嘘つき。
昼休み。図書室。
零に話があると言われた牧生は、借りていた本の返却も兼ねて図書室に零を誘った。
キラを通して零との距離を縮めてきた牧生にとって、二人きりで話せる貴重な機会。
いつも背中を見つめることしか出来ない零と肩を並べて歩いているだけで、牧生は幸せな気分だった。
図書室に入ると受付も含め生徒は数人しかおらず、静かで穏やかな時が流れている。
牧生は本を返却し終えると室内の奥に零を案内し、二人は隣り合わせに書架を背にした。
「図書室来るの高校入って初めてかも。」
「僕はお昼食べた後によく利用してるよ。それで話ってなに?」
逸る気持ちを押さえつつ牧生は零の横顔をじっと見つめる。
零は周囲に人がいないことを確認すると、腕を組み躊躇いがちに話を切り出した。
「牧生、今彼女いるか?」
「彼女はいないけど好きな人はいるよ。」
「キラだったら泣かすぞ。」
「違うってば。」
「今までに付き合ったことは?」
「………。」
「え?!お前ど…」
「帰る。」
「悪かった!頼むから聞いてくれ!キラとキスから進まないんだ。どうしたらいい?」
なんとも可愛らしく期待外れな話に、二人きりで話せることに浮かれていた牧生の眉間にシワが寄る。
(零がただの男になってる…。)
落胆の思いはキラへの憎しみに変換されるも、腕を掴んで離さない零の勢いに押され牧生は暫しその場に留まった。
「零の方が経験豊富だから僕の意見は参考にならないよ。あとは、木田君に聞いてみたら。」
「キラは今までの女とは勝手が違うんだよ。達也に言ったら絶対バカにされるし。だからこそ内緒でお前に相談したいの。」
「勝手が違うなら焦る必用ないじゃん。」
「どういうこと?」
「二人とも付き合ってまだ日が浅いんだから。麻生さんは零が初めてみたいだし、遊んでた頃を基準にしたらダメだよ。」
「…言われてみれば。」
「今は麻生さんが安心したり嬉しくなるような言葉を沢山かけたり、優しく抱きしめてあげることが大事だと思う。」
『よくそこまでピエロになれるよね。』
友人としてそれらしいアドバイスを送る牧生の脳裏に晴美の言葉が浮かんでくる。
柔らかな空気を纏い恋愛に一喜一憂する零に対し、牧生は苛立ちすら感じていた。
(……冗談じゃない。)
無意識に口元を歪ませ、純粋な想いは暴走の片鱗を見せ始める。
「そうだ。零はキスする時って唇だけ?」
「ん~あとは頬や額かなぁ。」
「キスはね、部位によってそれぞれに意味があるんだよ。零がその時々で抱いた心境を麻生さんへのキスで表してみてもいいんじゃない?」
「お!それロマンチックでいいかも。」
「じゃあ、試してみる?」
牧生はおもむろに零の前に立つと、その手をとり手首にキスをする。
「えっ…」
「手首へのキスはね、欲望なんだって。」
艶を含んだ瞳を向ける牧生の様変わりに、零は思わずドキリとする。
牧生の唇が手の表面をなぞり、言葉で確かめながら優しい口づけを落としていく。
「手の平は懇願。手の甲は敬愛。指先は称賛。………」
「牧生、くすぐったいから離せ。」
「次は顔ね。額は祝福。瞼は憧憬。鼻は愛玩。零がしてくれた頬へのキスは親愛……」
「せ、説明だけでいい!なに考えてんだ?!」
「なにって僕は零のことしか考えてないよ。全部教えてあげるから、もう少し声抑えて?」
ちゅっとリップ音を立てて顔にキスをしてくる牧生に、零は動揺し頭の中が真っ白になる。
本棚と牧生の間に挟まれ身動きが取れず、無邪気な笑顔に隙をつかれた零はされるがままだった。
「耳は誘惑だっけ。零は無自覚だからなぁ。」
「ああっ……!」
吐息混じりに囁く声と耳に挿し込まれた生暖かい舌の感触に、零は体を強ばらせる。
クチュクチュと耳の奥で響く水音に羞恥し、褐色の肌をほんのり紅く染めた。
「腕は恋慕。喉は欲求。首筋は執着。背中は確認。胸は所有……」
じゃれるように甘えながら、耳から首筋、喉、鎖骨、胸元へと牧生は舌を滑らせる。
同時にシャツ越しに体をなぞる指先がもどかしく、あくまでも関節的で焦れったい愛撫に零は指を噛んで必死に声を抑えていた。
「ふっ…ふ…っく……ふぅ…」
「お腹は回帰。腰は束縛。太ももは支配。脛は服従。足の甲は隷属。つま先は崇拝。全てが愛しい僕の宝物。」
「…はっ、はぁ、…ぁ…くぅう……っ!」
自分ではどうにもならない熱量を内側に宿し、疼く体に零は涙を滲ませる。
噛んでいた零の指をそっと外し、牧生は痛々しく残る歯形の部分を優しく舐めた。
「ふふ…とろけた表情も、我慢している仕草も、僕が零にそうさせてるのかと思うとすごく興奮する。」
「…っ…お前いい加減にしろよ。なんか企んでるのか?じゃなきゃ、こんなの…」
「嘘つき。僕のこと興味あるでしょ。」
「!」
八重歯を見せて微笑む牧生の核心をついてきた言葉に、零の心が激しく揺れ動く。
「…どういう意味だ。」
「誤魔化してもダメだよ。零は記憶を取り戻していく中で、同じ人間にしか分からないシンパシィを薄々感じ始めている筈。無意識に僕を意識しながらも突き放せないその葛藤する心が、僕が零に触れることを君自身が許したんだ。」
漆黒の瞳に見透かされて何も言えず、零の体は鎖で繋がれたように動かなくなる。
「怖がらないで、零。僕に触れてみてどうだった?もっとその先を知りたくない?」
近づく唇を拒絶することが出来ず、零は牧生から目が離せなくなっていた。
「樫野君。」
か細くも芯のある声に心を引き戻され、零と牧生は同時に視線を向ける。
「キラ…。」
呆然と立ち竦むキラにかける言葉が浮かばず、零はただキラを見つめていた。
(本当、都合のいい女。)
牧生は状況に見切りをつけると、いつもの穏やかな微笑みでキラに話しかけた。
「麻生さんはいつからここに?」
「……あ、えっと、樫野君は図書室だって晴美ちゃんが……今来たばかりで………その、二人は…」
「読みたい本が丁度見つかってね。でも、また誤解させちゃったかな。」
牧生は零の顔の真横にあった本を一冊本棚から取り出すと、安心させるようにキラに見せる。
「そうなんだ…。」
ホッと胸を撫で下ろしたキラが零に近づこうとした瞬間、牧生は零を抱き寄せその髪にキスをする。
「あっ…」
「牧生!」
「じゃあ、僕先に行くね。」
顔を真っ赤にして睨む零とポカンと口を開けたままのキラの反応を楽しむように微笑って、牧生はその場を後にした。
「わりぃ。ヘンなとこ見せたな。」
罰の悪そうな顔をする零に対し、キラはなにかを決意したように頷いていた。
「私。桐島君に負けないように頑張る。」
「なんだそれ。キラはそのまんまでいいんだよ。」
キラの頭を優しく撫でながらも、零の胸の内で牧生の言葉が引っ掛かったまま離れずにいた。
(髪にしたキスの意味、零に伝わるといいな。)
本を持ったまま後ろ手に組み、外の景色を見ながら零と歩いてきた廊下を牧生は一人で歩く。
零。僕は君を逃がさない。
一度失いかけて再び見つけた僕の宝物。
いずれ君から僕を求めてくる。
僕らは運命で結ばれているんだ。
end.
午休。图书馆。
零说和他有些话要谈,牧生便兼着去还书的时机约了零在图书馆见面。
对通过绮罗和零缩短了距离的牧生来说,这是两个人单独说话的珍贵机会。
一直只能凝视零的背影,能和零并肩走,牧生就感到十分幸福。
走进图书馆,包括接待在内只有零散几个学生,时间平缓地流动着。
牧生还了书带着零走到图书馆深处,两人背对书架相邻站着。
「进图书馆,从高中以来还是第一次吧。」
「我在吃了午饭之后经常来这里呢。那么,想谈的是?」
压抑着兴奋的心情,牧生紧紧盯着零的侧脸。
确认过周围没有其他人,将双手抱在胸前的零犹豫着开了口。
「牧生,现在有女朋友吗?」
「虽然没有女朋友,但是有喜欢的人了。」
「是绮罗的话我让你哭哦。」
「不是啦。」
「至今为止,恋爱经验?」
「………………。」
「欸?!你…」
「我回去了。」
「抱歉!拜托了!听我说!和绮罗就只进行到kiss啊。怎么办才好?」
和期待完全相反的对话,让因能两个人单独说话而雀跃的牧生微微皱眉。
(零变成了一个普通的男人…)
零抓住了牧生的手臂。内心的失落化为了对绮罗的憎恨,而又被零那一瞬的气场所压制,暂时停住了脚步。
「零才经验比较丰富吧,我的意见没法成为参考的啊。然后,不如去问问木田?」
「绮罗的情况和至今为止交往过的女孩完全不一样啊。而且和达也讲绝对会被当成傻子。所以才秘密地来和你商量啊。」
「情况不同的话,就没有必要着急了嘛。」
「怎么说?」
「因为两个人交往的日子还不长啊。麻生的初恋好像就是零呢,不能以你之前的那些作为基准啊。」
「…比如说。」
「我觉得现在多说些能让麻生感到安心、快乐的话,温柔地拥抱她是很重要的。」
『居然能做到那个地步啊。』
牧生说着像是普通朋友一样提出建议,脑中浮现了晴美的话。
对着因甜蜜恋爱而一喜一忧的零,牧生感觉越发焦躁。
(……不是开玩笑的。)
无意识地勾起嘴角,纯粹的向往渐渐开始有了暴走的迹象。
「对了。零接吻的时候,只有嘴唇吗?」
「嗯~然后还有脸颊和额头吧。」
「kiss啊,部位不同的话所包含的意思也不同哟。用kiss把零在那个时候的心情传达给麻生不也很好吗?」
「哦!这样说不定很浪漫哎。」
「那么,试试吗?」
牧生慢慢地站到零面前,抓起零的手,在手腕上落下一个吻。
「欸…」
「落在手腕上的的吻是欲望。」
牧生泛着光的瞳孔直视着零,瞬间的变化让零下意识地一惊。
牧生的唇慢慢地描绘着手的形状,一边说着一边温柔地落下一个又一个吻。
「手掌是恳求。手背是敬爱。指尖是称赞。………」
「牧生,很痒哎,放开我。」
「然后是脸。额头是祝福。眼是憧憬。鼻尖是欣赏。零给予我的脸颊上的吻是亲切……」
「只,只要说明就够了!你在想什么啊?!」
「想什么的话,我的脑中只有零啊。我会把全部都教给你的,所以再抑制下声音吧?」
面对chu地一下吻在自己脸颊上的牧生,零动摇了,脑中变得一片空白。
被夹在书架的牧生当中无法动弹,又被天真的笑容迷住了眼睛的零就保持着被动的状态。
「耳朵是诱惑。零真是没有自觉啊。」
「嗯嗯……!」
混杂着吐息的私语和插入耳中的温热的舌头的触感让零一下僵直了身体。
令人感到羞耻的水声回响在耳中,褐色的皮肤染上了些浅红。
「手臂是爱慕。喉结是欲求。脖子是执着。背是确认。胸是所有……」
一边是撒娇般的语气,一边从耳朵到脖子、喉结、锁骨、胸口,牧生的舌头一路向下。
同时越过衬衫的手指轻轻得描绘着零的身体。若即若离令人焦急的爱抚让零咬着自己的手指,必死地压抑着声音。
「唔…唔…嗯……唔…」
「肚子是回归。腰是束缚。大腿是支配。小腿是服从。脚背是隶属。脚尖是崇拜。全部都是我可爱的宝物。」
「…哈,嗯…啊…唔唔……唔!」
自己无法克制的热量在身体内侧蔓延,一阵阵的疼痛让零渗出了泪水。
让零松开咬着的手指,一脸心疼的牧生温柔地舔着留下齿痕的部分。
「fufu…染上欲情的表情也好,忍耐的举动也好,只要想到是我让零做出这些举动的,我就非常的兴奋呢。」
「…唔…你给我适可而止。你到底在谋划些什么?不是这样的话,这样的…」
「说谎。零其实是对我有兴趣的吧。」
「!」
零的心因为露出虎牙微笑着的牧生一针见血的话而动摇了。
「…什么意思。」
「装傻是不行的哟。零在恢复记忆的时候,应该隐约感觉到了只有同样的人才能了解到的共鸣吧。零你下意识在意着我的同时,那颗无法抛开纠葛的内心,容许了现在触摸着零的我。我现在的行为是你自身默许了的。」
被漆黑的瞳孔看穿了一样,零一句话都说不出来,身体像是被锁链缠住零一般,无法动弹。
「不要害怕,零。被我碰触的感觉怎么样?不想继续下去吗?」
无法拒绝靠近的嘴唇,零变得无法将目光从牧生的身上移开。
「樫野君。」
纤细却鉴定的声音将两人拉了回来、零和牧生同时将视线移了过去。
「绮罗…」
对着呆立不动的绮罗,零一下说不出任何话来只是一直盯着她看。
(真的是,这女人时机都选的真好。)
牧生放弃了继续的念头,带着和往常一样温和的微笑和绮罗搭话。
「麻生什么时候来的?」
「……啊,那个,晴美说樫野君在图书馆……我刚刚才到………那个,你们两个…」
「正好找到了想读的书呢。但是,好像又被误会了呢。」
牧生从零脸旁的书架上抽出一本书,像是为了让绮罗感到安心。
「是这样啊…。」
在松了口气轻抚着胸口的绮罗靠近零的瞬间,牧生将零抱在怀中,在发上落下一个吻。
「啊!…」
「牧生!」
「那么,我先走啦。」
像是被两人的反应取悦了的牧生把涨红了脸瞪着自己的零和张着嘴一脸呆楞的绮罗丢在了身后。
「抱歉。让你看到奇怪的场面了。」
对着显得有些尴尬的零,绮罗像是下了什么决心的样子点了下头。
「我。我会努力不输给桐岛君的。」
「那话什么意思。绮罗就这样就好了。」
温柔地摸着绮罗的头,但牧生的话仍在零的心中回荡不去。
(落在头发上的吻的意思,传达给零就好了。)
就着拿着书的姿势把双手背在身后,牧生望着外面的景色一个人走在刚和零一起走过的走廊。
零。我不会让你逃走的。
一旦失去就再也无法找到的我的宝物。
迟早有一天,你会主动渴求我。
我们是被命运连结在一起的。
end.
零に話があると言われた牧生は、借りていた本の返却も兼ねて図書室に零を誘った。
キラを通して零との距離を縮めてきた牧生にとって、二人きりで話せる貴重な機会。
いつも背中を見つめることしか出来ない零と肩を並べて歩いているだけで、牧生は幸せな気分だった。
図書室に入ると受付も含め生徒は数人しかおらず、静かで穏やかな時が流れている。
牧生は本を返却し終えると室内の奥に零を案内し、二人は隣り合わせに書架を背にした。
「図書室来るの高校入って初めてかも。」
「僕はお昼食べた後によく利用してるよ。それで話ってなに?」
逸る気持ちを押さえつつ牧生は零の横顔をじっと見つめる。
零は周囲に人がいないことを確認すると、腕を組み躊躇いがちに話を切り出した。
「牧生、今彼女いるか?」
「彼女はいないけど好きな人はいるよ。」
「キラだったら泣かすぞ。」
「違うってば。」
「今までに付き合ったことは?」
「………。」
「え?!お前ど…」
「帰る。」
「悪かった!頼むから聞いてくれ!キラとキスから進まないんだ。どうしたらいい?」
なんとも可愛らしく期待外れな話に、二人きりで話せることに浮かれていた牧生の眉間にシワが寄る。
(零がただの男になってる…。)
落胆の思いはキラへの憎しみに変換されるも、腕を掴んで離さない零の勢いに押され牧生は暫しその場に留まった。
「零の方が経験豊富だから僕の意見は参考にならないよ。あとは、木田君に聞いてみたら。」
「キラは今までの女とは勝手が違うんだよ。達也に言ったら絶対バカにされるし。だからこそ内緒でお前に相談したいの。」
「勝手が違うなら焦る必用ないじゃん。」
「どういうこと?」
「二人とも付き合ってまだ日が浅いんだから。麻生さんは零が初めてみたいだし、遊んでた頃を基準にしたらダメだよ。」
「…言われてみれば。」
「今は麻生さんが安心したり嬉しくなるような言葉を沢山かけたり、優しく抱きしめてあげることが大事だと思う。」
『よくそこまでピエロになれるよね。』
友人としてそれらしいアドバイスを送る牧生の脳裏に晴美の言葉が浮かんでくる。
柔らかな空気を纏い恋愛に一喜一憂する零に対し、牧生は苛立ちすら感じていた。
(……冗談じゃない。)
無意識に口元を歪ませ、純粋な想いは暴走の片鱗を見せ始める。
「そうだ。零はキスする時って唇だけ?」
「ん~あとは頬や額かなぁ。」
「キスはね、部位によってそれぞれに意味があるんだよ。零がその時々で抱いた心境を麻生さんへのキスで表してみてもいいんじゃない?」
「お!それロマンチックでいいかも。」
「じゃあ、試してみる?」
牧生はおもむろに零の前に立つと、その手をとり手首にキスをする。
「えっ…」
「手首へのキスはね、欲望なんだって。」
艶を含んだ瞳を向ける牧生の様変わりに、零は思わずドキリとする。
牧生の唇が手の表面をなぞり、言葉で確かめながら優しい口づけを落としていく。
「手の平は懇願。手の甲は敬愛。指先は称賛。………」
「牧生、くすぐったいから離せ。」
「次は顔ね。額は祝福。瞼は憧憬。鼻は愛玩。零がしてくれた頬へのキスは親愛……」
「せ、説明だけでいい!なに考えてんだ?!」
「なにって僕は零のことしか考えてないよ。全部教えてあげるから、もう少し声抑えて?」
ちゅっとリップ音を立てて顔にキスをしてくる牧生に、零は動揺し頭の中が真っ白になる。
本棚と牧生の間に挟まれ身動きが取れず、無邪気な笑顔に隙をつかれた零はされるがままだった。
「耳は誘惑だっけ。零は無自覚だからなぁ。」
「ああっ……!」
吐息混じりに囁く声と耳に挿し込まれた生暖かい舌の感触に、零は体を強ばらせる。
クチュクチュと耳の奥で響く水音に羞恥し、褐色の肌をほんのり紅く染めた。
「腕は恋慕。喉は欲求。首筋は執着。背中は確認。胸は所有……」
じゃれるように甘えながら、耳から首筋、喉、鎖骨、胸元へと牧生は舌を滑らせる。
同時にシャツ越しに体をなぞる指先がもどかしく、あくまでも関節的で焦れったい愛撫に零は指を噛んで必死に声を抑えていた。
「ふっ…ふ…っく……ふぅ…」
「お腹は回帰。腰は束縛。太ももは支配。脛は服従。足の甲は隷属。つま先は崇拝。全てが愛しい僕の宝物。」
「…はっ、はぁ、…ぁ…くぅう……っ!」
自分ではどうにもならない熱量を内側に宿し、疼く体に零は涙を滲ませる。
噛んでいた零の指をそっと外し、牧生は痛々しく残る歯形の部分を優しく舐めた。
「ふふ…とろけた表情も、我慢している仕草も、僕が零にそうさせてるのかと思うとすごく興奮する。」
「…っ…お前いい加減にしろよ。なんか企んでるのか?じゃなきゃ、こんなの…」
「嘘つき。僕のこと興味あるでしょ。」
「!」
八重歯を見せて微笑む牧生の核心をついてきた言葉に、零の心が激しく揺れ動く。
「…どういう意味だ。」
「誤魔化してもダメだよ。零は記憶を取り戻していく中で、同じ人間にしか分からないシンパシィを薄々感じ始めている筈。無意識に僕を意識しながらも突き放せないその葛藤する心が、僕が零に触れることを君自身が許したんだ。」
漆黒の瞳に見透かされて何も言えず、零の体は鎖で繋がれたように動かなくなる。
「怖がらないで、零。僕に触れてみてどうだった?もっとその先を知りたくない?」
近づく唇を拒絶することが出来ず、零は牧生から目が離せなくなっていた。
「樫野君。」
か細くも芯のある声に心を引き戻され、零と牧生は同時に視線を向ける。
「キラ…。」
呆然と立ち竦むキラにかける言葉が浮かばず、零はただキラを見つめていた。
(本当、都合のいい女。)
牧生は状況に見切りをつけると、いつもの穏やかな微笑みでキラに話しかけた。
「麻生さんはいつからここに?」
「……あ、えっと、樫野君は図書室だって晴美ちゃんが……今来たばかりで………その、二人は…」
「読みたい本が丁度見つかってね。でも、また誤解させちゃったかな。」
牧生は零の顔の真横にあった本を一冊本棚から取り出すと、安心させるようにキラに見せる。
「そうなんだ…。」
ホッと胸を撫で下ろしたキラが零に近づこうとした瞬間、牧生は零を抱き寄せその髪にキスをする。
「あっ…」
「牧生!」
「じゃあ、僕先に行くね。」
顔を真っ赤にして睨む零とポカンと口を開けたままのキラの反応を楽しむように微笑って、牧生はその場を後にした。
「わりぃ。ヘンなとこ見せたな。」
罰の悪そうな顔をする零に対し、キラはなにかを決意したように頷いていた。
「私。桐島君に負けないように頑張る。」
「なんだそれ。キラはそのまんまでいいんだよ。」
キラの頭を優しく撫でながらも、零の胸の内で牧生の言葉が引っ掛かったまま離れずにいた。
(髪にしたキスの意味、零に伝わるといいな。)
本を持ったまま後ろ手に組み、外の景色を見ながら零と歩いてきた廊下を牧生は一人で歩く。
零。僕は君を逃がさない。
一度失いかけて再び見つけた僕の宝物。
いずれ君から僕を求めてくる。
僕らは運命で結ばれているんだ。
end.
午休。图书馆。
零说和他有些话要谈,牧生便兼着去还书的时机约了零在图书馆见面。
对通过绮罗和零缩短了距离的牧生来说,这是两个人单独说话的珍贵机会。
一直只能凝视零的背影,能和零并肩走,牧生就感到十分幸福。
走进图书馆,包括接待在内只有零散几个学生,时间平缓地流动着。
牧生还了书带着零走到图书馆深处,两人背对书架相邻站着。
「进图书馆,从高中以来还是第一次吧。」
「我在吃了午饭之后经常来这里呢。那么,想谈的是?」
压抑着兴奋的心情,牧生紧紧盯着零的侧脸。
确认过周围没有其他人,将双手抱在胸前的零犹豫着开了口。
「牧生,现在有女朋友吗?」
「虽然没有女朋友,但是有喜欢的人了。」
「是绮罗的话我让你哭哦。」
「不是啦。」
「至今为止,恋爱经验?」
「………………。」
「欸?!你…」
「我回去了。」
「抱歉!拜托了!听我说!和绮罗就只进行到kiss啊。怎么办才好?」
和期待完全相反的对话,让因能两个人单独说话而雀跃的牧生微微皱眉。
(零变成了一个普通的男人…)
零抓住了牧生的手臂。内心的失落化为了对绮罗的憎恨,而又被零那一瞬的气场所压制,暂时停住了脚步。
「零才经验比较丰富吧,我的意见没法成为参考的啊。然后,不如去问问木田?」
「绮罗的情况和至今为止交往过的女孩完全不一样啊。而且和达也讲绝对会被当成傻子。所以才秘密地来和你商量啊。」
「情况不同的话,就没有必要着急了嘛。」
「怎么说?」
「因为两个人交往的日子还不长啊。麻生的初恋好像就是零呢,不能以你之前的那些作为基准啊。」
「…比如说。」
「我觉得现在多说些能让麻生感到安心、快乐的话,温柔地拥抱她是很重要的。」
『居然能做到那个地步啊。』
牧生说着像是普通朋友一样提出建议,脑中浮现了晴美的话。
对着因甜蜜恋爱而一喜一忧的零,牧生感觉越发焦躁。
(……不是开玩笑的。)
无意识地勾起嘴角,纯粹的向往渐渐开始有了暴走的迹象。
「对了。零接吻的时候,只有嘴唇吗?」
「嗯~然后还有脸颊和额头吧。」
「kiss啊,部位不同的话所包含的意思也不同哟。用kiss把零在那个时候的心情传达给麻生不也很好吗?」
「哦!这样说不定很浪漫哎。」
「那么,试试吗?」
牧生慢慢地站到零面前,抓起零的手,在手腕上落下一个吻。
「欸…」
「落在手腕上的的吻是欲望。」
牧生泛着光的瞳孔直视着零,瞬间的变化让零下意识地一惊。
牧生的唇慢慢地描绘着手的形状,一边说着一边温柔地落下一个又一个吻。
「手掌是恳求。手背是敬爱。指尖是称赞。………」
「牧生,很痒哎,放开我。」
「然后是脸。额头是祝福。眼是憧憬。鼻尖是欣赏。零给予我的脸颊上的吻是亲切……」
「只,只要说明就够了!你在想什么啊?!」
「想什么的话,我的脑中只有零啊。我会把全部都教给你的,所以再抑制下声音吧?」
面对chu地一下吻在自己脸颊上的牧生,零动摇了,脑中变得一片空白。
被夹在书架的牧生当中无法动弹,又被天真的笑容迷住了眼睛的零就保持着被动的状态。
「耳朵是诱惑。零真是没有自觉啊。」
「嗯嗯……!」
混杂着吐息的私语和插入耳中的温热的舌头的触感让零一下僵直了身体。
令人感到羞耻的水声回响在耳中,褐色的皮肤染上了些浅红。
「手臂是爱慕。喉结是欲求。脖子是执着。背是确认。胸是所有……」
一边是撒娇般的语气,一边从耳朵到脖子、喉结、锁骨、胸口,牧生的舌头一路向下。
同时越过衬衫的手指轻轻得描绘着零的身体。若即若离令人焦急的爱抚让零咬着自己的手指,必死地压抑着声音。
「唔…唔…嗯……唔…」
「肚子是回归。腰是束缚。大腿是支配。小腿是服从。脚背是隶属。脚尖是崇拜。全部都是我可爱的宝物。」
「…哈,嗯…啊…唔唔……唔!」
自己无法克制的热量在身体内侧蔓延,一阵阵的疼痛让零渗出了泪水。
让零松开咬着的手指,一脸心疼的牧生温柔地舔着留下齿痕的部分。
「fufu…染上欲情的表情也好,忍耐的举动也好,只要想到是我让零做出这些举动的,我就非常的兴奋呢。」
「…唔…你给我适可而止。你到底在谋划些什么?不是这样的话,这样的…」
「说谎。零其实是对我有兴趣的吧。」
「!」
零的心因为露出虎牙微笑着的牧生一针见血的话而动摇了。
「…什么意思。」
「装傻是不行的哟。零在恢复记忆的时候,应该隐约感觉到了只有同样的人才能了解到的共鸣吧。零你下意识在意着我的同时,那颗无法抛开纠葛的内心,容许了现在触摸着零的我。我现在的行为是你自身默许了的。」
被漆黑的瞳孔看穿了一样,零一句话都说不出来,身体像是被锁链缠住零一般,无法动弹。
「不要害怕,零。被我碰触的感觉怎么样?不想继续下去吗?」
无法拒绝靠近的嘴唇,零变得无法将目光从牧生的身上移开。
「樫野君。」
纤细却鉴定的声音将两人拉了回来、零和牧生同时将视线移了过去。
「绮罗…」
对着呆立不动的绮罗,零一下说不出任何话来只是一直盯着她看。
(真的是,这女人时机都选的真好。)
牧生放弃了继续的念头,带着和往常一样温和的微笑和绮罗搭话。
「麻生什么时候来的?」
「……啊,那个,晴美说樫野君在图书馆……我刚刚才到………那个,你们两个…」
「正好找到了想读的书呢。但是,好像又被误会了呢。」
牧生从零脸旁的书架上抽出一本书,像是为了让绮罗感到安心。
「是这样啊…。」
在松了口气轻抚着胸口的绮罗靠近零的瞬间,牧生将零抱在怀中,在发上落下一个吻。
「啊!…」
「牧生!」
「那么,我先走啦。」
像是被两人的反应取悦了的牧生把涨红了脸瞪着自己的零和张着嘴一脸呆楞的绮罗丢在了身后。
「抱歉。让你看到奇怪的场面了。」
对着显得有些尴尬的零,绮罗像是下了什么决心的样子点了下头。
「我。我会努力不输给桐岛君的。」
「那话什么意思。绮罗就这样就好了。」
温柔地摸着绮罗的头,但牧生的话仍在零的心中回荡不去。
(落在头发上的吻的意思,传达给零就好了。)
就着拿着书的姿势把双手背在身后,牧生望着外面的景色一个人走在刚和零一起走过的走廊。
零。我不会让你逃走的。
一旦失去就再也无法找到的我的宝物。
迟早有一天,你会主动渴求我。
我们是被命运连结在一起的。
end.
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