフェンリルはニヤっと笑った。
天井を見上げてじっとしていると、目尻にスーっと冷たい感触が走った。気持ちいいようなくすぐったいような感覚。
「OK、そのまま動くなよ。下まつ毛メイクは立体感が出るし、ちょっとタレ目に見えて絶対に可愛いぜ」
手慣れた感じでアイラインを引いた後、目尻にボリュームが出るようにマスカラをこれでもかと盛られる。
至近距離にフェンリルの顔がずっとあるせいでアリスはメイクされている間、ずっと息を止めていた。
ドキドキして鼻息すらできない。
フェンリルの指が頬に優しく触れるたびに、なんとも言えない甘い痺れが全身に走る。
「エースメイクの出来上がり!すっぴんも可愛いけどばっちりメイクすると人形みてーだな…」
うっとりするような甘い声がすぐ近くで聞こえ、アリスは閉じていた瞳をそっと開いた。
「わあ……!」
下まつげが強調されたアイメイクにより艶やかさがプラスされた自分の顔。
フェンリルのどことなく醸し出されている色香はこのアイメイクにあったのかもしれない。
「やべー」
自分の手で施したメイクに自分好みの服をまとわせ、さらにお揃いの髪色にしてくれたアリスに対して、どうしようもなく愛しいのと同時に抗いがたい独占欲が沸き起こる。
「可愛すぎて誰にも見せたくねーな。デートやめて俺が独り占めするか」
「えっ……」
「ダメか?」
たまらなくなって甘えるように後ろから腕を回して抱きしめると、アリスの首筋から誘うような香りがしてフェンリルは軽く酔いそうになった。
「フェンリル……っ」
鏡に映ったアリスの顔は戸惑いに恥じらっていたが、彼女の肩口に顔を埋めるフェンリルの表情は幸せで綻んでいた。
「わりー、もうちょっとだけこうさせて。外に出たらこんな風に思いっきりくっつけねーし」
「う、うん…」
ただそばにいてくれるだけで幸せなのに、こんなにも自分のために愛情をあらわしてくれる女性がいることが信じられなかった。アリスといると、胸の深い部分から温かいものがとめどなく溢れてくる。
この感謝の気持ちをどうやって返していったらいいのか。生涯かけて大事に愛を返したい。
合わせ鏡のようにそっくりな見た目になった二人。
「…ありがとな、相棒」
照れて色づいている頬に、触れるか触れないかのキスを落とす。
「可愛いメイクが落ちちまうからキスはお預けだな。デートが終わったらたっぷり貰うから――お前のこと全部」
フェンリルは手ピストルを形作り唇にそっと寄せ、艶然と微笑んだ。
この心を撃ち抜かれるのは、きっと自分の方だろうけれど…
♠END♠
2018.4.15 いるく
いつもの「黒の兵舎」は、朝から鍛錬やら軍事演習やらで騒がしい。
が、訓練場には一番乗りのルカの姿がぽつんとあるだけだった。
わらわらと兵士達が訓練場に集まってくる。
「フェンリルが来ない……あ、今日は非番だった」
だいたいフェンリルは、ルカの次に訓練場へやってきて、兵士たちを鍛えるために声を張り上げたり、魔法銃をぶっ放して楽しそうに笑っているのだが、そんな戦闘狂の彼がいない朝はいつもより静かだ。
と、ルカはネックカバーに触れながら思った。
同じ頃、フェンリルは訓練場では見せない種類の晴れやかな笑みをアリスの部屋の前で浮かべていた。
前回のデートで一緒に選んだお揃いの服を着て、身支度中であろう恋人に声をかける。
「迎えに来たぜ、アリス……って、どーしたんだ、その髪型!?」
鏡の中で慣れない髪色を気にして、しきりに毛先を整えているアリスと目が合う。
「フェンリル、おはよう……この髪、変かな?」
アリスが振り返ると、緩やかなウェーブを描くロングヘアの途中から毛先までパープルピンクのグラデーションで染まっていた。
いつもと違うアリスの姿に惹かれて、フェンリルは彼女の柔らかい髪を一房すくった。
染まったところはフェンリルの髪色と似ているが、それよりもピンクが強めの配色が可愛いらしい印象を与えていた。
よく見ると内側と前髪の一部に、さりげなくライムグリーンに染まったメッシュの毛束を見つけた。
それが良い差し色になってオシャレ上級者に見える。
まさに春らしい色合いでフェンリルとお揃いのイエローグリーンとブラックのワンピースに、はっとするような華やぎを添えている。
「へえ、こういうのもイイな。それにココ俺の好きな色じゃん。いや、マジで可愛いわ……これ、セルフで染めたのか?」
「うん、一日で落ちちゃうんだけど今日のデートはフェンリルの誕生日だから、服も髪もお揃いにしたくて」
はしゃぐように袖を広げてくるりと周り、ワンピースの裾がふわりと広がる。チラリと見えた膝や太ももの白さが眩しい。
「ねえ、今日の私はフェンリルの恋人っぽく見えるかな?」
手でピストルの形を作り、はにかんだアリスの笑みに、フェンリルは目を奪われ心はぐっとくすぐられた。
「見える。つか、オシャレすぎて俺の方が負けてるわ。お前にもっと釣り合うように着替え直してくるか」
「そんなことないよ。フェンリルはいつだってオシャレでカッコいい。今日だって…とびきりカッコいいよ」
「…っ、おう」
ストレートに褒められるとさすがに照れる。
「んじゃ、せっかくだし、もちっと俺っぽくしてみる?」
アリスが不思議そうに目を瞬かせると、フェンリルは「Let’s make up!」と
意気揚々と鏡台に広げられたメイク道具を手にした。
「知ってると思うけど、俺のコレ実はメイクなんだわ」
自分の瞳(下まつげ)を指さしてフェンリルはニヤっと笑った。
天井を見上げてじっとしていると、目尻にスーっと冷たい感触が走った。気持ちいいようなくすぐったいような感覚。
「OK、そのまま動くなよ。下まつ毛メイクは立体感が出るし、ちょっとタレ目に見えて絶対に可愛いぜ」
手慣れた感じでアイラインを引いた後、目尻にボリュームが出るようにマスカラをこれでもかと盛られる。
至近距離にフェンリルの顔がずっとあるせいでアリスはメイクされている間、ずっと息を止めていた。
ドキドキして鼻息すらできない。
フェンリルの指が頬に優しく触れるたびに、なんとも言えない甘い痺れが全身に走る。
「エースメイクの出来上がり!すっぴんも可愛いけどばっちりメイクすると人形みてーだな…」
うっとりするような甘い声がすぐ近くで聞こえ、アリスは閉じていた瞳をそっと開いた。
「わあ……!」
下まつげが強調されたアイメイクにより艶やかさがプラスされた自分の顔。
フェンリルのどことなく醸し出されている色香はこのアイメイクにあったのかもしれない。
「やべー」
自分の手で施したメイクに自分好みの服をまとわせ、さらにお揃いの髪色にしてくれたアリスに対して、どうしようもなく愛しいのと同時に抗いがたい独占欲が沸き起こる。
「可愛すぎて誰にも見せたくねーな。デートやめて俺が独り占めするか」
「えっ……」
「ダメか?」
たまらなくなって甘えるように後ろから腕を回して抱きしめると、アリスの首筋から誘うような香りがしてフェンリルは軽く酔いそうになった。
「フェンリル……っ」
鏡に映ったアリスの顔は戸惑いに恥じらっていたが、彼女の肩口に顔を埋めるフェンリルの表情は幸せで綻んでいた。
「わりー、もうちょっとだけこうさせて。外に出たらこんな風に思いっきりくっつけねーし」
「う、うん…」
ただそばにいてくれるだけで幸せなのに、こんなにも自分のために愛情をあらわしてくれる女性がいることが信じられなかった。アリスといると、胸の深い部分から温かいものがとめどなく溢れてくる。
この感謝の気持ちをどうやって返していったらいいのか。生涯かけて大事に愛を返したい。
合わせ鏡のようにそっくりな見た目になった二人。
「…ありがとな、相棒」
照れて色づいている頬に、触れるか触れないかのキスを落とす。
「可愛いメイクが落ちちまうからキスはお預けだな。デートが終わったらたっぷり貰うから――お前のこと全部」
フェンリルは手ピストルを形作り唇にそっと寄せ、艶然と微笑んだ。
この心を撃ち抜かれるのは、きっと自分の方だろうけれど…
♠END♠
2018.4.15 いるく