真紅の暴君
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無事に1日目の授業を終えた後に早速マロンタルトを作るべく、まずメインとなる栗を沢山集めるための道具を求めて先輩方と別れた私達は植物園を訪れていた。
オンボロ寮から学園に向かう道中にある大きなドーム型の建物の中はこれまた広くて、見たことあるようで無い様々な植物が見られる上に色んな気候の植物が区画ごとに分かれていて季節ごとの植生を一度に観察出来ると言うのだからすごい空間だ。
今回は温帯ゾーンに向かってカゴやあのゴミ拾いに使うような長めのトングみたいな道具を探そうとするが温帯ゾーンだけでもかなりの広さだったので、我々は三手に分かれて捜索に当たることになった。そして私とグリムは中央の通路を担当することになり、グリムが謎の果物を見つけてテンション高くかけている様子を微笑ましく見守りながら歩きつつ、使える道具がないかと辺りを見回していた。
そこで事件が起きた。
グニュっと微妙に柔らかいなにかを踏んで私は一瞬思考が停止した。
「ーーいって!」
最初は最悪の想像でウンコかと思って咄嗟に足を退けようと思ったら、突然低い呻き声が下から響いてきたのにビビって足がもつれた。さらに筋肉痛が祟って私は何かをグリっとさらに踏みつけ足をもつれさせたまま、体勢を崩した。
「おわわわっ!あーーっ!」
「い゛っ!?ぐおっ!」
その方向に呻き声を上げた人がいたらしく、変に身体を捩って倒れ込んだせいで、思いっきり体重を乗せた強烈なエルボーをかましてしまったのだ。そして下敷きになった人の上を滑り落ちた私は強かに頭を地面に打ちつけて転がった。
この世界に来てからよく頭を打ちつけているが痛みはいつも新鮮で、声にならない声をあげながら悶えているとガッと制服の襟首を掴まれて持ち上げられた。
「テメェ…」
足のつかない高さに浮かされ、なすすべもなく宙ぶらりんにされた状況で横から痛いほど刺さってくる殺気のこもった視線。恐る恐る目線を横へと向けると、可愛らしい丸めのフワッとしたモフモフお耳が頭の上についた褐色肌に茶髪の長い髪を前に垂れる横毛だけ三つ編みにしてるおしゃれさんで怖いほど顔の整った美形さんがガチギレ状態の怖い顔をして立っていた。しかも訳ありそうなスカーフェイスから放たれる鋭い眼光と目が合って私はただただ恐れをなして縮こまってしまった。
「人の尻尾を踏んだ上に肘入れてくるとはいい度胸だな」
「あ…えっ…と…そのぉ〜」
青筋立てた長身の男に片手で持ち上げられてるこの状況、私に非があるのは明確で相手が怒るのも当然である。しかし相手がまさかヤクザみたいに絶対に喧嘩売っては行けないタイプだったのは予想外で汗は止まらないし、心臓はうるさくて表情も取り繕えないくらいには歪む。
「あ?何笑ってんだ?」
「あ、いや、笑ってるわけじゃなヒィンッ!…スンマセンデシタ」
恐怖のあまり薄目で見てたのと口元がニチャアと笑って見えたのがことさら逆鱗に触れたらしくてああん?と威嚇される。イライラしたようにべしべしと膝に打ち付けられてくる尻尾の形と先ほど見た丸っこい耳からライオンのケモ耳族の人だとわかり食堂の会話を思い出してさらに危機感が募る。
助け求るようにグリムへ縋る視線を送るが奴は木の影に隠れて震えながらこちらを伺っていた。アイツ…真っ先に逃げやがった!
「聞こえねえなぁ、謝罪の声が。もっと大きい声で言えよ」
「すいませんでしたー!!決してわざとじゃないんで!事故です!」
「事故で肘入れるか普通」
「それはそうなんですけど…通路歩いててまさか尻尾踏むとか、人が寝てるとは思わないじゃないですか?普通」
「ア?つまり俺が悪いって言いてぇのか?」
「アイタッ、すいません。何でもないです…」
いい声ながら苛立ちがこもった低く冷たい声と完全に命を握られている状況から謝るものの、一向に地面に足が付かない。腕も疲れるだろうに下ろしてくれる気配が微塵も感じられなくて心臓が痛い。
「お前……あァ、入学式で鏡に魔法が使えねぇって言われてた草食動物か。ふぅん……スンスン……」
「えっヤダッ匂い嗅ぐとか変態かよキンモッ…ンギャァッ!ゴメンナサイッ!」
「……はっ。本当にちっとも魔力の匂いがしねぇ。無抵抗の相手を痛めつけるのは気がすすまないんだけどなァ」
そう言いながらも悪い笑み浮かべてるし、失言する度に襟首掴まれたまま上下に激しく揺さぶられたり、尻尾でペチペチとケツを叩かれたりしてもう十分いじめられている。
「ヒィッいよいよヤバそう!グリム〜〜ッ!頼む〜〜!助けろ〜〜!」
不機嫌オーラ全開で絶対やり返すタイプと容易に判断できて、バタバタ暴れながらグリムに助けを求めるとおずおずと木陰から出てきたグリムだったが、私を持ち上げている男にキッと睨まれただけで縮上がって固まった。
「うっ、なんだかわからねぇけど、コイツに睨まれると背中の毛がゾワゾワするんだゾ!」
「うわぁ〜!グリムの役立たず〜!」
相棒が頼りにならないとわかってより一層ブラブラバタバタしてどうにか抜け出そうと暴れるけど、ネクタイやシャツが首を絞めてくるだけで無駄な足掻きだった。
「事故でも何でもこのレオナ様の尻尾を踏んだ挙句に肘まで入れた事実には変わりねぇだろ?なんにもナシってそりゃねぇだろ?歯の1本くらい置いてけよ」
「ちょっと待ってください!確かに踏んづけてエルボー決めた私が悪いですが、歯は一生物ですよ!前歯なんか折られたら…アッでも乳歯なら永久歯生えてくるからいいか?じゃあ、このちょうど生え変わりそうな奥歯の1本で勘弁してください」
「は?いや、何でお前が折る歯を決めてんだ。歯医者じゃねぇぞ」
「歯の1本って条件出したのそっちじゃないですか。条件守ってるし、せめて折る歯くらい選ばせてくれたっていいじゃん!わがままですよ!もうっ!」
「この状況で逆ギレだと…?何だコイツ」
すっかり暴れのをやめて条件を呑みつつどうにか被害を減らす方向へシフトした私の突拍子のない話にレオナと名乗った男は心底訳わからんと呆れ気味な顔をしていたが、拳は飛んでこなかった。これ幸いと私は傷跡として残らない程度に罰を受ける方向で交渉を試みる事にした。
「大体仕返しなら同じプロレス技を決めるのが筋じゃないですか?」
「………は?」
「エルボーは私が食らうと骨折れそうだからなぁ…でもどうせ受けるなら大技がいいですね」
「……………!?」
「ジャーマン・スープレックス…は脳に後遺症が残るとシャレにならないし…あっ、じゃあ筋肉バスターで行きましょう!あれなら映えるし(?)めっちゃ痛そうだけど表面上の傷跡は残らず仕返しとしても十分ですね!」
「筋肉バス…は?」
「うんうん、お互いの希望に沿ってまさにwin-win!せっかくだし、グリムに記念撮影してもらうか…グリム〜ゴーストカメラで撮って〜」
「筋肉バスターってなんなんだゾ?」
「………」
ちょっと気が触れ始めた私は何だか楽しくなって来て持ち上げられたまま、撮影のためにカメラを渡そうとグリムを呼び寄せた。そんな私と不思議そうな顔して走り寄って来たグリム(金縛りは解けたらしい)を見るレオナさん(仮)はフレーメン反応を起こした猫のような渋い顔をして見ていたかと思えば、頭が痛いと言わんばかりに空いてる手を頭に添えてため息をついていた。
「レオナさーん!」
何もされないのをいいことにグリムに筋肉バスターとは何にかを説明していると、遠くから聞き覚えない声と共にまたも犬耳に近い丸めのケモ耳族の新顔が現れた。今まで見たケモ耳達の中でも小柄で威圧感もなく、比較的話が通じそうな見た目だ。
「……」
「もー。やっぱりココにいた。レオナさん、今日は補習の日ッスよ」
「はぁ……うるせぇのが増えた」
「レオナさん、ただでさえダブってんスから。これ以上留年したら、来年はオレと同級生ッス……て、何してんスか」
この人、大人っぽくてやけに威圧感あって怖いとは思っていたが、留年してたんだな…と妙に納得した。
新たなケモ耳さんは歳の離れた怖めの先輩にも関わらず、ジトっと目を細めて呆れ顔をして補習へ向かうように急かすので、これは流れ的に無傷で解放されるのでは?とホッとする私の思考を読み取ったようにレオナと呼ばれた人は突然ゆらりと動き出したかと思えば、おもむろに私を側にあったちょっと高い木の方へ放り投げた。
「ファッ!?」
すると不思議なことが起こって、ちょうどいい木の枝の先に制服の襟元が引っ掛かって私は再び宙吊りにされた。いやそうはならんやろ!!!魔法か!?
「今度俺の縄張りに入る時には気を付けろよ。草食動物ども」
「え?何なんすかこの状況……て、レオナさん足早っ!」
「ちょっ!えっ放置!?マァアッ?!!」
イライラしてるんだろうなとは思っていたけども、去り際にこんな仕打ちをされるとは予想外でぶらぶら揺れながら遠くなった足下でぐるぐる回って焦っているグリムと終始騒いでいた。
そんな生産性のないやり取りをしばらく続けていると、
「おーい、向こうに道具あったぞ…て、ええっ!?何だ、この状況っ!?」
「ブハッ!ちょっと目をはなした隙にスゴいことなってんじゃん」
「笑い事じゃないんだけど、とにかく降ろしてよ〜〜っ!うぇぇえ゛え゛んっ!」
道具を調達して来たデュースとエースがこの意味の分からない状況に仰天したり、爆笑したりでひとしきりリアクションした後に私は無事に救出された。
アクシデントはあったものの、予定通り道具を揃えて栗拾いに赴いた私達は落ちている毬栗をポイポイとカゴに投げ込んでいると、ずっとウズウズしていたエースが口を開いた。
「…で?何をどうすればあんな仕打ちされる訳?」
どうも先ほど目を離した隙に木に吊るされるまでの経緯が知りたくて仕方ない様子のエース。
「それな〜お前らと別れた後にな…道端で昼寝してた人のさ、尻尾踏んじゃって」
「尻尾?昼寝してたのはサバナクローの生徒だったのか?」
エースの背後で黙々と栗をカゴに投げ入れながらクソ外ししていたデュースがぬるっと会話に入ってくる。どうやらかなり気になっていたようだ。
「…ライオン?みたいな耳も付いてたし、そうかも。腕章は確認出来なかったけど…まぁ、とにかく尻尾踏んでさ。その後足がもつれてすっ転んだんさ」
「わかった!尻尾踏んだ上に下敷きにしたんだろ」
「ん〜おしい!いや〜誤って肘を腹に叩き込んでしまって」
「肘を!?全体重を乗せた会心の一撃を浴びせたのか!?」
「まぁ…事故なんですけど、浴びせてしまったのは事実よね」
あくまでも故意ではないと言いつつも、攻撃したのは私からなので話を聞いていた2人は思わず作業する手を止めて、やったなコイツと言いたげな目で見てくる。
「そりゃキレるわ〜なんなら殴られても不思議じゃないね」
「コイツ、実際に殴られそうになってたんだゾ」
何気に一番真面目に栗を拾っていたグリムが魔法で浮かせた栗をゆっくりカゴに放り込みながらしみじみと語った。
「それな〜そんで首根っこ引っ掴まれて持ち上げられちゃってさ。歯一本寄越せって言われた…」
「やっぱキレてるじゃないか…そこからどうしてああなるんだ?」
「入学早々から前歯欠けてるとか、冗談じゃないじゃん?だからちょうど抜けそうで抜けない乳歯があったから、これ引っこ抜いて差し上げますって言ったのよ」
この私の回答で2人は一瞬固まった。
「は?歯を寄越せって言われてマジで歯を渡そうとしたってコト?」
「だって歯の指定はされてないし…」
「確かにそうだな。その脅し文句でまさか相手が歯を指定してくるとも思わないだろうな」
「いやいやいやいやッ感心するとこじゃねーだろ!そんな返ししたら問答無用で拳飛んできてもおかしくねーって!その後どうなったんだよ!?」
「まぁ…やっぱ乳歯じゃやだって言うから…わがままだなって責め立てて、そもそもやり返すなら同じプロレス技じゃないとフェアじゃないって抗議したわけ」
「?????…た、確かに!プロレス技のエルボーを入れたんだからやり返されるなら同じプロレス技か…?」
「いやッ馬鹿ッ!全っ然理解できてないんだから納得すんな!」
「そんでどうせプロレス技味わうなら大技がいいよなって話して… 筋肉バスターがいいなって希望出してせっかくだし記念写真も撮りたいと思ってグリムに頼んだ」
「そん時のアイツ、すっっぱいもの食べたような変な顔して怖くなくなったんだゾ」
「そりゃどう料理してやろうかと思った相手が自分からこんなレシピどうすか?とか言い出したらドン引きするでしょ…絶対頭おかしいと思われてるってそれ」
「まぁ確かに今思うと頭おかしくなっていたかもしれない…そんでその後なんか別に知らん人が来て、その人のこと連れてってくれたんだけど…その去り際になんか…吊るされたわ…」
ここまで話して、宇宙ネコみたいな顔までされたらあの時の自分の異常性を理解せざるおえない。
「最終的に全部面倒になったけど、やられっぱなしはムカつくから最後に嫌がらせをしたって訳ね、完全に理解した」
「まぁ…吊るされるだけで怪我もないし、よかったんじゃないか?」
「ボコられなかっただけいい方か…今思えば筋肉バスターなんかかけられたら、栗集めどころじゃなかったな。よかった」
むしろ何であんなに積極的に受けたがっていたのか、今では不思議だ。酷い目にはあったが無傷で済んだのは幸運だった。
「うし、かなりたくさん拾えたしこんなもんっしょ。トレイ先輩のとこ持って行こーぜ!」
そうしてワイワイ話してる間に3つのカゴに山盛りの栗が集まり、栗集めミッションを難なくクリアした私達はホクホク顔で食堂の厨房で待っていたトレイ先輩にカゴいっぱいの栗を見せた。
「おかえり。おおっ、ずいぶんたくさん拾えたな。偉いぞ」
「ええ、頑張りましたねー…ホントに」
「なんか含みがあるなぁ…さて、これだけの量を捌くのは大変だと思うが…頑張れよ!」
「アッハイ…」
「これ、全部か……気が遠くなるな……」
張り切って大量に拾った栗、当たり前だけどもこの後調理するためにまずこのトゲトゲの殻を剥かなければならない。至極当然の事実を突きつけられて先ほどまでの達成感がスッと拭われ、あんなに誇らしかった山盛りの毬栗にもてる感情が今では絶望しかない。
魔法が使えない状態のエースもそんな感じで気だるげな空気の中、始まった殻剥き作業だったが男子高校生とは何でも楽しみに変えられるお年頃…ぱっくりと上手く殻を破れたらそれだけで楽しくなり、
中の栗が綺麗な状態であればさらに嬉しくなって調子に乗れるので単純な生き物である。
「見ろよ幸緒!めちゃくちゃ綺麗に剥けた!」
「オッ…ソウダナ」
お通夜みたいな雰囲気はたかだか栗が綺麗に剥けただののみみっちい事でキャッキャっと盛り上がりはじめ、褒め上手なトレイ先輩によって競い合いに発展してるのだから先輩は煽てるのが上手いなと感心した。
「おっ、オマエッ何してるんだゾ!?」
「何って…殻剥いてるんだが」
競争に夢中だったグリムが床に転がした毬栗をひたすらに踏みつけまくっている私を見て気でも狂ったのかと悲鳴を上げた。ざわつく厨房内の様子からイレギュラーは私の方だと気づき、日本では靴底で中の栗を潰さないように毬栗を割るのがわりと一般的な剥き方だと説明するが、この世界では異端らしく皆目を丸くしていた。
エースが丁寧に小道具を使いつつ手で剥いてるのを見て気づくべきだったが、小さい頃から外で落ちている毬栗見つけては靴で踏んで中の栗を取り出して喜んでたほどに馴染んでいたので海外で通じない日本独自の文化だったかと衝撃を受けた。そもそも魔法で剥いているような世界だし、文化以前の問題だった。
中の栗の安否を気にしているであろうグリムに毬栗の裂け目から栗を取り出して手渡してやると皆と同じく綺麗に剥けた栗を見て驚いてて、その素直な反応には不覚にも可愛いらしさを感じた。
毬栗の中の栗を一気に回収し、転がっていた不要な毬栗を片付ける。ひたすらこれを繰り返していると、魔法を使えないために同じく手作業を強いられてバカ丁寧に小道具を駆使しながら手で剥いていたエースがいつの間にか同じように栗を剥いていた。初めは恐る恐るだったエースもこの方法のが手も荒れないし、楽だと気付いたらしい。
それから魔法で栗を剥く3人の活躍もあり、毬栗から栗を取り出す作業は素早く終わった。
しかしこの後にさらに栗の殻を剥き、マロンクリームを作るために丁寧な裏ごし作業、と一見華やかそうなお菓子作りを存分に体験して裏ごしが完了した時点でエースとデュース、グリムは疲れ果ててイスに身を預けてぐったりしていた。
料理の中でも工程の多いお菓子のレシピに全く料理なんてしたことない男子高校生が手を出せばこうなる。あまりに想定通りに疲れ切った様子を見ていると哀れさに少しくらい労わってやるかと、慈愛の心を持つ私はちょっとした休息の間に、たまった洗い物をせっせと済ませた。
そんな仏心を見せていると同寮でありながら料理に無知な後輩2人を揶揄ってニコニコ笑っていたトレイ先輩が作業台に置いてある材料を見て少し困ったような反応を零した。
何でも私達が張り切って栗を集めてきたために栗以外の材料が当初用意した量だと足りないのだそうだ。
ここに来て発生したお使いクエストを嫌な顔一つせずに立候補するのは先ほどまでぐったりしていた青い方、デュースだった。赤い方はいまだにダラーっとイスに座ってテーブルに突っ伏している。
張り切ってお使いメモを取っていたデュースだったが、側から聞いていても先輩の注文は中々多くて1人で持って帰るのは大変そうだ。
人手がいりそうだなーなんて思いながらぐったりするエースの隣で頬杖をついていると、考え込んでいた様子のデュースと目が合った。
「監督生、一緒に来てくれるか?」
普通荷物持ちに誘うのは男子のエースじゃないんかいと思ったが、自分がまず女子として認識されていないことを思い出して複雑な気持ちになった…が、デュースのこの真っ直ぐな眼差しから私はエースやグリムより信頼されていると思い込むことで心を強く保った。
「がってん承知の助よ!!」
「がっ???……うん(?)とりあえず気合い十分だな!頼りにしてるぞ」
「オレ様も行くんだゾッ!もう粉をマゼマゼするのは疲れた〜!」
息抜きになるし、ミステリーショップの品揃えを確認するいい機会だとも思い颯爽と買い物へ繰り出したデュースと私の後を好奇心旺盛な様子のグリムがパタパタ走って追いかけてきた。
頼んだぞと手を振って見送ってくれるトレイ先輩とダラダラしながらも一応手を振るエースを背に私達は食堂を後にした。