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甘い春の匂い


雲1つない春の青空にうっすらと朱が混ざりだしたPM3:50。
遠い意識の先で心地よい音が聞こえる。

ペラ…ペラ……。

何か紙をめくるような、勉強なんか大嫌いで教科書も本も見たくねぇって思うのにこの音はなんつーか…好きだ。窓から射し込む日差しとそよ風にさらに深い眠りに_____ついたらダメだ!!

火「やべぇ!部活だ!!」

突っ伏していた机からガタンと音をたてて飛び起きる。後ろの席にぶつかりパサリと何か落ちた。
淡い朱色のカバーに包まれた文庫本だった。ちらりと中を見ると頭が痛くなるような細かい文字にそっと本を閉じ机に置いた。
急いで鞄を持って教室を出ようとすると、カツン…と小さな棒が足に当たる。後で戻しにこようととりあえずサッと拾い上げポケットにしまい教室を後にする。

火「さーせん!遅れた!…です!」
相「こんのバカ神が!遅刻よ!?」
小「にゃはは、火神〜。さてはお前寝てたな〜?」
火「え"!?」
福「ほっぺに腕の痕がついてるぞー?」
火「マジか!?」

慌てて掌で頬をこする。

相「まぁ、今日は各委員会の月1集会日で初回だか
らどこも時間がかかってるみたい。
みんな揃うまでフットワークと筋トレの予定
だから、火神くんもとっとと準備して合流し
てよね!」

「うっす」とカントクに返事をし、柔軟をする。
20分程経つとみんなが集まって来て通常の練習が始まる。
3on3のミニゲームに2回だけだけどゲームも出来た。遅刻してきた分、ちょっと不完全燃焼だけどバスケが出来るそれだけで今は楽しいんだよな。



꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈໒꒱



日「あっちー…今日もハードだったな」
小「俺もう、ヘトヘトだよ……」

みんなクタクタになって着替える。俺はもーちょい体動かしたかったけどな、なんて思いながら制服のズボンを取り出す。

カチャン___

小さな金属音。

伊「火神、何か落としたぞ?」
火「あ、わりぃ…すいません」

それは教室で拾ったあの小さな金色の棒だった。
細長い曲線を描いた金の棒にレースの糸がついていて金色のティーカップがついている。

土「お、綺麗なブックマーカーだな」
火「ブックマーカーっすか?これ、教室に落ちて
て、急いでたからとりあえず持ってきちまっ
たんすよね。」
黒「そのブックマーカー……あ」
火「黒子、誰のか知ってんのか?」
黒「同じクラスの春風さんのです
ボク、図書委員で一緒なんですが放課後教室
で無くしたと探していたのと特徴が似てます」
火「マジか!?悪いことしちまったな…」
伊「綺麗な物だし、大切にしてるだろうから明日
朝忘れずに返してあげないとな」

急いでたとはいえ、悪いことしちまったなとおもいながらブックマーカーを鞄にしまう。



꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈໒꒱



みんなで体育館を出て、玄関に向かう。
靴箱のところに1人女がいた。

黒「あ、春風さん」
『あ!黒子くん、部活終わりですか?
お疲れ様!』
黒「はい、ありがとうございます
火神くん、彼女が春風さんですよ」

背中辺りまでの緩いカールのかかった黒髪をハーフアップにして、淡い朱色のリボンでまとめている。色白で線の細い柔らかそうな小さな体をした人だ。

火「同じクラスの火神大我だ、よろしくな」
『春風琴乃です
火神くん、知ってますよ!まだ覚えて貰えて
ないかもしれないけど後ろの席なんです』

後ろの……。あの、難しそうな本が置いてた席か!こんな小さな奴が俺の後ろだったんだな。

『いつも後ろから大きな人だなぁって思って見
てたので。
あと、屋上から叫んだ時も大きくて綺麗な声
の人だなって思っていました!』
火「お、おう…ありがとう」

にこにこ微笑みながら話す姿がなんか、花みたいでなんか無防備で腹の中がムズムズする。

黒「火神くん、あれをお渡ししないと」
火「お、そうだ…これ、教室で拾ったんだ
探してたって聞いてごめんな?」

ブックマーカーを鞄から取り出して渡す。
パっと、表情が明るくなる。

『ありがとうございます!
大切なものだったので見つかって良かった』

ぺこりと頭を下げる。小さな体がますます小さくなる。
また明日ね、と手を振って小走りで出ていく。甘くて美味そうな甘い匂いがふわりと香る。

小「ちっちゃくて、かわいい子だなぁ〜」
日「清楚っつーか、女の子って感じだよな」
伊「結構夜も遅いけど、1人で帰して良かったの
か?」

先輩達がニヤニヤしながらこっちを見てくる。たしかにあんなちっせー女だったら夜は危ないよな。「だってよ」と黒子に話を振る。

黒「え、火神に言ってるんですよ?」

みんなが同時に頷く。
俺!?と驚きながらも、これは行く雰囲気なのか?と感じとって俺は春風を追いかけた。


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