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美しいもの

第1章
「世界の判断が逆になればいいのに。ブスが美人で美人がブスで。」
ただボソッと。いつも好きで聴いている曲をCDプレイヤーで流す直前フと言った。ただそれだけのことだった。私は地下アイドルという、公式ではないが顔が割と整っていてダンスと踊りが上手い彼らに恋していた。私、田中菜子(なこ)は幼い頃から周りからブスと呼ばれ、よく恋愛ドラマでいう好きだからからかっていたとはわけが違うものであった。それは小学生高学年の頃、いつもながらにただ1人でいた時のこと、ひそひそと私をチラ見して高らかに笑う周りの女子たち。それに混ざり男子どもが「なんか臭くね〜?うわ、誰だよここにうんこしたやつ!」と私を指差し鼻を摘まみながら可愛い女子たちと絡む。それは中の下の顔どもがやる行為で本当の美男美人はただ見て見ぬ振り。私はいつも空気でもなく物を隠され捨てなれ破かれ落書きされ、と色々されてきた。私が彼らに何をしたわけでもなくそれはただブスだからという理由で嫌われ虐げられひどい扱いを受けてきた。私は低学年の頃に交通事故で母を亡くし、母はいつも私にこう言ってきた。「一生懸命頑張っても誰も認めてもらえないものよ、ブスは結局ブス。決してシンデレラにはなれない。だけどね、私たちブスにも生きる価値はあるのよ、私たちだけじゃない人それぞれ生きる価値はあるの、だから勉学に励みなさい。誰にも負けないくらいの知識を持ちなさい。それはブスだからと蔑む人たちより賢くなければならない。お母さんもいつも頑張ってきた、あなたにもできるわ。」いつも私に言ってくれた言葉だ。「ブスはブス。しかし、勉強だけは価値があると。」私の母と父は紛れもなく純ブスだ。東大で出会いお互い恋をし結婚した。私はその純日本人ならぬ純ブスなのだ。母はブスだが心が清らかな人だった。純文学が好きでいつも読書をする人だった。私にも絵本として読んでもらっていた『人間失格』を愛読書に母からの遺品として宝物にしている。父は母が死んだ後、泣き崩れ数日が経ち落ち着いた頃に私を見るなり一言「ブスだな。」と言った。ただそれには意味があるわけではなく、父ももちろん眼鏡ブスだ。眼鏡をかけているから頭がいいという偏見も通るが、眼鏡を外すとイケメンに戻るというオチはない。眼鏡ブスの父も亡くなった母も認める私は純ブスとして育ったのだ。

中学の頃、首席で入ったがもちろんブスだからということで友達はできなかった。いじめも続く中、私は死ぬことも覚悟に考えていた頃だった。チラシ配りのお兄さん方が下を向きながら猫背のブスをさっと避け他に配っているのを躊躇せず当たり前だと通り過ぎようとした時、他のチラシ配りのお兄さんが何も分け隔てなく「泣いてない?大丈夫?」とティッシュ+チラシをくれた。それは私が地下アイドルにハマるには当たり前でしかない理由の一つだった。その行為には意味もなく私はそのチラシを受け取りこくりと頷いてダッシュで逃げた。「いや〜よくあの子に話しかけれたな」と私を避けた人が言ったが、彼は「お客さんになってくれるかもしれない1%をみすみす見逃せない」とただそれだけの理由だった。私はそれを少し離れたところで立ち聞きしてしまったが、私に関わる人は皆私をブスとして扱い、それを腫れもののように避ける修正があったが、彼だけは違ったと内心初めての恋だと思った。さすがに中学の頃はライブなんて到底行けなかったが、高校はバイトに明け暮れその貯まった貯金でライブに数回行っていた。その帰りメイトに新刊の雑誌が出たとのことを発表していたので買いに行くと隣のクラスの運動できるデブこと『立花 恋(れん)』週刊少年ジ◯ンプを買おうとしていた。お互いブスとデブという点で知名度が高かったため顔は知りえど、話はしたことがなかった。彼女はバッと漫画を隠そうと漫画を両手で隠し私に「あ、あはははは、田中さんど、どうしたの〜?珍しいね、こんなとこで会うの〜」と声をかけてきた。私はすかさず答えようとして声を出そうとしたら声が出ず咳き込んでしまい立花さんは私の背中をさすってど、どうしたの?大丈夫!?と言ってくれた。その後はいうまでもなく、私が手に取った雑誌を見て立花さんが「それ買おうか迷ってたやつ!!」と大声で言い、カフェでお茶しようという流れになり、さすがにカ、カフェは階級社会における位の高い人たちが行く人の店であって、とお互い意見が一致したため、ワクド◯ルド(通称ワック)に行くことになった。お互い違う物にハマっているオタクだったがあいにく引かれることもなくお互いに好きなものを語り合った。私はもちろん『Five Wishes!!』というティッシュ王子さまの『小川 綾(りょう)くん』推しで、立花さんは、アニメオタクで少年ジ◯ンプが好きすぎて言葉遣いが荒いこともあるという癖があるほか、元々運動はできる方だったが、そのアニメのハ◯キューというバレーボールの◯川さん推しらしく、声優までチェック済み(浪◯さん)でその影響で彼女はバレー部所属したらしい。また彼女の持ち物はそのキャラで溢れかえるほどだった。私たちは周りから(ブスやデブ以上に)引かれないために持ち物は隠して学校を出てからつけるという形でお互いオタクというのを知らなかった。その翌日から仲良くなりクラスをまたいで話すようになったが私のいじめは絶えずクラスでは浮いていたが、それでも私の好きな『綾くんの歌とラジオ』そして立花さんという友達により耐えてきた。立花さんはどちらかというと活発で明るい運動できるデブだったのであまり嫌われてる方ではなかったが、それでも私の暗く地味な性格を好いてる奴がいるはずもなく立花さんが私に声をかけてくれる時いつも明らかなる舌打ちを聞かされていた。私は嫌だったら来なくていいよとも彼女に忠告したが嫌なわけないじゃん、だって話したいもんといつもお昼休みは一緒に過ごしていた。

ある日私をいじめていた主犯のリーダーの女子が私がいない時に立花さんに声をかけ「田中にこれ以上近づくな。今後お前がいじめられる方になりたくなかったらな、デブ」と言われたらしくそれでも構わず彼女は私といたが、彼女がここ2、3日休み続けていると知った時初めはメールで風邪ひいちゃったからいけないごめんねという彼女にさすがに疑う余地もせず私は普通にその日もバイトをしていた。3日が経つ頃さすがに違和感を感じていたがこの一言で私は確信へと変わった。「立花もさ、あんたなんかといたからかわいそうなことになっちゃったんだよね、それに気づかず普通に過ごしてるあんたって相当ゲスよね?」と大声で私に向かって嘲笑ったこの一言。私はすぐさま今日のバイトをキャンセルし彼女の家に向かった。家に訪ねたところ、彼女の親には病気が悪化しちゃってるからと言われたがそれでも会わせてください!お願いします!!と頭を下げた。その必死さに通してくれたが彼女の部屋に入った瞬間、いつもの笑顔はなかった。彼女は足に湿布と足を固定するための包帯ががっつり施されていた。ここ数日は私に知られまいとそしていつものように笑えないと好きなバレーもできなくて最近やっとレギュラーになれたと笑顔で先週伝えてくれた報告も治りはそんなに酷くはないが部長からの言伝で最近レギュラーになったこととボールを触らない期間がありその後即試合は期待できないとのことで大会には出させてもらえなくなったらしい。彼女は私のせいではないと言い、ただ一言、「不意の事故だったから」と言われた。部活が始まる前に自主練でボールを打ち上げていた時のこと、後ろから知らない女子が前から衝突して何故かちょうど後ろにボールが転がっていたらしくその時に足を痛めたらしくただわかることはその子は運動部じゃないということだけだった。私は友達なのに、彼女に何も言えなかった。家に帰り、この間新しく買ってきた『〇〇グループ』の新曲を聴く手前ボソッとつぶやいた。「世界の判断が逆になればいいのに。ブスが美人で美人がブスで。」母が人それぞれ生きる価値はある、たとえブスの私でもそしていじめている主犯の奴らもそう思いながらつぶやいて聞いたその新曲に私は涙を流した。
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