Case3【愛情】
「お帰り~♪」
救急箱を借りに扉を開けたはいいが、早くも閉めたい気分に駆られた。
「私のおかげで早く解決できて良かったね~!いやいや、お礼なんていいよ、感謝してくれればそれでいいんだ。」
「黙れ。」
にこにこと笑顔を向けるハンジに対してそう吐き捨てると、リヴァイはずかずかと部屋に入り、戸棚を開け始めた。
「何その言い方は~!警察部隊をすぐに派遣してあげたのに、この扱いひどくない?」
不満を訴えるハンジを無視して、リヴァイは救急箱を探し続ける。
「でも、ちょっと大袈裟だったんじゃないの?」
「以前から俺たちのもとにも報告が上がるほど、連中は問題になっていた。今回の件は、奴らと例のシェルムが共犯して、監視下にあり貴重な研究資料であるエレン・イェーガーとその友人への監禁暴行とみなせば、妥当だろ。」
視線は戸棚に向けたまま、リヴァイは必要に応じてハンジの質問に淡々と答えていく。
「捕まった子たちって、憲兵団に入れなかった金持ちの息子だっけ?家の体裁で仕方なくこっちに入団、親から兵団への資金援助…最低限の訓練以外は事務処理が中心だから、駐屯兵団でも問題になってるみたいだよ。」
「事務処理の前に去勢でもさせとけ。」
「あははっ、そうかもね~!」
リヴァイは救急箱を見つけると、一言「帰る」と残してハンジの部屋を後にしようとした。
「リヴァイ、ずっとシェルムの事を気にかけてたんだね。」
ハンジの言葉に、ドアノブに手をかけたリヴァイの動きが止まる。
「つるんでいた仲間の一部が、あいつを襲った奴らだ。」
「そう…。」
一見変わらないが、振り返ったリヴァイの表情は少し曇って見えた。
「俺はずっと…ただ逃げ続けていただけだった……。」
心ここにあらず、床の一点を見つめ続ける。
癒えることのない傷を抱え、契約を【解除】したあの日から、リヴァイの時間は止まったままだった。
「リヴァイは一歩ずつ前に進んでる。私は好きだよ。」
ハンジの意外な言葉と優しい笑顔に、リヴァイは大きく目を見開く。
「……馬鹿言え。」
悪態をついても、自然と口元が綻んでいく。
その笑顔に救われてきたのも、また事実だった。
「ハンジ。」
リヴァイはドアに背をもたれかけ、救急箱を持ったまま腕を組んだ。
「シェルムはどこでエレンの話を耳にしたと思う?」
互いの視線が交錯する。
その目と言葉の意味するものを、ハンジは理解した上で軽く肩をすくめる。
「さぁね。」
リヴァイが【再契約】をした時点で、もう皆、薄々気づいていたことだ。
もう、避けて通ることはできない。
「リヴァイ。」
ハンジは椅子から立ち上がると、リヴァイにゆっくりと近づく。
自分より背の高いハンジを見上げ、リヴァイは無意識に眉間に皺を寄せた。
「エレン、大事にしなよ。」
エレンの名に、リヴァイの華奢な身体が微かに反応する。
「エレンは、昔のリヴァイによく似ているね。」
覗き込んでくる眼鏡の奥の瞳は、過去を懐かしみ、どこか哀しみを含んでいた。
「あの人がリヴァイにしてくれたように、リヴァイもエレンを守りたかったの?」
その問いには答えず、ハンジから目線を外した漆黒の瞳は、静かに伏せられる。
「もう1度、あの人と向き合う時期が来たのかもしれないね。」
「…いちいちおせっかいな奴だな。」
救急箱の取っ手を強く握り締め、リヴァイは小さく舌打ちをした。
******
「お帰りなさい。」
「待たせたな。」
部屋の扉を閉め、小さな救急箱を持ったリヴァイがベッドに座るエレンの元へやって来る。
「ハンジに救急箱を借りに行ったはいいが、馬鹿みたいに喋り倒された。」
「大変ですね…。」
エレンの横に座り、リヴァイは救急箱の蓋を開けて必要な道具を取り出していく。
「顔出せ。」
「!いっ…」
後頭部を掴んだ手に無理やり引き寄せられ、首の痛みと傷の痛みにエレンは顔をしかめた。
リヴァイは慣れた手つきで消毒液に浸した綿をピンセットでつまみ、既に治りかけてきたエレンの顔の傷に軽く消毒をしていく。
(兵長…。)
傷の手当てのために、目線こそ合わないが互いの息が届きそうなほどの距離にリヴァイの顔があった。
何度も見てきたはずなのに、このままずっと見ていたいと思う気持ちにエレンは気づく。
「お前は、いつもボロボロだな。」
「そうですか?」
「その内の1回は、俺が蹴り飛ばしたけどよ。」
「は、はぁ…。」
この距離でこういう会話はしないでほしい。殴られそうだ。
リヴァイの前では口が裂けても言えないが、先程から殴られる恐怖を上回る奇妙な緊張感に、エレンは戸惑っていた。
「あの、兵長。」
「ああ?」
「なんで、俺があそこにいるって分かったんですか?」
何とか自分のペースを保とうと、必死に話題をひねり出す。
「ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーだったか?あの2人が俺の部屋に来たんだ。」
2人の顔が脳裏をよぎる。
中庭で別れた後、すぐにリヴァイの元へ向かい事情を説明しに行ったのだろう。
(すげぇ…。)
「たかが兵士の揉め事に普段関わる暇はねぇが、お前は特別だ。」
(特別…!)
その言葉に、エレンの心拍数が一気に跳ね上がる。
「俺の監視下にある事を忘れるなよ、エレン。」
「…はい。」
しかし、すぐ現実に引き戻されエレンはがっくりと肩を落とした。
(なんか、俺、さっきから変だよな…。)
恥ずかしくて、自分らしくなくて、それでも側にいたい気持ちがくすぐったい。
「助けてくださって、本当にありがとうございます。」
何度も頭を下げるエレンに対し、リヴァイは手当てをしていた手を止め、道具をベッド横の机に置く。
「エレン。」
ぐいと引き寄せられた身体が、リヴァイの腕の中に収まる。
「お前はまだガキだ。何でもかんでも背負い込もうとするな。」
肩に回された腕や、頭を撫でてくる手は、子どもをあやすように優しい。
「もっと大人に甘えろ。」
『素直に甘えればいいんだよ。』
リヴァイの胸に耳を押し当て、布越しに聞こえてくる心地よい心音に、切なさで胸が締めつけられる。
(ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!俺……!!)
リヴァイの温もりを感じて高まる鼓動に、エレンは顔を真っ赤にする。
(ダメだ…早く、離れなきゃ…)
否定しようとする気持ちは、もう誤魔化しきれなくなっていた。
(ミカサ、守らねぇと……だって、)
ミカサを盾にしているのは、紛れもなく自分自身だ。
「エレン、今日はもう寝ろ。」
「は、はい……え?」
頭上から聞こえてきたその言葉に、エレンは胸の奥にぽっかりと虚しさが広がる。
「明日は早朝から実践訓練がある。休めるうちに休んどけ。」
ゆっくりと離されていく身体に、触れてくる空気がひんやりと冷たい。
「あの、兵長は、」
「しばらくハンジの部屋にいる。」
「っ…。」
道具を片付け、救急箱を持ってリヴァイは立ち上がろうとした。
「ま、待ってください!!」
袖を強引に掴まれベッドに引き戻されると、リヴァイの唇に何かが触れる。
「……!」
柔らかな感触はすぐに離れ、頬を朱に染めたエレンがリヴァイを見つめていた。
一瞬何が起こったのか分からず呆然とするリヴァイだったが、状況を理解すると声を張り上げる。
「~~っっバカか、テメェは!手負いの人間に無理強いするほど、俺は下衆じゃねぇ!」
怒鳴られたことよりも自分の想いを否定されたようで、エレンも珍しく応戦する。
「で、でも、初めて【契約】した日、…俺、巨人と戦うのよりも酷い目に遭いました!」
「!?」
エレンに『巨人と戦うより酷い目に遭った』と言わしめる【契約】初日。
確かに痛いところを突かれ、リヴァイはぐうの音も出なくなる。
「あ、…と、それとこれは、」
エレンから視線を外し、リヴァイはきまり悪そうにこめかみに手を当て、ため息をつく。
エレンはその手を取り、両手でしっかりと握りしめる。
「エレン?」
「はい、別です。…これは、俺の意思です。」
重なる手を通して、エレンが微かに震えているのが分かる。
「目の前に兵長がいてくれることが、すごく嬉しくて、俺はこの手を離したくないんです。」
恥ずかしそうに笑って、リヴァイの手を自らの左胸に押し当てた。
「抱いてください、兵長。」
幼さを残した少年の精一杯の想いは、左手で感じる左胸の心音からも伝わってくる。
眉をわずかに動かし、リヴァイはエレンの金色の瞳を覗き込む。
「…いいのか?」
躊躇いと微かな期待を含むリヴァイの表情に、エレンの緊張感が増していく。
「は、はい。怪我、ほとんど治ってるので。」
「今は体よりも、お前の気持ちが知りたい。」
「迷惑でなければ…お願いします…。」
いつもの、ぶっきらぼうなやりとりが抜けず、まるで噛み合わない会話をしているエレンを見て、リヴァイの口元が思わず緩む。
「な、何がおかしいんですか…。」
「お前は、かわいすぎる。」
ゆっくりとベッドに押し倒され、エレンの沈み込む身体にリヴァイの体重がのしかかる。
リヴァイは目を細め、エレンの頬を優しく撫でた。
「怖いか?」
「あ、す、少し。…あの…今までと、違う感じがして…。」
「そうか。俺もお前と同じだ。」
「え?…っ…んん…」
そっと重ねられた唇に、エレンは静かに瞼を閉じる。
与えられる安らぎに、緊張は少しずつ解けていく。
「っ……ん、んん…ちゅ……」
浅く、深く、キスを繰り返して、時折舌を絡めては互いの唾液が喉を潤していく。
「エレン…。」
「…兵長…。」
髪を撫でてエレンの名を呼べば、それに応えるように首にまわした腕がギュッと抱き締めてくる。
「んむ、むむむ…ちゅ、…はぁ、」
唾液が細長い糸を引いて唇から離れる。
リヴァイの唇がエレンの顎に触れ、舌が首筋や鎖骨をなぞりながら下へとおりていく。
「あ、んっ…だめ…っ」
触れられる部分が熱く、背筋を這う快感にエレンは拒絶の言葉を口にする。
リヴァイは顔を上げ、自分の額をエレンの額にコツンと押し当て、胸の内にしまい込んでいた気持ちを吐露する。
「エレン…体だけじゃなくて、お前の心が欲しい。怖がらずに、俺を受け入れてくれ。」
リヴァイはエレンのベルトとチャックを外すと、半勃ちのペニスをやんわりと握り締める。
「あうっ…!」
リヴァイの手の温もりと感触にエレンの全身が逆立つ。
ゆっくりとペニスを上下に動かされ、それは一定の感覚で徐々に激しさを増していく。
ペニスの先端からはカウパーが滲み、リヴァイの手をぬるぬると濡らしていた。
「ああ、はぁ、…あん、あっ、…」
「今体で感じているものを、素直に声に出してみろ。」
耳元で囁く低く濡れた声音に、エレンの身体がゾクゾクと震える。
ずっと認めたくなかった。
言ってしまったら、戻れないと思った。
「っ…きもち、……気持ち、いい、…」
「…ずっとその言葉が聞きたかった。」
「っ…!」
体が内側から求めるものと心が感じたままに発せられた言葉が合致した時、与えられていた快楽には幸福が重なり合っていたことを知る。
リヴァイと何度もしてきたはずの1つ1つの行為が泣きたくなるほど幸せで、エレンは感情を抑えきれずリヴァイの唇にキスをした。
「んむ、はぁ、…へいちょう…っ…気持ちいいです、…あ、はぁ、…あっ、あっ、…すごく、気持ち、いい…、」
甘く弾ける快感に、エレンは気持ちよさそうに腰を揺らし続ける。
初めて見るエレンの柔らかく蕩けた表情に、リヴァイの表情も和らいでいく。
「良い子だ。」
エレンの顔にキスの雨を降らせながら、高ぶる感情に身を任せてペニスを一気に扱き上げる。
「はぁはぁ、…へいちょ、…気持ちいい……あ、イく…きもちぃの、あ、あッ…い、イっちゃうぅ………ッッ!!!」
エレンはリヴァイにしがみつき、リヴァイの手の内に性を放つ。
エレンの肌は汗でしっとりと濡れ、脱力しきった体は色香を纏っていた。
余韻に浸るエレンの首筋にリヴァイが口づけを落とすと、細い体が小さく跳ねる。
「んんっ…」
「そう煽るな。」
リヴァイは薄く笑って、手の平にあるエレンの精液をぐちゃぐちゃと揉むと、それを潤滑油にエレンの秘部へと手を這わせる。
反対の手でエレンのシャツをたくし上げると、期待と不安の表情を浮かべたエレンがこちらをじっと見つめていた。
「あっ…」
「しっかり解さねぇとな。」
「あんん…っ!」
エレンの胸にリヴァイの顔が埋まると、ねっとりとした生温かい舌が乳首に絡みつき、同時に、骨ばった指がエレンの秘部をゆっくりと押し拡げながら侵入してくる。
熱く蕩けるエレンの内は、リヴァイの指三本分をつけ根まで容易く呑み込んだ。
「はぁはぁ、…待っ…兵長、…そこ、は、」
「お前のお気に入りだろう?」
「ひあっ、あああ…っ!!」
乳首を甘噛みされながら、挿入された指に内壁の最も感じる部分を擦られ、エレンは矯声を上げる。
全身を駆け巡る強烈な快感に、エレンは何度も背中を仰け反らせ、ポロポロと大粒の涙が頬を伝う。
「兵ちょ…はぁはぁ、キス、キスして…兵ちょ、…キス、ん、っ…」
胸に埋まる髪を力なく握りしめ、せがむようにリヴァイにキスを求めるエレン。
リヴァイは愛撫する手を止めて顔を上げると、エレンの振り乱れた髪を整えながら、安心させるようにキスをした。
「ちゅ…そろそろいいか?」
エレンが伏目がちに頷くと、互いにキスをしながら、相手の軍服を丁寧に脱がしていく。
リヴァイは裸になったエレンの脚を広げると、臀部の中心で露わになった秘部に自身を押し当てる。
我慢の限界を迎えたいきり立つそれに、エレンは顔を真っ赤にして思わず目を瞑った。
「どうした?」
「は、恥ずかしいです…。」
「…お前は本当に…」
「?」
「いや…ゆっくり慣らしていくから、辛くなったら言え。」
「はい…。」
太く熱い感触が秘部をゆっくりと押し拡げ、内側を脈打ちながら奥へと侵入していく。
下腹部が圧迫され、リヴァイで満たされていく感覚に、エレンは少しずつ身を委ねていった。
「兵長ぉ…はぁ、…好き…。」
呼吸をするように、ごく自然と口にした言葉。
目の前にいるリヴァイの目が大きく見開かれ、エレンはハッと我に返る。
直前の映像が脳内でフラッシュバックし、エレンは顔を真っ赤にする。
「あ、…あの、…すみま…」
「謝る必要はない。」
リヴァイは不適に微笑み、エレンの唇を指でなぞる。
「エレン。俺の名前は?」
「リヴァイ、兵長…」
「名前だけでいい。さっきの言葉と一緒に、もう1度言え。」
「えっ?…えっ…!」
羞恥に理解が追いつかず戸惑うエレンに覆い被さり、リヴァイは上半身を密着させてきつく抱きしめる。
ゆっくりと腰を前後に動かし、目の前にある耳に舌を挿し込んだ。
「ひあ!…む、ムリです…っ…あんッ」
「お前の喘ぎ声で何も聞こえねぇ。」
「やあッ… いじわる…っ」
拒否する事は許されず、イかない程度にゆるゆると腰を打ちつけられ、エレンは甘い苦痛に顔を歪ませる。
「…す、好き、…やあっ、あん、すき、兵…、リヴァイ、さん…」
下腹部から聞こえてくる卑猥な水音と「好き」を連呼する自分自身の声に、エレンは言いようのない羞恥心を掻き立てられる。
「はぁはぁ、…リヴァイさん、好き、です…好き…あっ、」
鼻にかかったような甘えた声で啼くエレンの熱い吐息が、リヴァイの髪にふわりとかかる。
焦らされる快感に耐えきれず、もどかしそうに打ちつけてくるエレンの腰遣いに、リヴァイの体がゾクゾクと震える。
「エレン…っ…もっと、欲しい…。」
「やあっ…好き…んんっ…もっと…リヴァイさ、ん…もっと、…」
「…お前は、どうして欲しいんだ?」
「お、おく、…ん、突いて、はぁ、もっと…激しいの、…好き…っ…はああっ!!」
好きの言葉に合わせてリヴァイに腰を掴まれ、勢いよく最奥を突かれる。
先ほどまでとは比べものにならない、目の前で火花が散るような快感がエレンを陶酔させる。
「はっ…はっ…気持ち、いい…」
「1人でイったのか。寂しいだろうが。」
「んぷっ…」
リヴァイは少し不満そうにエレンの唇や口内を舐め回すと、再び激しく腰を打ちつける。
「はあッ!ああ、あんっ!」
イッたばかりの内壁を擦られ、最奥から体中に響くリヴァイの腰遣い。
エレンの頭の中が真っ白になり、それ以外何も考えられなくなる。
「ハァ…。気持ちいい…内側が熱くうねって、吸いついくる…」
「すき、好きっ、あん、すき、あっ、ああっ…」
激しくも甘く切ない快楽に溺れ、エレンは喘ぎ乱れていく。
「あ、また、…イっ…イく、すき、です。すき、リヴァイさん…イっちゃう、あっ、あっ、」
「ッ…出すぞ。」
「んっ…あ、…あああああっ!!!」
リヴァイがエレンの腰を引き寄せて最奥に性を放つと、矯声を上げてエレンも同時に性を放った。
「あはぁ…っ…はぁ、あぅ、…ふっ…」
脱力しきった体に、ベッドの柔らかさが心地いい。
頭に白い霞がかかり、ゆったりと沈み込んでいく。
「眠いか?」
声のする方へ視線を合わせようとするも、瞼がひどく重い。
「後は全部俺がやるから、しばらく寝てろ。」
後頭部に手を添え、髪に頬を寄せてくるリヴァイの胸に、エレンも顔を埋める。
意識が遠のくエレンには、余韻に浸る時間はなかった。
「…ずるいです。」
「?」
「俺ばっかりで、ずるいです…。」
ポツリと呟く、どこか寂しげな声。
リヴァイは静かに瞼を閉じ、その言葉に真摯に向き合い応える。
長い時間を経て、ようやく掴みかけたこの愛情に、もうこれ以上嘘をつくことはできなかった。
「……愛してる。この心臓はお前に捧げたんだ。この気持ちは永遠に変わらない。」
重ねた口唇に、言葉にしきれない想いを、そっと乗せて。
end.
救急箱を借りに扉を開けたはいいが、早くも閉めたい気分に駆られた。
「私のおかげで早く解決できて良かったね~!いやいや、お礼なんていいよ、感謝してくれればそれでいいんだ。」
「黙れ。」
にこにこと笑顔を向けるハンジに対してそう吐き捨てると、リヴァイはずかずかと部屋に入り、戸棚を開け始めた。
「何その言い方は~!警察部隊をすぐに派遣してあげたのに、この扱いひどくない?」
不満を訴えるハンジを無視して、リヴァイは救急箱を探し続ける。
「でも、ちょっと大袈裟だったんじゃないの?」
「以前から俺たちのもとにも報告が上がるほど、連中は問題になっていた。今回の件は、奴らと例のシェルムが共犯して、監視下にあり貴重な研究資料であるエレン・イェーガーとその友人への監禁暴行とみなせば、妥当だろ。」
視線は戸棚に向けたまま、リヴァイは必要に応じてハンジの質問に淡々と答えていく。
「捕まった子たちって、憲兵団に入れなかった金持ちの息子だっけ?家の体裁で仕方なくこっちに入団、親から兵団への資金援助…最低限の訓練以外は事務処理が中心だから、駐屯兵団でも問題になってるみたいだよ。」
「事務処理の前に去勢でもさせとけ。」
「あははっ、そうかもね~!」
リヴァイは救急箱を見つけると、一言「帰る」と残してハンジの部屋を後にしようとした。
「リヴァイ、ずっとシェルムの事を気にかけてたんだね。」
ハンジの言葉に、ドアノブに手をかけたリヴァイの動きが止まる。
「つるんでいた仲間の一部が、あいつを襲った奴らだ。」
「そう…。」
一見変わらないが、振り返ったリヴァイの表情は少し曇って見えた。
「俺はずっと…ただ逃げ続けていただけだった……。」
心ここにあらず、床の一点を見つめ続ける。
癒えることのない傷を抱え、契約を【解除】したあの日から、リヴァイの時間は止まったままだった。
「リヴァイは一歩ずつ前に進んでる。私は好きだよ。」
ハンジの意外な言葉と優しい笑顔に、リヴァイは大きく目を見開く。
「……馬鹿言え。」
悪態をついても、自然と口元が綻んでいく。
その笑顔に救われてきたのも、また事実だった。
「ハンジ。」
リヴァイはドアに背をもたれかけ、救急箱を持ったまま腕を組んだ。
「シェルムはどこでエレンの話を耳にしたと思う?」
互いの視線が交錯する。
その目と言葉の意味するものを、ハンジは理解した上で軽く肩をすくめる。
「さぁね。」
リヴァイが【再契約】をした時点で、もう皆、薄々気づいていたことだ。
もう、避けて通ることはできない。
「リヴァイ。」
ハンジは椅子から立ち上がると、リヴァイにゆっくりと近づく。
自分より背の高いハンジを見上げ、リヴァイは無意識に眉間に皺を寄せた。
「エレン、大事にしなよ。」
エレンの名に、リヴァイの華奢な身体が微かに反応する。
「エレンは、昔のリヴァイによく似ているね。」
覗き込んでくる眼鏡の奥の瞳は、過去を懐かしみ、どこか哀しみを含んでいた。
「あの人がリヴァイにしてくれたように、リヴァイもエレンを守りたかったの?」
その問いには答えず、ハンジから目線を外した漆黒の瞳は、静かに伏せられる。
「もう1度、あの人と向き合う時期が来たのかもしれないね。」
「…いちいちおせっかいな奴だな。」
救急箱の取っ手を強く握り締め、リヴァイは小さく舌打ちをした。
******
「お帰りなさい。」
「待たせたな。」
部屋の扉を閉め、小さな救急箱を持ったリヴァイがベッドに座るエレンの元へやって来る。
「ハンジに救急箱を借りに行ったはいいが、馬鹿みたいに喋り倒された。」
「大変ですね…。」
エレンの横に座り、リヴァイは救急箱の蓋を開けて必要な道具を取り出していく。
「顔出せ。」
「!いっ…」
後頭部を掴んだ手に無理やり引き寄せられ、首の痛みと傷の痛みにエレンは顔をしかめた。
リヴァイは慣れた手つきで消毒液に浸した綿をピンセットでつまみ、既に治りかけてきたエレンの顔の傷に軽く消毒をしていく。
(兵長…。)
傷の手当てのために、目線こそ合わないが互いの息が届きそうなほどの距離にリヴァイの顔があった。
何度も見てきたはずなのに、このままずっと見ていたいと思う気持ちにエレンは気づく。
「お前は、いつもボロボロだな。」
「そうですか?」
「その内の1回は、俺が蹴り飛ばしたけどよ。」
「は、はぁ…。」
この距離でこういう会話はしないでほしい。殴られそうだ。
リヴァイの前では口が裂けても言えないが、先程から殴られる恐怖を上回る奇妙な緊張感に、エレンは戸惑っていた。
「あの、兵長。」
「ああ?」
「なんで、俺があそこにいるって分かったんですか?」
何とか自分のペースを保とうと、必死に話題をひねり出す。
「ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーだったか?あの2人が俺の部屋に来たんだ。」
2人の顔が脳裏をよぎる。
中庭で別れた後、すぐにリヴァイの元へ向かい事情を説明しに行ったのだろう。
(すげぇ…。)
「たかが兵士の揉め事に普段関わる暇はねぇが、お前は特別だ。」
(特別…!)
その言葉に、エレンの心拍数が一気に跳ね上がる。
「俺の監視下にある事を忘れるなよ、エレン。」
「…はい。」
しかし、すぐ現実に引き戻されエレンはがっくりと肩を落とした。
(なんか、俺、さっきから変だよな…。)
恥ずかしくて、自分らしくなくて、それでも側にいたい気持ちがくすぐったい。
「助けてくださって、本当にありがとうございます。」
何度も頭を下げるエレンに対し、リヴァイは手当てをしていた手を止め、道具をベッド横の机に置く。
「エレン。」
ぐいと引き寄せられた身体が、リヴァイの腕の中に収まる。
「お前はまだガキだ。何でもかんでも背負い込もうとするな。」
肩に回された腕や、頭を撫でてくる手は、子どもをあやすように優しい。
「もっと大人に甘えろ。」
『素直に甘えればいいんだよ。』
リヴァイの胸に耳を押し当て、布越しに聞こえてくる心地よい心音に、切なさで胸が締めつけられる。
(ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!俺……!!)
リヴァイの温もりを感じて高まる鼓動に、エレンは顔を真っ赤にする。
(ダメだ…早く、離れなきゃ…)
否定しようとする気持ちは、もう誤魔化しきれなくなっていた。
(ミカサ、守らねぇと……だって、)
ミカサを盾にしているのは、紛れもなく自分自身だ。
「エレン、今日はもう寝ろ。」
「は、はい……え?」
頭上から聞こえてきたその言葉に、エレンは胸の奥にぽっかりと虚しさが広がる。
「明日は早朝から実践訓練がある。休めるうちに休んどけ。」
ゆっくりと離されていく身体に、触れてくる空気がひんやりと冷たい。
「あの、兵長は、」
「しばらくハンジの部屋にいる。」
「っ…。」
道具を片付け、救急箱を持ってリヴァイは立ち上がろうとした。
「ま、待ってください!!」
袖を強引に掴まれベッドに引き戻されると、リヴァイの唇に何かが触れる。
「……!」
柔らかな感触はすぐに離れ、頬を朱に染めたエレンがリヴァイを見つめていた。
一瞬何が起こったのか分からず呆然とするリヴァイだったが、状況を理解すると声を張り上げる。
「~~っっバカか、テメェは!手負いの人間に無理強いするほど、俺は下衆じゃねぇ!」
怒鳴られたことよりも自分の想いを否定されたようで、エレンも珍しく応戦する。
「で、でも、初めて【契約】した日、…俺、巨人と戦うのよりも酷い目に遭いました!」
「!?」
エレンに『巨人と戦うより酷い目に遭った』と言わしめる【契約】初日。
確かに痛いところを突かれ、リヴァイはぐうの音も出なくなる。
「あ、…と、それとこれは、」
エレンから視線を外し、リヴァイはきまり悪そうにこめかみに手を当て、ため息をつく。
エレンはその手を取り、両手でしっかりと握りしめる。
「エレン?」
「はい、別です。…これは、俺の意思です。」
重なる手を通して、エレンが微かに震えているのが分かる。
「目の前に兵長がいてくれることが、すごく嬉しくて、俺はこの手を離したくないんです。」
恥ずかしそうに笑って、リヴァイの手を自らの左胸に押し当てた。
「抱いてください、兵長。」
幼さを残した少年の精一杯の想いは、左手で感じる左胸の心音からも伝わってくる。
眉をわずかに動かし、リヴァイはエレンの金色の瞳を覗き込む。
「…いいのか?」
躊躇いと微かな期待を含むリヴァイの表情に、エレンの緊張感が増していく。
「は、はい。怪我、ほとんど治ってるので。」
「今は体よりも、お前の気持ちが知りたい。」
「迷惑でなければ…お願いします…。」
いつもの、ぶっきらぼうなやりとりが抜けず、まるで噛み合わない会話をしているエレンを見て、リヴァイの口元が思わず緩む。
「な、何がおかしいんですか…。」
「お前は、かわいすぎる。」
ゆっくりとベッドに押し倒され、エレンの沈み込む身体にリヴァイの体重がのしかかる。
リヴァイは目を細め、エレンの頬を優しく撫でた。
「怖いか?」
「あ、す、少し。…あの…今までと、違う感じがして…。」
「そうか。俺もお前と同じだ。」
「え?…っ…んん…」
そっと重ねられた唇に、エレンは静かに瞼を閉じる。
与えられる安らぎに、緊張は少しずつ解けていく。
「っ……ん、んん…ちゅ……」
浅く、深く、キスを繰り返して、時折舌を絡めては互いの唾液が喉を潤していく。
「エレン…。」
「…兵長…。」
髪を撫でてエレンの名を呼べば、それに応えるように首にまわした腕がギュッと抱き締めてくる。
「んむ、むむむ…ちゅ、…はぁ、」
唾液が細長い糸を引いて唇から離れる。
リヴァイの唇がエレンの顎に触れ、舌が首筋や鎖骨をなぞりながら下へとおりていく。
「あ、んっ…だめ…っ」
触れられる部分が熱く、背筋を這う快感にエレンは拒絶の言葉を口にする。
リヴァイは顔を上げ、自分の額をエレンの額にコツンと押し当て、胸の内にしまい込んでいた気持ちを吐露する。
「エレン…体だけじゃなくて、お前の心が欲しい。怖がらずに、俺を受け入れてくれ。」
リヴァイはエレンのベルトとチャックを外すと、半勃ちのペニスをやんわりと握り締める。
「あうっ…!」
リヴァイの手の温もりと感触にエレンの全身が逆立つ。
ゆっくりとペニスを上下に動かされ、それは一定の感覚で徐々に激しさを増していく。
ペニスの先端からはカウパーが滲み、リヴァイの手をぬるぬると濡らしていた。
「ああ、はぁ、…あん、あっ、…」
「今体で感じているものを、素直に声に出してみろ。」
耳元で囁く低く濡れた声音に、エレンの身体がゾクゾクと震える。
ずっと認めたくなかった。
言ってしまったら、戻れないと思った。
「っ…きもち、……気持ち、いい、…」
「…ずっとその言葉が聞きたかった。」
「っ…!」
体が内側から求めるものと心が感じたままに発せられた言葉が合致した時、与えられていた快楽には幸福が重なり合っていたことを知る。
リヴァイと何度もしてきたはずの1つ1つの行為が泣きたくなるほど幸せで、エレンは感情を抑えきれずリヴァイの唇にキスをした。
「んむ、はぁ、…へいちょう…っ…気持ちいいです、…あ、はぁ、…あっ、あっ、…すごく、気持ち、いい…、」
甘く弾ける快感に、エレンは気持ちよさそうに腰を揺らし続ける。
初めて見るエレンの柔らかく蕩けた表情に、リヴァイの表情も和らいでいく。
「良い子だ。」
エレンの顔にキスの雨を降らせながら、高ぶる感情に身を任せてペニスを一気に扱き上げる。
「はぁはぁ、…へいちょ、…気持ちいい……あ、イく…きもちぃの、あ、あッ…い、イっちゃうぅ………ッッ!!!」
エレンはリヴァイにしがみつき、リヴァイの手の内に性を放つ。
エレンの肌は汗でしっとりと濡れ、脱力しきった体は色香を纏っていた。
余韻に浸るエレンの首筋にリヴァイが口づけを落とすと、細い体が小さく跳ねる。
「んんっ…」
「そう煽るな。」
リヴァイは薄く笑って、手の平にあるエレンの精液をぐちゃぐちゃと揉むと、それを潤滑油にエレンの秘部へと手を這わせる。
反対の手でエレンのシャツをたくし上げると、期待と不安の表情を浮かべたエレンがこちらをじっと見つめていた。
「あっ…」
「しっかり解さねぇとな。」
「あんん…っ!」
エレンの胸にリヴァイの顔が埋まると、ねっとりとした生温かい舌が乳首に絡みつき、同時に、骨ばった指がエレンの秘部をゆっくりと押し拡げながら侵入してくる。
熱く蕩けるエレンの内は、リヴァイの指三本分をつけ根まで容易く呑み込んだ。
「はぁはぁ、…待っ…兵長、…そこ、は、」
「お前のお気に入りだろう?」
「ひあっ、あああ…っ!!」
乳首を甘噛みされながら、挿入された指に内壁の最も感じる部分を擦られ、エレンは矯声を上げる。
全身を駆け巡る強烈な快感に、エレンは何度も背中を仰け反らせ、ポロポロと大粒の涙が頬を伝う。
「兵ちょ…はぁはぁ、キス、キスして…兵ちょ、…キス、ん、っ…」
胸に埋まる髪を力なく握りしめ、せがむようにリヴァイにキスを求めるエレン。
リヴァイは愛撫する手を止めて顔を上げると、エレンの振り乱れた髪を整えながら、安心させるようにキスをした。
「ちゅ…そろそろいいか?」
エレンが伏目がちに頷くと、互いにキスをしながら、相手の軍服を丁寧に脱がしていく。
リヴァイは裸になったエレンの脚を広げると、臀部の中心で露わになった秘部に自身を押し当てる。
我慢の限界を迎えたいきり立つそれに、エレンは顔を真っ赤にして思わず目を瞑った。
「どうした?」
「は、恥ずかしいです…。」
「…お前は本当に…」
「?」
「いや…ゆっくり慣らしていくから、辛くなったら言え。」
「はい…。」
太く熱い感触が秘部をゆっくりと押し拡げ、内側を脈打ちながら奥へと侵入していく。
下腹部が圧迫され、リヴァイで満たされていく感覚に、エレンは少しずつ身を委ねていった。
「兵長ぉ…はぁ、…好き…。」
呼吸をするように、ごく自然と口にした言葉。
目の前にいるリヴァイの目が大きく見開かれ、エレンはハッと我に返る。
直前の映像が脳内でフラッシュバックし、エレンは顔を真っ赤にする。
「あ、…あの、…すみま…」
「謝る必要はない。」
リヴァイは不適に微笑み、エレンの唇を指でなぞる。
「エレン。俺の名前は?」
「リヴァイ、兵長…」
「名前だけでいい。さっきの言葉と一緒に、もう1度言え。」
「えっ?…えっ…!」
羞恥に理解が追いつかず戸惑うエレンに覆い被さり、リヴァイは上半身を密着させてきつく抱きしめる。
ゆっくりと腰を前後に動かし、目の前にある耳に舌を挿し込んだ。
「ひあ!…む、ムリです…っ…あんッ」
「お前の喘ぎ声で何も聞こえねぇ。」
「やあッ… いじわる…っ」
拒否する事は許されず、イかない程度にゆるゆると腰を打ちつけられ、エレンは甘い苦痛に顔を歪ませる。
「…す、好き、…やあっ、あん、すき、兵…、リヴァイ、さん…」
下腹部から聞こえてくる卑猥な水音と「好き」を連呼する自分自身の声に、エレンは言いようのない羞恥心を掻き立てられる。
「はぁはぁ、…リヴァイさん、好き、です…好き…あっ、」
鼻にかかったような甘えた声で啼くエレンの熱い吐息が、リヴァイの髪にふわりとかかる。
焦らされる快感に耐えきれず、もどかしそうに打ちつけてくるエレンの腰遣いに、リヴァイの体がゾクゾクと震える。
「エレン…っ…もっと、欲しい…。」
「やあっ…好き…んんっ…もっと…リヴァイさ、ん…もっと、…」
「…お前は、どうして欲しいんだ?」
「お、おく、…ん、突いて、はぁ、もっと…激しいの、…好き…っ…はああっ!!」
好きの言葉に合わせてリヴァイに腰を掴まれ、勢いよく最奥を突かれる。
先ほどまでとは比べものにならない、目の前で火花が散るような快感がエレンを陶酔させる。
「はっ…はっ…気持ち、いい…」
「1人でイったのか。寂しいだろうが。」
「んぷっ…」
リヴァイは少し不満そうにエレンの唇や口内を舐め回すと、再び激しく腰を打ちつける。
「はあッ!ああ、あんっ!」
イッたばかりの内壁を擦られ、最奥から体中に響くリヴァイの腰遣い。
エレンの頭の中が真っ白になり、それ以外何も考えられなくなる。
「ハァ…。気持ちいい…内側が熱くうねって、吸いついくる…」
「すき、好きっ、あん、すき、あっ、ああっ…」
激しくも甘く切ない快楽に溺れ、エレンは喘ぎ乱れていく。
「あ、また、…イっ…イく、すき、です。すき、リヴァイさん…イっちゃう、あっ、あっ、」
「ッ…出すぞ。」
「んっ…あ、…あああああっ!!!」
リヴァイがエレンの腰を引き寄せて最奥に性を放つと、矯声を上げてエレンも同時に性を放った。
「あはぁ…っ…はぁ、あぅ、…ふっ…」
脱力しきった体に、ベッドの柔らかさが心地いい。
頭に白い霞がかかり、ゆったりと沈み込んでいく。
「眠いか?」
声のする方へ視線を合わせようとするも、瞼がひどく重い。
「後は全部俺がやるから、しばらく寝てろ。」
後頭部に手を添え、髪に頬を寄せてくるリヴァイの胸に、エレンも顔を埋める。
意識が遠のくエレンには、余韻に浸る時間はなかった。
「…ずるいです。」
「?」
「俺ばっかりで、ずるいです…。」
ポツリと呟く、どこか寂しげな声。
リヴァイは静かに瞼を閉じ、その言葉に真摯に向き合い応える。
長い時間を経て、ようやく掴みかけたこの愛情に、もうこれ以上嘘をつくことはできなかった。
「……愛してる。この心臓はお前に捧げたんだ。この気持ちは永遠に変わらない。」
重ねた口唇に、言葉にしきれない想いを、そっと乗せて。
end.
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