6.相手の一挙一動に動揺してしまう時
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◆◆◆相手の一挙一動に動揺してしまう時◆◆◆
シャワーを終えた俺は、上半身に何も羽織らず、タオルだけ肩にかけてリビングへ戻った。
ソファーに腰掛け、テレビに夢中になっている彼女の横に座る。
彼女はテレビから視線を外し、俺にじっと視線を寄越す。
……正確に言うと、彼女が見ているのは俺の腹だ。
「何?」
「腹筋すごいなって思って」
そう言いながら、彼女は腕を伸ばして俺の腹をぺたぺたと触った。
急に触れられた俺は、驚いて呼吸が止まる。
昔に比べると遠慮のなくなった彼女の行為に嬉しさを感じつつ、少し胸がドキドキした。
もちろん、嫌なんかじゃない。
むしろ、もっと遠慮なくあちこち触ってくれていいんだけど。
「ピザだらけの食生活で、よくこの体を維持できたね。運動量が普通の人と違うのかな?」
彼女は思いのほか真剣に俺の腹を見つめている。
そんな隙だらけの彼女の服の裾に、動揺から立ち直った俺は出来心で手を伸ばした。
「きゃーっ!」
裾から忍び込んだ俺の手が腹を撫でると、彼女はソファーから飛び上がらんばかりの勢いで悲鳴を上げた。
真っ赤な顔で、慌てて悪さをした俺の手のひらを彼女は払う。
「なっなっ、何するの!!」
「お前の腹はふにふにだな」
「なっ、何をーっ!?」
憤慨して湯気を出し始めた彼女を適当にあしらい、俺は笑う。
触り心地が良くて褒めてるのに、何をそんなに怒ることがあるのか。
「先に触ってきたのはお前だろ?」
「そ、それはそうだけど……」
彼女は腹を腕でガードしたまま、警戒したようにずるずるとソファーの上を移動した。
「こら、逃げるな」
俺は彼女の腕を逃がさないように掴んで、逃げた分だけ彼女の方に体を寄せた。
ばたばたと抵抗する彼女だけど、本当は嫌じゃないことくらい俺は知っている。
「ほらほら、お詫びにいくらでも俺の体触っていいから」
「それってお詫びになってるの?」
腕を広げて構えは万全な俺を、彼女は呆れたような目で見やった。
が、今度はその広げた腕に興味を示したのか、彼女は俺の腕に手を伸ばす。
ほっそりとした小さな手が、俺の上腕をさわさわと撫でた。
「腕も素晴らしい筋肉ですね」
何故か解説みたいな口調になりながら、彼女は感心したように溜め息をつく。
俺が腕を折り曲げて見せると、上腕の筋肉が盛り上がって、そこに触れていた彼女は楽しそうに声を上げた。
「わあ、すごい。硬くなった!」
「…………っ!?」
その言葉に俺は思わず吹き出した。
俺がそっち方面に意識しすぎなのか、彼女が鈍感なのか。
……いや、この場合やっぱ問題なのは彼女の方だ。
ちょっと、無邪気すぎやしませんかね、このお嬢さんは。
明後日の方へ顔を向けて、俺は衝動をなんとかやり過ごそうと努力する。
その前で、俺の心など知りもしない彼女は、俺の顔を覗き込んで首を傾げ、不思議そうな顔を作った。
ああ、もう。
……その仕草、可愛いすぎるからやめてくれ。
「ダンテ、どうかした?」
「……どうもしません」
複雑な顔を作る俺をよそに、彼女は飽きもせずに俺の腕を触っている。
何が楽しいのか、と思ったけれど、俺が同じように彼女の二の腕をふにふにできたらきっと楽しいだろうから、多分同じような感覚なんだろう。
彼女は俺の腕を両手で握りながら、俺を見上げて言った。
「ねえねえ、人より運動量が違うっていうのもあるけど、やっぱりダンテも努力してるんだね」
「……さあ、どうかな」
「だってこれだけ鍛えられた体だもん、これまでの積み重ねの結果だよね」
俺は否定も肯定もしないまま、照れを隠すために彼女の頭を撫でる。
努力、なんて俺には似合わない言葉だけれど、これまで俺がやってきた結果を認められたみたいで、ちょっと嬉しい。
「あのね、ダンテがストレッチや腕立て伏せする時はわたしが手伝うね」
「……ストレッチはともかく、腕立てをどうやって手伝うんだよ」
「背中に乗って重しになってあげる」
「……そりゃあいい」
多分、お前程度の重みなんてあってないようなもんだぞ。
でもその申し出と、彼女の気持ちはありがたくて、俺は笑う。
「ありがとな。じゃあ、筋トレする時はお前に介助頼むよ」
「うん!」
そうして彼女は嬉しそうに返事をして破顔する。
キラキラした笑顔が眩しくて、俺は目を細めた。
けれども相変わらずひねくれ者な俺は、彼女の笑顔にもひねた口調で返してしまう。
「何がそんなに嬉しいんだか」
「だって、ダンテの役に立てるから」
また、その答え。
俺を思ってくれるのは嬉しいんだけど、俺がされて一番嬉しいことを、彼女はきっとできないんだろうな。
俺はそっと溜め息をついて、彼女の髪を撫でる。
そんな俺の心境など知りもしない彼女は、くすぐったそうにただ笑った。
シャワーを終えた俺は、上半身に何も羽織らず、タオルだけ肩にかけてリビングへ戻った。
ソファーに腰掛け、テレビに夢中になっている彼女の横に座る。
彼女はテレビから視線を外し、俺にじっと視線を寄越す。
……正確に言うと、彼女が見ているのは俺の腹だ。
「何?」
「腹筋すごいなって思って」
そう言いながら、彼女は腕を伸ばして俺の腹をぺたぺたと触った。
急に触れられた俺は、驚いて呼吸が止まる。
昔に比べると遠慮のなくなった彼女の行為に嬉しさを感じつつ、少し胸がドキドキした。
もちろん、嫌なんかじゃない。
むしろ、もっと遠慮なくあちこち触ってくれていいんだけど。
「ピザだらけの食生活で、よくこの体を維持できたね。運動量が普通の人と違うのかな?」
彼女は思いのほか真剣に俺の腹を見つめている。
そんな隙だらけの彼女の服の裾に、動揺から立ち直った俺は出来心で手を伸ばした。
「きゃーっ!」
裾から忍び込んだ俺の手が腹を撫でると、彼女はソファーから飛び上がらんばかりの勢いで悲鳴を上げた。
真っ赤な顔で、慌てて悪さをした俺の手のひらを彼女は払う。
「なっなっ、何するの!!」
「お前の腹はふにふにだな」
「なっ、何をーっ!?」
憤慨して湯気を出し始めた彼女を適当にあしらい、俺は笑う。
触り心地が良くて褒めてるのに、何をそんなに怒ることがあるのか。
「先に触ってきたのはお前だろ?」
「そ、それはそうだけど……」
彼女は腹を腕でガードしたまま、警戒したようにずるずるとソファーの上を移動した。
「こら、逃げるな」
俺は彼女の腕を逃がさないように掴んで、逃げた分だけ彼女の方に体を寄せた。
ばたばたと抵抗する彼女だけど、本当は嫌じゃないことくらい俺は知っている。
「ほらほら、お詫びにいくらでも俺の体触っていいから」
「それってお詫びになってるの?」
腕を広げて構えは万全な俺を、彼女は呆れたような目で見やった。
が、今度はその広げた腕に興味を示したのか、彼女は俺の腕に手を伸ばす。
ほっそりとした小さな手が、俺の上腕をさわさわと撫でた。
「腕も素晴らしい筋肉ですね」
何故か解説みたいな口調になりながら、彼女は感心したように溜め息をつく。
俺が腕を折り曲げて見せると、上腕の筋肉が盛り上がって、そこに触れていた彼女は楽しそうに声を上げた。
「わあ、すごい。硬くなった!」
「…………っ!?」
その言葉に俺は思わず吹き出した。
俺がそっち方面に意識しすぎなのか、彼女が鈍感なのか。
……いや、この場合やっぱ問題なのは彼女の方だ。
ちょっと、無邪気すぎやしませんかね、このお嬢さんは。
明後日の方へ顔を向けて、俺は衝動をなんとかやり過ごそうと努力する。
その前で、俺の心など知りもしない彼女は、俺の顔を覗き込んで首を傾げ、不思議そうな顔を作った。
ああ、もう。
……その仕草、可愛いすぎるからやめてくれ。
「ダンテ、どうかした?」
「……どうもしません」
複雑な顔を作る俺をよそに、彼女は飽きもせずに俺の腕を触っている。
何が楽しいのか、と思ったけれど、俺が同じように彼女の二の腕をふにふにできたらきっと楽しいだろうから、多分同じような感覚なんだろう。
彼女は俺の腕を両手で握りながら、俺を見上げて言った。
「ねえねえ、人より運動量が違うっていうのもあるけど、やっぱりダンテも努力してるんだね」
「……さあ、どうかな」
「だってこれだけ鍛えられた体だもん、これまでの積み重ねの結果だよね」
俺は否定も肯定もしないまま、照れを隠すために彼女の頭を撫でる。
努力、なんて俺には似合わない言葉だけれど、これまで俺がやってきた結果を認められたみたいで、ちょっと嬉しい。
「あのね、ダンテがストレッチや腕立て伏せする時はわたしが手伝うね」
「……ストレッチはともかく、腕立てをどうやって手伝うんだよ」
「背中に乗って重しになってあげる」
「……そりゃあいい」
多分、お前程度の重みなんてあってないようなもんだぞ。
でもその申し出と、彼女の気持ちはありがたくて、俺は笑う。
「ありがとな。じゃあ、筋トレする時はお前に介助頼むよ」
「うん!」
そうして彼女は嬉しそうに返事をして破顔する。
キラキラした笑顔が眩しくて、俺は目を細めた。
けれども相変わらずひねくれ者な俺は、彼女の笑顔にもひねた口調で返してしまう。
「何がそんなに嬉しいんだか」
「だって、ダンテの役に立てるから」
また、その答え。
俺を思ってくれるのは嬉しいんだけど、俺がされて一番嬉しいことを、彼女はきっとできないんだろうな。
俺はそっと溜め息をついて、彼女の髪を撫でる。
そんな俺の心境など知りもしない彼女は、くすぐったそうにただ笑った。