Find a Way

◼︎前戯4

 眩しいから、と言って戯れの最中に照明の灯りを消してしまった榊。
 窓の外の月光や街灯の明かりも届かない。一級遮光カーテンで守られた寝室は真っ暗だ。

 まだまだ榊の身体を視覚で味わいたかった良太は無論、物足りるものではない。
「まだ見たいんですけど」
 もっとじっくり彼の表情や艶かしい喉、胸、愛らしい乳首、下腹部の灰色の茂み。やや赤みの強い男性のしるし、太腿の肉感、すらりと伸びた脚、それらの形や色彩や動作を観察したかったのに。
「さっき見ただろ」
「足りません」
 暗闇で聞く良太の声色には頑として譲らない気迫がこもっていた。
 まったくこんな面白味のない男の身体なんか見て何が楽しいんだか、と榊は呆れる。そういえば先ほども「きれいですね」とか言っていたような気がする。やはりこいつは美醜の基準がおかしいのではないかと疑わざるを得ない。
 このつまらない肉体を目の当たりにすればいくら執着心の強いαでも冷めるかもな、と覚悟していたのだが今のところ良太にそうした気配は見られない。女性のものとも思えぬ貧相な胸を吸ったり撫でたり、その最中にも良太のものは萎えもせずに起立していたのだ。流石に心配になる。
「……良太、くんはさあ」
「はい」
「自分の感覚がちょっとおかしいと思ったことないの」
 おかしいって何すか、と良太は首を傾げる。
「普通こんな身体見て綺麗だと思わないよ。誰も。まあそれなりに健康的ではあるんだろうけど」
「好きな人の裸って感動するものじゃないですか。しません?」
「するよ。でもやっぱり、それが原因なんだろうなあ」
「原因?」
「よく言うだろ、あばたもえくぼだとか惚れた欲目って。あのなあ、一般的に私の外見なんて綺麗でも何でもないんだぞ、客観的に見てみろよ」
「電気消されたから見えませんけど。ていうか前も言いましたけど、榊さんて自分の魅力に気付いてないっすよね」
「無いもんに気付けるかよ」
「俺は榊さんの外見だけが好きなわけじゃないけど、でも、榊さんは綺麗ですよ。格好いいし……」
 それに可愛いし、と良太は褒める。褒めながら、静々と手を這わせて榊の臍のあたりを撫でる。そうしてそのまま男根の付け根の下生えまで行き着く。ここの色かたちも、もっと見たかったなと残念でならない。
「触りますよ?」
 と一応断りを入れてから茂みを越えて、男根の付け根から先端へと向かいなぞってゆく。
 自分のものはまだいきり立ったままだが、彼のものは平生へいぜいの落ち着きを取り戻してしまったようだ。それでも先の敏感なところへ到達してから丹念に刺激し続けると、ひくり、と竿が跳ねてふたたび力を取り戻しつつある。口唇で性器を愛撫するかどうか迷っていたが、この闇の中で彼のものを口に含んだら歯が当たって傷つけてしまうかもしれない。ならば控えるべきだろう。それならそれで、したいことなど沢山あるのだから良太は何も困らない。
 榊のものに血液が満ち興奮の高まりを手触りで確かめ、自らの茎と一緒に右手で握り込んで上下に扱く。互いの陰茎の峰からは透明な液体が溢れ、わずかな隙間を満たしてゆく。
 追い立てられるようにして榊もまた二人の重なった部分に手を添える。さらなる性感を求めて自ら腰を動かし、一回り大きく固い良太の男根に擦り付けて快楽を貪る。
 真っ暗な空間にどちらの発するものとも判別できない荒い吐息や微かな呻き、肉体と粘液の合わさる淫靡な音が絶え間なく発生し続ける。
 視覚が効かないせいか、良太は自分と榊と闇との境界が曖昧になって、実体が分からなくなってしまいそうな錯覚に襲われた。これだと榊さんが薄まって勿体無いじゃないか、と不安になる。
 好きな人と一つに溶けて混ざり合いたいなんて言う者もあるけれど、愛おしい相手ははっきり存在していた方がいい。


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