Find a Way
◼︎試させて 2
「榊さんとそういうことするなら、綺麗でいたいんです!」
なんて乙女みたいなことを言い出した良太が面白くて、榊は軽く噴き出してしまった。
「じゃ、洗面所こっち。でもさすがに来客用の歯ブラシは無いから、マウスウォッシュでもなんでも勝手に使っていいよ」
お先にどうぞ、と促された良太は初めて榊の部屋の洗面室を使わせてもらうことになった。洗面所兼脱衣場、洗面台の横にはドラム型の洗濯乾燥機。
洗面台は至って清潔だ。鏡には曇りひとつない。蛇口の金属だって新品のように光沢がある。
ボトルタイプのマウスウォッシュが洗面台の棚に置いてあった。
使っていい、と榊に許可されたことを反芻し、恐る恐るキャップを外す。小さなキャップにミントが香る透明な液体を満たしていく。
使い方これでいいんだよな、普通。
榊さんが毎日、口をつけているであろうこれを俺が使うってことは、間接キスというやつでは?
許されるのかそんなことが!
けどこの後、榊さん本体とキスするわけだし──
ヤバい想像だけで勃ちそうがんばれ俺の理性超がんばれ。
念入りに口を濯いでキャップを水で洗い、ティッシュできれいに水滴を拭き取って元に戻す。鏡で身だしなみをチェックし、整えた。自分がどこか汚してしまってはいないか、辺りを確認してから洗面所を出る。
榊はソファの真ん中、背もたれに両腕をかけて泰然と座っていた。良太が、ありがとうございました、と声をかけると、
「じゃあここで待ってて」
と入れ違いで洗面所に入ってゆく。
良太はいつもと同じく端っこに腰掛けた。ジーンズの膝のあたりに置いた両手を握りしめてみたり開いたり、擦ってみたりと落ち着かない。なんだかこれから抱かれる側の生娘にでもなったような気分だ。抱きたいのはこっちだというのに。
「お待たせ、じゃあちょっと試させてもらおうかな」
と榊が良太の隣に──ではなく、膝を跨いで馬乗りになった。
まさかいきなりこの体勢でくるとは思わず、完全に虚をつかれた良太の血圧と体温は急上昇だ。
「重いか?」
「いえ、大丈夫です」
顔面を紅潮させ汗ばむ良太とは反対に、榊は用意周到に歯磨きのみならず洗顔も済ませたのであろう、肌質もすっきりとしている。
「これからすること、嫌ならすぐ止めるから。良太くんも何か違うなと思ったら教えて」
「はい」
身長は良太の方が高いとはいえ、今は膝に乗った相手の方が見下す形となっている。良太は従順な飼い犬が御主人様から褒美を与えられるのを待つように榊を仰ぐ。
榊の両腕が良太の上腕を超えて背へまわされる。良太の右耳と榊の右耳がくっつくような格好になって抱かれ、互いの胸と腹が密着する。
「どうだ、嫌な感じはあるか?」
穏やかな発声が耳朶をくすぐる。低く柔らかい、優美で男性的な声色は熟練の役者のようだ。
「嫌じゃない、です」
「それはよかった」
「榊さんは?」
私も同じ、と答えた榊は背に回した右手を良太の頭の方に移動させ、まるで幼児をあやすように、ぽんぽんと一定のリズムで撫でて愛でる。そうしながら、
「可愛いな」
などと言うのだ。
頭を撫でられて嬉しいものの、子供扱いにいささか気を曲げたらしい良太は、大人しく待機していた両腕を動かし、力強く榊の上半身を抱きしめた。銀色の長髪を結えてある後頭部に片手を添え、軽く固定すると頬のすぐ横にある榊の首筋に鼻先と唇を押し当てた。耳元の体臭を深く吸い込み、さらさらとしたなめらかな皮膚の感触や、憧れの銀髪の色彩と手触りを堪能する。
少しばかりの間良太の好きにさせておいた榊だったが、この段階は嫌悪感がないと判断し、次へと移行することにした。
試したいことは抱擁のみではない。
「榊さんとそういうことするなら、綺麗でいたいんです!」
なんて乙女みたいなことを言い出した良太が面白くて、榊は軽く噴き出してしまった。
「じゃ、洗面所こっち。でもさすがに来客用の歯ブラシは無いから、マウスウォッシュでもなんでも勝手に使っていいよ」
お先にどうぞ、と促された良太は初めて榊の部屋の洗面室を使わせてもらうことになった。洗面所兼脱衣場、洗面台の横にはドラム型の洗濯乾燥機。
洗面台は至って清潔だ。鏡には曇りひとつない。蛇口の金属だって新品のように光沢がある。
ボトルタイプのマウスウォッシュが洗面台の棚に置いてあった。
使っていい、と榊に許可されたことを反芻し、恐る恐るキャップを外す。小さなキャップにミントが香る透明な液体を満たしていく。
使い方これでいいんだよな、普通。
榊さんが毎日、口をつけているであろうこれを俺が使うってことは、間接キスというやつでは?
許されるのかそんなことが!
けどこの後、榊さん本体とキスするわけだし──
ヤバい想像だけで勃ちそうがんばれ俺の理性超がんばれ。
念入りに口を濯いでキャップを水で洗い、ティッシュできれいに水滴を拭き取って元に戻す。鏡で身だしなみをチェックし、整えた。自分がどこか汚してしまってはいないか、辺りを確認してから洗面所を出る。
榊はソファの真ん中、背もたれに両腕をかけて泰然と座っていた。良太が、ありがとうございました、と声をかけると、
「じゃあここで待ってて」
と入れ違いで洗面所に入ってゆく。
良太はいつもと同じく端っこに腰掛けた。ジーンズの膝のあたりに置いた両手を握りしめてみたり開いたり、擦ってみたりと落ち着かない。なんだかこれから抱かれる側の生娘にでもなったような気分だ。抱きたいのはこっちだというのに。
「お待たせ、じゃあちょっと試させてもらおうかな」
と榊が良太の隣に──ではなく、膝を跨いで馬乗りになった。
まさかいきなりこの体勢でくるとは思わず、完全に虚をつかれた良太の血圧と体温は急上昇だ。
「重いか?」
「いえ、大丈夫です」
顔面を紅潮させ汗ばむ良太とは反対に、榊は用意周到に歯磨きのみならず洗顔も済ませたのであろう、肌質もすっきりとしている。
「これからすること、嫌ならすぐ止めるから。良太くんも何か違うなと思ったら教えて」
「はい」
身長は良太の方が高いとはいえ、今は膝に乗った相手の方が見下す形となっている。良太は従順な飼い犬が御主人様から褒美を与えられるのを待つように榊を仰ぐ。
榊の両腕が良太の上腕を超えて背へまわされる。良太の右耳と榊の右耳がくっつくような格好になって抱かれ、互いの胸と腹が密着する。
「どうだ、嫌な感じはあるか?」
穏やかな発声が耳朶をくすぐる。低く柔らかい、優美で男性的な声色は熟練の役者のようだ。
「嫌じゃない、です」
「それはよかった」
「榊さんは?」
私も同じ、と答えた榊は背に回した右手を良太の頭の方に移動させ、まるで幼児をあやすように、ぽんぽんと一定のリズムで撫でて愛でる。そうしながら、
「可愛いな」
などと言うのだ。
頭を撫でられて嬉しいものの、子供扱いにいささか気を曲げたらしい良太は、大人しく待機していた両腕を動かし、力強く榊の上半身を抱きしめた。銀色の長髪を結えてある後頭部に片手を添え、軽く固定すると頬のすぐ横にある榊の首筋に鼻先と唇を押し当てた。耳元の体臭を深く吸い込み、さらさらとしたなめらかな皮膚の感触や、憧れの銀髪の色彩と手触りを堪能する。
少しばかりの間良太の好きにさせておいた榊だったが、この段階は嫌悪感がないと判断し、次へと移行することにした。
試したいことは抱擁のみではない。