Find a Way
◼︎ α×βは異種間恋愛 1
御磨花市、花園地区の芳羅町 にある居酒屋〔葵〕。
桧村自動車からほど近いこの小さな店の奥まった座敷に、桧村良太と桜庭譲二の姿があった。
まずは彼らの定番のビール、唐揚げ、枝豆、冷奴が卓に並ぶ。
「おめでとうってやつだ」
と言って桜庭はジョッキを軽く掲げてみせた。
良太は榊の恋人となったその日のうちに、喜び勇んで幼馴染の桜庭へと報告していたのだった。
アイツ妄想しすぎてとうとう頭がイカれたか?と心配になった桜庭であったが、麗子に聞くところによるとどうも本当に付き合っているらしい。
「今日は俺が奢ってやっからよ」
桜庭は飲み干された良太のジョッキにピッチャーでビールを継ぎ足してやった。
「で、榊さんとはどうよ?つってもまだ付き合って十日ぐらいなんだっけ」
「ああ、鳥居のほうとか、月輪の鈴鬼さんの店とか行ってるよ。つか今日行ったし、月輪」
「デートかぁ」
「デートっつうか、榊さんちのベッドとかソファとかの買い物。二人で使うやつ選んでる」
良太は幸せそうにふやけた顔をした。
「ふーん、じゃマジで付き合ってんのな、妄想じゃなくて」
「現実だっつの。番号も教えてもらったし、アパートにも行ってるし」
「えもう部屋とか行ってんの?」
「うん」
「もうやってるってこと?」
「やってねーし」
我慢してるし!と良太は強調した。
「俺も近々榊さんに挨拶しときたいんだけど。あ、そうだ、俺と絵美とそっち二人であそこ行かね?アキガレ!」
桜庭のいう〔アキガレ〕とはバイク好きの店長が営むライダーズカフェ・アキラガレージのことで、御磨花市から離れた湾岸地区にある店だ。
良太は、今日初めて自分のバイクの後部に乗ってくれた榊の体の重みや、肩や胴に添えられた手の感触を思い出す。
「いいなそれ!俺あとで榊さんに話してみる」
すっかり乗り気な良太だ。
バイクのことやら仕事のことでひとしきり盛り上がって、桜庭の彼女、絵美の話に差し掛かった。
「……で、俺はαで絵美はβだから、やっぱΩのこと警戒しなきゃなんねえじゃん」
「ああ」
「だからさ、俺、絵美にちゃんと告る前に海外のΩ風俗行ったんだよ」
Ω風俗ぅ⁉︎と良太は思わず裏返った声をあげた。
確かにΩが発情期に分泌する性フェロモンはαを強力に誘引し、性行為と項 への噛みつきを促すため、好意のあるなしに関わらず襲ってしまう危険性が高く、警戒する必要がある。
もしも恋人やパートナー、そうでなくても家族や仲間と一緒にいるタイミングでΩの性フェロモンに狂ってしまったらと思うと肝が冷える。
だがそれが海外の風俗ととどう結びつくのか、良太にはよく分からない。
「なんで?っていうか一昨年、海外旅行いったのそれが目的だったのかよ」
「ああ。いくら口先でフェロモンに負けねえとか言ってても、敵を知らなきゃ対策もできねえからな」
「対策?」
「Ωの発情期がどんだけ恐ろしいもんか体験しに行った。ひょっとしたら、俺なら奴らのフェロモンに理性と根性で勝てるかもしれねえって、そう思ったんだけど──」
御磨花市、花園地区の
桧村自動車からほど近いこの小さな店の奥まった座敷に、桧村良太と桜庭譲二の姿があった。
まずは彼らの定番のビール、唐揚げ、枝豆、冷奴が卓に並ぶ。
「おめでとうってやつだ」
と言って桜庭はジョッキを軽く掲げてみせた。
良太は榊の恋人となったその日のうちに、喜び勇んで幼馴染の桜庭へと報告していたのだった。
アイツ妄想しすぎてとうとう頭がイカれたか?と心配になった桜庭であったが、麗子に聞くところによるとどうも本当に付き合っているらしい。
「今日は俺が奢ってやっからよ」
桜庭は飲み干された良太のジョッキにピッチャーでビールを継ぎ足してやった。
「で、榊さんとはどうよ?つってもまだ付き合って十日ぐらいなんだっけ」
「ああ、鳥居のほうとか、月輪の鈴鬼さんの店とか行ってるよ。つか今日行ったし、月輪」
「デートかぁ」
「デートっつうか、榊さんちのベッドとかソファとかの買い物。二人で使うやつ選んでる」
良太は幸せそうにふやけた顔をした。
「ふーん、じゃマジで付き合ってんのな、妄想じゃなくて」
「現実だっつの。番号も教えてもらったし、アパートにも行ってるし」
「えもう部屋とか行ってんの?」
「うん」
「もうやってるってこと?」
「やってねーし」
我慢してるし!と良太は強調した。
「俺も近々榊さんに挨拶しときたいんだけど。あ、そうだ、俺と絵美とそっち二人であそこ行かね?アキガレ!」
桜庭のいう〔アキガレ〕とはバイク好きの店長が営むライダーズカフェ・アキラガレージのことで、御磨花市から離れた湾岸地区にある店だ。
良太は、今日初めて自分のバイクの後部に乗ってくれた榊の体の重みや、肩や胴に添えられた手の感触を思い出す。
「いいなそれ!俺あとで榊さんに話してみる」
すっかり乗り気な良太だ。
バイクのことやら仕事のことでひとしきり盛り上がって、桜庭の彼女、絵美の話に差し掛かった。
「……で、俺はαで絵美はβだから、やっぱΩのこと警戒しなきゃなんねえじゃん」
「ああ」
「だからさ、俺、絵美にちゃんと告る前に海外のΩ風俗行ったんだよ」
Ω風俗ぅ⁉︎と良太は思わず裏返った声をあげた。
確かにΩが発情期に分泌する性フェロモンはαを強力に誘引し、性行為と
もしも恋人やパートナー、そうでなくても家族や仲間と一緒にいるタイミングでΩの性フェロモンに狂ってしまったらと思うと肝が冷える。
だがそれが海外の風俗ととどう結びつくのか、良太にはよく分からない。
「なんで?っていうか一昨年、海外旅行いったのそれが目的だったのかよ」
「ああ。いくら口先でフェロモンに負けねえとか言ってても、敵を知らなきゃ対策もできねえからな」
「対策?」
「Ωの発情期がどんだけ恐ろしいもんか体験しに行った。ひょっとしたら、俺なら奴らのフェロモンに理性と根性で勝てるかもしれねえって、そう思ったんだけど──」