恋と深空
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勢いだけの暗点の小話
「ハンターに二言はないよ。私に何をしてほしいの」
腹を括って罰ゲームを受ける覚悟を決める。ここはN109区。やるかやられるかの無法地帯なのだ。
仕事が早く終わったから暗点の様子を見にやってきた。扉を開ける音に気付いてこちらを振り向いた双子の片方が退屈そうにソファに溶けながらボスなら出かけたぜ、と呟く。ダラダラしている姿はまるで液体のようだ。今日のうちに帰ってくるみたいだけどな、ともう1人のカラスが教えてくれた。
そうなの、と私は落胆のため息を吐く。シンがいないのはアポ無しで遊びに来たので残念ではあるけど仕方ない。ただこのまま手ぶらで帰るのもなんだかシャクなので私はしばらくここにとどまることに決めた。
バサバサという羽音に頭上を見ればメフィストがいる。あなたも留守番なの?珍しいねと声を掛けるとメフィストはカァカァとよくわからない返答をくれた。
シンがすぐ帰ってくるかはわからない。
とりあえず空いてるソファに腰掛けてスマホをチェックする。緊急任務も連絡もない。今夜はゆっくりできそうだ。サプライズでも良かったけど、一応シンに基地にいることだけメッセージを送る。せっかく来たんだから、早く帰ってきてよねと、自分のアポ無しを棚に上げ催促をした。
それから改めて部屋を見渡せば溶けたカラスはそれぞれ本を読み、機械のカラスと薄暗い部屋でくつろいでた。なら私も暇つぶしに本でも読もうかと立ち上がり本棚へ向かう。この部屋はいつ見てもシックで悪のロマンが詰まっていて良い。黒を基調とした家具。それから壁に拳銃。私も部屋に拳銃飾ろうかな。
その本棚の隣にあるサイドボードにはシンの趣味の宝石とこの雰囲気にあまりそぐわない小さな箱が置いてある。迷わず手にとって見ればそれは何の変哲もないただのトランプだった。なぜ、どうしてここに、という疑問はあるが細かいことは気にしない事にする。重要なのはここにトランプがあるということだけなのだから。
「二人とも!トランプしない?」
『トランプ……?』
「もちろん罰ゲーム付きのね!負けた人は1つ勝った人の言うことを聞く!」
勢い良く振り返り声を上げる私のこの魅力的な提案を、のそりと顔を上げた二人が断るわけもなく、すぐさま三つ巴の真剣勝負が始まった。
そして勝負はあっけなく終わる。
「ババ抜きなんて、よく考えたら完全に私に不利じゃない!」
双子は視界を共有できて思考も同じ。初めから勝ち目はなかったというのに、その事をすっかり失念していた私は見事に即負けしたのだった。
「………で、罰ゲームは何?」
「へー、ゴネるかと思ったのにな」
「ハンターに二言はないよ。私に何をしてほしいの」
楽しそうに絡んでくるアキラとカゲトに、潔く、だけど少し憮然とした顔になっているとは思いつつ罰ゲームの内容を確認する。
「良いものを手に入れたんだけど使う機会がなくてさ」
そう言いながらアキラが出してきたのはドレスだった。紫をベースにした、たくさんのレースがついているフワフワなドレスは、細かいガラスが散りばめられていて、この部屋のボンヤリとした明かりをも反射してとても綺麗だ。だけど
「この色は何とかならなかったの……」
濃い紫をベースにしているのに合わせているゴテゴテしたリボンは虹色だったりショッキングピンクだったり黒バラ柄だったりとこの世の混沌を混ぜ合わせたような配色だった。そもそもドレスのデザインもデコルテ部や上腕部分が盛られていてフワフワなのは肩まわりだけだ。着用すれば恐らく淑女というより逆三角形マッチョになる予感しかない。
「これヤバいよなー!これでせいぜいオシャレをしてボスを出迎えてくれよ!」
場違いなくらい朗らかに笑うアキラ達から差し出されたドレスを受取り、これを着てシンを出迎えて恥をかかせるなんて中々な罰ゲームだ、と私は絶望を抱えながら着替えるためにバスルームへ向かった。
そしてバスルームの鏡の前で着替えてみたもののこれは思ったよりヤバい。あのカラスたちはどこでこれを手に入れたのか。何だこの優雅と対極にあるドレスは。肩幅がデカイので私の顔がとんでもなく貧相に見える。完全に衣装に着られている、と思ったらお腹のそこから笑いがこみ上げてきた。
「二人とも見て!これ!ヤバい!」
耐えきれなくなってバン、と思い切りバスルームの扉をあけて部屋へ飛び込めば、私の姿を目視した二人が一気に笑いだした。
「ダサい」「反則」「顔が貧相」「カオス」「妖怪」
もう誰が何を言っているかわからないくらい3人でひとしきり笑いあったあと、突然カゲトが「そうだ」と本棚をゴソゴソし始める。
私とアキラが涙を拭きながらカゲトを見ていると、カゲトは重々しい雰囲気を演出しながらこちらへ体を向けた。
「ここにあるのは……古の書だ」
わけのわからない事を言いながら出してきたのは昔々のどこかの地域の資料集のようだった。確かに古の書と言える。
「これがどうしたの?」
「ここにいい情報が載っている。せっかくだから使ってみよう」
カァ!とメフィストがひと際高い声で鳴く。
私たち3人は暗点のボスの帰還であると察知した。
思っていたよりも早い。もしかしたら私のメッセージを見て仕事を巻いてきてくれたのかもしれない。
私はゆっくりとソファから立ち上がる。ひと仕事終えたボスを出迎えるためアキラとカゲトによりオシャレに仕上がった私を、彼らは恭しくエスコートした。
玄関の重々しい扉が開かれる。カァカァと嬉しそうに無くメフィストの声をBGMに暗点のボスが帰ってきた。
「おかえりなさい」
できるだけお淑やかに基地の主に挨拶をする。
「アポ無しで俺に会いに来て、しかも早く帰ってこいなんて言えるのはお前だ…け……」
月明かりだけの暗い廊下にシンの語尾が消えていく。
「せっかく来たのにあなたがいなくて。だから待ってる間にオシャレしてみたの。どう?」
「お…なんだそれは……」
「新しいドレスと昇天ペガサスMIX盛り」
カゲトが見つけた古の書によると、昇天ペガサスMIX盛りとはヘアスタイルの1つだ。昔の一部地域の大人の社交場では、頭の上で髪を竜巻のように高く盛り、盛った部分に花などの装飾を施すスタイルが流行したらしい。人々は段々とどれだけ高く盛れるかを競うようになり装飾も花だけに留まらなくなる。そういったヒトの欲望が詰まったこの髪型はN109区にピッタリではないか。
とはいえ急ごしらえのため髪を盛ってキープできるようなハードなヘアスプレーも見栄を飾る花もここには無い。無いならこの場にあるもので代用するしかないよね、と言うことで私とアキラとカゲトは考えた。
スプレーの代わりに針金で髪を固定し、ボリュームを出すため弾丸ホルダーを巻きつける。暗点だけに実弾だ。花の代わりには落ちていたメフィストの羽ともう1つ。
「…頭に電飾がついてるが…?」
「華やかでしょ」
暗い廊下に不似合いなピカピカ光る私の頭上のLED。
明らかに困惑しているシンは珍しい。これは珍しい!私の後ろに控えていたアキラとカゲトが震えている気がする。私はいい気になってシンの手を取った。
「とにかくお疲れ様。明日は休みだし、乾杯でもしよう」
そう言ってシンを部屋まで連れて行く。あくまで優雅に、淑やかに。走るなんてもっての外だ。
部屋に戻ると雰囲気のあるムードランプが私の全容を照らし出した。どえらい色のマッチョ仕様ドレスだ。シンは私を見てすぐに目を逸らした。
「ちょっと!オシャレにキメたんだからちゃんと見てくれないと!」
私はゆっくりとシンに近付き、彼に視線をせがむ。しかし超至近距離から睨みつけてもなかなかこちらを見ない。視線の先に移動しようにも頭の弾丸ホルダーが重くて俊敏な動きができない上に、振り子のように顔が揺れてしまう。我慢してたけどもう首が限界、折れそう。これは彼の視線どころじゃない。一旦ソファに戻ろう、と方向転換をした時についに支えきれなくなった首があらぬ方向に倒れ、シンの顔に思い切り昇天ペガサスパンチが入った。
深淵の底の永遠とも思える沈黙の後、低く笑い出す悪魔を目の前に私は冷や汗をかいていた。いつの間にか声も出せないくらい爆笑していた双子の気配は消えている。あいつら逃げたな!しかし双子がいたところで状況は変わらない。ハンターとしては今できることをやるしかないのだ。瞬時に思考を切り替え、とりあえず思い切り両手を胸の前で合わせることにした。
「ごめんなさい!想定外だったの!」
「……まぁいい」
いまだに低く笑い続けるシンは私の髪の飾り付けを外し始めた。その手つきは優しく、怒っているわけではなさそうだった。
厳つい飾りを外してもらう間、私はシンに事の成り行きを話すことにした。もちろんアキカゲのせいにすることは忘れない。
「あなたがどんな反応をするか想像しながら用意したんだ。笑うのかな、とか。楽しかったな」
「……そうか」
大まかに話し終えた頃、私の髪は重い装備から解放された。シンは手に持った弾丸ホルダーを愉快そうに眺める。
「『暗点のボス』に一撃をくれた栄誉あるこの弾丸ホルダーと電飾は記念に飾っておこう」
「え、じゃあこのドレスも飾る?」
間髪入れずに尋ねた私のその言葉にシンは私を見て、だけどまたすぐに目をそらしてしまった。
「……明日はドレスを買いにいく。お前に似合うものをな」
とりあえず着替えろ、とやっぱりこちらを見ないまま早口で私を追いやるその肩は少し揺れている気がして、私はこのマッチョドレスも飾ろうと意気揚々とバスルームへ向かったのだった。
「ハンターに二言はないよ。私に何をしてほしいの」
腹を括って罰ゲームを受ける覚悟を決める。ここはN109区。やるかやられるかの無法地帯なのだ。
仕事が早く終わったから暗点の様子を見にやってきた。扉を開ける音に気付いてこちらを振り向いた双子の片方が退屈そうにソファに溶けながらボスなら出かけたぜ、と呟く。ダラダラしている姿はまるで液体のようだ。今日のうちに帰ってくるみたいだけどな、ともう1人のカラスが教えてくれた。
そうなの、と私は落胆のため息を吐く。シンがいないのはアポ無しで遊びに来たので残念ではあるけど仕方ない。ただこのまま手ぶらで帰るのもなんだかシャクなので私はしばらくここにとどまることに決めた。
バサバサという羽音に頭上を見ればメフィストがいる。あなたも留守番なの?珍しいねと声を掛けるとメフィストはカァカァとよくわからない返答をくれた。
シンがすぐ帰ってくるかはわからない。
とりあえず空いてるソファに腰掛けてスマホをチェックする。緊急任務も連絡もない。今夜はゆっくりできそうだ。サプライズでも良かったけど、一応シンに基地にいることだけメッセージを送る。せっかく来たんだから、早く帰ってきてよねと、自分のアポ無しを棚に上げ催促をした。
それから改めて部屋を見渡せば溶けたカラスはそれぞれ本を読み、機械のカラスと薄暗い部屋でくつろいでた。なら私も暇つぶしに本でも読もうかと立ち上がり本棚へ向かう。この部屋はいつ見てもシックで悪のロマンが詰まっていて良い。黒を基調とした家具。それから壁に拳銃。私も部屋に拳銃飾ろうかな。
その本棚の隣にあるサイドボードにはシンの趣味の宝石とこの雰囲気にあまりそぐわない小さな箱が置いてある。迷わず手にとって見ればそれは何の変哲もないただのトランプだった。なぜ、どうしてここに、という疑問はあるが細かいことは気にしない事にする。重要なのはここにトランプがあるということだけなのだから。
「二人とも!トランプしない?」
『トランプ……?』
「もちろん罰ゲーム付きのね!負けた人は1つ勝った人の言うことを聞く!」
勢い良く振り返り声を上げる私のこの魅力的な提案を、のそりと顔を上げた二人が断るわけもなく、すぐさま三つ巴の真剣勝負が始まった。
そして勝負はあっけなく終わる。
「ババ抜きなんて、よく考えたら完全に私に不利じゃない!」
双子は視界を共有できて思考も同じ。初めから勝ち目はなかったというのに、その事をすっかり失念していた私は見事に即負けしたのだった。
「………で、罰ゲームは何?」
「へー、ゴネるかと思ったのにな」
「ハンターに二言はないよ。私に何をしてほしいの」
楽しそうに絡んでくるアキラとカゲトに、潔く、だけど少し憮然とした顔になっているとは思いつつ罰ゲームの内容を確認する。
「良いものを手に入れたんだけど使う機会がなくてさ」
そう言いながらアキラが出してきたのはドレスだった。紫をベースにした、たくさんのレースがついているフワフワなドレスは、細かいガラスが散りばめられていて、この部屋のボンヤリとした明かりをも反射してとても綺麗だ。だけど
「この色は何とかならなかったの……」
濃い紫をベースにしているのに合わせているゴテゴテしたリボンは虹色だったりショッキングピンクだったり黒バラ柄だったりとこの世の混沌を混ぜ合わせたような配色だった。そもそもドレスのデザインもデコルテ部や上腕部分が盛られていてフワフワなのは肩まわりだけだ。着用すれば恐らく淑女というより逆三角形マッチョになる予感しかない。
「これヤバいよなー!これでせいぜいオシャレをしてボスを出迎えてくれよ!」
場違いなくらい朗らかに笑うアキラ達から差し出されたドレスを受取り、これを着てシンを出迎えて恥をかかせるなんて中々な罰ゲームだ、と私は絶望を抱えながら着替えるためにバスルームへ向かった。
そしてバスルームの鏡の前で着替えてみたもののこれは思ったよりヤバい。あのカラスたちはどこでこれを手に入れたのか。何だこの優雅と対極にあるドレスは。肩幅がデカイので私の顔がとんでもなく貧相に見える。完全に衣装に着られている、と思ったらお腹のそこから笑いがこみ上げてきた。
「二人とも見て!これ!ヤバい!」
耐えきれなくなってバン、と思い切りバスルームの扉をあけて部屋へ飛び込めば、私の姿を目視した二人が一気に笑いだした。
「ダサい」「反則」「顔が貧相」「カオス」「妖怪」
もう誰が何を言っているかわからないくらい3人でひとしきり笑いあったあと、突然カゲトが「そうだ」と本棚をゴソゴソし始める。
私とアキラが涙を拭きながらカゲトを見ていると、カゲトは重々しい雰囲気を演出しながらこちらへ体を向けた。
「ここにあるのは……古の書だ」
わけのわからない事を言いながら出してきたのは昔々のどこかの地域の資料集のようだった。確かに古の書と言える。
「これがどうしたの?」
「ここにいい情報が載っている。せっかくだから使ってみよう」
カァ!とメフィストがひと際高い声で鳴く。
私たち3人は暗点のボスの帰還であると察知した。
思っていたよりも早い。もしかしたら私のメッセージを見て仕事を巻いてきてくれたのかもしれない。
私はゆっくりとソファから立ち上がる。ひと仕事終えたボスを出迎えるためアキラとカゲトによりオシャレに仕上がった私を、彼らは恭しくエスコートした。
玄関の重々しい扉が開かれる。カァカァと嬉しそうに無くメフィストの声をBGMに暗点のボスが帰ってきた。
「おかえりなさい」
できるだけお淑やかに基地の主に挨拶をする。
「アポ無しで俺に会いに来て、しかも早く帰ってこいなんて言えるのはお前だ…け……」
月明かりだけの暗い廊下にシンの語尾が消えていく。
「せっかく来たのにあなたがいなくて。だから待ってる間にオシャレしてみたの。どう?」
「お…なんだそれは……」
「新しいドレスと昇天ペガサスMIX盛り」
カゲトが見つけた古の書によると、昇天ペガサスMIX盛りとはヘアスタイルの1つだ。昔の一部地域の大人の社交場では、頭の上で髪を竜巻のように高く盛り、盛った部分に花などの装飾を施すスタイルが流行したらしい。人々は段々とどれだけ高く盛れるかを競うようになり装飾も花だけに留まらなくなる。そういったヒトの欲望が詰まったこの髪型はN109区にピッタリではないか。
とはいえ急ごしらえのため髪を盛ってキープできるようなハードなヘアスプレーも見栄を飾る花もここには無い。無いならこの場にあるもので代用するしかないよね、と言うことで私とアキラとカゲトは考えた。
スプレーの代わりに針金で髪を固定し、ボリュームを出すため弾丸ホルダーを巻きつける。暗点だけに実弾だ。花の代わりには落ちていたメフィストの羽ともう1つ。
「…頭に電飾がついてるが…?」
「華やかでしょ」
暗い廊下に不似合いなピカピカ光る私の頭上のLED。
明らかに困惑しているシンは珍しい。これは珍しい!私の後ろに控えていたアキラとカゲトが震えている気がする。私はいい気になってシンの手を取った。
「とにかくお疲れ様。明日は休みだし、乾杯でもしよう」
そう言ってシンを部屋まで連れて行く。あくまで優雅に、淑やかに。走るなんてもっての外だ。
部屋に戻ると雰囲気のあるムードランプが私の全容を照らし出した。どえらい色のマッチョ仕様ドレスだ。シンは私を見てすぐに目を逸らした。
「ちょっと!オシャレにキメたんだからちゃんと見てくれないと!」
私はゆっくりとシンに近付き、彼に視線をせがむ。しかし超至近距離から睨みつけてもなかなかこちらを見ない。視線の先に移動しようにも頭の弾丸ホルダーが重くて俊敏な動きができない上に、振り子のように顔が揺れてしまう。我慢してたけどもう首が限界、折れそう。これは彼の視線どころじゃない。一旦ソファに戻ろう、と方向転換をした時についに支えきれなくなった首があらぬ方向に倒れ、シンの顔に思い切り昇天ペガサスパンチが入った。
深淵の底の永遠とも思える沈黙の後、低く笑い出す悪魔を目の前に私は冷や汗をかいていた。いつの間にか声も出せないくらい爆笑していた双子の気配は消えている。あいつら逃げたな!しかし双子がいたところで状況は変わらない。ハンターとしては今できることをやるしかないのだ。瞬時に思考を切り替え、とりあえず思い切り両手を胸の前で合わせることにした。
「ごめんなさい!想定外だったの!」
「……まぁいい」
いまだに低く笑い続けるシンは私の髪の飾り付けを外し始めた。その手つきは優しく、怒っているわけではなさそうだった。
厳つい飾りを外してもらう間、私はシンに事の成り行きを話すことにした。もちろんアキカゲのせいにすることは忘れない。
「あなたがどんな反応をするか想像しながら用意したんだ。笑うのかな、とか。楽しかったな」
「……そうか」
大まかに話し終えた頃、私の髪は重い装備から解放された。シンは手に持った弾丸ホルダーを愉快そうに眺める。
「『暗点のボス』に一撃をくれた栄誉あるこの弾丸ホルダーと電飾は記念に飾っておこう」
「え、じゃあこのドレスも飾る?」
間髪入れずに尋ねた私のその言葉にシンは私を見て、だけどまたすぐに目をそらしてしまった。
「……明日はドレスを買いにいく。お前に似合うものをな」
とりあえず着替えろ、とやっぱりこちらを見ないまま早口で私を追いやるその肩は少し揺れている気がして、私はこのマッチョドレスも飾ろうと意気揚々とバスルームへ向かったのだった。
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