フィガファウシリーズ
*両思いフィガファウです
*フィガロが女々しい
*ファウストがよく泣きます
*かなりの創造
*本編、カードストーリー等の各種ストーリー、イベントストーリーのネタバレ等有り
*シリアス気味ですがハッピーエンドだと思います
*雰囲気で読んでください
*キス表現ありますがR18ではありません
以下が大丈夫な方はどうぞ↓
ファウストと賢者の魔法使いとして400年振りに再会した。俺はファウストと出会った北ではなく南の魔法使いとして、ファウストは中央ではなく東の魔法使いとしてまた再会した。どうして今だったのだろうか、彼が目指した国を作ろうと南の国に移住して数百十年、俺自身の身勝手で手放した弟子は出会った頃の真面目で誠実で明るかったファウストとは違う陰気で根暗で人嫌いな呪い屋になっていた。
初めは嫌がられていた。話しかけても無視され、晩酌に誘おうとしても部屋にも入れて貰えず無理やり入れば魔法で追い出され(賢者様を使って無理やり押し入ったこともある)、レノと話している時に話しかけても直ぐにどこかに去っていく。挙句の果てにシノには"ファウストに嫌がらせをするな"と怒りながら言われ、ヒースクリフには"俺達の先生ですから"と牽制され、ネロには"無理やり行くのはやめておいたほうがいいんじゃねぇのか?"と呆れた目をして言われたりもした。ファウスト自身にも各国の先生としてでしか関わって貰えなかったのだ。
それがどうしたものか、数ヶ月も一緒に過ごすうちにファウストの中でもなにか変化があったのだろう、少しずつ少しずつ話せる事が増えていったのだ。
俺はそれがとても嬉しかった。だから自分から話をしに行ったしファウストから話しかけられたら喜んで話を聞いた。俺がファウストを手放して革命軍を離れた事実は変わらない。その後ファウストがアレクに火刑にされ、レノに助けられた事も、人間を恨んでしまったことも、そしてもしその場に北の魔法使いだった俺が居たとすれば俺は例え人間達を皆殺しにしてでもファウストを助けたであろう事も、それが幻想でしかない事も全部真実だ。
もう長くない寿命を悟ってからは昔のように戻れなくても今、この時をファウストと、例え嫌われてても関われれば良かった。
だって、1度手放した…いやファウストからすれば見放されたと思われても仕方がない事をした俺をファウストは、少しずつ受け入れてくれているのだから。
本当にそれだけだったんだ。
ある日、ファウストから好きだと伝えられた。正直びっくりした。嫌われているものだと思っていたから。だって…俺はファウストにとっていい先生にはなれなかっただろうから
"魔法舎に来た時に言ったけど、俺はもうすぐ死ぬよ?ファウスト、君を俺はまた置いて遠くに行ってしまうよ?それでもいいの?"
"それが何だ。そんなこと分かっている"
"分かっているなら、どうして?前にも言ったけど俺は君の幸せを願ってる。"
ファウストの幸せを願っている。それは嘘偽りない本心だった。
"俺と居たら君は幸せにはなれない。俺はまた君の前から去ってしまう。また君を、悲しませてしまう"
ファウストはそう言いきった俺の胸ぐらを掴み、怒っているような、悲しんでいるのか分からない表情をして言い切った。
"僕の幸せは僕が決める。フィガロ、おまえが僕にそんなことを言う資格はない。おまえがあの日、あの時僕に何も言わずに出ていった事は悲しかった。悔しかった。僕はあなたにとって取るに足らない弟子だったのかと思った。
アレクに火をつけられ時も、燃やされて痛くて痛くてそれでもあなたにだけは助けを求められなかった……情けなかったから。あなたは気をつけろと気にかけてくれていたのに"
ポタッと何かがファウストの顔から落ちた。
"レノに助けられた後沢山考えた。苦しいし、悲しかった。人間に裏切られた事もあなたに見限られたことも…それでも僕はっ!!あなたに、寿命の事で悩んでいた時に、一緒に生きようと言って貰えた事が嬉しくて、その想いが忘れられなくて、死ねなかった……何度も死のうとした。苦しくて苦しくて苦しくて。生きていてる事も辛くて、東の国に逃げて。それでも死ねなかった。いつかあなたが迎えに来てくれるんじゃないのかと勝手に…思っていたんだ……"
ファウストの目から、雨が降るようにたくさんの涙が出てくる。その雫が俺の服にぽたぽたと落ちて吸われていく。
"あなたに見限られたことも、あなたに守られていたことも、あの時の僕は何一つ分かっていなかった。
とても後悔した…。もっとあなたを見ていればと、大切にしていればって…"
ファウストは胸元から手を離し、そのまま俺の手に触れた。そっと上から重ねるように優しく包む
"フィガロ。僕は、おまえが死ぬと聞いて酷く動揺した。死なないと思っていた、おまえはとても強いからまだ死なずに飄々と生きるんだろうって……
でもおまえは時々、まるで自分が未来に居ないかのように話している事があって、急に怖くなったんだ。フィガロ、おまえが僕の知らない所で石になって。しばらくしてからあなたが石になったと伝えられたら僕はきっと……耐えられないだろうって。"
ファウストはそう言って手を頬のそばに持ってきて優しく撫でる
"フィガロ、僕はあなたのそばにいたい。あなたが石になるその時まで。僕は、あなたのそばに居たい。あなたが1人にならないように、あなたの特別になりたい。この感情は愛とはよべないのか?フィガロ”
ファウストは綺麗に笑った。昔のように、涙が流れているが、それでも笑っていた。フィガロ様、僕がお傍にいますよ。と、とある日の記憶と同じで
呪い屋になった弟子は、呪い屋になってもあの頃の綺麗なままだった。俺を嫌って呪ってもいいはずなのに、彼は、ファウストは俺を許して助けようとしてくれている。
"ははっ……参ったなぁ……君は本当にどうして俺を……こんなこと……"
願ってもみなかったよ。そう思った時に一筋の涙が目から落ちた。まるで春先の氷が溶けかけている滝のように静かに流れる涙と共に俺はファウストに抱きついた。
背中に回ったファウストの手がとても温かく感じた
---
「フィガロ」
「なぁに?ファウスト」
「いや、何でもない」
ファウストは俺の顔を見たあとそう言って手に持っていたグラスを口元に近づける
2人で中庭のベンチに座り、月を見ながら晩酌をしていた。ファウストの持っていた質のいいワインをネロに貰ったツマミと共に2人で話しながら飲んでいた。
ファウストが
"今夜は月が綺麗だから、一緒にどうだ?"と誘ってくれた。
今日は付き合い始めてからちょうど2ヶ月。
ファウストと付き合い始めてからは毎日びっくりすることが多い。
スキンシップが増えた。大幅に増えたというよりは少し触れられることが多くなった。触らなくていい時に触れられたり、さりげなくエスコートされたりも、少し、いやかなりドキドキする。不意に髪を触られた時はもう…それで笑いかけてくるものだから心臓に悪い。俺が師匠だったあの頃、見せてくれていた表情を俺にも見せるようになっていく。
そして夜にこうして晩酌に誘ってくれるようにもなった。
2人で月を眺めながら、グラスを交わす。そんなゆったりとした時間が好きだった。
チラッとファウストを見るとお酒のおかげで目元が赤くなっていて、ふっくらとした可愛らしい唇にも目がいく。
ああ触りたいなぁとそう思っても、いざ触ろうと思うと怖くて触れない。
嫌われたくない。触れたいな。
思わず手が伸びる。唇に触れようとした手が空中で止まってそのままゆっくりとおろそうとしたらファウストに手を取られた。
「フィガロ、おまえは……僕のことが好きじゃないのか?」
「えっ?……そんなことないよ?えっと、どうして?」
ファウストは俺の手を握りながら聞いてきた。
聞かれたことがわからなかった。俺がファウストを好きじゃない?そんなことはない。
ファウストによって自覚させられた俺の恋心というものはなかなかに強敵で今までの相手になら言えた言葉が軽々しくは言えなくなった。”好きだ“ ”愛してる“ ”そばにいたい“ “ひとりにしないで” 当たり前の様に言っていたそんな言葉もファウストの真剣な目を見ると言えなくなってしまった。軽く口に出していい物じゃないと思った。だって困らせてしまうだろうって、重くて暗い感情をファウストにぶつけるのはどうしてもいやだった。そばにいられる、ファウストの隣に居場所がある。俺にとってはそれだけで嬉しくて、それだけだったのに。
「おまえは昔、誰にでも愛してるだの綺麗だの可愛いだの言っていただろう。今もそうだ。付き合う前は僕にだって言っていた。でも今は……言わない。僕のことが嫌いなのか?」
「そっそんなことない!!ファウスト。君を嫌いになるなんてそんなことないよ!」
「っ……なら、どうして何も言わない!手を出さない!!僕には魅力がないのか?おまえから見たら何も知らない無垢な子供か?僕はっ……。おまえが、僕といると時折寂しそうな顔をするのが嫌だ。
僕は……フィガロおまえがわからないよ」
ファウストは手をぎゅっと握って俯いた。手に温かいものが落ちる感触がして胸が苦しくなる
ああ泣かないで、おねがい。ファウスト泣かないで。違うんだ、俺が臆病で恐いだけなんだ。君は何も悪くない。
泣かないで
「ファウスト、聞いて」
「聞かない」
「ファウスト…」
「僕だけが、僕だけが勝手に動揺してただけみたいじゃないか!僕は、フィガロの気持ちが聞きたいのにあなたは……何も言ってくれないっ……」
ファウストの握ってなかった方の手を伸ばして涙を拭う。
「君を不安にさせてしまった?」
ファウストはなにも言わなかった。風の音とファウストの嗚咽だけが聞こえる。悲しませたかった訳じゃないんだけどなぁ
「俺が、臆病なだけなんだ。君を悲しませたかった訳じゃない。俺は……君と共に過ごせるだけで嬉しいんだ。泣かないでファウスト」
「…っうるさい……あなたは馬鹿だ。どうして僕になにも求めない!……僕はっあなたが思うほど弱くはないし、欲もある」
ファウストは俺の胸にやさしい手つきで手のひらを重ね、俯いていた顔を上げた。アメシストの瞳から流れる涙を見ている。
「君に告白されて嬉しかった。あの時できなかった共に過ごすということが今なら出来る。でも、俺は…君を困らせたくない。ねえ、ファウスト」
ボロボロとアメシストの瞳から流れ出る涙を指でぬぐう
伝えても良いのかな、ねえファウスト俺ね
「俺は本当に一緒に過ごせるだけでいいんだ。でも、もしも……ファウストが良いって言ってくれるなら
君に触れたい。抱きしめてキスをしたい。離れないで、そばにいて…欲しい。
俺を、俺を嫌わないで………」
馬鹿みたいな願い事だと思う。2000年も生きて、俺よりもうんと若いファウストにこんなことを頼むのだから。どうか拒否して。そうしたら笑って冗談だよって言えるから。
「やっと、言ってくれた。フィガロ。あなたの望むままに」
「えっ……」
ファウストは泣き腫らした目でふわっと優しく微笑む。ひだまりの様な笑みは呪い屋らしかぬ温かい笑みだった。ファウストはベンチから立ち上がり座っている俺を抱きしめる。頭がファウストの胸あたりに来る。ファウストの匂いがする、思考が停止する。
「僕に触れたいのだろ?抱きしめたいのだろ?抱きしめたら良い。好きなだけ触れて好きなだけそばに居れば良い。僕は逃げも隠れもしない。もうあなたを拒否なんてしない。だからどうかお願い、僕を怖がらないで、拒まないで、あなたの気持ちを冗談にしないでくれ……」
怖がらなくて良い?拒まなくていい?求めてもいいの?俺がファウストに?俺はファウストを傷つけてばっかりなのに。
「ファウスト」
「うん。どうしたフィガロ」
「おれ、ファウストやみんなと一緒に居たい。まだ一緒に……死にっ…たく…死にたくないよ。そばに居て、おれから離れないで。おれと一緒に居て」
「僕は魔法使いだから約束はできない。だが出来るだけ共にいたいと思っている。だから望んでくれ、声に出して求めて」
「ふぁうすと……」
”ありがとう“
ファウストの胸元に顔を埋めてすりすりと頭を寄せる。ファウストに抱きしめられたままどこにも置いていなかった腕をファウストの背中に回す。するとファウストがおれを少しだけ強くぎゅっとして、その後優しく撫でてくれた。くすぐったくてあたたかい
しばらくそうしていたらファウストが髪に手を通してきた
「んっ…くすぐったいよ」
ファウストの手が髪で遊ぶ。首元のところに手が触れてくすぐったい
「ふふっ意外と髪が柔らかい」
「ファウストだって柔らかいでしょ」
「そんなことないよ。あなたの髪も繊細だ」
「そうかな…」
そうだよ、と言いながら髪で遊ぶファウスト。くすぐったくてあたたかい。
「ファウスト、キスしたい」
「唐突だな……」
俺がそう伝えるとファウストは体を離した。離れていく体温に少し寂しさを感じる。ファウストは俺の隣に座り直してこっちを向いた。寂しいと思っているのがわかったのかファウストがおれの掌に手を重ねてくれた。あたたかい
「ファウスト、いい?」
ファウストはコクリとうなずき俺の顔を見る。
唇と唇が軽く触れ合う様な軽いキス何度もファウストにする。何度も触れ合っている間に手を頬に持っていく。
「っ……はっ……」
ファウストが息を吸った瞬間に舌を差し込んで口内を蹂躙する。クチュクチュと唾液の混ざる音がする。ファウストの体を引き寄せて強く密着して顔が離れない様に手を頭の後ろに持っていく。息をさせる間も無く何度も何度も口付けを繰り返す。
上顎をなぞるとファウストの体がびくっと動く。かわいい、もっと見たい。
自分の唾液をファウストにおくってファウストがコクコクと飲み込んでいるのを目を開けてみる。目を閉じて一生懸命に息を吸おうとしているのもとてもかわいい
「んっ〜〜はふっ……んぁっんん……」
なんどもなんども繰り返すと次第にファウストの体から力がぬけてきて俺に身体を預けてくれる。顔から左手を離して背中に手を回してやさしくなでる
「ふっ……んっ……んん〜っ!」
ファウストがビクっと体を震わせた後、ファウストの口元から唇を話すと銀色の糸が二人の間にできる。ファウストは少しトロンとした目でおれを見る。かわいいなぁ。思わずファウストを抱きしめるとファウストもゆるゆると抱きしめ返してくれた。
「ファウスト、好きだよ」
「っ………はぁっ…僕も…好きだフィガロ」
そう言われた後また深く口付けをした
*フィガロが女々しい
*ファウストがよく泣きます
*かなりの創造
*本編、カードストーリー等の各種ストーリー、イベントストーリーのネタバレ等有り
*シリアス気味ですがハッピーエンドだと思います
*雰囲気で読んでください
*キス表現ありますがR18ではありません
以下が大丈夫な方はどうぞ↓
ファウストと賢者の魔法使いとして400年振りに再会した。俺はファウストと出会った北ではなく南の魔法使いとして、ファウストは中央ではなく東の魔法使いとしてまた再会した。どうして今だったのだろうか、彼が目指した国を作ろうと南の国に移住して数百十年、俺自身の身勝手で手放した弟子は出会った頃の真面目で誠実で明るかったファウストとは違う陰気で根暗で人嫌いな呪い屋になっていた。
初めは嫌がられていた。話しかけても無視され、晩酌に誘おうとしても部屋にも入れて貰えず無理やり入れば魔法で追い出され(賢者様を使って無理やり押し入ったこともある)、レノと話している時に話しかけても直ぐにどこかに去っていく。挙句の果てにシノには"ファウストに嫌がらせをするな"と怒りながら言われ、ヒースクリフには"俺達の先生ですから"と牽制され、ネロには"無理やり行くのはやめておいたほうがいいんじゃねぇのか?"と呆れた目をして言われたりもした。ファウスト自身にも各国の先生としてでしか関わって貰えなかったのだ。
それがどうしたものか、数ヶ月も一緒に過ごすうちにファウストの中でもなにか変化があったのだろう、少しずつ少しずつ話せる事が増えていったのだ。
俺はそれがとても嬉しかった。だから自分から話をしに行ったしファウストから話しかけられたら喜んで話を聞いた。俺がファウストを手放して革命軍を離れた事実は変わらない。その後ファウストがアレクに火刑にされ、レノに助けられた事も、人間を恨んでしまったことも、そしてもしその場に北の魔法使いだった俺が居たとすれば俺は例え人間達を皆殺しにしてでもファウストを助けたであろう事も、それが幻想でしかない事も全部真実だ。
もう長くない寿命を悟ってからは昔のように戻れなくても今、この時をファウストと、例え嫌われてても関われれば良かった。
だって、1度手放した…いやファウストからすれば見放されたと思われても仕方がない事をした俺をファウストは、少しずつ受け入れてくれているのだから。
本当にそれだけだったんだ。
ある日、ファウストから好きだと伝えられた。正直びっくりした。嫌われているものだと思っていたから。だって…俺はファウストにとっていい先生にはなれなかっただろうから
"魔法舎に来た時に言ったけど、俺はもうすぐ死ぬよ?ファウスト、君を俺はまた置いて遠くに行ってしまうよ?それでもいいの?"
"それが何だ。そんなこと分かっている"
"分かっているなら、どうして?前にも言ったけど俺は君の幸せを願ってる。"
ファウストの幸せを願っている。それは嘘偽りない本心だった。
"俺と居たら君は幸せにはなれない。俺はまた君の前から去ってしまう。また君を、悲しませてしまう"
ファウストはそう言いきった俺の胸ぐらを掴み、怒っているような、悲しんでいるのか分からない表情をして言い切った。
"僕の幸せは僕が決める。フィガロ、おまえが僕にそんなことを言う資格はない。おまえがあの日、あの時僕に何も言わずに出ていった事は悲しかった。悔しかった。僕はあなたにとって取るに足らない弟子だったのかと思った。
アレクに火をつけられ時も、燃やされて痛くて痛くてそれでもあなたにだけは助けを求められなかった……情けなかったから。あなたは気をつけろと気にかけてくれていたのに"
ポタッと何かがファウストの顔から落ちた。
"レノに助けられた後沢山考えた。苦しいし、悲しかった。人間に裏切られた事もあなたに見限られたことも…それでも僕はっ!!あなたに、寿命の事で悩んでいた時に、一緒に生きようと言って貰えた事が嬉しくて、その想いが忘れられなくて、死ねなかった……何度も死のうとした。苦しくて苦しくて苦しくて。生きていてる事も辛くて、東の国に逃げて。それでも死ねなかった。いつかあなたが迎えに来てくれるんじゃないのかと勝手に…思っていたんだ……"
ファウストの目から、雨が降るようにたくさんの涙が出てくる。その雫が俺の服にぽたぽたと落ちて吸われていく。
"あなたに見限られたことも、あなたに守られていたことも、あの時の僕は何一つ分かっていなかった。
とても後悔した…。もっとあなたを見ていればと、大切にしていればって…"
ファウストは胸元から手を離し、そのまま俺の手に触れた。そっと上から重ねるように優しく包む
"フィガロ。僕は、おまえが死ぬと聞いて酷く動揺した。死なないと思っていた、おまえはとても強いからまだ死なずに飄々と生きるんだろうって……
でもおまえは時々、まるで自分が未来に居ないかのように話している事があって、急に怖くなったんだ。フィガロ、おまえが僕の知らない所で石になって。しばらくしてからあなたが石になったと伝えられたら僕はきっと……耐えられないだろうって。"
ファウストはそう言って手を頬のそばに持ってきて優しく撫でる
"フィガロ、僕はあなたのそばにいたい。あなたが石になるその時まで。僕は、あなたのそばに居たい。あなたが1人にならないように、あなたの特別になりたい。この感情は愛とはよべないのか?フィガロ”
ファウストは綺麗に笑った。昔のように、涙が流れているが、それでも笑っていた。フィガロ様、僕がお傍にいますよ。と、とある日の記憶と同じで
呪い屋になった弟子は、呪い屋になってもあの頃の綺麗なままだった。俺を嫌って呪ってもいいはずなのに、彼は、ファウストは俺を許して助けようとしてくれている。
"ははっ……参ったなぁ……君は本当にどうして俺を……こんなこと……"
願ってもみなかったよ。そう思った時に一筋の涙が目から落ちた。まるで春先の氷が溶けかけている滝のように静かに流れる涙と共に俺はファウストに抱きついた。
背中に回ったファウストの手がとても温かく感じた
---
「フィガロ」
「なぁに?ファウスト」
「いや、何でもない」
ファウストは俺の顔を見たあとそう言って手に持っていたグラスを口元に近づける
2人で中庭のベンチに座り、月を見ながら晩酌をしていた。ファウストの持っていた質のいいワインをネロに貰ったツマミと共に2人で話しながら飲んでいた。
ファウストが
"今夜は月が綺麗だから、一緒にどうだ?"と誘ってくれた。
今日は付き合い始めてからちょうど2ヶ月。
ファウストと付き合い始めてからは毎日びっくりすることが多い。
スキンシップが増えた。大幅に増えたというよりは少し触れられることが多くなった。触らなくていい時に触れられたり、さりげなくエスコートされたりも、少し、いやかなりドキドキする。不意に髪を触られた時はもう…それで笑いかけてくるものだから心臓に悪い。俺が師匠だったあの頃、見せてくれていた表情を俺にも見せるようになっていく。
そして夜にこうして晩酌に誘ってくれるようにもなった。
2人で月を眺めながら、グラスを交わす。そんなゆったりとした時間が好きだった。
チラッとファウストを見るとお酒のおかげで目元が赤くなっていて、ふっくらとした可愛らしい唇にも目がいく。
ああ触りたいなぁとそう思っても、いざ触ろうと思うと怖くて触れない。
嫌われたくない。触れたいな。
思わず手が伸びる。唇に触れようとした手が空中で止まってそのままゆっくりとおろそうとしたらファウストに手を取られた。
「フィガロ、おまえは……僕のことが好きじゃないのか?」
「えっ?……そんなことないよ?えっと、どうして?」
ファウストは俺の手を握りながら聞いてきた。
聞かれたことがわからなかった。俺がファウストを好きじゃない?そんなことはない。
ファウストによって自覚させられた俺の恋心というものはなかなかに強敵で今までの相手になら言えた言葉が軽々しくは言えなくなった。”好きだ“ ”愛してる“ ”そばにいたい“ “ひとりにしないで” 当たり前の様に言っていたそんな言葉もファウストの真剣な目を見ると言えなくなってしまった。軽く口に出していい物じゃないと思った。だって困らせてしまうだろうって、重くて暗い感情をファウストにぶつけるのはどうしてもいやだった。そばにいられる、ファウストの隣に居場所がある。俺にとってはそれだけで嬉しくて、それだけだったのに。
「おまえは昔、誰にでも愛してるだの綺麗だの可愛いだの言っていただろう。今もそうだ。付き合う前は僕にだって言っていた。でも今は……言わない。僕のことが嫌いなのか?」
「そっそんなことない!!ファウスト。君を嫌いになるなんてそんなことないよ!」
「っ……なら、どうして何も言わない!手を出さない!!僕には魅力がないのか?おまえから見たら何も知らない無垢な子供か?僕はっ……。おまえが、僕といると時折寂しそうな顔をするのが嫌だ。
僕は……フィガロおまえがわからないよ」
ファウストは手をぎゅっと握って俯いた。手に温かいものが落ちる感触がして胸が苦しくなる
ああ泣かないで、おねがい。ファウスト泣かないで。違うんだ、俺が臆病で恐いだけなんだ。君は何も悪くない。
泣かないで
「ファウスト、聞いて」
「聞かない」
「ファウスト…」
「僕だけが、僕だけが勝手に動揺してただけみたいじゃないか!僕は、フィガロの気持ちが聞きたいのにあなたは……何も言ってくれないっ……」
ファウストの握ってなかった方の手を伸ばして涙を拭う。
「君を不安にさせてしまった?」
ファウストはなにも言わなかった。風の音とファウストの嗚咽だけが聞こえる。悲しませたかった訳じゃないんだけどなぁ
「俺が、臆病なだけなんだ。君を悲しませたかった訳じゃない。俺は……君と共に過ごせるだけで嬉しいんだ。泣かないでファウスト」
「…っうるさい……あなたは馬鹿だ。どうして僕になにも求めない!……僕はっあなたが思うほど弱くはないし、欲もある」
ファウストは俺の胸にやさしい手つきで手のひらを重ね、俯いていた顔を上げた。アメシストの瞳から流れる涙を見ている。
「君に告白されて嬉しかった。あの時できなかった共に過ごすということが今なら出来る。でも、俺は…君を困らせたくない。ねえ、ファウスト」
ボロボロとアメシストの瞳から流れ出る涙を指でぬぐう
伝えても良いのかな、ねえファウスト俺ね
「俺は本当に一緒に過ごせるだけでいいんだ。でも、もしも……ファウストが良いって言ってくれるなら
君に触れたい。抱きしめてキスをしたい。離れないで、そばにいて…欲しい。
俺を、俺を嫌わないで………」
馬鹿みたいな願い事だと思う。2000年も生きて、俺よりもうんと若いファウストにこんなことを頼むのだから。どうか拒否して。そうしたら笑って冗談だよって言えるから。
「やっと、言ってくれた。フィガロ。あなたの望むままに」
「えっ……」
ファウストは泣き腫らした目でふわっと優しく微笑む。ひだまりの様な笑みは呪い屋らしかぬ温かい笑みだった。ファウストはベンチから立ち上がり座っている俺を抱きしめる。頭がファウストの胸あたりに来る。ファウストの匂いがする、思考が停止する。
「僕に触れたいのだろ?抱きしめたいのだろ?抱きしめたら良い。好きなだけ触れて好きなだけそばに居れば良い。僕は逃げも隠れもしない。もうあなたを拒否なんてしない。だからどうかお願い、僕を怖がらないで、拒まないで、あなたの気持ちを冗談にしないでくれ……」
怖がらなくて良い?拒まなくていい?求めてもいいの?俺がファウストに?俺はファウストを傷つけてばっかりなのに。
「ファウスト」
「うん。どうしたフィガロ」
「おれ、ファウストやみんなと一緒に居たい。まだ一緒に……死にっ…たく…死にたくないよ。そばに居て、おれから離れないで。おれと一緒に居て」
「僕は魔法使いだから約束はできない。だが出来るだけ共にいたいと思っている。だから望んでくれ、声に出して求めて」
「ふぁうすと……」
”ありがとう“
ファウストの胸元に顔を埋めてすりすりと頭を寄せる。ファウストに抱きしめられたままどこにも置いていなかった腕をファウストの背中に回す。するとファウストがおれを少しだけ強くぎゅっとして、その後優しく撫でてくれた。くすぐったくてあたたかい
しばらくそうしていたらファウストが髪に手を通してきた
「んっ…くすぐったいよ」
ファウストの手が髪で遊ぶ。首元のところに手が触れてくすぐったい
「ふふっ意外と髪が柔らかい」
「ファウストだって柔らかいでしょ」
「そんなことないよ。あなたの髪も繊細だ」
「そうかな…」
そうだよ、と言いながら髪で遊ぶファウスト。くすぐったくてあたたかい。
「ファウスト、キスしたい」
「唐突だな……」
俺がそう伝えるとファウストは体を離した。離れていく体温に少し寂しさを感じる。ファウストは俺の隣に座り直してこっちを向いた。寂しいと思っているのがわかったのかファウストがおれの掌に手を重ねてくれた。あたたかい
「ファウスト、いい?」
ファウストはコクリとうなずき俺の顔を見る。
唇と唇が軽く触れ合う様な軽いキス何度もファウストにする。何度も触れ合っている間に手を頬に持っていく。
「っ……はっ……」
ファウストが息を吸った瞬間に舌を差し込んで口内を蹂躙する。クチュクチュと唾液の混ざる音がする。ファウストの体を引き寄せて強く密着して顔が離れない様に手を頭の後ろに持っていく。息をさせる間も無く何度も何度も口付けを繰り返す。
上顎をなぞるとファウストの体がびくっと動く。かわいい、もっと見たい。
自分の唾液をファウストにおくってファウストがコクコクと飲み込んでいるのを目を開けてみる。目を閉じて一生懸命に息を吸おうとしているのもとてもかわいい
「んっ〜〜はふっ……んぁっんん……」
なんどもなんども繰り返すと次第にファウストの体から力がぬけてきて俺に身体を預けてくれる。顔から左手を離して背中に手を回してやさしくなでる
「ふっ……んっ……んん〜っ!」
ファウストがビクっと体を震わせた後、ファウストの口元から唇を話すと銀色の糸が二人の間にできる。ファウストは少しトロンとした目でおれを見る。かわいいなぁ。思わずファウストを抱きしめるとファウストもゆるゆると抱きしめ返してくれた。
「ファウスト、好きだよ」
「っ………はぁっ…僕も…好きだフィガロ」
そう言われた後また深く口付けをした
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