Find a Way

◼︎ いよいよ……の前に

 〔コーポ館花〕のある 賀萼町ががくちょうから桧村自動車のある 芳羅町かぐらちょうへ至る交差点。
 横断歩道前でバイクを停車させた良太は、紺色の夜空に浮かぶ赤信号を眺めて少し先のことを考えていた。
 
 榊さんは俺がΩとつがいになるまで、っていう条件で付き合ってくれてるけど──
 万が一、発情したΩとヤっちまったとして必ず番になるとは限らないよな?
 Ωってのは首輪でうなじをガードしてるから、その場合噛んでも番になってないんだからセーフ!
 榊さんと別れる必要はない。
 でもジョーが言うにはΩってのは性欲が強いから、誰にでも股開いてるかもしれねえんだよな、ってことは色んな病気にかかってる危険性があるんだ。
 もしそんなΩに病気を移されて、俺を介して榊さんに感染しちまったら──
 それは絶対に避けるべきだ!
 検査だけじゃなくて予防も考えねえとな、検査のとき医者に聞いてみるか。
 
 良太は帰宅して早速、榊からのメールに目を通した。返信不要と書かれてあるのでそれに従う。
 スマホの画面を位置情報共有アプリに切り替え、榊がアパートに留まっていることを確認する。今頃きっと入浴をして身を清めていることだろう。
 良太は今夜初めて見た、榊の酔い姿を思い出す。我ながらよく正気を保てたと感心するほど、彼は艶やかだった。
 しかし結構酔っていたようだが大丈夫だろうか。気分が悪くなっていたりしないか、入浴は普段通り済ませることができたか、髪の毛をちゃんと乾かすことができたか、下着や寝間着は?歯磨きは?トイレは?ベッドまで歩けるか?性処理は必要か?明日の朝起きられるか?気になることは山ほどある。
 もし俺がずっと榊さんのそばにいることが出来たなら全部やってあげるのに、としばし彼への世話を想像する。脳内の榊は過剰な奉仕を喜んで受け入れるが、やはり所詮は妄念の産物で、エロ漫画みたいに都合がいい。
 こんなことしてる場合じゃない、と良太は欲望の虚像を振り払い、現実にやらなくてはならないことに取り掛かった。
 検査を受ける病院の検索だ。
 これまで泌尿器科の世話になどなったこともないので、調べるだけでもなんだか緊張してしまう。雪城ゆきしろ地区にあるメンズクリニックの紹介文に注目した。

 性感染症検査、HIV予防薬処方、ワクチン接種、各種相談……当院は男性型βとαのお客様のみを対象としており……

 よしここなら、とあたりをつける。幸いネットでの予約受付も可能であったので、次の水曜日、空いている時間に予約を入れた。連休前には結果がわかるだろう。

 互いに健康であることが証明されたならいよいよ──!

 と胸を高鳴らせる良太だった。

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