えんだんのおはなし
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陽太郎はいつも、体は丈夫だからって口癖みたいに無意識に無理をする。何度言ってもこればかりは聞き入れてもらえない。
村の用事を終えて帰ろうかというときに突然の雨に降られた私は近くの軒下で雨宿りをしていた。何かに当たってはねた水が少し腕に染み込むくらいで雨をしのぎながら、早くやむといいな、とぼんやり空を見上げる。
しばらく眺めていた曇天の下、ばたばたと私の居る軒下に駆け込んできた人影があった。別件で村に行くと言っていた陽太郎だ。しっかり雨の洗礼を受けていた。
「陽太郎!びしょびしょだよ!早く拭いて!」
慌てて鞄から手ぬぐいを出して陽太郎の髪を拭き始める私をみて、一瞬後に陽太郎は肩を揺らして笑いだした。どうしたの?なにか変だった?
「…こんなところでも会うんだ、と思ったら、つい」
ははっ、と驚きと嬉しさを混ぜたような顔をする陽太郎と目が合えば、私もなんだかおかしくなって、その楽しそうな様子に釣られて笑ってしまった。
彼の髪を拭きながら、冗談めかして「運命かもしれないね?」という私に「きっと、そうです」とためらいなく返事をくれる彼が愛おしくなって、私は思わず陽太郎の頭にあった両腕をそのまま首へ回してぎゅっと抱きついた。
彼の体温と、雨の音と私の心臓の音が連なってどきどきと踊るような気持ちになったその時。
「ちょ…腕、びしょびしょじゃないですか!」
と彼に絡めていた腕を勢い良く剥がされてしまった。そんなに濡れてないのに、大丈夫なのに。
せっかくの陽太郎の体温を手放すことになった淋しさに不満を伝えようと思ったけど、ふと頭によぎったのはこの腕に触れた側の事だった。
「も、もしかして冷たかった?ごめんね」
と、自分の考えの浅さにちょっと反省していたら
「おれのことはいいです、これじゃあなたが風邪を引いてしまう」
そう言って、陽太郎はこの雨の中でも走って帰りそうな勢いで私を見た。
その目は、自分のことを忘れてるときの目だ。もう、体は丈夫なんていいながら知らずに限界を超えて風邪ひくのはいつも陽太郎の方だよ?
「だめ。私を置いて帰らないで。雨がやむまで一緒にいて」
じっと彼を見つめながら、行かないでほしいって伝える。こういう時は回りくどい言い方はしないんだ。そうしたら陽太郎はちゃんと聞いてくれると私は知っているから。
「…それは…断れないです」
良かったと胸をなでおろす私を、陽太郎はそっと自分の方へ引き寄せてくれた。せめて体が冷えないように、って。彼はそういう人。無意識に無理をしちゃうけど、そこには私への気持ちがちゃんとあるって感じられるから、あんまり強く言えないのも事実で。だから、ありがとって気持ちを込めることにした。
突然の通り雨、ざぁざぁ騒がしいと雨水がぴったりと寄り添うの私達をそっと隠してくれるから、このまま2つの影が1つに重なっても、誰にも見つかることはなさそうだった。
村の用事を終えて帰ろうかというときに突然の雨に降られた私は近くの軒下で雨宿りをしていた。何かに当たってはねた水が少し腕に染み込むくらいで雨をしのぎながら、早くやむといいな、とぼんやり空を見上げる。
しばらく眺めていた曇天の下、ばたばたと私の居る軒下に駆け込んできた人影があった。別件で村に行くと言っていた陽太郎だ。しっかり雨の洗礼を受けていた。
「陽太郎!びしょびしょだよ!早く拭いて!」
慌てて鞄から手ぬぐいを出して陽太郎の髪を拭き始める私をみて、一瞬後に陽太郎は肩を揺らして笑いだした。どうしたの?なにか変だった?
「…こんなところでも会うんだ、と思ったら、つい」
ははっ、と驚きと嬉しさを混ぜたような顔をする陽太郎と目が合えば、私もなんだかおかしくなって、その楽しそうな様子に釣られて笑ってしまった。
彼の髪を拭きながら、冗談めかして「運命かもしれないね?」という私に「きっと、そうです」とためらいなく返事をくれる彼が愛おしくなって、私は思わず陽太郎の頭にあった両腕をそのまま首へ回してぎゅっと抱きついた。
彼の体温と、雨の音と私の心臓の音が連なってどきどきと踊るような気持ちになったその時。
「ちょ…腕、びしょびしょじゃないですか!」
と彼に絡めていた腕を勢い良く剥がされてしまった。そんなに濡れてないのに、大丈夫なのに。
せっかくの陽太郎の体温を手放すことになった淋しさに不満を伝えようと思ったけど、ふと頭によぎったのはこの腕に触れた側の事だった。
「も、もしかして冷たかった?ごめんね」
と、自分の考えの浅さにちょっと反省していたら
「おれのことはいいです、これじゃあなたが風邪を引いてしまう」
そう言って、陽太郎はこの雨の中でも走って帰りそうな勢いで私を見た。
その目は、自分のことを忘れてるときの目だ。もう、体は丈夫なんていいながら知らずに限界を超えて風邪ひくのはいつも陽太郎の方だよ?
「だめ。私を置いて帰らないで。雨がやむまで一緒にいて」
じっと彼を見つめながら、行かないでほしいって伝える。こういう時は回りくどい言い方はしないんだ。そうしたら陽太郎はちゃんと聞いてくれると私は知っているから。
「…それは…断れないです」
良かったと胸をなでおろす私を、陽太郎はそっと自分の方へ引き寄せてくれた。せめて体が冷えないように、って。彼はそういう人。無意識に無理をしちゃうけど、そこには私への気持ちがちゃんとあるって感じられるから、あんまり強く言えないのも事実で。だから、ありがとって気持ちを込めることにした。
突然の通り雨、ざぁざぁ騒がしいと雨水がぴったりと寄り添うの私達をそっと隠してくれるから、このまま2つの影が1つに重なっても、誰にも見つかることはなさそうだった。