夏祭り(幸村編)
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とある神社の縁日に来ていたのは、甲斐、武田の武将真田幸村と姫。
夕暮れの中、屋台を周り、幸村は焼きイカを姫はあんず飴を手にした。
「ここは人が多い、向こうで一休みするとしよう」
「はい、幸村様」
自然と手を繋ぎ、人がまばらな境内へ。
星が輝き始めた空の下、祭り囃子(ばやし)が遠くに聞こえる。
大きめの石に二人で並んで腰掛ける。
姫は、ふうっと息を吐いた。さっきまで祭りの雰囲気に舞い上がって胸がドキドキしていたのが少しだけ落ち着いた。
隣に幸村がいるというのもまたドキドキするが。
「さっきの親父、姫におまけばかりしてくれたな。可愛いおなごは得だな」
「……っ、幸村様も最中、おひとつどうぞ」
「おう。美味いな。よし、イカも食うぞ!」
さっそくあんず飴をひと舐めする。
氷で冷やされていたので口の中が冷えて気持ちが良い。
姫の唇に、水飴が付着し、艶やかに浮かび上がる。度々チラチラと見える赤い舌は、誘うようだった。
隣で焼きイカを頬張っていた幸村の手がふと、止まる。
「……」
視線を感じて、姫は舌を慌てて引っ込めた。
「幸村様?」
「あっ? な、なんだ?」
目を見開いて、大真面目に返してくる幸村。その頬はなんとなく赤らんでいるような……
「幸村様こそ、どうかされましたか?」
唇に焼きイカの醤油をつけたまま、幸村様は突然黙りこくり、視線を逸らした。
「な、なんでもない……」
「?」
「あんまり、こっちを見るな……その食いづらいだろう」
「でも、顔が赤いみたいですが? お水を貰って来ましょうか?」
「いらん! なに、祭りで浮かれてるだけだ。気にするな。だが、俺はあっちを向いて食う」
最後の一口のイカ焼きしか残っていないのに、幸村は姫から体ごとそっぽ向いてしまった。
「え? どうしてですか?」
幸村の視界には暗い森しかない。なにも面白いものなどないのに。姫は、戸惑ってキョロキョロしてしまう。
その様子に、幸村は肩越しに振り向いた。
「そ、その……俺には目の毒だからだ」
「え……あっ」
まさか、そんな理由で。
姫は、手元のあんず飴に視線を戻した。
食べかけのそれは、水飴が持ち手のところまで滴り落ちている。連想しなくもない。
(幸村様ったら。そんなこと言われたら意識してしまってもう食べられない!)
それに、せっかく二人きりなのに、後ろを向かれては寂しい。姫は、困った顔でそっと広い背中に触れる。
「幸村様」
「なんだ。もう食い終わったのか?」
「はい」
「そうか」
安堵したように幸村様が振り返る。
「!?」
もちろん、姫はまだあんず飴を食べ終えてなんかいない。
「幸村様、一緒に食べてくださいませんか?」
「なっ……!」
「恥ずかしいですが、幸村様に見てもらえないことのほうが嫌なんです。せっかくのお祭りなんですから」
「す、すまねえ……だが俺は、お前を見てるとやましい心が抑えられそうにねえ」
「幸村様……」
見つめると、幸村は意を決したように視線を合わせてきた。
熱を孕んだ青い瞳、なんて綺麗だと思ったときには、
唇を奪われていたーー
ぷっくりとした下唇を水飴ごと吸い取るように。
「ん、……甘いな……」
「……っ、」
「もう少し、いいだろうか?」
「……はい」
互いに瞳を閉じて、唇を重ね合わせる。
今度は隙間から舌を忍ばせて、深く口づけた。
幸村の手が腰に回る。ぐっと密着し、そのまま倒れそうになって、姫は幸村の着物を掴んだ。
甘くて、熱くて、舌がとろけていく。
もっともっと欲しくなる。
胸がまた激しく高鳴っていた。
祭りの高揚感。
きっとそれだけじゃない……
おわり
夕暮れの中、屋台を周り、幸村は焼きイカを姫はあんず飴を手にした。
「ここは人が多い、向こうで一休みするとしよう」
「はい、幸村様」
自然と手を繋ぎ、人がまばらな境内へ。
星が輝き始めた空の下、祭り囃子(ばやし)が遠くに聞こえる。
大きめの石に二人で並んで腰掛ける。
姫は、ふうっと息を吐いた。さっきまで祭りの雰囲気に舞い上がって胸がドキドキしていたのが少しだけ落ち着いた。
隣に幸村がいるというのもまたドキドキするが。
「さっきの親父、姫におまけばかりしてくれたな。可愛いおなごは得だな」
「……っ、幸村様も最中、おひとつどうぞ」
「おう。美味いな。よし、イカも食うぞ!」
さっそくあんず飴をひと舐めする。
氷で冷やされていたので口の中が冷えて気持ちが良い。
姫の唇に、水飴が付着し、艶やかに浮かび上がる。度々チラチラと見える赤い舌は、誘うようだった。
隣で焼きイカを頬張っていた幸村の手がふと、止まる。
「……」
視線を感じて、姫は舌を慌てて引っ込めた。
「幸村様?」
「あっ? な、なんだ?」
目を見開いて、大真面目に返してくる幸村。その頬はなんとなく赤らんでいるような……
「幸村様こそ、どうかされましたか?」
唇に焼きイカの醤油をつけたまま、幸村様は突然黙りこくり、視線を逸らした。
「な、なんでもない……」
「?」
「あんまり、こっちを見るな……その食いづらいだろう」
「でも、顔が赤いみたいですが? お水を貰って来ましょうか?」
「いらん! なに、祭りで浮かれてるだけだ。気にするな。だが、俺はあっちを向いて食う」
最後の一口のイカ焼きしか残っていないのに、幸村は姫から体ごとそっぽ向いてしまった。
「え? どうしてですか?」
幸村の視界には暗い森しかない。なにも面白いものなどないのに。姫は、戸惑ってキョロキョロしてしまう。
その様子に、幸村は肩越しに振り向いた。
「そ、その……俺には目の毒だからだ」
「え……あっ」
まさか、そんな理由で。
姫は、手元のあんず飴に視線を戻した。
食べかけのそれは、水飴が持ち手のところまで滴り落ちている。連想しなくもない。
(幸村様ったら。そんなこと言われたら意識してしまってもう食べられない!)
それに、せっかく二人きりなのに、後ろを向かれては寂しい。姫は、困った顔でそっと広い背中に触れる。
「幸村様」
「なんだ。もう食い終わったのか?」
「はい」
「そうか」
安堵したように幸村様が振り返る。
「!?」
もちろん、姫はまだあんず飴を食べ終えてなんかいない。
「幸村様、一緒に食べてくださいませんか?」
「なっ……!」
「恥ずかしいですが、幸村様に見てもらえないことのほうが嫌なんです。せっかくのお祭りなんですから」
「す、すまねえ……だが俺は、お前を見てるとやましい心が抑えられそうにねえ」
「幸村様……」
見つめると、幸村は意を決したように視線を合わせてきた。
熱を孕んだ青い瞳、なんて綺麗だと思ったときには、
唇を奪われていたーー
ぷっくりとした下唇を水飴ごと吸い取るように。
「ん、……甘いな……」
「……っ、」
「もう少し、いいだろうか?」
「……はい」
互いに瞳を閉じて、唇を重ね合わせる。
今度は隙間から舌を忍ばせて、深く口づけた。
幸村の手が腰に回る。ぐっと密着し、そのまま倒れそうになって、姫は幸村の着物を掴んだ。
甘くて、熱くて、舌がとろけていく。
もっともっと欲しくなる。
胸がまた激しく高鳴っていた。
祭りの高揚感。
きっとそれだけじゃない……
おわり