Find a Way
◼︎ 前戯 1
セックス保留のまま前戯のみをすることになった良太と榊。
本番をしないなら一体、何の前の戯れなのか。疑問はあるとして、とにかく榊がその気になったことだけは確かであった。
良太は意外にも喜び極まって榊に飛び付いたりせずに、大きな身体に乙女のような恥じらいを含ませてもじもじと揺すり、
「俺、下手かもしんないです」
と上目遣いで榊に不安を訴えた。
若干キモい、と思う榊だった。こんな湿り気を帯びた物怖じした態度ではなく、情熱を纏い堂々と正面から挑むような気迫こそ良太の可愛らしさだというのに。こいつは自分の魅力がわかってない。
榊は二つある掛け布団と枕を良太側に押しやり、そのためのスペースを開けた。これからする行為で寝具が汚れるのは避けたい。カバーの予備はあるが、なるべく汚さないに越したことはない。睡眠は清潔な環境で取りたいのだ。
「こっちへ来い」
と軽くマットレスを叩いて示す。良太が失礼しますとかなんとか言って遠慮がちに乗ってくる。まずは軽く頬にキスして、それから押し倒す。ライトグレーのシーツの上。普段自分が寝ているそこに初々しい風情で目を丸くし、横たわっている良太がなんともいじらしい。
眼鏡を外す前によく顔を見ておこう、と榊は身を起こして良太の腰に馬乗りになり、上から眺める。それから少し前屈みになって良太の髪を梳き、眉をなぞり、頬を唇を撫で、耳の感触を確かめたりする。次に頭部を抱きしめるようにして覆い被さったかと思うと、良太の髪の毛をわしゃわしゃとかき回すようにしながら、
「ふふ、ははは、良太は可愛いな!」
と笑い始めた。
なされるがままになっていた良太は堪らず声を上げた。
「なんか俺のこと犬扱いしてません?」
「よーしよしよし」
「やっぱり!」
そう拗ねるなよ、と言いながら榊はナイトテーブルに向かってぞんざいに眼鏡を放った。やや乱暴になってしまったその仕草に、気分の高揚を自覚する。
視界はぼやけたが、すぐ目の前の黒髪は依然としてはっきりと榊の目に映っていた。艶と弾力のある黒髪の隙間に鼻先を寄せ、シャンプーの香りの残る空間をゆっくりと深く吸い込む。耳の裏を経由して首筋まで体臭を堪能し唇を這わせるが、鎖骨に到達する前に丸く開いた部屋着の襟元に行き当たってしまった。
榊は無理に良太の衣服を剥ぎ取ろうとするでもなく、胸の真ん中に静かに耳をあてて心臓の鼓動を聞く。ここに頬を擦り付けてうんと甘えてみたい、と思っていたのだ。
今がまさにその時なのだが、あからさまにそうした振る舞いをすることに対して、まだ自分自身と決着をつけていない。そんなことできるか!と、誘惑に打ち勝とうとする心がある。
我慢強いというか負けず嫌いというか、要するに臆病で不器用なのだ、と榊は簡単に自己分析してみた。
セックス保留のまま前戯のみをすることになった良太と榊。
本番をしないなら一体、何の前の戯れなのか。疑問はあるとして、とにかく榊がその気になったことだけは確かであった。
良太は意外にも喜び極まって榊に飛び付いたりせずに、大きな身体に乙女のような恥じらいを含ませてもじもじと揺すり、
「俺、下手かもしんないです」
と上目遣いで榊に不安を訴えた。
若干キモい、と思う榊だった。こんな湿り気を帯びた物怖じした態度ではなく、情熱を纏い堂々と正面から挑むような気迫こそ良太の可愛らしさだというのに。こいつは自分の魅力がわかってない。
榊は二つある掛け布団と枕を良太側に押しやり、そのためのスペースを開けた。これからする行為で寝具が汚れるのは避けたい。カバーの予備はあるが、なるべく汚さないに越したことはない。睡眠は清潔な環境で取りたいのだ。
「こっちへ来い」
と軽くマットレスを叩いて示す。良太が失礼しますとかなんとか言って遠慮がちに乗ってくる。まずは軽く頬にキスして、それから押し倒す。ライトグレーのシーツの上。普段自分が寝ているそこに初々しい風情で目を丸くし、横たわっている良太がなんともいじらしい。
眼鏡を外す前によく顔を見ておこう、と榊は身を起こして良太の腰に馬乗りになり、上から眺める。それから少し前屈みになって良太の髪を梳き、眉をなぞり、頬を唇を撫で、耳の感触を確かめたりする。次に頭部を抱きしめるようにして覆い被さったかと思うと、良太の髪の毛をわしゃわしゃとかき回すようにしながら、
「ふふ、ははは、良太は可愛いな!」
と笑い始めた。
なされるがままになっていた良太は堪らず声を上げた。
「なんか俺のこと犬扱いしてません?」
「よーしよしよし」
「やっぱり!」
そう拗ねるなよ、と言いながら榊はナイトテーブルに向かってぞんざいに眼鏡を放った。やや乱暴になってしまったその仕草に、気分の高揚を自覚する。
視界はぼやけたが、すぐ目の前の黒髪は依然としてはっきりと榊の目に映っていた。艶と弾力のある黒髪の隙間に鼻先を寄せ、シャンプーの香りの残る空間をゆっくりと深く吸い込む。耳の裏を経由して首筋まで体臭を堪能し唇を這わせるが、鎖骨に到達する前に丸く開いた部屋着の襟元に行き当たってしまった。
榊は無理に良太の衣服を剥ぎ取ろうとするでもなく、胸の真ん中に静かに耳をあてて心臓の鼓動を聞く。ここに頬を擦り付けてうんと甘えてみたい、と思っていたのだ。
今がまさにその時なのだが、あからさまにそうした振る舞いをすることに対して、まだ自分自身と決着をつけていない。そんなことできるか!と、誘惑に打ち勝とうとする心がある。
我慢強いというか負けず嫌いというか、要するに臆病で不器用なのだ、と榊は簡単に自己分析してみた。