恋と深空
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勢いだけのシンとハンターちゃんの小話
数日前のこと。ちょっとムシャクシャしてた私は、シンがシャワーに入っている間に彼の部屋着にゆめかわアップリケを縫い付けた。何も知らずにその服を着る彼の様子を見て元気を出そうと思いついてしまったのだ。
なのに彼はこのアップリケはセンスが悪い、と早々に別の服に着替えてから言った。
「こういう事をするときは、もちろん覚悟の上だよな?」
ただただゆめかわ仕様のボスを見て心を穏やかにしたかった私の計画は失敗に終わったのだ。
計画は失敗に終わったのに私に課せられたのは「次の金曜に必ず俺に会いに来い」というものだった。その日は日付が変わる前に仕事が終わらないことがほぼ確定している。私がムシャクシャした原因だ。それをわかった上で言ってくるなんて、と目の前の暗点のボスを睨みつけてやれば喉を鳴らして笑っている。そして「土曜日にはオークションがあるからな。もしお前が間に合ったならなんでも好きなものをいくつでも買ってやる」と報酬をチラつかせてきた。なんでも、好きなものが。これが暗点のやり方か。
いいじゃない、乗った。絶対に仕事を片付けてドヤ顔で会いに来て、面白そうに私を見下すそのダークレッドの瞳が白黒するくらいのすごいもの手に入れてやるんだから!
そして今日、朝から周りが引くくらいの怒涛の勢いで仕事を片付けた。お昼ご飯も流し込むだけで味なんて覚えていない。午後も引いてた仲間が心配するくらいのペースで諸々をこなし、今N109区を爆走している。シンの元までもう少し。ただし日付が変わるのももう少しだ。なんだか最早ただの意地になっている気がするけど、ベテランハンターは諦めたりしない。ここが無法地帯で良かったとどんどんバイクの速度を上げていく。爆音を轟かせるマシンで月夜と風を切り裂きながらようやく目的地の薄暗い明かりにたどり着いた。ヘルメットの中が熱いのは私がオーバーヒート寸前だからかもしれない。
完全にブレーキをかけ切らないままアクションスターよろしくバイクから飛び降りる。そのまま玄関に向けて全力で足を踏み出せば背後からガシャンと大きな音がした。バイクか壁か、あるいは両方の音か。修理代、と一瞬頭をよぎったが今はそれよりも重要なことがある。時計はまだ日付を変えていない。
バン、と荒々しく建物の扉を開ければそこには二人のカラスがいた。
「なんだなんだ?」
「強盗か?」
ワクワクした様子でこちらに向かってくるアキラとカゲトに私は堂々と言い放つ。
「あなた達のボスに伝えて。私は約束を違えなかった、ってね!」
広々とした廊下に私のイキイキとした声が響いたその時、カァ!とメフィストが午前0時を告げた。
「さすがベテランハンターだな」
光とは縁遠い薄闇の廊下の奥から静かに歩きながらシンが私に拍手を送る。私がこんなに必死になって汗だくで、髪はボサボサのうえ化粧も落ちてハァハァ言ってるのに優雅に登場してくれるじゃない??と彼に詰め寄ればその胸にはゆめかわアップリケが付いていた。
「……あなたはそういうところがズルい」
暗点のボスの風格に全く似合わないふわふわパステルカラーのアップリケに毒気を抜かれた私は思わず笑ってしまう。そのあまりの似合わなさは今日の地獄の思いが全部チャラになってしまうくらいの威力があった。
「それで、明日のオークションで欲しいものは決まったのか?」
気が抜けて腰も抜けた私を、彼は横抱きにして部屋へ運びながらそう問いかけてきた。金曜日にシンに会いに来たらオークションで欲しいものはなんでも、いくつでも買ってくれるって話だ。
前もって出品リストは見せてもらっていたものの目移りして決められずにいた私は、私を抱えるダークレッドを覗き見てやっと納得の答えを導き出した。
「私が欲しいのは、この週末あなたを独占する権利だよ」
「……それは出品していないが」
「あなたの週末を独り占めできる権利なんて、今回出品されるどんな宝石より価値があると思わない?」
そう言いながら私は彼の胸元に縫い付けられたゆめかわアップリケをつつく。
「いいだろう」
少しの間のあと、笑い声とともに満更でもなく細められた瞳に、私も嬉しくなる。今日は仕事頑張って良かった、もう全部忘れてパーッと遊ぶぞ!と彼とバイクで出かける想像をしたところで、派手な音でぶん投げたままの自分のバイクのことを思い出し白目になったのだった。
数日前のこと。ちょっとムシャクシャしてた私は、シンがシャワーに入っている間に彼の部屋着にゆめかわアップリケを縫い付けた。何も知らずにその服を着る彼の様子を見て元気を出そうと思いついてしまったのだ。
なのに彼はこのアップリケはセンスが悪い、と早々に別の服に着替えてから言った。
「こういう事をするときは、もちろん覚悟の上だよな?」
ただただゆめかわ仕様のボスを見て心を穏やかにしたかった私の計画は失敗に終わったのだ。
計画は失敗に終わったのに私に課せられたのは「次の金曜に必ず俺に会いに来い」というものだった。その日は日付が変わる前に仕事が終わらないことがほぼ確定している。私がムシャクシャした原因だ。それをわかった上で言ってくるなんて、と目の前の暗点のボスを睨みつけてやれば喉を鳴らして笑っている。そして「土曜日にはオークションがあるからな。もしお前が間に合ったならなんでも好きなものをいくつでも買ってやる」と報酬をチラつかせてきた。なんでも、好きなものが。これが暗点のやり方か。
いいじゃない、乗った。絶対に仕事を片付けてドヤ顔で会いに来て、面白そうに私を見下すそのダークレッドの瞳が白黒するくらいのすごいもの手に入れてやるんだから!
そして今日、朝から周りが引くくらいの怒涛の勢いで仕事を片付けた。お昼ご飯も流し込むだけで味なんて覚えていない。午後も引いてた仲間が心配するくらいのペースで諸々をこなし、今N109区を爆走している。シンの元までもう少し。ただし日付が変わるのももう少しだ。なんだか最早ただの意地になっている気がするけど、ベテランハンターは諦めたりしない。ここが無法地帯で良かったとどんどんバイクの速度を上げていく。爆音を轟かせるマシンで月夜と風を切り裂きながらようやく目的地の薄暗い明かりにたどり着いた。ヘルメットの中が熱いのは私がオーバーヒート寸前だからかもしれない。
完全にブレーキをかけ切らないままアクションスターよろしくバイクから飛び降りる。そのまま玄関に向けて全力で足を踏み出せば背後からガシャンと大きな音がした。バイクか壁か、あるいは両方の音か。修理代、と一瞬頭をよぎったが今はそれよりも重要なことがある。時計はまだ日付を変えていない。
バン、と荒々しく建物の扉を開ければそこには二人のカラスがいた。
「なんだなんだ?」
「強盗か?」
ワクワクした様子でこちらに向かってくるアキラとカゲトに私は堂々と言い放つ。
「あなた達のボスに伝えて。私は約束を違えなかった、ってね!」
広々とした廊下に私のイキイキとした声が響いたその時、カァ!とメフィストが午前0時を告げた。
「さすがベテランハンターだな」
光とは縁遠い薄闇の廊下の奥から静かに歩きながらシンが私に拍手を送る。私がこんなに必死になって汗だくで、髪はボサボサのうえ化粧も落ちてハァハァ言ってるのに優雅に登場してくれるじゃない??と彼に詰め寄ればその胸にはゆめかわアップリケが付いていた。
「……あなたはそういうところがズルい」
暗点のボスの風格に全く似合わないふわふわパステルカラーのアップリケに毒気を抜かれた私は思わず笑ってしまう。そのあまりの似合わなさは今日の地獄の思いが全部チャラになってしまうくらいの威力があった。
「それで、明日のオークションで欲しいものは決まったのか?」
気が抜けて腰も抜けた私を、彼は横抱きにして部屋へ運びながらそう問いかけてきた。金曜日にシンに会いに来たらオークションで欲しいものはなんでも、いくつでも買ってくれるって話だ。
前もって出品リストは見せてもらっていたものの目移りして決められずにいた私は、私を抱えるダークレッドを覗き見てやっと納得の答えを導き出した。
「私が欲しいのは、この週末あなたを独占する権利だよ」
「……それは出品していないが」
「あなたの週末を独り占めできる権利なんて、今回出品されるどんな宝石より価値があると思わない?」
そう言いながら私は彼の胸元に縫い付けられたゆめかわアップリケをつつく。
「いいだろう」
少しの間のあと、笑い声とともに満更でもなく細められた瞳に、私も嬉しくなる。今日は仕事頑張って良かった、もう全部忘れてパーッと遊ぶぞ!と彼とバイクで出かける想像をしたところで、派手な音でぶん投げたままの自分のバイクのことを思い出し白目になったのだった。
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