パーシヴァルさんと
おなまえは?
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「月が綺麗ですね」
彼の隣で共に空を見上げた時、私はそう彼に告げた。
「……あぁ、確かにそうだな」
その言葉にいつものキリッとした顔を少し和らげながらそう返してくれた彼。その表情に胸がどきりと跳ねつつも少し残念に思う。この様子だときっと彼は知らないんだろうな。
ねぇ、パーシヴァルさん。さっき私、なんて言ったか覚えていますか。貴方はこの『月が綺麗ですね』という言葉の意味を知っていますか。
ある国の有名な文豪が教師をしていた頃、生徒が異国の『愛してる』という言葉を自分の国の言葉でそのまま訳した際「その国ではそんな言い方はしない。訳すとしたら『月が綺麗ですね』とでもしておきなさい」と言った逸話から『月が綺麗ですね』という言葉は遠回しな告白や愛の言葉として用いられるようになったんですよ。
普通の月が綺麗ですねという言葉として捉えてる様子から、彼はこれを知らないようだ。彼でも知らない情報を私が知っていたという滅多にないことに何となく嬉しく思いつつ、私はそれを教えることなく再び空を見上げた。
だって……ね、何かこのことを教えるのは少し恥ずかしくて。ただでさえいつも彼に好きとか言うのは恥ずかしくて中々出来ないのに更に言いづらい愛してるを遠回しに言ったんですよ〜なんて言えるわけがない。だから黙ってたのに
「死んでもいいくらい、だな」
その一言に思わず彼の方を向くと、先程までは空を見上げていたはずの彼がこちらを向いていて。私を見る優しげで愛おしそうな視線にかあああっと顔や身体が熱くなる。というか、まさか、知って、た……???
「……なぁミサキ」
突然の名前呼びに心臓が物凄く跳ねた。何ですかと答えたけど声が震えてる気がする。だって、だって、
「月が、綺麗だな」
そう言って笑った彼の瞳には夜空に綺麗に輝いている月ではなく、真っ赤に頬を染めた私が映っていたのだから。
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