“ 朝食 ”


小さな手を引いて歩いた先、一室の襖の前で立ち止まる。白い肌の手で襖を両サイドにスライドさせれば、中には数十名の刀剣男士が。そして開かれた襖の方へ数人が目を向け、「主！」「主様！」「詩桜！」と次々と呼べば

「おはよ(うございます)！」

と挨拶の声を出した。
当の主はにこやかな笑みを浮かべて

「おはよー。」

と少女らしい声色と話し方で返した。
他数名は食事を運んだりと何やら忙しいらしい。こちらに目を向けた一人、加州清光が主の方へと出向き、彼女の目線に合うよう身体を少しばかり縮こませた。

「詩桜おはよ。今日もよく眠れたー？ほら、おいで。」

隣にいる鶴丸に軽く目線を送りながら話し掛け、手を差し伸べた。彼女はその差し出された手を軽く頷きながら手を取ると連れるがままに歩き出した。
長机が数個並ぶ中、特に席は決まってないのか空いてる席へと案内すれば、座布団の上へポスンと座る。その後ろに加州が足を折り曲げて座れば手に持っている櫛と可愛らしいビー玉のような飾りが付いた髪ゴムを手に取ると彼女の髪に櫛を滑らせた。
彼女の見なりを整えるのが彼の仕事…と言うよりか率先して彼女の見なりを整えている。
桃色の髪をサイドに少量で結び、可愛い髪ゴムで手際良く結んでいく。

「でーきたっ。」

との声に仕上げたのか、今日の手際に自分でも納得してるのか軽く頷く。
そんな彼女はというと、髪型よりも今日の朝食はなんなのかと運ばれる料理をわくわくとしながら待っていた。

そうして数分経たずに一人一人目の前に朝食が並べられれば、「それじゃ…」との声に皆して、

「いただきます。」

と声を揃えればそれぞれが目の前に出された朝食を食べ始める。
尚、主はというと持ち方もままならず、手をグーにしたままフォークを持ち、目玉焼き等を刺して食べ始める。食べるに越したことはないので、その様子を周りの刀剣男士達が見守りながら朝食の時間は過ぎた。

「ごちそーさまでした！」

食べ終わった彼女が手をきちんと合わせ挨拶をすると、鶴丸が隣へと並び彼女の顔を持ち上げこちらに向けさせると、持っている布で口周りを拭う。幼い彼女は食べ終わると口周りが酷く汚い。それを毎回食事終わりに近侍の鶴丸がする仕事。

これがこの本丸のいつもの朝食風景。