俺の友達に愛されすぎて絶対絶命的にヤバい

「俺さ、ずーっと女にモテて生きてきたんだよ。」
「知ってる。」
「何でお前選んじゃったのかな。」
「僕が零にとって必要な存在だって、ようやく気づいたからじゃない?」
「…そうではあるけど。」
零と牧生が付き合いだして一ヵ月。
ふと我に返って自問する零に対し、牧生もニコニコと微笑みながら返答する。
今日は休日。
珍しくバイトのシフトが入ってなかったにも関わらず、あいにくの雨に二人は零の部屋で暇を持て余していた。
「てか、さっきから重いんだよ牧生。少しは離れろ。」
「僕のこと嫌い?」
「そーじゃなくて。」
正確に言えば、暇なのは零のみ。
牧生は部屋に上がるなり、ベッドを椅子変わりに座る零の横で羽交い締めにする勢いで抱きついていた。
抱きつかれるのは慣れてるが、牧生は基本微笑むだけで喋ろうとしない。
ケータイを触れば哀しそうな目を向け、会話を振っても長続きせず、気づいたら冒頭の話になっていた。
「急に女の子の話ばっかり。零、揺れすぎ。」
(だったら喋れよ!)
喉まで出かけた言葉を零はぐっと飲み込む。
こんなやり取りをしても牧生が聞く耳を持たないのは分かりきっていた。
零はがっくりと頭を垂れ、肩に乗せられたサラサラとした前髪を優しく撫でる。
「お前も見た目は猫っぽくて可愛いのにな。」
シルエットが細くゆるふわな外見と違い、着痩せする体は筋肉質で男らしい。
そうなると、健全な男子高生として自然と悩みが出てくる。
「でも俺、お前のこと抱ける気がしねぇわ。」
笑いながら冗談混じりに呟くと、牧生は急に顔を上げ不思議そうに零の顔を覗き込んだ。
「何言ってるの?僕が零を抱くんだよ。」
「は?」
突如スイッチが入った牧生の態度に驚き、零は開いた口が塞がらない。
その間もじわじわと押し倒そうとしてくる牧生に対し、零は慌ててベッドに乗り上げ後退りするも、すぐ背後の壁に当たり逃げ道は途絶えてしまった。
触れそうな程近づく唇に、零の頬はみるみる紅く染まっていく。
「もしかして期待してくれてる?」
「ちょちょちょちょっと待て!!」
「二年間ずっと我慢してきたんだ。もう待てないよ。」
「いや、俺が女っておかしいだろ?そもそもお前が…」
「零。」
「っ!」
透明感のある声で諭されるように名前を呼ばれると、零はそれ以上何も言えなくなる。
「キスしてもいい?」
八重歯を見せにっこりと微笑む牧生は小悪魔のよう。
いつも隙だらけで少し頼りない印象すら受けるのに、いざと言う時に有無を言わせない空気を醸し出す。
零は少し悔しそうな表情を浮かべながら、牧生の肩に手を添えた。
「一回だけだからな。」
「ん♥」
おでこや頬に軽くキスをした後、牧生は零の唇にキスをする。
「っ…ふ、ん…ちゅ…」
全身に心地良い緊張感が走り、体の奥がじんわりと熱い。
味わうように口内を這い絡みつく牧生の舌に、零の体はその快感一つ一つを拾って気持ち良さそうに震えていた。
「…はぁ、は…っ……」
とろみを帯びた瞳を向け、開きっぱなしの口からはおねだりをする仔犬のように舌先が出ていた。
無意識に見せた誘うような零の表情に、牧生は目を細める。
零のシャツをたくしあげ露になった胸に手を這わせると、左側から少し早い心臓の鼓動が伝わってくる。
戸惑いの色を含んで見上げてくる瞳に、牧生は甘く囁いた。
「今日は雨だからお店の下まで声は漏れないよ。」
「ああ…っ!」
親指と人差し指で乳首を強く摘ままれ、強烈な快感に零は矯声を上げる。
体が弓なりに仰け反り、肩に添えていた手に力が籠る。
「くっ…ふぅ…ぁ、あん、や…っ…」
「可愛い…もっと聞かせて。」
「…ん、はぁ…ぁ、ヤ、…いや、あ…牧っ…ぁ、ぁあ!…」
指の腹で掠めるように先端を擦ったり乳首を捏ねくり回され、逃れられない執拗な愛撫に零は髪を振り乱して喘ぎ続ける。
ベッドに擦りつけるように腰が揺らめき、布越しにも分かるほど股間が膨らんでいた。
「零、苦しそうだね。」
肝心な部分には触れずに腿や付け根を滑る指先がもどかしく、焦らされる苦痛に零の口から絶えず熱い吐息が零れ落ちる。
「どうして欲しい?」
「…っは、ぁ…知らねーよ…お前がどーにかしろ…!」
「…ん、分かった。」
少し残念そうに笑いながら、牧生は零の体をそっとベッドへ寝かせる。
既に疲れきりされるがままの零は、ぼんやりと天井を見上げていた。
投げ出した四肢や頬を紅潮させた気怠い表情は、零の艶やかな色香を際立たせる。
「僕、零の為なら何でもするよ。」
牧生は零の腰を少しだけ浮かせると、下に履いていたもの全てを剥ぎ取った。
零の足を軽く広げ、中指と人指し指を唾液で濡れらすと牧生は尻の割れ目にその手を這わせる。
蕾に触れてきた冷たい指の感触に、ぼんやりとしていた零の目が大きく見開いた。
「待っ…」
「零のリミッター外してあげる。」
「~~~っ!!」
細く骨ばった指が勢いよく蕾を押し拡げ、感じた事のない下腹部の違和感に零は悶絶する。
「あ、ごめん…ゆっくり挿れれば良かったね。」
申し訳なさそうに謝りながらも、何も言えず体を震わせる零を牧生はじっと見つめていた。
反対の手で零のペニスをやんわりと握り締めると、カウパーが溢れ出した先端を親指でぬるぬると弄り始める。
繰り返される指の挿入に嫌悪しながらも、ペニスへの愛撫が快楽をもたらして零の体は少しずつ反応を示していく。
「ぁ…っ…あぅ、ん…ふぅ……」
「零のなかトロトロだよ。指もきつく締めつけてくるし……すごく、いやらしい…」
二ヵ所同時に責められ体の内側が燃えるように熱いのに、欲しいと感じる決め手を与えられず零は再び翻弄される。
「零、もっと乱れて。僕を欲しがって。」
「んんぅーっ!」
キスで唇を塞がれ指が奥を突いて掻き回す度、全身を弾ける快感に零はくぐもった叫び声をあげた。
「………ねぇ、どうして欲しい?」
蕾から指を引き抜き、しっとりと汗ばんだ華奢な体を抱き寄せると牧生は零の頬を伝う涙を丁寧に舐めとる。  
零は躊躇いの表情を見せながらも、牧生に視線を向け返答代わりのキスをした。
「やっぱり言葉ではくれないの?」
「…もうちょっと優しくして。」
「!┈┈意地悪してごめんね。」
頭をポンポンと撫でおでこにキスをしてきた牧生に、零は思わず赤面する。
「なんか、緊張してきた。」
「そう?」
牧生はベルトを外しズボンとパンツをずらすと、既に勃ち上がったペニスを取り出した。
恥じらいを見せる表情に似つかわしくないそそり立つそれを見せられ、零は言葉を失う。
「どうしたの?」
「………ムリ。」
「大丈夫。大丈夫。」
眉をひそめぐったりとする零とは対照的に、牧生の声は弾んでいた。
零の脚を折り曲げ蕾にペニスの先端を押しつけると、ヒダが物欲しそうにヒクヒクと動いた。
「好きだよ、零。」
「く、ああ…っ!!」
先程とは比べものにならい体を貫かれるような感覚に、それ以外何も考えられないほど頭の中が真っ白になる。
下腹部を圧迫する息苦しさとみっちりと埋まる熱いペニスの感触に、零は体を強張らせ牧生の背中に爪を立てた。
「…っ…零、分かる?…僕たち一つになったんだ…。」
余裕のない零を優しく受け止めながらも、牧生は歓喜に震えていた。
ゆっくりとした律動は徐々に激しさを増していき、不快を上回る快感に零は身を捩らせる。
「あ、あぁ、っ、はぁはぁ、…ぁん、んん…っ!」
ペニスが最奥を突く度に細い体が跳ね上がり、痺れるような快楽が全身を駆け巡っていく。
気持ち良さと相反する切なさが押し寄せ、行き場のない感情に無意識に拒絶を示しても力強い腕に引き戻され離してはもらえなかった。
「気持ちいい?」
「くぅ、…っ、きもち、い…ぁ、や、ああ、あ……っ!!」
「僕の全てを感じて、零。」
覚えているのは、両手に重ねられた手の温もりと見下ろしてくる愛おしむような瞳。
「見ているだけで良かった。側にいれたらと願った零が僕の腕の中にいる。今、すごく幸せだよ。」
「まき、お……」
解き放たれた想いを受け止めきれず、糸が切れたように零は目を閉じる。
遠のく意識の片隅で、何故か再開した時の牧生の笑顔が思い出された。


窓を濡らす雨は止む気配を見せず、外は一層灰色がかっていた。
薄暗い部屋の中、世界にいるのは零と牧生の二人だけ……そんな錯覚を起こしてしまいそうな静かな時が流れていく。
牧生は柔らかな頬を撫でながら、聞こえる筈のない零の耳元で囁いた。
「僕の零。君は僕の宝物。ずっと大切にするからね。」

君のどうしようもなく素晴らしい狂気に触れさせて。


end.
1/1ページ
    スキ