Case2【翻弄】



生涯……。





友達。





今日、エレンにそう、区切られたジャンは苦い現実を飲み込めないでいた。






………あんなにまでしたのにな。






ジャンはエレンを激しく貪って、翻弄し、滅茶苦茶にしたあの日を思い出す。





毎日思い出す。





毎日思い出して、自慰に耽る。





あんなに誰かを貪って、






あんなに激しく興奮して、






あんなに好きになった相手は、






あいつだけ。







あの何度も絶頂を来して、止めることも出来なかった程の興奮を、これから先の人生の間にまた味わえる事がない事を、ジャンは知っていた。






………あんなシステムなんか、なければ。





………エレンがリヴァイに抱かれる事もなく、俺がエレンへの気持ちに気づくはずもなかった。






『いやら…っあぁっもおっやめ…っ』





そんな、喘ぎも聞く事もなかった。





「ちくしょっ……!」





その夜も、ジャンは気持ちの整理もつかないまま、何度も果てた。

「エレン?」


「ジャン、こんなとこで会うなんて珍しいな」


兵団内部にある図書室で、偶然2人は出会った。


夕陽が射す静かな室内は、ジャンとエレンを含め数名の兵士が利用している程度だった。


2人きりで会うのは、あの会議室以来である。


『友人』として区切られた後も、毎晩エレンを頭に浮かべては自慰に耽っているだけに、ジャンは内心ドキドキしながらエレンを見ていた。


「俺は一眠り出来るとこを探しに来ただけだ、お前こそ何してんだ?」


「あぁ、昔アルミンに見せてもらった外の世界が書かれてる本がないかと思ってさ」


何事もなかったかのように接してくるエレンに対し、ジャンは胸の奥に痛みを覚える。


「外の世界の本?憲兵団の没収対象だろ?今更そんな本あるのか?」


表面で取り繕うのが、やっとだった。


「何言ってんだよ、ジャン(笑)俺達は外の世界に最も近い場所にいるじゃねぇか」


「!?」


「俺達は絶対に自由になるんだ、そうだろ?」


大きな瞳を輝かせるその無邪気な笑顔の先に、自由の翼を背負う『あの人』が見え隠れする。


(くそっ……邪魔すんじゃねぇよ……!!!)


その感情は衝動的で、ジャン自身にも抑えられなかった。


「エレン」


本を探すエレンの背後に立ち、耳元で囁く。


ジャンの雄を纏った静かな声は、エレンの身体に緊張を走らせた。


「……あ、じゃあ、俺、……」


「お前、今、兵長の事考えてなかったか?」


ジャンの声は、徐々に湿り気と熱を帯びていく。


「は……?」


この場から早く立ち去りたいのに身体が言う事を聞かず、エレンはギュッと目を瞑った。


「前にも言ったよな?俺の事だけ考えてろって」


「な、何言ってんだ?お前…」


「今、ここにいるのは兵長じゃねぇ、この俺だ」


「ひぁっ……!」


うなじにねっとりと絡んできた舌に、エレンは堪らず声をあげる。


「く、……あ、あ!あぅ、……ふっ……!!」



公共の場であるだけに、声を必死に噛み殺そうとするが、零れる吐息を抑えることが出来ない。


「はぁ、…っ…ジャ…」


「静かにしろよ、他の奴らに聞こえるだろ」


「っ……!!」


その間にも身体中に触れてくるジャンの指先に、抵抗する隙も与えられず翻弄される。

「エレン、俺と【契約】しろよ」


「くっ……!はぁ、はぁ、……ぁん、ゃ…」


「無理矢理【契約】させられたんだろ?さっさと兵長に【解除】を突きつけてやればいいじゃねぇか」


自分の意思を無視して話を進めていくジャンに、エレンは怒りを覚える。


「っ……ふ、ざけんな……はぁ、お前【フェイク】だろ…【契約】が嫌でコニーと組んでるんじゃねぇのかよ……」


「もちろん【契約】は嫌だね、……だが、お前が他の奴のモノでいるのはもっと我慢ならねぇ」


ジャンはエレンのベルトとズボンを少しだけずらすと、中指をゆっくりと秘部に挿入していく。


「はぅっ……!んぅう……あぁ、らめぇ……!!」


「すげぇ濡れてる……俺が忘れられなかったか?」


「違っ……」


拒絶する言葉とは裏腹に、エレンの身体は少しずつあの会議室での出来事を呼び起こしていく。


衝動は止められず、後戻りも出来そうにない。


「全部思い出させてやるよ……身体の隅々まで、俺で満たしてやる……」


「…やめっろっこの…っはぁっ…あっ…」


エレンはまだ諦めず、抵抗する。


背後からジャンに本棚に押し付けられ、苦しく喘ぐ。


………兵長に、知られたら!


今度こそ【契約】は【解除】されて、矛先はミカサに向けられる。


それだけは回避しなければならない。


「ひぃああっ…!」


そんなエレンの心情を嘲笑うように、エレンの秘部に入れた指を、ジャンは奥に入れて掻き回す。


「……声出すなっつってんだろ。」


雄の声音で低く、そうエレンの耳に囁く。


「あっくっ…っ」


エレンは感じて、本棚にしがみつく。


………そんなにミカサやアルミンの事が大事かよ。


ジャンはエレンの必死に耐える姿に、ミカサとアルミンに対しても言い様のない嫉妬を滲ませた。


エレンの口を手で塞ぎ、秘部を掻き回しながら耳に舌を入れる。


「んんっ!!んぐっんっ!」


逃げられないエレンの姿は、この上なくジャンをゾクゾクさせた。


………そうやってよ、


………俺の下で死ぬまで、喘いでいりゃいいんだてめえは。


俺だけでいいんだ。


エレン、お前には。


この俺だけが必要なんだ……。


ジャンはいきり勃ったぺニスをチャックから引き出し、エレンのズボンを下着ごと下げて、割れ目に這わせた。


「んっ!んっ!!」


その熱い、濡れた固い感触に、エレンの体が総毛立つ。


―――会議室でジャンに散々好き放題犯られた記憶が、エレンの体を縛る。


もう二度と、嫌だ。


あんな、酷い事。


何度も無理矢理味わされたジャンの固いぺニスの感触が全身を貫く。


痛くて、嫌なのに。


繰り返し抜き入れされて、自分の中がぬるぬると濡れて、まるで……欲しがってるみたいに。


あの感覚を、エレンは二度と味わいたくなかった。


「んんっんん!んん!」


エレンは最後の力を振り絞ってもがく。


「こらっエレン、暴れんなって…」


ジャンはにやにやしながら抵抗するエレンを見る。


………へっ可愛いよなあ、今さら無駄な抵抗……。


ジャンは構わず、エレンに抱きつき、ぺニスを挿入しようとした。


「リヴァイ兵長に例の資料は渡したのか!」


いきなり響いた声に、エレンもジャンもハッとして我に返る。


「まだです!すみません!」


二人はガタゴトと本棚を物色し出す。


幸い、ジャンたちには気づかない。


………ちっくそ!何もこんな時にリヴァイの名前をあんなにはっきり言うことねえじゃねえか!


と、ジャンはまたリヴァイに邪魔されて憤る。


………あのチビ!!!


「……んん…っ。」


と、小さなうめき声を洩らしたエレンにジャンはハッとする。


………ちっ。


また、リヴァイの事を考え始めたな。


と、思って、歯噛みしたジャンだったが…

「……んっんんっ…」


何か言いたそうなエレンの様子に気づいて、ジャンは手を、少し緩くした。


「……騒ぐなよ。」


「………騒ぐかよ」


と、強気を取り戻したようなエレン。


「……離せよ。」


「……嫌だね。今からが本番なんだからな。」


と、離さないジャンに、エレンは一息、溜め息をつくと……


「………挿入は、嫌だ。」


と、一言。


「へっ…」


そんなもん聞くかよ、と、ジャンが言いかけた。


「………口で…し……るから」


「はあ?」


「……くっ、口でやるから!」


それで勘弁しろ!と、小さな叫びをエレンは上げて、うなじを真っ赤に染めた。


………まじ


………かよ。


ジャンはエレンの言葉をすぐには飲み込めず、抱きついたまま動けない。


………奉仕するってか?


………こいつが?


その時、ジャンの中で何かが弾けてジャンはいきなりエレンを振り向かせてキスする。


「あんっんっんっ…!」


「……奉仕後じゃ、キス出来ねえからな。」


と言って、ジャンは無遠慮にエレンの口中まで侵す。


ちゅばちゅばと思う様堪能してから……


「……じゃ、イカせてくれよ。」


と、唇を思う様味わわれて、悔しくて真っ赤になったエレンに、ジャンは期待の顔で言い放つ。


「………期待、してろよ。」


なんとかそれだけ強がって、エレンはジャンの前に膝まづいた。


「ないですねえ、あの兵法の……」


「古い本だからな。しかしこの棚にあるはずだ。よく探せ。」


はいっ!と、二人のやり取りを聞きながら、エレンは剥き出しのジャンの、固くそそり勃ったぺニスに、舌を震わせながら、舐め始めた……。


「はむ……っんく、うぅ……」


躊躇いがちに愛撫をする口唇が徐々に滑らかな動きになっていく。


「んむむ……はぁ、あぅ……んぅっ……」


眉間に皺を寄せ苦しそうな表情を浮かべつつも、エレンは唾液を絡ませながらジャンのペニスに吸いつき離そうとする気配はない。


「……ちゅ、ちゅむ……んんん……っっ」


「……お前、上手すぎだろ」


思わず口にした素直な感想はエレンにとって嫌味にしか聞こえず、上目遣いでジャンを睨みつけた。


「はぁ、……るせぇよ、早漏が」


「なっ!てめぇ、…まだイってねぇだろふざけんな」


「なら、さっさとイけ」


「くっ……!はぁ、…あ…」


再び喉の再奥まで押し込み、先程よりも激しい舌遣いにジャンの口から堪らず吐息が漏れる。


(くそっ……あん時と同じじゃねぇか……!!)


奉仕というよりも相変わらず喧嘩に近い2人の行為は、先にエレンにリードを取られた会議室での出来事をジャンに思い出させる。


幼さ故に男としてのプライドを傷つけられ、ジャンは快感に支配されそうになりながらエレンの頭を必死に掴んだ。


「んぐっ!?」


「エレン、…はぁ、…しっかり味わえよ」


無理矢理エレンのペースを止めると、ジャンは自ら腰を動かし始める。


「ん、んぅ、っ…ふ、ぅううう……っっ!!!」


「ヤベぇ…っ…気持ちイイ…」


口内を蹂躙し容赦無く喉を突いてくるペニスに、エレンは苦しさと吐き気に顔を歪ませる。


それでも感じてしまう自分自身に嫌悪し、エレンの羞恥をさらに煽っていく。


エレンに対する支配欲と、自慰とは違う久々の快楽にジャンの身体はあっという間に絶頂を迎える。


「エレン、…イきそ……」


「んっ、!!!」


ジャンの掠れた声とほぼ同時に、口内に熱い体液が流れ込む。


ずるりと引き出したジャンのペニスとエレンの口唇との間に、唾液と精液の入り混じった糸が掛かった。


「……っ…はぁ、はぁ、」


朦朧とする意識を何とか保ち、エレンはジャンの体液を飲み込むと口元の唾液を拭い取る。


(吐き出さねぇのか、しっかり仕込まれてやがる……)


エレンの痴態を見れば見る程、リヴァイの姿がどこまでもチラついてくる。

「これで満足だろ、……もう俺の事は放っといてくれ」


吐き捨てるように言い放ち、立ち上がろうとするエレンをジャンはすぐさま押さえつけた。


「まだ終わりじゃねぇよ」


「はぁ?」


ジャンは覆い被さるように座り込むと、エレンのペニスを握って強引に擦り始めた。


「やっ……ぁ、あ、!!」


「お前が全部思い出すまで帰さねぇって言ってんだよ」


「ふざけ…」


「そう言えば、この裏ははまだ探してませんよね」


「!!?」


再び聞こえてきた兵士達の声に、2人はハッと我に返った。


「そうだったか?じゃあ、念の為確認するか」


ゆっくりと近づく足音に、エレンは顔面蒼白になり必死にジャンを突き放そうとする。


「ジャン!……ヤバイ、早く…んんっ」


「すみません、こちら側は歴史関係の書物のみで法律に関する本は見当たりません」


「ん?誰かいるのか?」


空いてる手でエレンの口元を塞ぎながら、ペニスを弄り続ける。

羞恥と屈辱でジャンを睨みつけるも、それを上回る快感がエレンの身体を支配していく。


「室内が静かなもので立ち聞きして申し訳ありませんでした、お力になればと思い探した次第であります」


「そうか、それは助かった」


真面目な声で対応しつつも、ジャンの視線はエレンに向けられたまま激しい愛撫を繰り返す。


「んっ、……んふ!…ぅう、ふっ…」


「では、あちらを探してみますか」


少しずつ遠のいていく足音にジャンは安堵の表情を浮かべ、エレンの口を塞いでいた手を緩めた。


「……行ったな」


「はぁ、はぁ、…てめぇ、マジで離せよ裏切りもんが……!!」


「は?裏切ってなんかいねぇよ、お前が勝手に『仲の良い友達』を持ちかけてきただけだろうが」


いつまで経っても状況を理解しないエレンに嫌気が差し、ジャンは素早くエレンのズボンとパンツを剥ぎ取った。


「や、やだ……っっ!!」


拒絶をしようにも快感で抵抗力が落ち、本棚を背に顔横にまで脚を折り曲げられると、ジャンの目の前で下半身を晒される。


「ま、待って、それだけは……」


ポロポロと涙を零して首を横に振るエレンの言葉を無視し、ジャンは硬さを取り戻したペニスをエレンの秘部に押しつける。


「エレン、知ってたか?」


ゆっくりと挿入し内側を押し広げるように埋まっていくペニスに、エレンは快感と恐怖に怯える。


「ん、ぁあっ……!!」


抵抗出来ず再びジャンを受け入れるしかない自分が、情けなくて許せなかった。


そして、されるがまま再奥まで貫かれた瞬間、


「【FAKE】の別名は【共犯】だ」


リヴァイの優しい表情が脳裏に浮かび、エレンの中で絶望的な何かが弾けた。



「これで2回目、…….兵長にバレたら今度こそ俺もお前もお終いかもな」


「い、いやっ!………あ、あん、んん、………はぁ、ぁああっっ!!」


それでも、身体を突き動かす衝動は、エレンの内側を侵して快楽を引き出していく。


「でも、お前が兵長との【契約】を【解除】して、俺と【再契約】をすればいいだけの話……」


「らめ、らめぇ……!!っ、ジャン、やだ……っく、はぁ、ん………っっ!!!」


下腹部から聞こえてくる卑猥な水音と、久々に見る自分の腕の中で喘ぐエレンの艶かしい姿に、ジャンの理性は既に崩壊していた。


エレンの脚をさらに本棚に押しつけ、より深くペニスを挿入する。


「ぁ、くぅ……んっ!!」


エレンの耳に優しいキスを落として、ジャンは囁いた。


「俺とお前は【共犯者】だ、もう後戻り出来ねぇよ」


「ひ!いや、…ぁ、……ぁあああああっっ!!!」


声にならならい叫び声は、内側で叩きつけられたジャンの欲望と共に吐き出される。


強く抱き締めてきた両腕は、エレンが欲しかった感触より少し細い気がした。


「エレン、好きだ……」


「はぁ、はぁ、…っ…」


静かな図書室で暴かれた、属性【FAKE】の幼く歪んだ愛情。


零れ落ちた涙は誰に気づかれる事もなく、床に敷き詰められた絨毯に吸収されて消えた。

end.
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