パルマよせあつめ
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世の中にはまだまだ解明されていないことがある。だから今のこの状況だってありえることなのだ。そう思いつつも、何も疑いもせずに差し入れを口にしたことを須田は悔いていた。幸いだったのはここが自宅ということだ。須田は、こんな姿誰にも見られてたまるかと悪態をつきながらも状況確認を始めた。
*
須田の体は縮んでいた。周りの家具などから推測するに恐らく5cmほどだ。呼吸や動作に問題はない。純粋に身体が縮んだだけだと結論付けて深いため息を吐く。アレを差し入れた輩をどうしてやろうか。しかし何より先に解決すべき問題を前に、頭を振り苛ついた気持ちを宥める。まずは愛するミチコの事だ。
*
ミチコは賢い、だけど餌は準備してやらねばならないと須田は少し頬を緩めた。それから「少しだけなら…」とソワソワとミチコのいるケージへと視線を送る。あの頬袋いっぱいにひまわりの種を詰め込んだ姿が愛らしいのだと数少ない知人に零したことがあるくらいだ、この状況で考えることは1つしかない。
*
愛しいミチコを全身で感じてみたいと須田はケージへと歩を進める。身長が縮んでいるせいで普段なら数歩の距離がただただ遠い。いつもより何倍も時間をかけて愛人の元へ急ぐ。ケージを床に置いていたお陰で容易に中に入れそうだ。様子を窺うもミチコの姿は見えない。須田は迷わず檻の中へ体を滑らせた。
*
彼女が居るであろう巣箱へ近付いた須田は、ミチコ、と甘さを含んだ声で呼びかける。だが巣箱は無反応だった。身長と同じく声も小さくなっているのかと、声を張って何度もその名前を呼び続ける。須田が逸る気持ちを抑え切れなくなりそうになった頃、ようやく暗い箱の奥からごそりと音が聞こえてきた。
*
愛しのミチコを堪能すべく両手を広げて巣箱の前で待っていた須田は、巣箱からフンフンと鼻先を突き出してきたミチコを見て硬直した。思ったよりかなり大きい。これは正面からのハグは無謀だと判断した須田はジワリと立ち位置を変えミチコの側面を狙える場所へと移動した。勿論決して視線は外さない。
*
巣箱からのそりと出てきたのは今の自分の体よリもでかい獣だった。揺れる鼻先、ギョロリとした目、種をしっかり掴んでいる長細い指。そして何よりもその頬袋。パンパンに種を詰め込んだそれは今にも須田の頭上に落ちてきそうなほど膨れ上がっている。そこには普段のミチコの愛らしさの欠片もなかった。
*
逃げた方が良いと人間の本能は警告してきていたが、それでも須田はミチコに触れてみたいという欲には勝てなかった。ミチコの側面に陣取っていたお陰でまだ彼女の視界には入っていない。触れるなら今しかない。ミチコがその手に持っていた種を齧り始めた瞬間を狙い、須田は思い切りミチコに飛び込んだ。
*
艶々した毛並みと温かい体温に包まれた須田はこの世の幸福を感じていた。こんな幸せがあるのか、と差し入れをくれた者と握手を交わしたい気分になったその時、腹の底に響くような唸り声が須田の身体を走り抜ける。何事かと視線を彷徨わせれば、黒々とした大きな目が自分を捉えていることに気が付いた。
*
獣は自分にしがみつく物体に興味を持ったのか身体を捻り須田に掴みかかろうとする。堪らないのは須田だ。愛しいミチコとはいえこの身長差でハグを受けてしまえばひとたまりもない。慌ててミチコから離れケージから出ようと逃走を試みるが床材のペーパーチップが身体に絡まり思うように動けなかった。
*
もたもたと躓きながらケージの外を目指す須田を獣は追ってくる。ミチコは愛しいが種のようにカリカリされるのは御免被りたいと必死で逃げる須田には、己を守る武器も防具も服さえもないのだ。そう、服は小さくならなかった。つまり全裸でミチコに飛びつき堪能した。ミチコはお怒りなのかもしれない。
*
やっとの思いで檻を抜け出した須田は、全身汗だくでその場に崩れ落ちた。仕事でもこんな目にあったことなど無いというのに。ガシャンと檻に手をかけこちらを威嚇するミチコを横目に荒い呼吸がようやっと落ち着いてきた頃、突然身体が元の姿に戻り、この忌々しい事件は終わりを迎えたのだった。
*
その後すぐに須田は首謀者を突き止め借りを返したが、気分は晴れないままだ。なぜならあの事件以降なぜかミチコがそっけない態度だからだ。少しぼんやりと種をケージに入れていく須田が、レディミチコの不興を買ったと気付くには、手元の高級ひまわりの種が完食される位の時間がかかりそうだった。
***
寒さに手を擦り合わせながら隣の須田さんをチラリと盗み見る。この寒さも意に介さない。私の視線に気付いて見下ろしてくる彼は面倒くさそうにため息を吐いた。「防寒対策くらいしてください」と彼がそっとポケットから差し出してくれたのは小さなハムスターだった。歯ぎしりが聞こえる。笑う須田。私は
*
*
1、ハムスターで暖を取る
2、須田さんで暖を取る
*
*
1
差し出された小さな生き物は須田さんの愛人ミチコだった。歯ぎしりは続いているけどそっと背中を撫でると確かな生命に指先が暖かくなる。撫で続ければいつの間にか歯ぎしりは消え、代わりに響くミチコを語る彼の声。そして私の事は気にしてない顔して風上に立つ彼の遠回しな優しさに心も暖まった。
*
2
彼の手に乗る獣は私を威嚇して歯ぎしりをしている。間違いない、ミチコだ。敵意むき出しの彼女を防寒に?と須田さんを睨め付ければその笑みは深くなる。悔しくて彼の空いてる腕を占領し彼女に舌を出してやったら声を出して笑う彼。その顔が珍しくて熱を持った私は図らずも防寒に成功したのだった。
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須田の体は縮んでいた。周りの家具などから推測するに恐らく5cmほどだ。呼吸や動作に問題はない。純粋に身体が縮んだだけだと結論付けて深いため息を吐く。アレを差し入れた輩をどうしてやろうか。しかし何より先に解決すべき問題を前に、頭を振り苛ついた気持ちを宥める。まずは愛するミチコの事だ。
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ミチコは賢い、だけど餌は準備してやらねばならないと須田は少し頬を緩めた。それから「少しだけなら…」とソワソワとミチコのいるケージへと視線を送る。あの頬袋いっぱいにひまわりの種を詰め込んだ姿が愛らしいのだと数少ない知人に零したことがあるくらいだ、この状況で考えることは1つしかない。
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愛しいミチコを全身で感じてみたいと須田はケージへと歩を進める。身長が縮んでいるせいで普段なら数歩の距離がただただ遠い。いつもより何倍も時間をかけて愛人の元へ急ぐ。ケージを床に置いていたお陰で容易に中に入れそうだ。様子を窺うもミチコの姿は見えない。須田は迷わず檻の中へ体を滑らせた。
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彼女が居るであろう巣箱へ近付いた須田は、ミチコ、と甘さを含んだ声で呼びかける。だが巣箱は無反応だった。身長と同じく声も小さくなっているのかと、声を張って何度もその名前を呼び続ける。須田が逸る気持ちを抑え切れなくなりそうになった頃、ようやく暗い箱の奥からごそりと音が聞こえてきた。
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愛しのミチコを堪能すべく両手を広げて巣箱の前で待っていた須田は、巣箱からフンフンと鼻先を突き出してきたミチコを見て硬直した。思ったよりかなり大きい。これは正面からのハグは無謀だと判断した須田はジワリと立ち位置を変えミチコの側面を狙える場所へと移動した。勿論決して視線は外さない。
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巣箱からのそりと出てきたのは今の自分の体よリもでかい獣だった。揺れる鼻先、ギョロリとした目、種をしっかり掴んでいる長細い指。そして何よりもその頬袋。パンパンに種を詰め込んだそれは今にも須田の頭上に落ちてきそうなほど膨れ上がっている。そこには普段のミチコの愛らしさの欠片もなかった。
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逃げた方が良いと人間の本能は警告してきていたが、それでも須田はミチコに触れてみたいという欲には勝てなかった。ミチコの側面に陣取っていたお陰でまだ彼女の視界には入っていない。触れるなら今しかない。ミチコがその手に持っていた種を齧り始めた瞬間を狙い、須田は思い切りミチコに飛び込んだ。
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艶々した毛並みと温かい体温に包まれた須田はこの世の幸福を感じていた。こんな幸せがあるのか、と差し入れをくれた者と握手を交わしたい気分になったその時、腹の底に響くような唸り声が須田の身体を走り抜ける。何事かと視線を彷徨わせれば、黒々とした大きな目が自分を捉えていることに気が付いた。
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獣は自分にしがみつく物体に興味を持ったのか身体を捻り須田に掴みかかろうとする。堪らないのは須田だ。愛しいミチコとはいえこの身長差でハグを受けてしまえばひとたまりもない。慌ててミチコから離れケージから出ようと逃走を試みるが床材のペーパーチップが身体に絡まり思うように動けなかった。
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もたもたと躓きながらケージの外を目指す須田を獣は追ってくる。ミチコは愛しいが種のようにカリカリされるのは御免被りたいと必死で逃げる須田には、己を守る武器も防具も服さえもないのだ。そう、服は小さくならなかった。つまり全裸でミチコに飛びつき堪能した。ミチコはお怒りなのかもしれない。
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やっとの思いで檻を抜け出した須田は、全身汗だくでその場に崩れ落ちた。仕事でもこんな目にあったことなど無いというのに。ガシャンと檻に手をかけこちらを威嚇するミチコを横目に荒い呼吸がようやっと落ち着いてきた頃、突然身体が元の姿に戻り、この忌々しい事件は終わりを迎えたのだった。
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その後すぐに須田は首謀者を突き止め借りを返したが、気分は晴れないままだ。なぜならあの事件以降なぜかミチコがそっけない態度だからだ。少しぼんやりと種をケージに入れていく須田が、レディミチコの不興を買ったと気付くには、手元の高級ひまわりの種が完食される位の時間がかかりそうだった。
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寒さに手を擦り合わせながら隣の須田さんをチラリと盗み見る。この寒さも意に介さない。私の視線に気付いて見下ろしてくる彼は面倒くさそうにため息を吐いた。「防寒対策くらいしてください」と彼がそっとポケットから差し出してくれたのは小さなハムスターだった。歯ぎしりが聞こえる。笑う須田。私は
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1、ハムスターで暖を取る
2、須田さんで暖を取る
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1
差し出された小さな生き物は須田さんの愛人ミチコだった。歯ぎしりは続いているけどそっと背中を撫でると確かな生命に指先が暖かくなる。撫で続ければいつの間にか歯ぎしりは消え、代わりに響くミチコを語る彼の声。そして私の事は気にしてない顔して風上に立つ彼の遠回しな優しさに心も暖まった。
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彼の手に乗る獣は私を威嚇して歯ぎしりをしている。間違いない、ミチコだ。敵意むき出しの彼女を防寒に?と須田さんを睨め付ければその笑みは深くなる。悔しくて彼の空いてる腕を占領し彼女に舌を出してやったら声を出して笑う彼。その顔が珍しくて熱を持った私は図らずも防寒に成功したのだった。
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