Find a Way
◼︎過去から現在へ
榊はそれからもしばらく氷川グランネストの中に住み、霜沢や北野とともに働いた。
働きながら、外へ出て生きるための仕事と住処を探した。
高額ともいえる慰謝料を手にしてはいたが、それだけで生涯生活していけるものではない。
だが未成年で身元保証人のいない榊を受け入れてくれる場所は、なかなか見つからなかった。霜沢や北野に保証人を頼むか、もしくは代行サービスの利用も考えたが、そもそも「親がいない」時点でもう難しい。身元不明のあやしい子供を雇ってくれる会社など無いに等しい。
だがこの問題も程なく解決する。
榊龍時の身元保証人を引き受けてくれる人物が現れたのである。
氷川三千緒 ──〔氷川グランネスト〕の創設者であり、御磨花市を中心とした県内外の経済に大きな影響力を持つ氷川グループ総帥の三男坊であった。
氷川が保証人になってくれたおかげでアパートを借り、働く場所もできた。
花園地区にである。
育った町、花園で再出発することを霜沢と北野に打ち明け、今までの礼を述べた。
送別会にはビルの中で出会った他の従業員も来てくれたので、柄にもなく榊は泣いたのだった。
こうして榊は「空白期間」を経て花園高校の定時制に入学した。
花高で麗子と出会い、他校と喧嘩し、勉学に励み、他の地区の不良達と連合を組んで半グレ組織を撃退したりした。
そこからはほぼ、良太の知っている花園高校の榊龍時だ。
「……というわけで、それなりに薄汚れちまってるが、私はやられる側は怖いし、嫌だし、ぶっ殺したくもなるわけ。私はβだ。Ωじゃないからαのやり方は受け入れられない。今はまだ保留にしとくけど、その辺を考えておいてくれ」
榊はそう言ってベッドから降りる。
ずっと正座していた良太の足は痺れて固まっていた。
βの自分はΩのようにαを受け入れることはできない、と宣言した榊に、良太は正座のまま言った。
「わかりました。俺、αとして榊さんとそういうことはしません。Ωの代わりになんか絶対しません。でも、男として恋人を抱きたいとか守りたいって気持ちはすごくあります。だから保留も我慢します。俺は榊さんとちゃんと付き合いたいんで。身体だけのセフレになりたいわけじゃないんで。大丈夫っす」
「そうか」
「言っときますけど、やりたくないって意味じゃないっすからね。めっちゃ、もう、やらしいこと考えてるんで」
「ふふふ、こわいこわい」
「あと、榊さんは全っ然汚れてないっすから!綺麗なんで、そこんとこヨロシク」
「うん?そう、かな……」
首を傾げる榊に、うんうん、と大きく頷いた良太だった。
榊は良太に手を貸して正座から解放してやると、そろそろ晩飯食べに行くか、と誘い二人揃ってアパートを後にした。
榊はそれからもしばらく氷川グランネストの中に住み、霜沢や北野とともに働いた。
働きながら、外へ出て生きるための仕事と住処を探した。
高額ともいえる慰謝料を手にしてはいたが、それだけで生涯生活していけるものではない。
だが未成年で身元保証人のいない榊を受け入れてくれる場所は、なかなか見つからなかった。霜沢や北野に保証人を頼むか、もしくは代行サービスの利用も考えたが、そもそも「親がいない」時点でもう難しい。身元不明のあやしい子供を雇ってくれる会社など無いに等しい。
だがこの問題も程なく解決する。
榊龍時の身元保証人を引き受けてくれる人物が現れたのである。
氷川
氷川が保証人になってくれたおかげでアパートを借り、働く場所もできた。
花園地区にである。
育った町、花園で再出発することを霜沢と北野に打ち明け、今までの礼を述べた。
送別会にはビルの中で出会った他の従業員も来てくれたので、柄にもなく榊は泣いたのだった。
こうして榊は「空白期間」を経て花園高校の定時制に入学した。
花高で麗子と出会い、他校と喧嘩し、勉学に励み、他の地区の不良達と連合を組んで半グレ組織を撃退したりした。
そこからはほぼ、良太の知っている花園高校の榊龍時だ。
「……というわけで、それなりに薄汚れちまってるが、私はやられる側は怖いし、嫌だし、ぶっ殺したくもなるわけ。私はβだ。Ωじゃないからαのやり方は受け入れられない。今はまだ保留にしとくけど、その辺を考えておいてくれ」
榊はそう言ってベッドから降りる。
ずっと正座していた良太の足は痺れて固まっていた。
βの自分はΩのようにαを受け入れることはできない、と宣言した榊に、良太は正座のまま言った。
「わかりました。俺、αとして榊さんとそういうことはしません。Ωの代わりになんか絶対しません。でも、男として恋人を抱きたいとか守りたいって気持ちはすごくあります。だから保留も我慢します。俺は榊さんとちゃんと付き合いたいんで。身体だけのセフレになりたいわけじゃないんで。大丈夫っす」
「そうか」
「言っときますけど、やりたくないって意味じゃないっすからね。めっちゃ、もう、やらしいこと考えてるんで」
「ふふふ、こわいこわい」
「あと、榊さんは全っ然汚れてないっすから!綺麗なんで、そこんとこヨロシク」
「うん?そう、かな……」
首を傾げる榊に、うんうん、と大きく頷いた良太だった。
榊は良太に手を貸して正座から解放してやると、そろそろ晩飯食べに行くか、と誘い二人揃ってアパートを後にした。