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美しいもの 第3章

第3章
◯川グッズを買い終え幸せな笑みで店から出てくる恋が私を見て「さてどこか寄るんだっけ?」と言ってくれる。私は「ちょっときになるところがあって」と寄りたいところを指差す。珍しいとでもいうような顔で「なにこれ?」という恋に私は「き、気になって…」としか言えなかった。今の自分がなにに興味がある人物で通ってきたのかどう恋と友達きっかけになったのかさえわからないのでそれしか言えない。「いいよ入ろ入ろ〜」と◯川グッズを大切に鞄に入れた後手を引っ張ってくれる。まさかとは思ったんだ。まさか変わっているなんてそんなことあるはずないと。私が推していた『小川 綾(りょう)くん』がいないわけないと。しかしそこで歌っていたのは知らないメンバー。客も数人しかいない小さなステージの目の前で手拍子を叩く。私は綾くんを探す。顔がある程度整っていて前髪で目元らへんまで隠れている客には無口だがメンバーと話すときだけに見せる笑顔の素敵な人。ダンスがうまく人見知り激しいのか、客と目線を合わせるとたまにはにかんでこれからもよろしくねと握手会での手が温かい人。そんなたまにしか見せない笑顔にファンも多く、笑顔が見れた時は運が良かったとでも思えるようなそんな人物だった彼を私はこの小さなステージ上に立つ彼らの中から探した。失礼だがどちらかというとB専なのかしかし歌が好きで歌っている彼らの歌は前よりは劣っていた。

私の肩を揺さぶって「なに気になる人見つけたの?」と恋が耳元で囁く。私は「…うん。」と一言。それに驚いたように「え、どれ!?」と大声で聞く恋にさすがに口元に手を当てて「シー!」と見せた。驚きのあまり恋が目を凝視してたった5人だが端から端までじっくり見る。しかし分からなかったのかまたボソッと「なにがいいの?」と囁く。私は後で話すからと答えチェキ会になるまで待った。彼はダンスをしていなかった。チェキ会で少し話せる機会に私はいつものダンスメンバーのところにいなかった歌っていた彼のところを目指す。綾くんのところまで行った時1番驚いたのは恋だった。「え。」と一言。それはもちろんの事、メンバーの中で1番例外だなって思える容姿の人だったからだ。数人の客も綾くんのところだけは集まっていなかった。あんなにファンが多かった人とは思えなかったが、私は「小山くんですよね、好きです!いつも応援してます」と告白するとメンバーがびっくりして集まってきた。「え、綾の何がええの?俺の方がええやろ」と綾くんがいけるならとメンバーが集まる。私は今の自分の容姿を忘れていた。だが、私は「落ち込んでいるときにチラシ配りのときに声をかけてもらったんです。ティッシュを添えて。あの時のことは今でも鮮明に覚えています。」というと、「あ〜あの時の美人さんか」と思い出したようにメンバーが「さすがに美人すぎて声かけられなかったよな」というメンバーとは裏腹に綾くんはうつむき顔は見えなかったが耳が赤くなっていた。そして普通に顔が赤いままの綾くんとチェキを撮ってもらって帰る時、帰り道で「そんなことがあったんだ〜いいね〜ヒュ〜〜」とちょっとからかってくる口ぶりで尋ねてくる恋。「うん。」と一言答えて私も今更ながらに赤面してしまう。しかし私はすぐさまダンスをしていなかった綾くんを思い出す。こっちの世界では綾くんは歌う人ということなのかそれが気になっていた。元いた世界の綾くんのダンスはあのグループの中ではひときわ目立っていた。キレが良くタイミングも良く楽しそうに踊る彼はまさに輝いていた。しかし踊りが専門なのでメンバー越しには仲良さが伝わるものの1対1の客とのコミュニケーションは苦手とされる一方だった。今日訪ねた時も彼は一言も返してくれなかったが、元を知っているからこそ綾くんだと確信を得た。
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