この恋は、
おなまえは?
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「急に誘って悪かった。……だが、来てくれて嬉しい」
目の前に見えるのは、大好きな彼の、少し口元をゆるめて嬉しそうに笑う顔。
…………あの、すみません。いま見えているこれって私の妄想とかだったりしませんか??現実が悲惨な目にあってるから現実をみたくなくて脳内が逃避してるとかそういうやつとかではなく??脳内が大変バグっている。
今現在いるのは、パーシヴァルさんに連れられてやって来たお店のある個室……というより半個室、かな。程よく周りの人からは区切られていて、そして置かれている調度品もお店の中も凄くお洒落。絶対一人じゃこれないとこだ。
もう連れてこられた時点からひえええって感じなのに、二人席で、エスコートされるみたいに席に座らされて、料理が二人分置けるスペースはあるとはいえ凄く広いという訳でもないのでいつもより彼との距離が近くて、テーブルの下のふれ合いそうになる脚と脚に凄くどきどきしながら目の前をみれば先程の彼の顔。まって、今日私死ぬのかな……。
何を頼む?と聞かれて、料理は何がいいのかわかんなかったのでお任せして、飲み物は……て続けようとしたら、私の頼もうとしてたのを提示された。えっ、何でわかったんですか。
「まぁ……よく見ていたからな」
見ていたとは、なに。
待って待ってその言い方駄目です貴方に恋心を抱いてる私にそんなこと言ったら『私のこと好きだから見てた』とか盛大に勘違いしちゃいますよいいんですかパーシヴァルさんいいんですか?!??
そんな荒ぶる私の心など気にすることなく、時間はゆっくりと、でも確実に過ぎていく。美味しいであろうご飯(緊張しすぎて味がわからなかった)を頂いて、時折投げられる言葉に吃りながら返事を返して、吃りながら私も投げかけて。
そしてふと、会話が途切れた。
チョコを渡すには、今しかない。そう思った。もし背中を押してくれる誰かがこの場にいたとしたら今がベストタイミングと言うだろう。どんな結果になるかわからないけれど。
はぁっと息をついてから、吸って吐いて深呼吸。ばくばくと煩い心臓を少しでも落ち着かせるように胸のところをぎゅっとつかんで、そして大きく息を吸って、
「あ、の、」
出た声は予想以上に震えた。
落ち着け。落ち着くんだわたし。もう一度。吸って、吐いて。大きく深呼吸して。
声と同じように震える手でバッグの中にある紙袋を取りだして、そしてそれを無言で彼に差し出した。
……って、いやいやいや無言は駄目だろ。何か、何か言わなきゃ。目の前の彼も突然のことすぎてめちゃめちゃびっくりしてる。気がする。雰囲気的に。だから言わなきゃ。理由を。いわ、なきゃ。
そしてぐるぐると頭の中で考えた末に出てきたのは、『これ、受け取ってください』でも『迷惑かもですが……』でもなく、
「…………すき、です」
私が彼へ抱く、直接伝えられるわけないと散々言っていた想いだった。
どどどどどうしよう。自分でも言ったことにびっくりしているしテンパっている。まさか言うとは。口から出てくるとは。全く思ってもいなかった。
というかこの言葉にパーシヴァルさんは何と返してくれるのだろうか。『すまない』という断りの言葉だろうか。それとも、ありえないと思いつつも期待した一言だろうか。
混乱と、緊張と、泣きそうな気持ちで、ばくばくと煩い心臓の音を聞きながら、ぎゅっと目をつぶって彼の言葉を待っていると、
「……先を越されてしまったな」
やってきたのは予想とは全然違う、寧ろ予想なんてしていなかった言葉だった。
てか、先って……なに??
困惑した顔で彼を見つめる私を、ふっと笑いながら私の指にゆるりと優しく触れて、差し出したそれを受け取り中身を見ずに鞄へ。
そして、
「実は俺も用意していてな。よければ受け取ってくれ」
その鞄からちいさな紙袋を取り出して、それを差し出された。
…………何が、起きているのだろうか。
俺がいたところでは男性から、と言っている彼の声が耳から通り抜けていく。現実が受け止めきれない。てかまって、やっぱこれ私の脳内が見せている都合のいい幻覚なのではないだろうか。
だって、こんな、こんな、夢みたいな、
「…………迷惑、か?」
「っ、え、」
かけられた声にびくりと身体が跳ねる。酷く不安そうに聞こえた声。迷惑。迷惑だなんて、そんなこと。でも声が出ない。何で。出ろ。
「今日という日に誘いを受けてくれたことや、先程などの反応から、俺は勝手にそうではないと自惚れていたのだが……もし違うのであれば、」
そんな、
「違く、ないです!!!!」
ガタン、と音をたてて思わず立ち上がってしまった。それも周りに響くような大きな声で。出ろとは願ったけどこんな大きな声でなんて言ってない!
聞こえたのか周りがざわ、としつつもすぐさま自分らの会話に戻る中、恥ずかし過ぎてかぁっと熱くなる頬を抑えながら席に座り直して俯いた。何やってるんだ。
そんな私の耳に
「そうか。……なら、よかった」
ほっとしたような彼の声が。
どうしよう、顔を上げたいけれど上げられない。恥ずかしさと、嬉しさと、…………そして、耳に届いた声の甘さと優しさに困惑する気持ちが心のなかで入り乱れる。
なんでそんな、ほっとした声で。私のこと好きみたいな声で。
「……で、だ。これは受け取って貰えるのか?」
はっ!と顔を上げると、そこにはふっ、と笑いながら、でも少し不安そうに、困ったような顔でそう問いかけるパーシヴァルさん。
すみませんその顔やめてくださいちょっともうパーシヴァルさんに対しての耐性があんまりない私には心がキャパオーバーなんですむり。まって。あっでも受け取らなきゃ、大好きな人に悲しい顔なんてさせたくない!
そう思って受け取ったら、あの、ひえまって。まっ、にこって。え、あの、その顔。何でそんな甘、えっちょ、
「ああそれと、」
俺も、君のことが好きだ。