FGO関連
※マイルーム台詞のネタバレあり。ご注意ください。
「嘘……。なんて疎ましい言葉でしょう。最悪の言葉。わたくしが大嫌いなものですわ」
マイルームで話している時、嫌いなものの話題で彼女は私にそう話してくれた。その後の会話でも嘘のつかない世界を望み、正直をこよなく愛しているということを知り、彼女は本当に嘘が嫌いなのだとわかった。
だからある時私は
「ね、清姫ちゃん。私と指切りしない?」
そう彼女に提案した。
指切り、それは主に約束を交わし合う2人の小指を絡みあわせ、それを上下に振りながら『指切りげんまん嘘ついたら針千本呑ます』と2人で言い、そして最後に『指切った』と言って約束の厳守を誓うために行われるものだ。
これを私がいた時代では気楽に約束だよ〜と交わしたりする感覚で行っていたが、元々は遊女が客に対する心中立て(色々な意味があるが簡単にいえば想い合う2人の愛情を守り通すための約束)として小指の第1関節切って渡したことから由来していて気楽なものではない。自分の身をもって約束を必ず守るというもので。私としては後者の自分の身をもって〜の方の意味で彼女に提案したのだが
「……マスター、わたくしはあなた様に言いましたわよね。嘘が嫌いだと」
「うん、知ってる」
「では、わたくしにはあなた様の時代の情報もあるということは?」
「知ってるよ」
「じゃあ、何故?」
「大好きな清姫ちゃんにこの身をもってちゃんと誓いたかったから。貴方のことが大好きで、この気持ちに嘘はないし、嘘をつくことは絶対にないって」
「…………ふふ、ふふふふふふふ、あぁなんて酷いお方。あなた様まで安珍様のようなことを言って、そして嘘をつかれるのですか?」
「嘘なんかじゃ………っ、」
ばっと開いた扇が私と彼女の間に境界線を作った。近づかないように。近づけないように。
「わたくしは嘘は嫌いです。この世で1番憎むものです。だけれど、」
ふっ、と笑った彼女の顔は、何故か
「今はあなた様も、嫌いです」
哀しそうに、見えた。
ああマスター、わたくしのとてもとても大切なマスター。こんなわたくしを心から信じて、そして愛してくれて、自分の身をもって約束をしてしまおうとしたマスター。
どうか愚かなわたくしをお許しください。
わたくしはあなた様のお気持ちがとても嬉しかった。心の底から嬉しかった。安珍様と同じ運命を辿るかもしれないと考えたとしても。だからその感情に動かされるままあなた様と約束を交わしたかった。
だけど、あぁ、でも、わたくしの中のものがそれを許さなかったのです。
いずれわたくしは自分の中のもの、恋焦がれた人への妄信ゆえに、自身のもつ狂気のゆえに、恋しくて愛しくて恋しくて愛しくて愛しくて愛おしくて仕方ないあなた様を、この手で焼き殺してしまうかもしれない。
そうしたらわたくしはあなた様のその気持ちを裏切ってしまうことになる。自分がこの世で1番憎む嘘であなた様を裏切り、その命を奪うことになってしまう。
だからどうか、どうかお許しくださいませ
例えその嘘で、自分の身が自分の炎で焼き尽くされるとしても。
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