ライトアップ黒の兵舎
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「よし、これで完成!」
玄関の扉にリースを飾って、私はパンと手を叩いた。
「やーん!可愛い♡ツリーとリースで一気にクリスマスって感じになったわ」
飛び跳ねるように一緒に喜んでくれたのはセスさんだった。
「ルカ、あとでクリスマス用の型抜きクッキーを一緒に作ろうね」
「うん、なんか今年はあなたがいるから腕が鳴る」
飾り付けを手伝ってくれていたルカもいつもより声に抑揚があった。
意外と乗り気で嬉しくなる。
ツリーの緑色と、雪の結晶をモチーフにした白いガーランドで華やかになった食堂。
黒の兵舎はとってもクリスマスっぽくなった。赤の兵舎でもクリスマスはこんな風に飾りをつけるのだろうか。そんなことを思っていると、
「なあ、そっちは終わった?」
顔を出したのは、外の装飾を担当していたレイだった。
「ボス、終わったわよ。見てちょうだい、このおしゃれすぎる飾り付け!今年はアリスちゃんがいるから可愛さ増し増しにしたんだから〜」
「へえ、なかなかいいじゃん。けど、俺らも負けてねえよ」
レイが顔を逸らして挑発的に笑う。
「わー、楽しみ!」
さっそく外に出て行くと、庭や植木にもガーランドとライトが飾られていた。
これが一斉に点灯したら、絶対綺麗なこと間違いない。
玄関ポーチのところで植木に松ぼっくりを飾っていたシリウスさんを見つける。白い息を吐きながら黙々と作業していた。
「外は寒いですね。あれ? 松ぼっくりが雪景色してる」
「ああ、せっかくお嬢ちゃんがたくさん拾ってきてくれたからな。少し手を入れてみた」
得意げにシリウスさんは笑った。
クレイドルでみんなとクリスマスを迎えられると思うと胸が高鳴る。
でも、夜はやっぱり寒くて私はコートの襟をかき集めた。
「ところで、フェンリルはどこですか?」
「あいつならきっと屋根じゃねえか」
「屋根?!」
まさか屋根にまでライトを巻きつけているのだろうか。
私はぎょっとして屋根を見上げた。
黒い人影が見えたと思ったら、こちらに手を振ってきた。
「おーい、アリス!そこにいると危ねーぞ!」
「フェンリルこそ危ないよ!」
落ちたらどうしようとハラハラしていたら、フェンリルはにやっと笑顔をつくった。
次の瞬間には屋根を蹴っていた。
ばっと羽を広げたように両腕を伸ばしてジャンプし、私の目の前にしなやかに降り立つ。
「よっと、着地成功。待たせたな、アリス」
勢いがつきすぎて前のめりになった体勢を立て直してフェンリルは私と向き合った。
「びっくりした。怪我したらどうするの?」
「平気だって。エースはヤワな鍛え方してねーからな。それよりさっそく点灯式だ。おっさんも飾りつけはそのくらいにしてライトアップしようぜ」
「おい、おっさん、言うな。それに魔法石の準備はとっくにできてる」
限られた魔法石でクリスマスの期間だけライトアップする。
ほんとはすごく贅沢なこと。
でも、寒い冬にイルミネーションが見られたら、きっと凍てつくような寒さも吹き飛ぶ。
「来いよ」と、フェンリルに手を握られ、庭の真ん中に連れて行かれる。
まるで冒険にでも出るみたいに嬉々として私を引っ張って行くフェンリル。
寒空の下を軽快に走るフェンリルの背中が、夜風に揺れる青みがかったフューシャピンク髪が、私はたまらなく好きだなと思った。
「ここからだと兵舎が正面でよく見えるだろ? OK、カウントダウン開始だ。three、two、one……BANG!」
フェンリルが空に向けて魔法銃で空砲を撃つと、まるで魔法みたいに一度にライトが点灯した。
「わぁぁー!すごい!」
兵舎を彩るたくさんの光の粒。
屋根も窓枠もシャンパンゴールドに光り輝いていた。
「お前にどうしても喜んでもらいたかったから、今年はレイと頑張った」
「うん、すっごく綺麗!フェンリル、ありがとう」
ライトは緑から青へ、青から紫へと発色を変えていく。
ちょうどピンクになったとき、優しい光りに感動していた私の首に、ふわっとマフラーが巻かれた。
「寒くねー?」
「あれ、そのマフラーって」
「さっきお前から借りたマフラー、返すの遅くなって悪かった」
ピンクの光が反射したフェンリルは、夜に煌めいて綺麗だった。
思わず見とれてしまうほど。
(フェンリルはやっぱり綺麗だな……)
見つめあっていると、突然「ぶえくしょっ!」と、フェンリルが派手にくしゃみした。
「綺麗だけど、やっぱさみーわ」
「ごめん、フェンリルも寒いよね。待っててこのマフラー……」
「いや、お前はそのままでいいから。けど、俺も入れてくれねー?」
「え……」
白いと息が、ふつりと途切れた。
屈んだフェンリルに啄むようにキスされていた。
「……っ」
驚いている間に、フェンリルは私のマフラーの中に潜り込んできた。
「おお、あったけー」
「ちょっと、もう……!」
思わず笑みがこぼれる。
身を寄せ合って、同じマフラーに包まった。
世界が急にあったかくなる。
この景色をいまフェンリルと一緒に見られてよかった。
♢
離れたところからライトアップを見ていたレイ、シリウス、セス、ルカは……。
フェンリルとアリスから立ち上っていた白い靄が消えたのを見逃さなかった。
「あいつら、キスしたな」
「ああ、絶対してるな」
「してるわね。ここぞとばかりいちゃついてくれちゃって」
「……みんな、見過ぎ」
クリスマスまで毎日ライトアップは続く。
おわり
玄関の扉にリースを飾って、私はパンと手を叩いた。
「やーん!可愛い♡ツリーとリースで一気にクリスマスって感じになったわ」
飛び跳ねるように一緒に喜んでくれたのはセスさんだった。
「ルカ、あとでクリスマス用の型抜きクッキーを一緒に作ろうね」
「うん、なんか今年はあなたがいるから腕が鳴る」
飾り付けを手伝ってくれていたルカもいつもより声に抑揚があった。
意外と乗り気で嬉しくなる。
ツリーの緑色と、雪の結晶をモチーフにした白いガーランドで華やかになった食堂。
黒の兵舎はとってもクリスマスっぽくなった。赤の兵舎でもクリスマスはこんな風に飾りをつけるのだろうか。そんなことを思っていると、
「なあ、そっちは終わった?」
顔を出したのは、外の装飾を担当していたレイだった。
「ボス、終わったわよ。見てちょうだい、このおしゃれすぎる飾り付け!今年はアリスちゃんがいるから可愛さ増し増しにしたんだから〜」
「へえ、なかなかいいじゃん。けど、俺らも負けてねえよ」
レイが顔を逸らして挑発的に笑う。
「わー、楽しみ!」
さっそく外に出て行くと、庭や植木にもガーランドとライトが飾られていた。
これが一斉に点灯したら、絶対綺麗なこと間違いない。
玄関ポーチのところで植木に松ぼっくりを飾っていたシリウスさんを見つける。白い息を吐きながら黙々と作業していた。
「外は寒いですね。あれ? 松ぼっくりが雪景色してる」
「ああ、せっかくお嬢ちゃんがたくさん拾ってきてくれたからな。少し手を入れてみた」
得意げにシリウスさんは笑った。
クレイドルでみんなとクリスマスを迎えられると思うと胸が高鳴る。
でも、夜はやっぱり寒くて私はコートの襟をかき集めた。
「ところで、フェンリルはどこですか?」
「あいつならきっと屋根じゃねえか」
「屋根?!」
まさか屋根にまでライトを巻きつけているのだろうか。
私はぎょっとして屋根を見上げた。
黒い人影が見えたと思ったら、こちらに手を振ってきた。
「おーい、アリス!そこにいると危ねーぞ!」
「フェンリルこそ危ないよ!」
落ちたらどうしようとハラハラしていたら、フェンリルはにやっと笑顔をつくった。
次の瞬間には屋根を蹴っていた。
ばっと羽を広げたように両腕を伸ばしてジャンプし、私の目の前にしなやかに降り立つ。
「よっと、着地成功。待たせたな、アリス」
勢いがつきすぎて前のめりになった体勢を立て直してフェンリルは私と向き合った。
「びっくりした。怪我したらどうするの?」
「平気だって。エースはヤワな鍛え方してねーからな。それよりさっそく点灯式だ。おっさんも飾りつけはそのくらいにしてライトアップしようぜ」
「おい、おっさん、言うな。それに魔法石の準備はとっくにできてる」
限られた魔法石でクリスマスの期間だけライトアップする。
ほんとはすごく贅沢なこと。
でも、寒い冬にイルミネーションが見られたら、きっと凍てつくような寒さも吹き飛ぶ。
「来いよ」と、フェンリルに手を握られ、庭の真ん中に連れて行かれる。
まるで冒険にでも出るみたいに嬉々として私を引っ張って行くフェンリル。
寒空の下を軽快に走るフェンリルの背中が、夜風に揺れる青みがかったフューシャピンク髪が、私はたまらなく好きだなと思った。
「ここからだと兵舎が正面でよく見えるだろ? OK、カウントダウン開始だ。three、two、one……BANG!」
フェンリルが空に向けて魔法銃で空砲を撃つと、まるで魔法みたいに一度にライトが点灯した。
「わぁぁー!すごい!」
兵舎を彩るたくさんの光の粒。
屋根も窓枠もシャンパンゴールドに光り輝いていた。
「お前にどうしても喜んでもらいたかったから、今年はレイと頑張った」
「うん、すっごく綺麗!フェンリル、ありがとう」
ライトは緑から青へ、青から紫へと発色を変えていく。
ちょうどピンクになったとき、優しい光りに感動していた私の首に、ふわっとマフラーが巻かれた。
「寒くねー?」
「あれ、そのマフラーって」
「さっきお前から借りたマフラー、返すの遅くなって悪かった」
ピンクの光が反射したフェンリルは、夜に煌めいて綺麗だった。
思わず見とれてしまうほど。
(フェンリルはやっぱり綺麗だな……)
見つめあっていると、突然「ぶえくしょっ!」と、フェンリルが派手にくしゃみした。
「綺麗だけど、やっぱさみーわ」
「ごめん、フェンリルも寒いよね。待っててこのマフラー……」
「いや、お前はそのままでいいから。けど、俺も入れてくれねー?」
「え……」
白いと息が、ふつりと途切れた。
屈んだフェンリルに啄むようにキスされていた。
「……っ」
驚いている間に、フェンリルは私のマフラーの中に潜り込んできた。
「おお、あったけー」
「ちょっと、もう……!」
思わず笑みがこぼれる。
身を寄せ合って、同じマフラーに包まった。
世界が急にあったかくなる。
この景色をいまフェンリルと一緒に見られてよかった。
♢
離れたところからライトアップを見ていたレイ、シリウス、セス、ルカは……。
フェンリルとアリスから立ち上っていた白い靄が消えたのを見逃さなかった。
「あいつら、キスしたな」
「ああ、絶対してるな」
「してるわね。ここぞとばかりいちゃついてくれちゃって」
「……みんな、見過ぎ」
クリスマスまで毎日ライトアップは続く。
おわり
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