カルエゴ夢
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
学園の古い石壁は冷たい冷気を帯びていて、窓から差し込む光は揺らめき、まるで時が少し歪んでいるかのよう。
バビルスで教師になって数年。学生時代も過ごしたこの学び舎は、懐かしさと同時に、いつもどこか不思議な空気をまとっていた。
ある日、授業が終わった後の静かな時間帯に、一人の男子生徒に呼び出された。
「🌸先生、ちょっと話したいことがあって……」
と、彼はうつむきながら言った。授業の質問かな?
「いいよ、どこで話す?」
と気軽に答えてしまったのがすべての始まりだった。
生徒に導かれるまま、教室から少し離れた廊下を歩く。この時間は、生徒たちが寮や師団活動へ散っていくため、辺りはひっそりとしていた。足音がコツコツと響く中、隣の彼は黙って下を向き、肩を縮めている。
ぎこちない歩き方が気になって、
「……大丈夫?」
と声をかけたけど、彼は小さくうなずくだけ。
その様子に、胸の奥である予感がよぎった。これは、もしかして……。
突然、彼が足を止めた。私も慌てて立ち止まると、彼はゆっくり顔を上げ、熱のこもった目で私を見つめた。
「🌸先生……好きです。付き合ってください!」
やっぱり。そんな気はしていたのだ。
一瞬動揺してしまったが、すぐに教師の顔を保とうとした。ここバビルスでは、悪魔である生徒たちが欲求に素直になるのは日常茶飯事。でも、教師として生徒との境界は守らなきゃ。傷つけないよう、でもはっきり断る。
「ごめんね。気持ちは嬉しいけど、応えられないわ」
彼の表情が曇る。
「……僕が生徒だからですか?」
拳を握りしめ、苦しげに私を見る。揺れる瞳は幼くて、でもその奥に燃えるような情熱が見えた。
「確かに、僕はまだ学生だけど……でも、先生への気持ちは本物です!」
いきなり彼が手を伸ばしてきて、あまりの速さに、身体が硬直する。
このままじゃ、押し倒されてしまう! でも、力ずくで弾き返せば、怪我をさせてしまうかも。教師としてそれは避けたいのに、迫る興奮した顔に頭が回らない。
――間に合わない……!
その時、バチッと音がして、電撃のような閃光が走った。生徒は「うわっ!」と叫んで手を引き、後ろに尻餅をついた。
「粛に」
低い、冷徹な声が響く。振り返ると、そこにはカルエゴ先生が立っていた。三白眼の鋭い視線が生徒を貫き、厚手のコートが微かに揺れている。
さっきの雷撃は、ケルベロスの力によるものだろう。学生時代、首席で入学した彼は、今も理事長に次ぐ実力者として知られている。
「生徒といえど、度を越せば粛清の対象だ」
冷たく言い放つ彼に、生徒は震え上がり、青ざめて私と先生を交互に見る。私は急いで生徒のそばに寄り、しゃがんで声をかけた。
「ごめんね。 これ以上、君を傷つけたくないの。 教室に戻ってくれる?」
彼はこくりとうなずき、よろめきながら逃げるように去っていった。
廊下に再び静寂が戻る。私はホッと息をつき、カルエゴ先生に向き直った。
「カルエゴ先生、ありがとうございます。 本当に助かりました」
少し震える声で言うと、先生は眉を寄せ、じっと私を見据える。あの冷ややかな眼差し。新任の頃から何度も心臓を掴まれる思いをした。
「ふん。貴様の甘さが、私の手を煩わせることになった」
彼の言葉に、返す言葉が見つからない。
さっきのは確かに、優しすぎたかも。生徒を思うことは大事だけど、悪魔の性質を忘れちゃいけない。その甘さに付け込まれることだってある。
「でも、私なんて滅多に告白されないですし、そんなに心配しなくても……」
「現に、襲われそうになったのに?」
カルエゴ先生の声が低く響く。眉間の皺がさらに深くなり、思わず背中に冷や汗が流れた。
「で、でも! 次はガツンとお断りするので!」
曖昧に笑って誤魔化そうとしたが、カルエゴ先生の機嫌は悪くなる一方で。私の軽い態度が、火に油を注いでいるみたいだ。
そして、問題児クラスの生徒を叱るような目で私を睨みつけた。
「🌸、私と資料室に来い」
「え? カルエゴ先生と?」
一瞬、頭に疑問符が浮かぶ。資料室? 何か用事かな。次の授業の資料を探す予定だったし、ちょうどいいかもと思いつつ、カルエゴ先生の後に続いた。
——
静かな廊下を抜け、薄暗い階段を下りていく。やがて、資料室の重い扉が目の前に現れた。
資料室に足を踏み入れると、埃っぽい空気と古い紙の匂いが鼻をくすぐる。窓から差し込む光は薄く、書棚の影が床に長く伸びている。
先生は無言で扉を閉め、後ろ手に鍵をかけた。カチャリという音に、小さな胸騒ぎを感じた。
「🌸、今から告白の断り方を練習する。私を生徒だと思って、きっちり対応しろ」
「え! ちょっと待ってください、カルエゴ先生!」
急な提案に声が上ずった。練習? しかも相手が先生? 無理があるに決まってる!
「待たん。次に襲われたらどうする? 生徒は守るべき宝だが、悪魔だ。甘く見ると、食い物にされるぞ」
カルエゴ先生の真剣な眼差しに言葉が詰まる。そうだ。これは教師としての訓練。バビルスで生きる以上、甘い考えは捨てなきゃいけない。私は深く息を吸い、腹をくくった。
「わかりました。お願いします」
そう言うと、先生がゆっくり近づいてくる。黒いコートが揺れ、紫の髪が薄暗い光によく映える。
向けられた視線は、まるで私の心の奥まで見透かすようで、距離が縮まるごとに心拍が上がる。
「🌸先生、好きだ。付き合ってくれ」
その言葉に、顔の熱が一気に集中し、首まで熱くなった。さっきの生徒のときと同じ台詞なのに、カルエゴ先生の低い声には重みがありすぎる。バビルスの筆頭教師として尊敬する人。問題児クラスの担任として生徒を導く姿。そして、あの端正な容姿。知ってるはずなのに、こんな近くで……。
「あ、いえ……応えられません……」
はっきり断らなきゃいけないのに、声が震えてしりすぼみになってしまう。これは練習だ、しっかりしなきゃ! そう思って一歩後ずさると、カルエゴ先生はさらに踏み込んでくる。鋭い瞳が、じっと私を捉えて離さない。
「どうしても?」
「どっ、どうしても……」
次の瞬間、先生が手首を優しく掴み、引き寄せる。距離の近さに息が止まる。普段の厳格な顔しか知らないのに、今、目の前にあるのは、整った眉、深い色の瞳、シャープな顎のライン。その全てに釘付けになる。
「そんなに顔を赤らめてるのに?」
先生の指先が頰をなぞる。その感触に、心臓が暴れ出し、「ひゃ……」と情けない声が漏れ、ぎゅっと目を閉じてしまった……。
なんとか気持ちを立て直して――。
「おい。ガツンと断るんじゃなかったのか」
ピン! と額に軽い痛み。
デコピン!? 目を開けると、カルエゴ先生が呆れたように私を見下ろしている。ても口元には、薄い笑みが浮かんでいた。 ドSめ……。
「だって……いくら練習でも、相手がカルエゴ先生じゃ無理です! あんな整った顔が近くに来たら、誰だって正気じゃいられないですよ!」
半ばやけくそで叫ぶと、先生は一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの仏頂面に戻り、深い溜息。
「全く。貴様は危機感が足りん」
資料室の薄明かりの下、先生は机へ向かい、書類を片付け始める。まるでさっきの“練習”がただの業務の延長だったかのように、淡々と。
でも、私の心臓はまだドクドクと鳴りやまない。あの真剣な眼差し、間近で感じた息遣い、触れた指先の温もり――全部が頭の中でぐるぐると渦を巻いている。練習のはずなのに、どうしてこんなに動揺するんだろう。
「🌸、突っ立ってないで、これを整理しろ」
「は、はい! すぐ!」
先生の声に我に返る。机にはいつの間にか資料の山。いつもの厳しい調子だけど、どこか柔らかさを感じる。気のせいかな?
「まったく……。 次はまともな断り方を考えておけ。 デコピンで済むと思うな」
そう言い残し、先生は先に部屋を出て行った。
資料室に一人残され、静寂が耳に染みる。机の上の資料を手に取りながら、ふと頬が熱くなるのを感じた。あの瞬間、先生の顔が近づいた記憶がよみがえる。
「やばい……私、ほんとに危機感なさすぎかも……」
独りごちながら、慌てて整理を始める。心の片隅で、あの眼差しが、ただの練習以上の何かだったんじゃないかと、ほんの少しだけ期待してしまう自分がいた。
バビルスで教師になって数年。学生時代も過ごしたこの学び舎は、懐かしさと同時に、いつもどこか不思議な空気をまとっていた。
ある日、授業が終わった後の静かな時間帯に、一人の男子生徒に呼び出された。
「🌸先生、ちょっと話したいことがあって……」
と、彼はうつむきながら言った。授業の質問かな?
「いいよ、どこで話す?」
と気軽に答えてしまったのがすべての始まりだった。
生徒に導かれるまま、教室から少し離れた廊下を歩く。この時間は、生徒たちが寮や師団活動へ散っていくため、辺りはひっそりとしていた。足音がコツコツと響く中、隣の彼は黙って下を向き、肩を縮めている。
ぎこちない歩き方が気になって、
「……大丈夫?」
と声をかけたけど、彼は小さくうなずくだけ。
その様子に、胸の奥である予感がよぎった。これは、もしかして……。
突然、彼が足を止めた。私も慌てて立ち止まると、彼はゆっくり顔を上げ、熱のこもった目で私を見つめた。
「🌸先生……好きです。付き合ってください!」
やっぱり。そんな気はしていたのだ。
一瞬動揺してしまったが、すぐに教師の顔を保とうとした。ここバビルスでは、悪魔である生徒たちが欲求に素直になるのは日常茶飯事。でも、教師として生徒との境界は守らなきゃ。傷つけないよう、でもはっきり断る。
「ごめんね。気持ちは嬉しいけど、応えられないわ」
彼の表情が曇る。
「……僕が生徒だからですか?」
拳を握りしめ、苦しげに私を見る。揺れる瞳は幼くて、でもその奥に燃えるような情熱が見えた。
「確かに、僕はまだ学生だけど……でも、先生への気持ちは本物です!」
いきなり彼が手を伸ばしてきて、あまりの速さに、身体が硬直する。
このままじゃ、押し倒されてしまう! でも、力ずくで弾き返せば、怪我をさせてしまうかも。教師としてそれは避けたいのに、迫る興奮した顔に頭が回らない。
――間に合わない……!
その時、バチッと音がして、電撃のような閃光が走った。生徒は「うわっ!」と叫んで手を引き、後ろに尻餅をついた。
「粛に」
低い、冷徹な声が響く。振り返ると、そこにはカルエゴ先生が立っていた。三白眼の鋭い視線が生徒を貫き、厚手のコートが微かに揺れている。
さっきの雷撃は、ケルベロスの力によるものだろう。学生時代、首席で入学した彼は、今も理事長に次ぐ実力者として知られている。
「生徒といえど、度を越せば粛清の対象だ」
冷たく言い放つ彼に、生徒は震え上がり、青ざめて私と先生を交互に見る。私は急いで生徒のそばに寄り、しゃがんで声をかけた。
「ごめんね。 これ以上、君を傷つけたくないの。 教室に戻ってくれる?」
彼はこくりとうなずき、よろめきながら逃げるように去っていった。
廊下に再び静寂が戻る。私はホッと息をつき、カルエゴ先生に向き直った。
「カルエゴ先生、ありがとうございます。 本当に助かりました」
少し震える声で言うと、先生は眉を寄せ、じっと私を見据える。あの冷ややかな眼差し。新任の頃から何度も心臓を掴まれる思いをした。
「ふん。貴様の甘さが、私の手を煩わせることになった」
彼の言葉に、返す言葉が見つからない。
さっきのは確かに、優しすぎたかも。生徒を思うことは大事だけど、悪魔の性質を忘れちゃいけない。その甘さに付け込まれることだってある。
「でも、私なんて滅多に告白されないですし、そんなに心配しなくても……」
「現に、襲われそうになったのに?」
カルエゴ先生の声が低く響く。眉間の皺がさらに深くなり、思わず背中に冷や汗が流れた。
「で、でも! 次はガツンとお断りするので!」
曖昧に笑って誤魔化そうとしたが、カルエゴ先生の機嫌は悪くなる一方で。私の軽い態度が、火に油を注いでいるみたいだ。
そして、問題児クラスの生徒を叱るような目で私を睨みつけた。
「🌸、私と資料室に来い」
「え? カルエゴ先生と?」
一瞬、頭に疑問符が浮かぶ。資料室? 何か用事かな。次の授業の資料を探す予定だったし、ちょうどいいかもと思いつつ、カルエゴ先生の後に続いた。
——
静かな廊下を抜け、薄暗い階段を下りていく。やがて、資料室の重い扉が目の前に現れた。
資料室に足を踏み入れると、埃っぽい空気と古い紙の匂いが鼻をくすぐる。窓から差し込む光は薄く、書棚の影が床に長く伸びている。
先生は無言で扉を閉め、後ろ手に鍵をかけた。カチャリという音に、小さな胸騒ぎを感じた。
「🌸、今から告白の断り方を練習する。私を生徒だと思って、きっちり対応しろ」
「え! ちょっと待ってください、カルエゴ先生!」
急な提案に声が上ずった。練習? しかも相手が先生? 無理があるに決まってる!
「待たん。次に襲われたらどうする? 生徒は守るべき宝だが、悪魔だ。甘く見ると、食い物にされるぞ」
カルエゴ先生の真剣な眼差しに言葉が詰まる。そうだ。これは教師としての訓練。バビルスで生きる以上、甘い考えは捨てなきゃいけない。私は深く息を吸い、腹をくくった。
「わかりました。お願いします」
そう言うと、先生がゆっくり近づいてくる。黒いコートが揺れ、紫の髪が薄暗い光によく映える。
向けられた視線は、まるで私の心の奥まで見透かすようで、距離が縮まるごとに心拍が上がる。
「🌸先生、好きだ。付き合ってくれ」
その言葉に、顔の熱が一気に集中し、首まで熱くなった。さっきの生徒のときと同じ台詞なのに、カルエゴ先生の低い声には重みがありすぎる。バビルスの筆頭教師として尊敬する人。問題児クラスの担任として生徒を導く姿。そして、あの端正な容姿。知ってるはずなのに、こんな近くで……。
「あ、いえ……応えられません……」
はっきり断らなきゃいけないのに、声が震えてしりすぼみになってしまう。これは練習だ、しっかりしなきゃ! そう思って一歩後ずさると、カルエゴ先生はさらに踏み込んでくる。鋭い瞳が、じっと私を捉えて離さない。
「どうしても?」
「どっ、どうしても……」
次の瞬間、先生が手首を優しく掴み、引き寄せる。距離の近さに息が止まる。普段の厳格な顔しか知らないのに、今、目の前にあるのは、整った眉、深い色の瞳、シャープな顎のライン。その全てに釘付けになる。
「そんなに顔を赤らめてるのに?」
先生の指先が頰をなぞる。その感触に、心臓が暴れ出し、「ひゃ……」と情けない声が漏れ、ぎゅっと目を閉じてしまった……。
なんとか気持ちを立て直して――。
「おい。ガツンと断るんじゃなかったのか」
ピン! と額に軽い痛み。
デコピン!? 目を開けると、カルエゴ先生が呆れたように私を見下ろしている。ても口元には、薄い笑みが浮かんでいた。 ドSめ……。
「だって……いくら練習でも、相手がカルエゴ先生じゃ無理です! あんな整った顔が近くに来たら、誰だって正気じゃいられないですよ!」
半ばやけくそで叫ぶと、先生は一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの仏頂面に戻り、深い溜息。
「全く。貴様は危機感が足りん」
資料室の薄明かりの下、先生は机へ向かい、書類を片付け始める。まるでさっきの“練習”がただの業務の延長だったかのように、淡々と。
でも、私の心臓はまだドクドクと鳴りやまない。あの真剣な眼差し、間近で感じた息遣い、触れた指先の温もり――全部が頭の中でぐるぐると渦を巻いている。練習のはずなのに、どうしてこんなに動揺するんだろう。
「🌸、突っ立ってないで、これを整理しろ」
「は、はい! すぐ!」
先生の声に我に返る。机にはいつの間にか資料の山。いつもの厳しい調子だけど、どこか柔らかさを感じる。気のせいかな?
「まったく……。 次はまともな断り方を考えておけ。 デコピンで済むと思うな」
そう言い残し、先生は先に部屋を出て行った。
資料室に一人残され、静寂が耳に染みる。机の上の資料を手に取りながら、ふと頬が熱くなるのを感じた。あの瞬間、先生の顔が近づいた記憶がよみがえる。
「やばい……私、ほんとに危機感なさすぎかも……」
独りごちながら、慌てて整理を始める。心の片隅で、あの眼差しが、ただの練習以上の何かだったんじゃないかと、ほんの少しだけ期待してしまう自分がいた。
2/2ページ
