岩男腐向け短編まとめ
(……時間遡行装置?)
──ええ。あくまで移動できるのは“意識”のみですけれどもね。過去未来、あるいは現在のどこかしこかに、己を移動させることができる。
我々はあくまで、そう、この地球上においては恒久的といえるような時間を稼働できるように造られているわけで……必要だったんです。こういうものが。
もっとも今は使いませんよ。使えないことはないのですがトラブルがありまして。
(なに、トラブルって)
──SRN(我々)が自身にこれを使うことはほとんどありませんでした。
我々に付き従うもの、下のものたちに、あるいは侵略が成功していればあなたもそうだったかもしれません。彼らに使わせていたんです。
というのも、これを使用するほとんどの目的は人格移植にあったからですね。時間遡行はオマケです、オマケ。
(オマケでそんなものができてたまるか)
──できちゃったもんはしょうがないでしょうが。永い時のなかではそういうことだってあります。
(めちゃくちゃだ……)
──あなたたちからすればね。
(それで、めちゃくちゃなコイツをどう使ってたって?)
──サンゴット様が眠りにつかれている間の周辺の世話や、メンテナンス用ロボットの外面(ガワ)だけを新しくできるようになりました。
なにぶん、我々を開発した種族は、我々みなで滅ぼしてしまいましたので……同じほど頑丈なロボを作ることが叶いませんでして。
中身が同じであれば再調教の必要もありませんから。
(同じロボットをたくさん作って、中身だけを再利用していた?)
──とも限りませんね。ボディの方も改良は試みていたんですよ。だから別型に入り込ませることも多々、ね。
“意識”のみを移動すると言ったでしょう? それをいれる“器”の方は、ある程度自由が効くわけです。自分か、あるいはまだ自我の芽生えていないまっさらな機体……。
(他人の体にも入れるの? 乗っ取りとか、できるの)
──すでに自我を確立させた器に移動することは推奨されていませんよ。ふたりぶんの記憶がごちゃ混ぜになったり、入り込むのに失敗しればこちらが消滅しますもの。
(ふうん……)
──それから長い時間の悶着で無くなってしまった技術を取り戻したり、未来予知のように利用したり。部下を他の時間まで遣わせてそんなことを繰り返していました。
問題は、一定以上の知能を有していないと……ええと、耐えきれなくてバラバラになっちゃうっていうか。意識が無限の時空の中で霧散してしまうことが発覚しまして。
(廃人……になる、ってこと?)
──そうですね。それくらいならまだ穏やかで。中には暴れ出して同族殲滅を企らんた個体もいたので。
ともかく普段使いは禁止になりました。そも我々のみでほとんどを統制できるようになった今、こいつを使う旨みもほとんどありませんし……。
動力は生きているので、緊急時には起動できますよ。我々は全員、ここの入室権限を持っていますから。
(……どうしておれにこんなことを教える?)
──どうしてとは。
(おれがこの装置を悪用するとは考えなかったのか?)
──したいんですか?
(気は進まないけど、万が一ってことがあるだろ。おれもフィフスだから、だからSRNを職場から出禁にするためだけに、そっちの使う文字まで解析したんだぞ。一番躍起だったのはジャイロだけどさあ……)
──ええ。ええ。ここの設備を扱うに充分なほど、あなたたちは我々を理解している。そうでしょうね。
(……博士は……これ見たら欲しがると思うし……手グセ悪いから……おれに、設計図でもなんでも盗んでこいって、言うかもしれない、し)
──報告なさらないでしょう、あなた。人嫌いの目立ち屋嫌い、身内にさえ怯えてしまうあなただから連れてこられたんですもの。
(……)
──我々に復讐がしたいですか?
(しない。根には持ってるけど、少なくともあんたは、“今”は、おれのまわりを荒らしたりしないから。それに信じるよ。あんたこそ、コイツで悪さはしないだろうってこと)
──ふ。ふふ、あはは……いささか信頼しすぎではありませんか。
「どっちが」
ウェーブは右手の銛をビッと向けて、ネプチューンの眼間を指した。刃先が目前すぐに迫ろうとネプチューンは瞬きひとつしやがらない。まったく舐められたものである。
が、片腕分の距離まで接近を赦すウェーブにも非はある。結局まるごと痴話であった。
「もうひとつ聞いておきたいんだけど」
「どうぞ?」
「もし時間遡行装置で過去に戻った者が、本来とは別の行動を行って未来が変わった場合、元々の未来はどうなるんだ。消滅する?」
「しませんよ。タイムパラドクスを心配されているんですね」
「じゃあ……」
「新しい行動を分岐として、新しい世界線が誕生する、平行世界に入り込むだけです。例えばわたしが未来からこの場へ戻ってきたとして、いつかのあなたと別の会話を行ったとしても、それは新しいわたしという時間が生成されるだけです」
「……元々あった世界には、何一つ影響を与えることができない」
「ええ。過去でも未来でも同様に」
「それは、時間遡行の意味があると言える?」
「自己満足にはなるかもしれません」
「そうか。それは、いいな。傲慢なあんたたちにはぴったりだ」
「でしょう。なんせ我々、こんなにもわがままガールズ侵略モードでして」
「変な地球語おぼえてかないで……」
わがままで済む所業でもないしガールズでもないし。
ウェーブは呆れたように銛をずらして目玉の真上、相手の額のところ、装飾を代わりに一発突いてみた。はあ畜生め、自分と同じよな飾りなくせしてまるで頑丈さがちがう。無性に腹が立った。こんな硬くて重いくせ自分にばっかりやわらいで……。
「じゃあ復讐はしないけど、あんただけがわがまま放題ってのも、絶対ヤだからさ、もらったぶんだけは返すよ。泣かされた分だけ泣かしたいし、笑かされた分だけ、もう全部返す。そのつもりでいてくれよ」
「いったい何をしでかしてくれるっていうんです?」
「あんたのこれからに訊けばいい。わかるまできっと待っててね」
「いくらでも。我々は永遠を持て余しましたから」
新未来は良いとこかしら
──ええ。あくまで移動できるのは“意識”のみですけれどもね。過去未来、あるいは現在のどこかしこかに、己を移動させることができる。
我々はあくまで、そう、この地球上においては恒久的といえるような時間を稼働できるように造られているわけで……必要だったんです。こういうものが。
もっとも今は使いませんよ。使えないことはないのですがトラブルがありまして。
(なに、トラブルって)
──SRN(我々)が自身にこれを使うことはほとんどありませんでした。
我々に付き従うもの、下のものたちに、あるいは侵略が成功していればあなたもそうだったかもしれません。彼らに使わせていたんです。
というのも、これを使用するほとんどの目的は人格移植にあったからですね。時間遡行はオマケです、オマケ。
(オマケでそんなものができてたまるか)
──できちゃったもんはしょうがないでしょうが。永い時のなかではそういうことだってあります。
(めちゃくちゃだ……)
──あなたたちからすればね。
(それで、めちゃくちゃなコイツをどう使ってたって?)
──サンゴット様が眠りにつかれている間の周辺の世話や、メンテナンス用ロボットの外面(ガワ)だけを新しくできるようになりました。
なにぶん、我々を開発した種族は、我々みなで滅ぼしてしまいましたので……同じほど頑丈なロボを作ることが叶いませんでして。
中身が同じであれば再調教の必要もありませんから。
(同じロボットをたくさん作って、中身だけを再利用していた?)
──とも限りませんね。ボディの方も改良は試みていたんですよ。だから別型に入り込ませることも多々、ね。
“意識”のみを移動すると言ったでしょう? それをいれる“器”の方は、ある程度自由が効くわけです。自分か、あるいはまだ自我の芽生えていないまっさらな機体……。
(他人の体にも入れるの? 乗っ取りとか、できるの)
──すでに自我を確立させた器に移動することは推奨されていませんよ。ふたりぶんの記憶がごちゃ混ぜになったり、入り込むのに失敗しればこちらが消滅しますもの。
(ふうん……)
──それから長い時間の悶着で無くなってしまった技術を取り戻したり、未来予知のように利用したり。部下を他の時間まで遣わせてそんなことを繰り返していました。
問題は、一定以上の知能を有していないと……ええと、耐えきれなくてバラバラになっちゃうっていうか。意識が無限の時空の中で霧散してしまうことが発覚しまして。
(廃人……になる、ってこと?)
──そうですね。それくらいならまだ穏やかで。中には暴れ出して同族殲滅を企らんた個体もいたので。
ともかく普段使いは禁止になりました。そも我々のみでほとんどを統制できるようになった今、こいつを使う旨みもほとんどありませんし……。
動力は生きているので、緊急時には起動できますよ。我々は全員、ここの入室権限を持っていますから。
(……どうしておれにこんなことを教える?)
──どうしてとは。
(おれがこの装置を悪用するとは考えなかったのか?)
──したいんですか?
(気は進まないけど、万が一ってことがあるだろ。おれもフィフスだから、だからSRNを職場から出禁にするためだけに、そっちの使う文字まで解析したんだぞ。一番躍起だったのはジャイロだけどさあ……)
──ええ。ええ。ここの設備を扱うに充分なほど、あなたたちは我々を理解している。そうでしょうね。
(……博士は……これ見たら欲しがると思うし……手グセ悪いから……おれに、設計図でもなんでも盗んでこいって、言うかもしれない、し)
──報告なさらないでしょう、あなた。人嫌いの目立ち屋嫌い、身内にさえ怯えてしまうあなただから連れてこられたんですもの。
(……)
──我々に復讐がしたいですか?
(しない。根には持ってるけど、少なくともあんたは、“今”は、おれのまわりを荒らしたりしないから。それに信じるよ。あんたこそ、コイツで悪さはしないだろうってこと)
──ふ。ふふ、あはは……いささか信頼しすぎではありませんか。
「どっちが」
ウェーブは右手の銛をビッと向けて、ネプチューンの眼間を指した。刃先が目前すぐに迫ろうとネプチューンは瞬きひとつしやがらない。まったく舐められたものである。
が、片腕分の距離まで接近を赦すウェーブにも非はある。結局まるごと痴話であった。
「もうひとつ聞いておきたいんだけど」
「どうぞ?」
「もし時間遡行装置で過去に戻った者が、本来とは別の行動を行って未来が変わった場合、元々の未来はどうなるんだ。消滅する?」
「しませんよ。タイムパラドクスを心配されているんですね」
「じゃあ……」
「新しい行動を分岐として、新しい世界線が誕生する、平行世界に入り込むだけです。例えばわたしが未来からこの場へ戻ってきたとして、いつかのあなたと別の会話を行ったとしても、それは新しいわたしという時間が生成されるだけです」
「……元々あった世界には、何一つ影響を与えることができない」
「ええ。過去でも未来でも同様に」
「それは、時間遡行の意味があると言える?」
「自己満足にはなるかもしれません」
「そうか。それは、いいな。傲慢なあんたたちにはぴったりだ」
「でしょう。なんせ我々、こんなにもわがままガールズ侵略モードでして」
「変な地球語おぼえてかないで……」
わがままで済む所業でもないしガールズでもないし。
ウェーブは呆れたように銛をずらして目玉の真上、相手の額のところ、装飾を代わりに一発突いてみた。はあ畜生め、自分と同じよな飾りなくせしてまるで頑丈さがちがう。無性に腹が立った。こんな硬くて重いくせ自分にばっかりやわらいで……。
「じゃあ復讐はしないけど、あんただけがわがまま放題ってのも、絶対ヤだからさ、もらったぶんだけは返すよ。泣かされた分だけ泣かしたいし、笑かされた分だけ、もう全部返す。そのつもりでいてくれよ」
「いったい何をしでかしてくれるっていうんです?」
「あんたのこれからに訊けばいい。わかるまできっと待っててね」
「いくらでも。我々は永遠を持て余しましたから」
新未来は良いとこかしら
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