Case2.5【想】

「セックスってさ、どうしたら上手くなれんの?」
突然部屋に押しかけてきたかと思えば、真剣な眼差しで質問をしてくるエレンに対し、ライナーとベルトルトは開いた口が塞がらない。
「…お前、自分が何言ってるか分かってるのか?」
「分かってるよ。お前ら、毎日してるから上手いだろ。」
どう解釈しても「兵長が好き」としか聞こえないのだが、果たして今それを言っていいものか、二人は迷う。
(様子を見てみるか…)
(ジャンとアルミンには、口が裂けても言えないね…)
リヴァイとエレンが【契約】をした直後、各々から内緒にして欲しいと相談を持ちかけられていたため、二人はエレンとジャンとアルミンの関係を全て把握していた。
(※唯一、ジャンとエレンの会議室の出来事は知らない。)
「お前、あんなに兵長と関係を持つ事を嫌がってただろ。どういう風の吹き回しだ?」
「ん…今でもヤだなって思う時あるけど、兵長からの一方的なのが申し訳なくて…」
のろけ話を聞かされてるのか?と困惑するライナーをよそに、ベルトルトはエレンに語りかける。
「エレン、普段から兵長の目をちゃんと見てる?」
「えっ…」
その言葉に、エレンは思わずドキッとする。
「上手くなる方法を考える前に、まずはそこから始めてごらん?そのうち、一方的だと感じなくなるから。」
金色の瞳を見つめて微笑む顔が近づいたかと思うと、エレンはベルトルトに軽くキスをされる。
「!」
「おまっ…何でエレンにキスしたんだ?!」
「エレンが可愛くて、つい。」
「つい、じゃないだろ……ったく、後で覚悟しとけよ。」
「あはは、お手柔らかに。」
動揺するライナーを完全に手玉にとるベルトルト。
二人のやり取りに、エレンは感嘆のため息をつく。
「…よく分かんねぇけど、お前らすげぇな。」

*****

「遅い。」
「すみません…」
開口一番で不機嫌さを露わにされ、エレンは目を伏せる。
しかし、多忙な日々ですれ違い、それまで毎晩通っていたせいか、久々のリヴァイを前に緊張は高まっていた。
「あ、あの、同期のライナーとベルトルトと一緒にいました…し、失礼します。」
上半身を起こしベッドで本を読むリヴァイの横で、エレンはそそくさと布団に潜り込む。
思わず背を向け、エレンはぎゅっと目を瞑った。
(あーもー兵長の目なんかまともに見れねぇよ…っ!!)
ジャンとの一件以来、エレンは契約者としてのリヴァイに対し、少しずつ心を開くようになっていた。
恐怖や遠慮から逸らし続けてきたリヴァイの目を、視線が合うだけで意識するようになったのは、ごく最近の事だった。
(いつかあの二人みたいになっちゃったりするのかな…)
無意識にそんな事を考えてしまい、矛盾する自身に何度葛藤しただろうか。
エレンとリヴァイとの間には、ライナーとベルトルトとの決定的な違いがあり、それがシステム本来の一般的な契約条件なのである。
ミカサの為、そう言い聞かせて。
「眠いのか?」
頭上から聞こえてきた声に、エレンの肩がビクンと跳ねる。
「んっ、……あー…」
午後の訓練の疲れもあってか、この布団の心地良さが堪らず、悶々としていたら気づかない内に意識が飛んでいたようだった。
「起きてます、…はい、えーと、…」
霞がかった頭の中で、必死に会話の内容を捻り出す。
(兵長…リヴァイ、兵長…)
俺に、自由の翼を見せてくれた人。
「兵長は、何で調査兵団に入ったんですか?」

end.
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