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昼食を終えて廊下を歩いていると、すれ違っていく女子の足元で、カランと軽い音がした。聞こえてしまったものは仕方ないと、音の原因を探るべく振り返ればペンがひとつ落ちていた。
「ねぇ」
僕は声をかけながら落とし物のペンを拾い上げて、クラスも知らないその女子に差し出した。
「これ。君のでしょ」
「あ、ありがとう…」
様子を窺うようにペンを受け取る様子を見れば違和感しかなくて、僕はつい真顔で相手の顔を見た。
「ありがとう!」
と、ただペンを拾っただけなのにニコニコと笑う僕の彼女を思い出す。これお気に入りなの、とまたお礼を言うから、少しだけ、ほんの少しだけそのペンにメラメラと何かが燃えたのを覚えている。
「…別に、このくらい」
と今思えばすごく幼稚な反応しかできなかった僕に対して、嫌な顔をするどころか「一紀くんはやさしいね」なんてわけのわからない言葉をかけてくる。それが常だった。いつの間にか能天気に僕の中に入り込んで笑っているんだ。本当に染み広がるように僕の一部になっていったな、と彼女のことを考えれば顔が自然と緩んでしまう。
うん。顔が見たい。今日、海に呼び出してみようか。
ふと気が付くとペンを渡した目の前の女子はいつの間にか数人に増えてこちらを見ている。
なに、なんなの。
ハァ、とため息をついて教室に向かって踵を返す。
「それじゃ、渡したから」
緩んだ顔をもとに戻しながら歩きだすと後ろから
「氷室くんの微笑み……」
とかなんとか聞こえてきた。
なにそれ、僕だって笑うことくらいあるし。まぁ大体は彼女のことを想ってる時だって自覚はあるけど。
離れていても僕のこと笑わせるなんて、やるね、と彼女にメッセージを送る。唐突に届いた脈絡のない文章を見てどう思うのだろうか。
可愛らしく困惑しながら返信してくる姿が容易に想像できてすっかり機嫌が良くなった僕は、気怠い午後の授業すら楽しみになってしまった。
「ねぇ」
僕は声をかけながら落とし物のペンを拾い上げて、クラスも知らないその女子に差し出した。
「これ。君のでしょ」
「あ、ありがとう…」
様子を窺うようにペンを受け取る様子を見れば違和感しかなくて、僕はつい真顔で相手の顔を見た。
「ありがとう!」
と、ただペンを拾っただけなのにニコニコと笑う僕の彼女を思い出す。これお気に入りなの、とまたお礼を言うから、少しだけ、ほんの少しだけそのペンにメラメラと何かが燃えたのを覚えている。
「…別に、このくらい」
と今思えばすごく幼稚な反応しかできなかった僕に対して、嫌な顔をするどころか「一紀くんはやさしいね」なんてわけのわからない言葉をかけてくる。それが常だった。いつの間にか能天気に僕の中に入り込んで笑っているんだ。本当に染み広がるように僕の一部になっていったな、と彼女のことを考えれば顔が自然と緩んでしまう。
うん。顔が見たい。今日、海に呼び出してみようか。
ふと気が付くとペンを渡した目の前の女子はいつの間にか数人に増えてこちらを見ている。
なに、なんなの。
ハァ、とため息をついて教室に向かって踵を返す。
「それじゃ、渡したから」
緩んだ顔をもとに戻しながら歩きだすと後ろから
「氷室くんの微笑み……」
とかなんとか聞こえてきた。
なにそれ、僕だって笑うことくらいあるし。まぁ大体は彼女のことを想ってる時だって自覚はあるけど。
離れていても僕のこと笑わせるなんて、やるね、と彼女にメッセージを送る。唐突に届いた脈絡のない文章を見てどう思うのだろうか。
可愛らしく困惑しながら返信してくる姿が容易に想像できてすっかり機嫌が良くなった僕は、気怠い午後の授業すら楽しみになってしまった。