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甘い春の匂い

春風はそう遠くまで行っていなくて校門を抜けて少し大きな通りに出る頃歩道橋がある、その手前に居た。セーラーが揺れる小さな背中に声をかける。

火「春風っ…!」

足を止め、ゆっくりと振り返る。小さな顔には不釣り合いな大きな朱色の瞳が俺を捉え、目と目がゆっくりと合う。
腹の奥がキュッと締め付けられるそんな感じがした。

『火神くん…?』

小さな鳥のような楽器のような声で俺の名前を呼ぶ。我に返って、そっと1歩彼女に近づいた。

火「結構外暗いから、女子1人で帰るのは危ない
だろ
家まで送る」
『え!それでわざわざ追いかけてきてくれたん
ですか?
ありがとうございます』

でかい目がさらに大きく丸まったと思ったら、今度はにっこり笑ってる。なーんか、ころころ表情が変わっておもしろい奴だなって俺までつられて笑っちまう。

火「家までどのくらいなんだ?」
『実は結構近いんです!
学校から15分くらい、だからもうここからだ
と10分くらいかな』
火「そっか、そんな遠くないんだな」
『はい、だから全然気にしないでバスケ部の皆
さんと帰ってもいいんですよ?』
火「いや、せっかくだから送らせてくれ
俺のせいで遅くなったんだし」
『そんな、気にしないでください!
この時間に帰るの新鮮で…なんだかいつもの
通学路が違う道みたいで楽しいです!』

ほんと、表情がクルクル変わっておもしろい奴だよなぁ…。大人しそうな見た目だからちょっと緊張してたけど、初めて話すとは思えないほどに会話は弾んだ。
本が好きでよくわかんなかったけど難しいのをたくさん読んでること。帰宅部で俺たちみたいな感じに憧れてるらしいってこと。いつも後ろで俺の背中を見ててくれたこと___
全部がくすぐったくて、忘れたくなくて、俺は凄く真剣に彼女の話を聴いた。



꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈໒꒱


『あ、もうそこお家です』

白くて小さな教会みたいな家を指さす。なんか、春風っぽいなって思ってしまう可愛らしい家だ。

火「おう、ここか」
『わざわざありがとうございました
たくさんおしゃべり出来て楽しかったです』

ぺこりと頭を下げる。
もう少し話したかったな…って、なんか俺恥ずかしいこと考えてるか?『また、明日ね』小さく手を振る彼女が家に入ろうとするのを見送る。

火「なぁ、敬語じゃなくていいよ
あと…たまにでもいいから良かったら俺らの
練習とか試合とか、見に来いよ!」
『…っ、うん!!』

ずっとニコニコしてる奴だと思ってたけど、頷いた彼女は今日見た中で1番の笑顔だった。
毎日部活が俺の1番の楽しみで授業は寝てるか窓の外見てるかだったけど、俺は明日学校に行くのが少しだけ楽しみになった。



꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈໒꒱



春風と別れて家に帰ろうと歩いていると、ポケットの中のケータイがなった。

To:火神

【今すぐマジバに来い。】


From:キャプテン

今すぐ!?理由がないのが疑問だが何かあったのかもしれないし、とりあえず向かうとするか。少し駆け足で指定先のマジバを目指した。

火「あ、いたいた
っす、お疲れ様…です……って全員揃ってんじ
ゃねぇか!どうしたんだよ、ですか!」
日「おー、火神
呼び出して悪いな、まぁ座れよ」
火「うっす」

……。
誰も何も言わず、何故か沈黙が流れる。
コソコソと何か話していてこちらの様子を伺っているようなそんな感じがした。

小「日向、早く聴けよ!」
日「わーった!…ゴホンっ、火神
そ、その春風ちゃんとはどうだったんだ!」

火「え、どうだったって普通に家まで送っただけ
すけど」
全「おおおおお!!」

みんなそれぞれ前のめりにこちらに話しかけて来る。

小「だってめっちゃ可愛いじゃん!
色白いし、髪の毛サラサラでなんかお姫様み
たいじゃん!」
伊「黒子に聴いたら席も前後なんだろ?」
日「あんな可愛い子に明日も同じクラスで会える
ってことなんだよな!?」
黒「火神くん春風さんを怖がらせませんでしたか?」

それぞれがそれぞれにどんどん質問攻めしてくる。やっぱり春風って可愛いんだな、綺麗な顔してるもんな。……なんか腹の中がモヤッとする気がした。腹が減ってるのかもしれないと思いみんなからの質問背にハンバーガーを買いに席を立った。
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