Case2【嫉妬】
「ここで、ですか。」
「ここで、だ。」
互いに一歩も譲らず睨み合ったまま、押し問答が続く。
調査兵団が所有する建物内には、使用されなくなった部屋が幾つかあり、その一角にある元会議室のような場所にエレンは呼び出されていた。
人通りがほとんどなく、一日中薄暗い。
しかし、使用されなくなってからさほど経っていないのか、会議室は綺麗なままだった。
「せめて部屋に戻ってからにして下さい。」
「会議が長引くから無理だ。」
「それなら明日にして下さい。」
「お前が勝手に決めるな。」
苛立ちを募らせたリヴァイの威圧的な声に、拒否し続けていたエレンも思わず萎縮する。
「どういうつもりだ。」
「だ、だって…」
「だって、何だ。」
「人が…来るかもしれないじゃないですか…。」
頬を赤く染め、掠れるような声でエレンは現状回避を訴えた。
「お前が声を出すのを我慢すれば、誰も気づかねぇだろ。」
「なっ…」
さりげなく爆弾発言をするリヴァイに、エレンは唖然となる。
(冗談じゃないっ!!)
エレンがリヴァイの【契約者】になってから、一週間が経とうとしていた。
【契約】を交わした翌日、エレンはリヴァイに強引に体を奪われ、それ以降も毎晩呼び出されてはその腕の中で抱かれ続けた。
自分の意に反して男性と交わることは、エレンに背徳感と罪悪感を与えたが、『家族であるミカサを守りたい』という唯一の希望が、リヴァイとの性行為を正当化する理由づけとなり、心の支えとなっていた。
「とにかく俺はこんなところで絶対したくありません。【契約】してるなら、俺の意見は兵長と対等なはずです。」
エレンは内心どぎまぎしながらも、リヴァイに対して必死に主張するが、当の本人は耳元で子犬が吠えているレベルにしか考えていなかった。
エレンを見上げたまま微動だにしなかったリヴァイだったが、話を遮るようにおもむろに口を開いた。
「他に言う事があるだろ?」
その言葉に、リヴァイの頭上から聞こえていた主張がぴたりと止まり、エレンは急速に大人しくなっていく。
――『合図』だった。
「あ…」
エレンは自分を見据えるリヴァイの目に耐えられず、俯いてぎゅっと目を瞑った。
心拍数が上がり、頬が一気に紅潮する。
『他に言う事があるだろ?』
――リヴァイの限界を示す『帰れ』と同じ効力がある事に気付くのは早かった。
どれだけ否定をしても無意味な事は、エレン自身が一番理解しているのに。
「あの…」
両腕を掴まれる心地よい痛みが、エレンに絶対的な服従を要求してくる。
「返事は?」
リヴァイの一つ一つの言葉が、抗うことのできない鎖となって心を縛りつけた。
『ミカサを守る為』
「抱いてください…兵長…。」
理性との狭間で揺れながら紡ぎ出すエレンの言葉が、リヴァイにとってたまらなく優越を感じる瞬間だった。
「ん…。」
自分より背の高いエレンに対し、少しだけ踵を上げ見上げるような姿勢で、リヴァイはキスをする。
怯えて無意識に後ずさろうとする後頭部を押さえつけ、リヴァイはエレンの口内に舌を滑り込ませた。
「ん…ふっ…ッんぅ…」
互いの舌が絡まり合い、熱い吐息が頬を掠める。
どちらとも言えない唾液が、閉め切った会議室の中で2人の喉を潤した。
「ふ、はぁ…っ…んンン…!」
口内を這うリヴァイの舌に反応してエレンの背中がびくびくと震える。
頭の中に白い靄がかかり、力が抜けて今にも足元から崩れそうな危うさがあった。
「…っ…ふぅ…。」
リヴァイがエレンから唇を離すと、唾液が細長い糸を引いて静かに切れる。
「…知ってるか?互いが興奮しないと唾液に粘り気は出ないらしい。」
「何が言いたいんですか…。」
リヴァイの意地悪な質問に対し、エレンは顔を真っ赤にしながら慌ててジャケットの裾で口を拭った。
「それはお前が一番分かってるだろ?」
「ッ…!」
エレンはリヴァイの言葉に声を詰まらせる。
当初、慣れないキスに顔を歪ませていた少年は、たった数日でリヴァイの愛撫に順応する体になっていた。
エレンはそれを自覚し、負い目を感じているだけに、リヴァイに指摘されてしまい羞恥に震える。
(違う…俺が望んでるわけじゃない…。)
「そこに寝ろ。」
リヴァイの視線の先にあったのは、会議室の机だった。
「ここ…」
他の部屋でも見かける、普段から使い慣れた長机。
向かい合わせに連なり、一枚の板となって、ちょうど一人が横になれる大きさだった。
「机って、あの…床じゃダメなんですか?」
「論外だ。」
「…そう、ですか。」
自分のことに精一杯で、リヴァイの潔癖性をすっかり忘れていた。
エレンは渋々机の上に寝そべる。
火照った体に冷たい机の感触が妙に心地良い。
「んンッ…!」
エレンが机に乗るや否やリヴァイは立ったまま覆い被さるように屈むと、再び激しいキスを繰り返す。
「はぁ、んッ、んん…っ…んぅう!」
「ハァ…っ…会議まで時間無ぇから手短かに済ますぞ…。」
リヴァイはエレンのベルトとチャックを外すと、既に立ち上がったペニスを握り締め上下に動かし始めた。
「ッ!あ、はぁあッッ!!」
体が感じるもっとも気持ちの悦い場所を攻められ、エレンは堪らず声をあげた。
ペニスを包み込むリヴァイの体温と手の感触は、エレンの内側から早々に痺れる様な快感をもたらす。
「はぁ、はぁ…っ…あぁ、…や、んん…!」
否が応でも感じさせられる快楽が、エレンの気持ちとは裏腹な濡れた声を会議室に響かせた。
「あ、らめ、ッぁあ…く、…やだ…ぁあッ…!!」
先端を指で執拗に擦られる強烈な快感に悶え、先端からカウパーが溢れ出してリヴァイの指に絡みつく。
「へい、ちょ…ッ!…待って、…あ、らめ!、らめぇ…っ!!」
「以前と比べればだいぶ素直な反応を見せるようになったな。」
瞳を潤ませて喘ぐエレンを見下ろし、リヴァイは薄く笑いながらペニスを弄ぶ。
絶え間ない快楽の波にエレンは体を強張らせ、小刻みにぶるぶると震える。
「あッ!やら、ひッ…あ、あぁあぁ、……!!」
「そうやって従順になる事を体で覚えろ。」
「んぁあぁあッ……!!!」
嬌声と共にリヴァイの手の内でひときわ大きくなったエレンのペニスから、白濁とした体液が勢いよく吐き出された。
「ハァハァ、…んッ…はぁ、はッ…」
四肢を投げ出し、荒い息遣いでぐったりと横たわるエレン。
しかし、休む間もなくリヴァイの「脱げ」という命令に余韻の残る体で力なくズボンを下ろした。
「…もう…無理、です…。」
大きく肩を上下させながら懇願するエレンを無視して、リヴァイは脚を広げさせると精液が残る手を秘部に這わせた。
「一人で勝手に満足するな。」
リヴァイは中指と人差し指を無理矢理ねじ込むと、強引に内側を掻き回し始めた。
「ぅあっ…ぁあぁあ…!」
絶頂に達したばかりの気怠い体に、下腹部の不快感と相反する快楽が一気に押し寄せてくる。
「ハァハァ、…っ…あぁ、ッうぁ、あ…」
全身がじっとりと汗ばみ、衣服が体に張り付く。
「はっ…無理なわりにはまた立ち上がってきたな」
「!ッ…やめ…はぁ、あッ…違、う…」
リヴァイの嘲笑にエレンは屈辱を覚えるが、何度経験しても嫌悪する感覚にただひたすら耐えるしかなかった。
(…まただ、)
エレンは悔しさに涙を滲ませる。
(また何も出来ないまま…兵長にイかされる…。)
******
『すまないが、この書類を早急にリヴァイ兵士長に届けてほしい』
今夜行われる会議の準備をしている際、エルヴィン団長に頼まれた仕事だった。
重要な資料なので目を通しておいてほしいとの言付けを添え、大きめの封筒を渡される。
『了解しました。』
この時間帯なら自室にいるはずと言われて向かったが、席を外しているらしく部屋は空っぽだった。
机の上に置いておくことも考えたが、『早急に』という言葉が引っかかり、ジャンはリヴァイを探し始める。
「兵長?さぁ…」
「見かけねぇな。」
数名に聞いてみたが、誰もリヴァイの居所を知る者はいなかった。ただ、気になる情報を一つ手に入れる。
「そーいや、さっきエレンと一緒にいたぞ。」
「!」
エレンの名前に、ジャンの眉がぴくりと動いた。
「…サンキューな。」
その後、二人がいると思われる方向に進むにつれ、少量ではあるが目撃情報が増えてくる。
どうやら現在いる本館の外れに向かったらしい。
(何であんなところに…?)
次第にジャンの目的意識は、リヴァイへの書類渡しではなく、エレンがリヴァイとどこで何をしているかに変わっていた。
(エレンの奴、あれからずっと兵長と行動を共にしてたのか…。)
リヴァイがエレンを【契約者】として公に宣言してから、三週間を迎えようとしていた。
ライナーとベルトルトはこの間に【フェイク】から正式な【契約】に変わり、アルミンは周りの反対を押し切る形で【フリー】を貫いていた。
そして、ジャンはコニーと予定通り【フェイク】として通常の生活を送っていたが、人間の本能に忠実な【loverssystem】はすぐに現実のものとして身近に感じるようになった。
戦いと訓練に明け暮れる日常の中で、僅かな休息の楽しみは、食事、睡眠、談笑、読書、たわいもないゲーム、そして、肉体関係を持つこと。
異性との関係を禁止されているとは言え、男性兵士達が自慰行為だけで満足できるはずがなく、同性同士で求め合うことは必然であった。
しかし、同性であるがゆえに性行為への遠慮もなく、時と場所を選ばず獣のように貪り合う様を何度か目撃してしまったジャンは、その度に虫酸が走り、いつの間にか行為自体を軽蔑の眼差しで見るようになっていた。
(あいつも、だよな。)
自分の目に映るエレンの様子は、【契約】宣言以降も特に変わっていなかった。
【契約】が続いているならば、エレンは兵長と今も関係を持っているはずだが…。
(信じらんねぇ。)
あらぬ憶測を悶々としていたら、ジャンはいつの間にか本館の外れまで来ていた。
(薄暗い…こんなところ本当にいるのかよ。)
物音を立てないように静かに廊下を歩き始める。
きょろきょろと辺りを見渡していると、奥の部屋に人の気配を感じた。
「……り、…で…」
(エレンか…?)
何か話し声はするのだが、よく聞き取れない。
そっと部屋に近づき、廊下側の窓を少しだけ開けると、ジャンは部屋の中を覗いた。
「ハァハァ、…っ…あぁ、ッうぁ、あ…」
「!?」
ジャンは窓越しに見えた光景に愕然とする。
(な、…に、…やってんだ…。)
リヴァイの背に隠れて殆ど見えないが、机の上にいるのは紛れもなくエレンだった。
「はっ…無理なわりにはまた立ち上がってきたな。」
「!ッ…やめ…はぁ、あッ…違、う…。」
鼻にかかった甘ったるい声を漏らし、時折身を捩らせて見え隠れする艶かしい表情は、まるで別人のようだった。
「その意地が最後まで保ったら褒めてやる。」
「ぁあ、…ッ…ぅああ…!」
他人事のように軽蔑していた時とは違い、身近にいてライバルでもあるエレンと、尊敬するリヴァイとの情事を目の当たりにし、ジャンはあまりの衝撃にその場に立ち尽くしてしまった。
(…これが【契約】…?…あいつは、そんな素振り全く見せなかった…。)
その時、
『バサッ…』
呆然としていたジャンは、エルヴィンに頼まれていた封筒を思わず落としてしまった。
(しまった!!)
本館外れにある静かな場所で、厚みのある封筒は想像以上の音を立てた。
「え、誰…?」
窓越しに、エレンの不安そうな声が聞こえる。
ジャンは青ざめ、今にも破裂しそうなほど心臓が激しく鼓動を打った。
(バレた…兵長に殺される…!!)
「気のせいだ。」
(えっ…)
それは予想外の言葉だった。
「気のせいじゃないです!誰かいる…っ…だから嫌だって…」
「少し黙ってろ。」
「やめっ…離してく…ッ!ん、んぅうぅうーー!?」
動揺するエレンの口唇はリヴァイの口唇で塞がれ、くぐもった叫び声が部屋に響く。
程なくして生々しく腰を打ちつける音がしだし、ジャンは急いで書類を拾い上げるとその場から離れた。
(た、助かった…。)
人通りの増え始めた本館に戻ると、ジャンは息も絶え絶えに廊下の壁にもたれた。
「ハァ!ハァ!…ッ…」
『ぁあ、…んッ…や、ぁああ…!』
『やめっ…離してく…ッ!ん、んぅうぅうーー!?』
何故だろうか。
エレンの声が、耳から離れない。
*****
『会議に必要な追加書類があるので、取りに行ってほしい。』
リヴァイ兵長に頼まれたと告げられ、エレンはジャンと書類が保管されている場所へと向かっていた。
「………。」
訓練兵時代ほど仲は悪くないが、2人きりで行動を共にする事は珍しく、これと言った会話もないまま歩き続ける。
手伝いとは言え、なぜ自分が誘われたのか不思議で、何となく気まずかった。
「エレン。」
不意にジャンに名前を呼ばれ、エレンはドキッとする。
「な、何だよ。」
「この先に兵長に頼まれた資料がある。行くぞ」
「え、…」
ひたすら歩かされて着いた場所は本館外れだった。
そしてこの先にあるのは、つい先程までエレンがリヴァイと関係を持っていた会議室である。
「ジャ、ジャン…あのさ、」
「早くしないと会議が終わっちまうぞ。」
困惑するエレンをよそに、ジャンはどんどん先へと進んでいく。
部屋が近づくにつれ、先程までのリヴァイとの情事が思い出された。
(くそっ…兵長とヤってた場所へ行くなんて最悪だ…っ!)
エレンはあまりの恥ずかしさに気が動転し、ジャンを追い越して会議室へ飛び込んだ。
「あ…れ…?」
冷静さを取り戻したエレンはハタと気づく。
静まり返った会議室の目の前にあるものは机と椅子のみ。
ここに資料など、最初から存在しない。
「ジャン、部屋間違えてるぞ。」
エレンが扉の方を振り返った瞬間、後を追って部屋に入ったジャンは会議室の鍵をかけた。
「オイ、何で鍵を閉めるんだよ。」
「なぁ、お前さっきまでここで兵長とヤってただろ。」
「!?」
ジャンの口から突然出てきた言葉に、エレンは動揺を隠し切れない。
「……どうしてお前が、俺と兵長がここにいた事を知ってんだよ。」
エレンは後ずさり、ジャンに疑惑の目を向ける。
「ヤってた事は隠さないのか?」
「お前だってあの時食堂にいたから知ってんだろ。俺は兵長と【契約】してるんだ。」
「随分飼いならされた物言いじゃねーか。エレン・イェーガーともあろう優秀な兵士が、兵長にケツ掘られて喜んでるとはね。」
上から目線でニヤニヤと笑うジャンに対し、エレンはカッとなる。
「テメェ…こんな話をする為に俺を呼んだのか?」
「事実を話してるだけだろ。」
「俺だって好きで兵長と【契約】してんじゃねぇよ。」
「じゃあ【解除】しろよ。」
「それは…」
ミカサの顔がエレンの脳裏をよぎった。
「できない…。」
「は?」
「【解除】は絶対にしない。」
そう言ったきり、エレンは俯き黙り込んでしまった。
エレンの感情の激しい起伏に、ジャンは一瞬圧倒されるが、その裏にある「何か」が見て取れた。
「お前、もしかして兵長に弱みを握られてるのか?」
ジャンの核心を突く言葉に、エレンの顔色が青ざめる。
「へぇ、どうやら事実みたいだな。」
「…余計な詮索すんな。」
エレンは力のない声でポツリと呟く。
(…あのエレンが弱みを握られただけでこのザマか…。)
ジャンは、自分がエレンを手の内で支配しているような高揚感を覚える。
「お前が簡単に屈するところを見ると、他人が絡んでるんだな。」
「………。」
「黙っててやってもいいぜ?」
ジャンはエレンに近づき、耳元で囁く。
「その代わり、俺にもヤらせろよ。」
「は…?」
耳を疑う発言に、エレンはジャンを凝視する。
「ここじゃ、女とヤれねーからな。」
「いや、お前童貞だろ?女とヤるヤらないの問題じゃねーだろ。」
「!?」
突然放たれた天然すぎる言葉に、ジャンはプライドを傷つけられ、思わずエレンの胸ぐらを掴む。
「ふざけんなよテメェ…!!兵長にヤられてるだけでタマは飾りかよ、人の事言えんのか?!」
「この野郎…さっきから言いたい放題言いやがって…なあ!そんなに強く引っぱったら服破けちゃうだろうが!!」
「はぁ?!服なんかどうでもいいだろうが、何言ってんだテメェ…」
ケンカ腰になっていたジャンだったが、ハッと我に返る。
「そう、だよな…服が破れたら兵長にバレるしな…。」
エレンの胸ぐらから手を離すと、ジャンは会議室の椅子にドカッと座り込んだ。
「俺からお前に手は出さねぇ。お前が俺に近づいたんだ。」
ジャンは自分の優位を確信し、腕を組んでジッとエレンを見据える。
「何言ってんだ?お前、いい加減にしろよ…」
「アルミンか?ミカサか?」
「!」
「黙っててほしいんだろ?」
「くっ…」
エレンはその理不尽な要求が本気であることに、ようやく気づかされた。
自分に向けられたジャンの視線は、契約初日のリヴァイと同じものだった。
(ちくしょう…何なんだ今日は…!!)
エレンは自分の無力さを改めて思い知らされる。
そして、その理不尽な要求を呑まざるを得ない情けない自分自身に怒りが沸き上がる。
「ジャン…」
エレンはジャンの前に立ち、その襟元を掴んで引き寄せた。
ジャンの隠微な笑いが鼻につく。
「テメェ…覚悟しろよ。」
「こっちのセリフだ。」
エレンは噛みつく様にジャンの唇へキスをした。
「んぅう…ッ、ふ、ぅんん…!」
押し付ける様に唇を重ね合い、ぎこちない舌が貪るように絡み合う。
リヴァイの時と違いリードをする側がおらず、未経験同士の2人のキスは拳を交えないだけのケンカの延長のようなものだった。
「んっ…むぅ、ンン!…んぅッふぅぅ、ぅうう…!!」
つい先程までリヴァイとセックスをしていた場所でジャンとキスをする感覚は、何とも言えないばつの悪さとその考えを打ち消そうとする2人の行為を加速させた。
「ようエレン、…っ…結局テメェは誰とヤっても同じなんだよ…。」
「…ッ…冗談だろ…俺がリードしてやってんだよ…。」
ジャンの余裕のある目つきと、エレンの憎しみが込もった目つきが交錯する。
「んンン…ッッッ!!」
最初にこの場を制したのはエレンだった。
リヴァイに仕込まれたエレンのテクニックは、キスに慣れていないジャンを翻弄させる。
「んぅ、ふっ…はぁ、あン、…ンんん!!」
エレンの舌が口内を這う度に、自慰行為だけでは感じる事の出来なかった快感がジャンの体を震わせた。
「……俺の勝ちだな。」
エレンはジャンの唇から離れると、そのまま首筋に顔を埋め舌を這わせた。
(ヤベェ…!流れを持ってかれた…!!)
エレンに主導権を握られジャンは焦るが、鎖骨や首筋、耳を舐められる快楽が勝ってしまい思考が働かない。
「…っ…ハッ…ぅあ、アッ…」
情けない喘ぎ声を漏らして苦痛に顔を歪め、ジャンはエレンのシャツを握り締めた。
「ぁあッ…!」
突然、矯声をあげてエレンの体がビクンと弓なりになった。
「は…?」
呆気にとられるジャンと自分自身に驚くエレン。
しかし、直ぐに2人は状況を理解する。
「お前…。」
「違っ…!」
エレンはジャンに気づかれた事に羞恥し、顔を真っ赤にする。
先程ジャンがシャツを握り締めた際、偶然エレンの乳首を指が掠めたのだった。
通常なら気にする程ではないが、先程のリヴァイとの余韻がエレンの感度を高めていた。
急速に対立の意志がなくなっていくエレンに、ジャンの欲望が一気に湧き上がる。
後頭部を掴んで強引に引き寄せると、動揺するエレンを見ながら薄く笑った。
「俺の勝ちだな。」
「んンッ……!!」
ジャンは怖気づくエレンの口内に無理矢理舌をねじ込むと、空いている手をエレンのシャツの中へ滑らせた。
「ン!っふ…ふぅ.、ぅう!んふッ、んぅう…!!」
激しく絡みついてくる舌と既に敏感になっている乳首をさらに刺激され、エレンはくぐもった叫び声をあげる。
「…ッ!ハァッハァッ、…はンッ!んぅ、ぅううーーッ!!」
息苦しさに呼吸をしようと顔を離そうとするが、その度に引き戻されてはジャンに唇を塞がれた。
セックスに慣れていない少し荒っぽい指づかいが、逆に心地良い刺激となってエレンの体を高ぶらせる。
「…ッ…はぁ…エレン…。」
「あッ、…ぁ、ぁあッ!らめ、…やら、やッ、…」
唇を離された後も胸への愛撫は続き、エレンの体に自然と力が籠もる。
内側から広がっていく快楽の波に耐えられず、無意識にジャンの首へと腕を回し背中に爪を立てた。
「やッ、はぁあん!…や、やだッ、…いやっ、…あッ、ぁああぁあ…っっ!!」
「スゲェ感じてるんだな。そんなに気持ちイイか…?」
「ハァッハァッ………も、…いいだろ…ハァッ…や、やめ…」
「誰が止めるかよ。」
シャツをめくられ、ジャンの舌がエレンの乳首にねっとりと絡みついて何度も吸い上げてくる。
「ひッ、あああっ…!あッ、や、…ッ動かす、なぁ……ッッ!!」
エレンがどんなに拒絶の言葉を並べても、ジャンの愛撫に喘いでしまいそれは虚しく消えていく。
リヴァイとのセックスで高められた体が、更なる刺激を求めてジャンを欲していた。
「…あぁ、んッ!い、…やッ、やらぁあぁあぁ…!!」
ジャンの耳元でエレンの濡れた声と熱い吐息が混ざり合う。
快感に身を捩らせ、必死にジャンの体にしがみつくエレンはひどくいやらしかった。
(我慢出来ねぇ…)
ジャンは強引にエレンを抱きかかえると、そのまま会議室の机の上に乗せた。
「うあっ…!」
抵抗する暇も与えられないまま、両手を頭上でまとめ上げられると、さらに空いている手がエレンの下に履いていた物全てを剥ぎ取った。
「くそっ…!離せよ、ジャン!!」
「なぁ。さっきまで兵長と一緒にいた会議室で、同じ机の上に押し倒されて同じ態勢で俺にヤられる気分てどうなんだ?」
「!?」
皮肉めいたセリフとは裏腹に、エレンを見下ろすその表情は切なく儚げで、同時に雄を感じさせる空気を纏ったジャンにエレンは怖気づく。
「……何なんだよ、お前、…。」
不安と疑念を抱くエレンの瞳に、ジャンは苛立ちを募らせた。
(何か…すげぇムカつく…。)
ジャンはベルトを外し、スボンを少しだけ下ろすと自らのペニスを取り出す。
「お前、今日兵長とヤってるから慣らさなくて平気だろ。」
「は…?さっきから何言って…」
いきり立つそれは、エレンが恐怖を感じる間もなく秘部に押しつけられてきた。
「ひ、ぁッ!!…あ、ッはあああっ!!」
「…っ…すげ、余裕で入ってく…。」
嬌声をあげて背中を仰け反らせるエレンの腰を掴むと、ジャンは激しく突き動かし始めた。
「兵長に毎晩突っ込まれてるクセに、今日は俺に抱かれてよ。」
相手のペースを掴む事が出来ず自分勝手に腰を打ちつけられ、エレンの体がおもちゃの様に揺さぶられる。
「あぁッ、…アッ!や、…はぁあん!…あ、んッ、ぁあぁあぁん!!」
「お前みたいな奴を淫乱て言うんだろうな…。」
乱暴な腰使いにも関わらず1度絶頂を迎えて慣らされた体がジャンを受け入れ、エレンから少しずつ快楽を引き出していった。
ペニスが最奥を突く度に濡れた口唇から喘ぎ声が零れ、内側が熱を帯びていく。
「もっと腰動かして、可愛く泣いてみろよ。」
「はぁはぁッ…!…っクソ… うあッ、やら、…も、いいだろ…終われって…はぁアッ!らめッ……!!」
「冗談だろ?俺たちはまだ、何も始まってねぇ…。」
拒絶するエレンの言葉は、繋ぎ止める理性を吹き飛ばす程の快楽によってかき消された。
「なぁエレン…何で兵長と【契約】なんかしたんだよ…。」
国が認めた暗黙のルールを破る事がどれ程のものなのかはジャン自身理解しているつもりだったし、エレンが兵長の【契約者】である事実も頭では理解していた。
リヴァイと【契約】を結んでいるエレンと肉体関係を持つ事は、規律違反に値する。
「ハァハァ…くそっ……アッ、んんッ…ジャン………ッ!」
それでも、その髪に、頬に、口唇に、肌に触れてみたい欲求をジャンは抑える事が出来なかった。
「ふざけ、んな…ぁ…!!」
「初めからふざけてなんかいねぇよ。」
叶わない願いであるならば、せめて。
「今は、俺のことだけ考えてろ。」
******
「汚ねぇな。」
自分の部屋へ戻るには避けて通れない上官の部屋が並ぶ廊下の一角で、壁に背をもたれかけエレンを睨みつけるリヴァイがいた。
「今までどこで何をやってた。」
エレンは顔面蒼白になり、思わずリヴァイの視線をそらしてしまった。
人類最強の男の勘は鋭く、エレンの様子からすぐに事態を見抜いた。
「あれだけ忠告したにも関わらず、テメェは【契約者】失格だな。」
「っ…!!」
【契約者失格】の宣告は、エレンに重くのしかかり、胸が張り裂けそうになる。
「【loverssystem】はれっきとしたルールだ。巨人殺しとは関係ないなんて、ガキみたいな甘い考えは捨てろ。」
リヴァイは吐き捨てるように言い放つ。
一瞬の沈黙が訪れた後、エレンはかすれた声で必死に言葉を紡ぎ出した。
「……俺は、子どもで…何も考えずに、ついて行って…ルールを……破りました…。兵長との【契約】は…」
「その前に、お前を犯した奴はどいつだ?」
「!?」
「大方の目星はついている。お前の証言が必要だ。」
エレンの頭の中に、会議室での出来事がまざまざとよみがえる。
どれだけ泣き叫んでもその腕から逃れられず、ジャンに何度も抱かれた事実は鮮明に体に刻み込まれていた。
覚えている最後の絶頂を迎えた頃には、エレンは既に意識を失っており、次に目が覚めた時には1人、会議室に取り残されていた。
どこからか持ってきた薄い布が素肌にかけられており、剥ぎ取られた服はきれいに畳まれて、眠っていたエレンの横に置かれていた。
「………。」
ジャンから受けた屈辱は絶対に許せないはずだった。
それなのに、机に押し倒された時に見せたジャンの悲痛な表情が、今もエレンの頭から離れない。
「部屋が…薄暗かったので、誰だか分かりませんでした…。」
エレンの予想外の、そして明らかな嘘とも取れる言葉に、リヴァイは顔をしかめる。
「ふざけるな。【契約者】以外の人間と関係を持つ事は規律違反だ。」
「かばってなんかいません…。ただ、もしそいつが規律違反で罰せられた場合、俺も兵長との【契約】を【解除】されるんですよね…。」
エレンの声は少し震えていた。
「俺は、兵長に【契約】を解除されたくないんです……。」
「…………。」
自分を犯した人間をかばい続け、さらに【解除】されたくないと訴えるエレンのその言葉は、果たしてミカサのためなのだろうか。
「とりあえず部屋に入れ。」
リヴァイはエレンを部屋へと招き入れ、そのままシャワールームへと追いやるように向かわせた。
リヴァイの命令で、エレンは全ての服を脱ぎ、裸になった。
つい先ほどまで他の男に抱かれた体を見られる羞恥に、エレンは俯いて目を合わせられない。
リヴァイは衣服を着用したままシャワールームに入ると、蛇口をひねって大量の水をエレンに浴びせた。
「ひ、兵長…ふぅっ…濡れますよ…!」
「俺が良いと言うまで洗い続けろ。」
リヴァイはエレンにスポンジを押し付けると、腕を組んで仁王立ちした。
「は、はい…。」
エレンはリヴァイの鋭い視線をすぐ間近に感じながら、おずおずとスポンジで体をこすり始めた。
シャワールームに入ってからどれくらい経ったのだろうか。
言われるがままにこすり続けた肌には、もう痛みを覚えるほどだったが、リヴァイの無言の圧力が怖くて、エレンは何も言えなかった。
(俺…どうしたらいいんだ…。)
惨めで無力な自分が、ただ情けなかった。
突然、ずっと黙り込んでいたリヴァイがおもむろに口を開いた。
「お前、俺とそいつと、どちらがよかったんだ?」
「え…」
あまりの露骨で不躾な質問に、エレンは動揺の色を隠すことができない。
「…そんなこと、聞かないでください…。」
床にへたり込み、泣きそうになるエレンをよそに、リヴァイの表情はさらに暗く険しくなる。
(思った以上に穢らわしい…。)
「あの、…へいちょ…」
リヴァイは座っているエレンの目線まで腰を落とすと、告げもなくキスをし、舌を押し入れてきた。
「ん、…んンン……。」
いつもの激しさは影を潜め、エレンの口内や唇をじっくりとなぞるように舌で愛撫する。
「ふっ…んン、…ッ…んぅ…。」
熱に駆られない緩やかな動きは、リヴァイに与えられるこの愛撫を、より身近に、はっきりと感じることを可能にした。
気恥ずかしくもまろやかな心地よさに体の力が抜け、エレンは自然とリヴァイの背中に腕を回した。
キスでこんなにも安心感を覚えたのは、初めての経験だった。
「…はぁ…あの、……へいちょ…」
唇が離れ、リヴァイの瞳に自分が映っているのが見える。
「いいか。お前は俺の【契約者】だ。」
強く抱き締めてくる腕の中で、エレンはその穏やかな余韻に静かに目を閉じた。
「はい…。」
リヴァイは、肩に頬を寄せてきたエレンの濡れた後ろ髪にそっと触れる。
「………!」
細い首筋にうっすらと浮かぶ、鬱血の痕に気づき、リヴァイは思わず舌打ちをした。
『今は、俺のことだけ考えてろ。』
その記憶がエレンの中から消え去るまで、この嫉妬の炎はくすぶり続ける。
「俺のものだという事実を、エレンに骨の髄まで自覚させねぇとな…。」
end.
「ここで、だ。」
互いに一歩も譲らず睨み合ったまま、押し問答が続く。
調査兵団が所有する建物内には、使用されなくなった部屋が幾つかあり、その一角にある元会議室のような場所にエレンは呼び出されていた。
人通りがほとんどなく、一日中薄暗い。
しかし、使用されなくなってからさほど経っていないのか、会議室は綺麗なままだった。
「せめて部屋に戻ってからにして下さい。」
「会議が長引くから無理だ。」
「それなら明日にして下さい。」
「お前が勝手に決めるな。」
苛立ちを募らせたリヴァイの威圧的な声に、拒否し続けていたエレンも思わず萎縮する。
「どういうつもりだ。」
「だ、だって…」
「だって、何だ。」
「人が…来るかもしれないじゃないですか…。」
頬を赤く染め、掠れるような声でエレンは現状回避を訴えた。
「お前が声を出すのを我慢すれば、誰も気づかねぇだろ。」
「なっ…」
さりげなく爆弾発言をするリヴァイに、エレンは唖然となる。
(冗談じゃないっ!!)
エレンがリヴァイの【契約者】になってから、一週間が経とうとしていた。
【契約】を交わした翌日、エレンはリヴァイに強引に体を奪われ、それ以降も毎晩呼び出されてはその腕の中で抱かれ続けた。
自分の意に反して男性と交わることは、エレンに背徳感と罪悪感を与えたが、『家族であるミカサを守りたい』という唯一の希望が、リヴァイとの性行為を正当化する理由づけとなり、心の支えとなっていた。
「とにかく俺はこんなところで絶対したくありません。【契約】してるなら、俺の意見は兵長と対等なはずです。」
エレンは内心どぎまぎしながらも、リヴァイに対して必死に主張するが、当の本人は耳元で子犬が吠えているレベルにしか考えていなかった。
エレンを見上げたまま微動だにしなかったリヴァイだったが、話を遮るようにおもむろに口を開いた。
「他に言う事があるだろ?」
その言葉に、リヴァイの頭上から聞こえていた主張がぴたりと止まり、エレンは急速に大人しくなっていく。
――『合図』だった。
「あ…」
エレンは自分を見据えるリヴァイの目に耐えられず、俯いてぎゅっと目を瞑った。
心拍数が上がり、頬が一気に紅潮する。
『他に言う事があるだろ?』
――リヴァイの限界を示す『帰れ』と同じ効力がある事に気付くのは早かった。
どれだけ否定をしても無意味な事は、エレン自身が一番理解しているのに。
「あの…」
両腕を掴まれる心地よい痛みが、エレンに絶対的な服従を要求してくる。
「返事は?」
リヴァイの一つ一つの言葉が、抗うことのできない鎖となって心を縛りつけた。
『ミカサを守る為』
「抱いてください…兵長…。」
理性との狭間で揺れながら紡ぎ出すエレンの言葉が、リヴァイにとってたまらなく優越を感じる瞬間だった。
「ん…。」
自分より背の高いエレンに対し、少しだけ踵を上げ見上げるような姿勢で、リヴァイはキスをする。
怯えて無意識に後ずさろうとする後頭部を押さえつけ、リヴァイはエレンの口内に舌を滑り込ませた。
「ん…ふっ…ッんぅ…」
互いの舌が絡まり合い、熱い吐息が頬を掠める。
どちらとも言えない唾液が、閉め切った会議室の中で2人の喉を潤した。
「ふ、はぁ…っ…んンン…!」
口内を這うリヴァイの舌に反応してエレンの背中がびくびくと震える。
頭の中に白い靄がかかり、力が抜けて今にも足元から崩れそうな危うさがあった。
「…っ…ふぅ…。」
リヴァイがエレンから唇を離すと、唾液が細長い糸を引いて静かに切れる。
「…知ってるか?互いが興奮しないと唾液に粘り気は出ないらしい。」
「何が言いたいんですか…。」
リヴァイの意地悪な質問に対し、エレンは顔を真っ赤にしながら慌ててジャケットの裾で口を拭った。
「それはお前が一番分かってるだろ?」
「ッ…!」
エレンはリヴァイの言葉に声を詰まらせる。
当初、慣れないキスに顔を歪ませていた少年は、たった数日でリヴァイの愛撫に順応する体になっていた。
エレンはそれを自覚し、負い目を感じているだけに、リヴァイに指摘されてしまい羞恥に震える。
(違う…俺が望んでるわけじゃない…。)
「そこに寝ろ。」
リヴァイの視線の先にあったのは、会議室の机だった。
「ここ…」
他の部屋でも見かける、普段から使い慣れた長机。
向かい合わせに連なり、一枚の板となって、ちょうど一人が横になれる大きさだった。
「机って、あの…床じゃダメなんですか?」
「論外だ。」
「…そう、ですか。」
自分のことに精一杯で、リヴァイの潔癖性をすっかり忘れていた。
エレンは渋々机の上に寝そべる。
火照った体に冷たい机の感触が妙に心地良い。
「んンッ…!」
エレンが机に乗るや否やリヴァイは立ったまま覆い被さるように屈むと、再び激しいキスを繰り返す。
「はぁ、んッ、んん…っ…んぅう!」
「ハァ…っ…会議まで時間無ぇから手短かに済ますぞ…。」
リヴァイはエレンのベルトとチャックを外すと、既に立ち上がったペニスを握り締め上下に動かし始めた。
「ッ!あ、はぁあッッ!!」
体が感じるもっとも気持ちの悦い場所を攻められ、エレンは堪らず声をあげた。
ペニスを包み込むリヴァイの体温と手の感触は、エレンの内側から早々に痺れる様な快感をもたらす。
「はぁ、はぁ…っ…あぁ、…や、んん…!」
否が応でも感じさせられる快楽が、エレンの気持ちとは裏腹な濡れた声を会議室に響かせた。
「あ、らめ、ッぁあ…く、…やだ…ぁあッ…!!」
先端を指で執拗に擦られる強烈な快感に悶え、先端からカウパーが溢れ出してリヴァイの指に絡みつく。
「へい、ちょ…ッ!…待って、…あ、らめ!、らめぇ…っ!!」
「以前と比べればだいぶ素直な反応を見せるようになったな。」
瞳を潤ませて喘ぐエレンを見下ろし、リヴァイは薄く笑いながらペニスを弄ぶ。
絶え間ない快楽の波にエレンは体を強張らせ、小刻みにぶるぶると震える。
「あッ!やら、ひッ…あ、あぁあぁ、……!!」
「そうやって従順になる事を体で覚えろ。」
「んぁあぁあッ……!!!」
嬌声と共にリヴァイの手の内でひときわ大きくなったエレンのペニスから、白濁とした体液が勢いよく吐き出された。
「ハァハァ、…んッ…はぁ、はッ…」
四肢を投げ出し、荒い息遣いでぐったりと横たわるエレン。
しかし、休む間もなくリヴァイの「脱げ」という命令に余韻の残る体で力なくズボンを下ろした。
「…もう…無理、です…。」
大きく肩を上下させながら懇願するエレンを無視して、リヴァイは脚を広げさせると精液が残る手を秘部に這わせた。
「一人で勝手に満足するな。」
リヴァイは中指と人差し指を無理矢理ねじ込むと、強引に内側を掻き回し始めた。
「ぅあっ…ぁあぁあ…!」
絶頂に達したばかりの気怠い体に、下腹部の不快感と相反する快楽が一気に押し寄せてくる。
「ハァハァ、…っ…あぁ、ッうぁ、あ…」
全身がじっとりと汗ばみ、衣服が体に張り付く。
「はっ…無理なわりにはまた立ち上がってきたな」
「!ッ…やめ…はぁ、あッ…違、う…」
リヴァイの嘲笑にエレンは屈辱を覚えるが、何度経験しても嫌悪する感覚にただひたすら耐えるしかなかった。
(…まただ、)
エレンは悔しさに涙を滲ませる。
(また何も出来ないまま…兵長にイかされる…。)
******
『すまないが、この書類を早急にリヴァイ兵士長に届けてほしい』
今夜行われる会議の準備をしている際、エルヴィン団長に頼まれた仕事だった。
重要な資料なので目を通しておいてほしいとの言付けを添え、大きめの封筒を渡される。
『了解しました。』
この時間帯なら自室にいるはずと言われて向かったが、席を外しているらしく部屋は空っぽだった。
机の上に置いておくことも考えたが、『早急に』という言葉が引っかかり、ジャンはリヴァイを探し始める。
「兵長?さぁ…」
「見かけねぇな。」
数名に聞いてみたが、誰もリヴァイの居所を知る者はいなかった。ただ、気になる情報を一つ手に入れる。
「そーいや、さっきエレンと一緒にいたぞ。」
「!」
エレンの名前に、ジャンの眉がぴくりと動いた。
「…サンキューな。」
その後、二人がいると思われる方向に進むにつれ、少量ではあるが目撃情報が増えてくる。
どうやら現在いる本館の外れに向かったらしい。
(何であんなところに…?)
次第にジャンの目的意識は、リヴァイへの書類渡しではなく、エレンがリヴァイとどこで何をしているかに変わっていた。
(エレンの奴、あれからずっと兵長と行動を共にしてたのか…。)
リヴァイがエレンを【契約者】として公に宣言してから、三週間を迎えようとしていた。
ライナーとベルトルトはこの間に【フェイク】から正式な【契約】に変わり、アルミンは周りの反対を押し切る形で【フリー】を貫いていた。
そして、ジャンはコニーと予定通り【フェイク】として通常の生活を送っていたが、人間の本能に忠実な【loverssystem】はすぐに現実のものとして身近に感じるようになった。
戦いと訓練に明け暮れる日常の中で、僅かな休息の楽しみは、食事、睡眠、談笑、読書、たわいもないゲーム、そして、肉体関係を持つこと。
異性との関係を禁止されているとは言え、男性兵士達が自慰行為だけで満足できるはずがなく、同性同士で求め合うことは必然であった。
しかし、同性であるがゆえに性行為への遠慮もなく、時と場所を選ばず獣のように貪り合う様を何度か目撃してしまったジャンは、その度に虫酸が走り、いつの間にか行為自体を軽蔑の眼差しで見るようになっていた。
(あいつも、だよな。)
自分の目に映るエレンの様子は、【契約】宣言以降も特に変わっていなかった。
【契約】が続いているならば、エレンは兵長と今も関係を持っているはずだが…。
(信じらんねぇ。)
あらぬ憶測を悶々としていたら、ジャンはいつの間にか本館の外れまで来ていた。
(薄暗い…こんなところ本当にいるのかよ。)
物音を立てないように静かに廊下を歩き始める。
きょろきょろと辺りを見渡していると、奥の部屋に人の気配を感じた。
「……り、…で…」
(エレンか…?)
何か話し声はするのだが、よく聞き取れない。
そっと部屋に近づき、廊下側の窓を少しだけ開けると、ジャンは部屋の中を覗いた。
「ハァハァ、…っ…あぁ、ッうぁ、あ…」
「!?」
ジャンは窓越しに見えた光景に愕然とする。
(な、…に、…やってんだ…。)
リヴァイの背に隠れて殆ど見えないが、机の上にいるのは紛れもなくエレンだった。
「はっ…無理なわりにはまた立ち上がってきたな。」
「!ッ…やめ…はぁ、あッ…違、う…。」
鼻にかかった甘ったるい声を漏らし、時折身を捩らせて見え隠れする艶かしい表情は、まるで別人のようだった。
「その意地が最後まで保ったら褒めてやる。」
「ぁあ、…ッ…ぅああ…!」
他人事のように軽蔑していた時とは違い、身近にいてライバルでもあるエレンと、尊敬するリヴァイとの情事を目の当たりにし、ジャンはあまりの衝撃にその場に立ち尽くしてしまった。
(…これが【契約】…?…あいつは、そんな素振り全く見せなかった…。)
その時、
『バサッ…』
呆然としていたジャンは、エルヴィンに頼まれていた封筒を思わず落としてしまった。
(しまった!!)
本館外れにある静かな場所で、厚みのある封筒は想像以上の音を立てた。
「え、誰…?」
窓越しに、エレンの不安そうな声が聞こえる。
ジャンは青ざめ、今にも破裂しそうなほど心臓が激しく鼓動を打った。
(バレた…兵長に殺される…!!)
「気のせいだ。」
(えっ…)
それは予想外の言葉だった。
「気のせいじゃないです!誰かいる…っ…だから嫌だって…」
「少し黙ってろ。」
「やめっ…離してく…ッ!ん、んぅうぅうーー!?」
動揺するエレンの口唇はリヴァイの口唇で塞がれ、くぐもった叫び声が部屋に響く。
程なくして生々しく腰を打ちつける音がしだし、ジャンは急いで書類を拾い上げるとその場から離れた。
(た、助かった…。)
人通りの増え始めた本館に戻ると、ジャンは息も絶え絶えに廊下の壁にもたれた。
「ハァ!ハァ!…ッ…」
『ぁあ、…んッ…や、ぁああ…!』
『やめっ…離してく…ッ!ん、んぅうぅうーー!?』
何故だろうか。
エレンの声が、耳から離れない。
*****
『会議に必要な追加書類があるので、取りに行ってほしい。』
リヴァイ兵長に頼まれたと告げられ、エレンはジャンと書類が保管されている場所へと向かっていた。
「………。」
訓練兵時代ほど仲は悪くないが、2人きりで行動を共にする事は珍しく、これと言った会話もないまま歩き続ける。
手伝いとは言え、なぜ自分が誘われたのか不思議で、何となく気まずかった。
「エレン。」
不意にジャンに名前を呼ばれ、エレンはドキッとする。
「な、何だよ。」
「この先に兵長に頼まれた資料がある。行くぞ」
「え、…」
ひたすら歩かされて着いた場所は本館外れだった。
そしてこの先にあるのは、つい先程までエレンがリヴァイと関係を持っていた会議室である。
「ジャ、ジャン…あのさ、」
「早くしないと会議が終わっちまうぞ。」
困惑するエレンをよそに、ジャンはどんどん先へと進んでいく。
部屋が近づくにつれ、先程までのリヴァイとの情事が思い出された。
(くそっ…兵長とヤってた場所へ行くなんて最悪だ…っ!)
エレンはあまりの恥ずかしさに気が動転し、ジャンを追い越して会議室へ飛び込んだ。
「あ…れ…?」
冷静さを取り戻したエレンはハタと気づく。
静まり返った会議室の目の前にあるものは机と椅子のみ。
ここに資料など、最初から存在しない。
「ジャン、部屋間違えてるぞ。」
エレンが扉の方を振り返った瞬間、後を追って部屋に入ったジャンは会議室の鍵をかけた。
「オイ、何で鍵を閉めるんだよ。」
「なぁ、お前さっきまでここで兵長とヤってただろ。」
「!?」
ジャンの口から突然出てきた言葉に、エレンは動揺を隠し切れない。
「……どうしてお前が、俺と兵長がここにいた事を知ってんだよ。」
エレンは後ずさり、ジャンに疑惑の目を向ける。
「ヤってた事は隠さないのか?」
「お前だってあの時食堂にいたから知ってんだろ。俺は兵長と【契約】してるんだ。」
「随分飼いならされた物言いじゃねーか。エレン・イェーガーともあろう優秀な兵士が、兵長にケツ掘られて喜んでるとはね。」
上から目線でニヤニヤと笑うジャンに対し、エレンはカッとなる。
「テメェ…こんな話をする為に俺を呼んだのか?」
「事実を話してるだけだろ。」
「俺だって好きで兵長と【契約】してんじゃねぇよ。」
「じゃあ【解除】しろよ。」
「それは…」
ミカサの顔がエレンの脳裏をよぎった。
「できない…。」
「は?」
「【解除】は絶対にしない。」
そう言ったきり、エレンは俯き黙り込んでしまった。
エレンの感情の激しい起伏に、ジャンは一瞬圧倒されるが、その裏にある「何か」が見て取れた。
「お前、もしかして兵長に弱みを握られてるのか?」
ジャンの核心を突く言葉に、エレンの顔色が青ざめる。
「へぇ、どうやら事実みたいだな。」
「…余計な詮索すんな。」
エレンは力のない声でポツリと呟く。
(…あのエレンが弱みを握られただけでこのザマか…。)
ジャンは、自分がエレンを手の内で支配しているような高揚感を覚える。
「お前が簡単に屈するところを見ると、他人が絡んでるんだな。」
「………。」
「黙っててやってもいいぜ?」
ジャンはエレンに近づき、耳元で囁く。
「その代わり、俺にもヤらせろよ。」
「は…?」
耳を疑う発言に、エレンはジャンを凝視する。
「ここじゃ、女とヤれねーからな。」
「いや、お前童貞だろ?女とヤるヤらないの問題じゃねーだろ。」
「!?」
突然放たれた天然すぎる言葉に、ジャンはプライドを傷つけられ、思わずエレンの胸ぐらを掴む。
「ふざけんなよテメェ…!!兵長にヤられてるだけでタマは飾りかよ、人の事言えんのか?!」
「この野郎…さっきから言いたい放題言いやがって…なあ!そんなに強く引っぱったら服破けちゃうだろうが!!」
「はぁ?!服なんかどうでもいいだろうが、何言ってんだテメェ…」
ケンカ腰になっていたジャンだったが、ハッと我に返る。
「そう、だよな…服が破れたら兵長にバレるしな…。」
エレンの胸ぐらから手を離すと、ジャンは会議室の椅子にドカッと座り込んだ。
「俺からお前に手は出さねぇ。お前が俺に近づいたんだ。」
ジャンは自分の優位を確信し、腕を組んでジッとエレンを見据える。
「何言ってんだ?お前、いい加減にしろよ…」
「アルミンか?ミカサか?」
「!」
「黙っててほしいんだろ?」
「くっ…」
エレンはその理不尽な要求が本気であることに、ようやく気づかされた。
自分に向けられたジャンの視線は、契約初日のリヴァイと同じものだった。
(ちくしょう…何なんだ今日は…!!)
エレンは自分の無力さを改めて思い知らされる。
そして、その理不尽な要求を呑まざるを得ない情けない自分自身に怒りが沸き上がる。
「ジャン…」
エレンはジャンの前に立ち、その襟元を掴んで引き寄せた。
ジャンの隠微な笑いが鼻につく。
「テメェ…覚悟しろよ。」
「こっちのセリフだ。」
エレンは噛みつく様にジャンの唇へキスをした。
「んぅう…ッ、ふ、ぅんん…!」
押し付ける様に唇を重ね合い、ぎこちない舌が貪るように絡み合う。
リヴァイの時と違いリードをする側がおらず、未経験同士の2人のキスは拳を交えないだけのケンカの延長のようなものだった。
「んっ…むぅ、ンン!…んぅッふぅぅ、ぅうう…!!」
つい先程までリヴァイとセックスをしていた場所でジャンとキスをする感覚は、何とも言えないばつの悪さとその考えを打ち消そうとする2人の行為を加速させた。
「ようエレン、…っ…結局テメェは誰とヤっても同じなんだよ…。」
「…ッ…冗談だろ…俺がリードしてやってんだよ…。」
ジャンの余裕のある目つきと、エレンの憎しみが込もった目つきが交錯する。
「んンン…ッッッ!!」
最初にこの場を制したのはエレンだった。
リヴァイに仕込まれたエレンのテクニックは、キスに慣れていないジャンを翻弄させる。
「んぅ、ふっ…はぁ、あン、…ンんん!!」
エレンの舌が口内を這う度に、自慰行為だけでは感じる事の出来なかった快感がジャンの体を震わせた。
「……俺の勝ちだな。」
エレンはジャンの唇から離れると、そのまま首筋に顔を埋め舌を這わせた。
(ヤベェ…!流れを持ってかれた…!!)
エレンに主導権を握られジャンは焦るが、鎖骨や首筋、耳を舐められる快楽が勝ってしまい思考が働かない。
「…っ…ハッ…ぅあ、アッ…」
情けない喘ぎ声を漏らして苦痛に顔を歪め、ジャンはエレンのシャツを握り締めた。
「ぁあッ…!」
突然、矯声をあげてエレンの体がビクンと弓なりになった。
「は…?」
呆気にとられるジャンと自分自身に驚くエレン。
しかし、直ぐに2人は状況を理解する。
「お前…。」
「違っ…!」
エレンはジャンに気づかれた事に羞恥し、顔を真っ赤にする。
先程ジャンがシャツを握り締めた際、偶然エレンの乳首を指が掠めたのだった。
通常なら気にする程ではないが、先程のリヴァイとの余韻がエレンの感度を高めていた。
急速に対立の意志がなくなっていくエレンに、ジャンの欲望が一気に湧き上がる。
後頭部を掴んで強引に引き寄せると、動揺するエレンを見ながら薄く笑った。
「俺の勝ちだな。」
「んンッ……!!」
ジャンは怖気づくエレンの口内に無理矢理舌をねじ込むと、空いている手をエレンのシャツの中へ滑らせた。
「ン!っふ…ふぅ.、ぅう!んふッ、んぅう…!!」
激しく絡みついてくる舌と既に敏感になっている乳首をさらに刺激され、エレンはくぐもった叫び声をあげる。
「…ッ!ハァッハァッ、…はンッ!んぅ、ぅううーーッ!!」
息苦しさに呼吸をしようと顔を離そうとするが、その度に引き戻されてはジャンに唇を塞がれた。
セックスに慣れていない少し荒っぽい指づかいが、逆に心地良い刺激となってエレンの体を高ぶらせる。
「…ッ…はぁ…エレン…。」
「あッ、…ぁ、ぁあッ!らめ、…やら、やッ、…」
唇を離された後も胸への愛撫は続き、エレンの体に自然と力が籠もる。
内側から広がっていく快楽の波に耐えられず、無意識にジャンの首へと腕を回し背中に爪を立てた。
「やッ、はぁあん!…や、やだッ、…いやっ、…あッ、ぁああぁあ…っっ!!」
「スゲェ感じてるんだな。そんなに気持ちイイか…?」
「ハァッハァッ………も、…いいだろ…ハァッ…や、やめ…」
「誰が止めるかよ。」
シャツをめくられ、ジャンの舌がエレンの乳首にねっとりと絡みついて何度も吸い上げてくる。
「ひッ、あああっ…!あッ、や、…ッ動かす、なぁ……ッッ!!」
エレンがどんなに拒絶の言葉を並べても、ジャンの愛撫に喘いでしまいそれは虚しく消えていく。
リヴァイとのセックスで高められた体が、更なる刺激を求めてジャンを欲していた。
「…あぁ、んッ!い、…やッ、やらぁあぁあぁ…!!」
ジャンの耳元でエレンの濡れた声と熱い吐息が混ざり合う。
快感に身を捩らせ、必死にジャンの体にしがみつくエレンはひどくいやらしかった。
(我慢出来ねぇ…)
ジャンは強引にエレンを抱きかかえると、そのまま会議室の机の上に乗せた。
「うあっ…!」
抵抗する暇も与えられないまま、両手を頭上でまとめ上げられると、さらに空いている手がエレンの下に履いていた物全てを剥ぎ取った。
「くそっ…!離せよ、ジャン!!」
「なぁ。さっきまで兵長と一緒にいた会議室で、同じ机の上に押し倒されて同じ態勢で俺にヤられる気分てどうなんだ?」
「!?」
皮肉めいたセリフとは裏腹に、エレンを見下ろすその表情は切なく儚げで、同時に雄を感じさせる空気を纏ったジャンにエレンは怖気づく。
「……何なんだよ、お前、…。」
不安と疑念を抱くエレンの瞳に、ジャンは苛立ちを募らせた。
(何か…すげぇムカつく…。)
ジャンはベルトを外し、スボンを少しだけ下ろすと自らのペニスを取り出す。
「お前、今日兵長とヤってるから慣らさなくて平気だろ。」
「は…?さっきから何言って…」
いきり立つそれは、エレンが恐怖を感じる間もなく秘部に押しつけられてきた。
「ひ、ぁッ!!…あ、ッはあああっ!!」
「…っ…すげ、余裕で入ってく…。」
嬌声をあげて背中を仰け反らせるエレンの腰を掴むと、ジャンは激しく突き動かし始めた。
「兵長に毎晩突っ込まれてるクセに、今日は俺に抱かれてよ。」
相手のペースを掴む事が出来ず自分勝手に腰を打ちつけられ、エレンの体がおもちゃの様に揺さぶられる。
「あぁッ、…アッ!や、…はぁあん!…あ、んッ、ぁあぁあぁん!!」
「お前みたいな奴を淫乱て言うんだろうな…。」
乱暴な腰使いにも関わらず1度絶頂を迎えて慣らされた体がジャンを受け入れ、エレンから少しずつ快楽を引き出していった。
ペニスが最奥を突く度に濡れた口唇から喘ぎ声が零れ、内側が熱を帯びていく。
「もっと腰動かして、可愛く泣いてみろよ。」
「はぁはぁッ…!…っクソ… うあッ、やら、…も、いいだろ…終われって…はぁアッ!らめッ……!!」
「冗談だろ?俺たちはまだ、何も始まってねぇ…。」
拒絶するエレンの言葉は、繋ぎ止める理性を吹き飛ばす程の快楽によってかき消された。
「なぁエレン…何で兵長と【契約】なんかしたんだよ…。」
国が認めた暗黙のルールを破る事がどれ程のものなのかはジャン自身理解しているつもりだったし、エレンが兵長の【契約者】である事実も頭では理解していた。
リヴァイと【契約】を結んでいるエレンと肉体関係を持つ事は、規律違反に値する。
「ハァハァ…くそっ……アッ、んんッ…ジャン………ッ!」
それでも、その髪に、頬に、口唇に、肌に触れてみたい欲求をジャンは抑える事が出来なかった。
「ふざけ、んな…ぁ…!!」
「初めからふざけてなんかいねぇよ。」
叶わない願いであるならば、せめて。
「今は、俺のことだけ考えてろ。」
******
「汚ねぇな。」
自分の部屋へ戻るには避けて通れない上官の部屋が並ぶ廊下の一角で、壁に背をもたれかけエレンを睨みつけるリヴァイがいた。
「今までどこで何をやってた。」
エレンは顔面蒼白になり、思わずリヴァイの視線をそらしてしまった。
人類最強の男の勘は鋭く、エレンの様子からすぐに事態を見抜いた。
「あれだけ忠告したにも関わらず、テメェは【契約者】失格だな。」
「っ…!!」
【契約者失格】の宣告は、エレンに重くのしかかり、胸が張り裂けそうになる。
「【loverssystem】はれっきとしたルールだ。巨人殺しとは関係ないなんて、ガキみたいな甘い考えは捨てろ。」
リヴァイは吐き捨てるように言い放つ。
一瞬の沈黙が訪れた後、エレンはかすれた声で必死に言葉を紡ぎ出した。
「……俺は、子どもで…何も考えずに、ついて行って…ルールを……破りました…。兵長との【契約】は…」
「その前に、お前を犯した奴はどいつだ?」
「!?」
「大方の目星はついている。お前の証言が必要だ。」
エレンの頭の中に、会議室での出来事がまざまざとよみがえる。
どれだけ泣き叫んでもその腕から逃れられず、ジャンに何度も抱かれた事実は鮮明に体に刻み込まれていた。
覚えている最後の絶頂を迎えた頃には、エレンは既に意識を失っており、次に目が覚めた時には1人、会議室に取り残されていた。
どこからか持ってきた薄い布が素肌にかけられており、剥ぎ取られた服はきれいに畳まれて、眠っていたエレンの横に置かれていた。
「………。」
ジャンから受けた屈辱は絶対に許せないはずだった。
それなのに、机に押し倒された時に見せたジャンの悲痛な表情が、今もエレンの頭から離れない。
「部屋が…薄暗かったので、誰だか分かりませんでした…。」
エレンの予想外の、そして明らかな嘘とも取れる言葉に、リヴァイは顔をしかめる。
「ふざけるな。【契約者】以外の人間と関係を持つ事は規律違反だ。」
「かばってなんかいません…。ただ、もしそいつが規律違反で罰せられた場合、俺も兵長との【契約】を【解除】されるんですよね…。」
エレンの声は少し震えていた。
「俺は、兵長に【契約】を解除されたくないんです……。」
「…………。」
自分を犯した人間をかばい続け、さらに【解除】されたくないと訴えるエレンのその言葉は、果たしてミカサのためなのだろうか。
「とりあえず部屋に入れ。」
リヴァイはエレンを部屋へと招き入れ、そのままシャワールームへと追いやるように向かわせた。
リヴァイの命令で、エレンは全ての服を脱ぎ、裸になった。
つい先ほどまで他の男に抱かれた体を見られる羞恥に、エレンは俯いて目を合わせられない。
リヴァイは衣服を着用したままシャワールームに入ると、蛇口をひねって大量の水をエレンに浴びせた。
「ひ、兵長…ふぅっ…濡れますよ…!」
「俺が良いと言うまで洗い続けろ。」
リヴァイはエレンにスポンジを押し付けると、腕を組んで仁王立ちした。
「は、はい…。」
エレンはリヴァイの鋭い視線をすぐ間近に感じながら、おずおずとスポンジで体をこすり始めた。
シャワールームに入ってからどれくらい経ったのだろうか。
言われるがままにこすり続けた肌には、もう痛みを覚えるほどだったが、リヴァイの無言の圧力が怖くて、エレンは何も言えなかった。
(俺…どうしたらいいんだ…。)
惨めで無力な自分が、ただ情けなかった。
突然、ずっと黙り込んでいたリヴァイがおもむろに口を開いた。
「お前、俺とそいつと、どちらがよかったんだ?」
「え…」
あまりの露骨で不躾な質問に、エレンは動揺の色を隠すことができない。
「…そんなこと、聞かないでください…。」
床にへたり込み、泣きそうになるエレンをよそに、リヴァイの表情はさらに暗く険しくなる。
(思った以上に穢らわしい…。)
「あの、…へいちょ…」
リヴァイは座っているエレンの目線まで腰を落とすと、告げもなくキスをし、舌を押し入れてきた。
「ん、…んンン……。」
いつもの激しさは影を潜め、エレンの口内や唇をじっくりとなぞるように舌で愛撫する。
「ふっ…んン、…ッ…んぅ…。」
熱に駆られない緩やかな動きは、リヴァイに与えられるこの愛撫を、より身近に、はっきりと感じることを可能にした。
気恥ずかしくもまろやかな心地よさに体の力が抜け、エレンは自然とリヴァイの背中に腕を回した。
キスでこんなにも安心感を覚えたのは、初めての経験だった。
「…はぁ…あの、……へいちょ…」
唇が離れ、リヴァイの瞳に自分が映っているのが見える。
「いいか。お前は俺の【契約者】だ。」
強く抱き締めてくる腕の中で、エレンはその穏やかな余韻に静かに目を閉じた。
「はい…。」
リヴァイは、肩に頬を寄せてきたエレンの濡れた後ろ髪にそっと触れる。
「………!」
細い首筋にうっすらと浮かぶ、鬱血の痕に気づき、リヴァイは思わず舌打ちをした。
『今は、俺のことだけ考えてろ。』
その記憶がエレンの中から消え去るまで、この嫉妬の炎はくすぶり続ける。
「俺のものだという事実を、エレンに骨の髄まで自覚させねぇとな…。」
end.
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