4.舌戦で呆気なく敗れた時
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◆◆◆舌戦で呆気なく敗れた時◆◆◆
夕飯を終え、お皿も洗い終えた私は、就寝までの時間を勉強に使おうと思って、英単語帳をめくりながらソファーへ向かった。
ソファーの背もたれに腕を広げ、くつろいだ姿勢でテレビを見ていたダンテは、ちらりと私を見上げる。
「ダンテ、もうちょっと向こうに詰めてくれる?」
体格の良いダンテがソファーの真ん中に居座り、両腕を広げると私が座るスペースがないのだ。
けれど私をからかうのが大好きなダンテは、頼まれたからといって素直にどいたりしない。
彼はニヤリと笑いながら、自らの膝頭を叩く。
「おにーさんの膝へおいで」
「いやです」
その手……いや膝には乗らないぞ。
私はソファーを諦めて、大人しくダイニングテーブルへ向かおうとする。
が、それよりも早くダンテの腕が伸びてきて、彼に背を向けた私の背中を引っ張った。
「きゃっ……」
背後に倒れかけた私の体は、ソファーから一歩も動かずに、獲物を待ち構えていたダンテの腕の中にすっぽりと納まる。
「いらっしゃいませ」
「もーっ、危ないでしょ!」
こけたかと思ってドキドキした。
怒る私など意に介さず、ダンテは私を膝上に乗せて機嫌が良さそうだ。
……1人で恥ずかしがっている私がおかしいんだろうか。
「~~っ、一個上だからってお兄さんぶって子ども扱いしないで!」
「一個は一個でも俺のが年上ってことに変わりないだろ」
「わたし、もう成人してるんだから!」
「自分が大人なんだって主張したいんなら、もうちょい余裕持てるようになったらどうだ?」
うぐ、と私は言葉に詰まる。
もっとうまく言い返したいのに、日本語で罵り言葉を考えて、それを頭の中で英訳するうちにいつも言い出すタイミングを見失ってしまうのだ。
今回も、私の負け。
口でダンテに勝てたことなんてほとんどない。
けれど、確かにこうやって言い返そうとするところが子どもっぽいのかもしれない。
もっと彼の言葉や行動を受け流せるようになった時、私は大人だと胸を張れるようになるんだろうか。
私はダンテの腕から抜け出すのを諦めて、彼に抱き締められたまま単語帳を広げた。
いくら私が必死に抵抗しても、ダンテの束縛を解くのはまず不可能だからだ。
だからダンテの体温を背中に感じながら単語帳を眺めているんだけれど、ページはさっきから全く進んでいない。
「……ダンテが後ろにいると集中できない」
「どうぞ俺なんて気にせずお勉強してていいんだぜ」
無茶言わないでほしい。
こんな体勢で勉強に集中できる人なんて、よっぽど神経図太い人か、家族みたいな特別な関係の人くらいだ。
結局私は単語帳を眺めるのも諦めて、ダンテに身を預けた。
ダンテの顔は見えないけれど、彼は微かに笑いの吐息を漏らす。
「ようやく俺に構う気になったか?」
「……だってダンテが勉強させてくれないんだもん」
ものすごく不機嫌な声音を作ってダンテに言ったはいいけど、彼は全く堪えてないみたいだ。
俺を気にせず勉強しろ、なんて言っていたけど、本当は私に構って欲しかっただけなんだろう。
ダンテは私の頭に顎を乗っけたり、クッションだか抱き枕だかの代わりに抱えてみたりしながら、テレビを眺めていた。
私はと言えば、ダンテに好き放題にされながら一緒にテレビを眺めていたんだけど、お腹いっぱいで温かな体温に包まれていると非常に眠気を誘われる。
それに気付いたダンテが、苦笑しながらもゆっくりと体を揺らしてくれるので、ますます私の眠気が強まるのだ。
「……この状況で何で寝ちまうかな」
ちょっと呆れたような声が上から降ってくる。
けれど目蓋が半分閉じかけた私は、唸るような返事しかできない。
さっきまであんなにドキドキしていたのに、こうしてじっとダンテの体温に触れていると、ひどく落ち着くのだ。
かすかに香るダンテの匂いと、私を守ってくれる長い腕に包まれながら、私は微睡む。
「俺ん中でリラックスしてくれんのはいいんだけどさ。
これはこれで男としてはちょっとビミョーな気持ちになるんだけど……って聞いてないか」
すでに私は夢心地。
ダンテの声が遠くから響くようで、鼓膜を震わせるその音すら子守歌に聞こえてしまう。
彼に抱かれながら、私は幸せなぬくもりの中で眠りに落ちた。
夕飯を終え、お皿も洗い終えた私は、就寝までの時間を勉強に使おうと思って、英単語帳をめくりながらソファーへ向かった。
ソファーの背もたれに腕を広げ、くつろいだ姿勢でテレビを見ていたダンテは、ちらりと私を見上げる。
「ダンテ、もうちょっと向こうに詰めてくれる?」
体格の良いダンテがソファーの真ん中に居座り、両腕を広げると私が座るスペースがないのだ。
けれど私をからかうのが大好きなダンテは、頼まれたからといって素直にどいたりしない。
彼はニヤリと笑いながら、自らの膝頭を叩く。
「おにーさんの膝へおいで」
「いやです」
その手……いや膝には乗らないぞ。
私はソファーを諦めて、大人しくダイニングテーブルへ向かおうとする。
が、それよりも早くダンテの腕が伸びてきて、彼に背を向けた私の背中を引っ張った。
「きゃっ……」
背後に倒れかけた私の体は、ソファーから一歩も動かずに、獲物を待ち構えていたダンテの腕の中にすっぽりと納まる。
「いらっしゃいませ」
「もーっ、危ないでしょ!」
こけたかと思ってドキドキした。
怒る私など意に介さず、ダンテは私を膝上に乗せて機嫌が良さそうだ。
……1人で恥ずかしがっている私がおかしいんだろうか。
「~~っ、一個上だからってお兄さんぶって子ども扱いしないで!」
「一個は一個でも俺のが年上ってことに変わりないだろ」
「わたし、もう成人してるんだから!」
「自分が大人なんだって主張したいんなら、もうちょい余裕持てるようになったらどうだ?」
うぐ、と私は言葉に詰まる。
もっとうまく言い返したいのに、日本語で罵り言葉を考えて、それを頭の中で英訳するうちにいつも言い出すタイミングを見失ってしまうのだ。
今回も、私の負け。
口でダンテに勝てたことなんてほとんどない。
けれど、確かにこうやって言い返そうとするところが子どもっぽいのかもしれない。
もっと彼の言葉や行動を受け流せるようになった時、私は大人だと胸を張れるようになるんだろうか。
私はダンテの腕から抜け出すのを諦めて、彼に抱き締められたまま単語帳を広げた。
いくら私が必死に抵抗しても、ダンテの束縛を解くのはまず不可能だからだ。
だからダンテの体温を背中に感じながら単語帳を眺めているんだけれど、ページはさっきから全く進んでいない。
「……ダンテが後ろにいると集中できない」
「どうぞ俺なんて気にせずお勉強してていいんだぜ」
無茶言わないでほしい。
こんな体勢で勉強に集中できる人なんて、よっぽど神経図太い人か、家族みたいな特別な関係の人くらいだ。
結局私は単語帳を眺めるのも諦めて、ダンテに身を預けた。
ダンテの顔は見えないけれど、彼は微かに笑いの吐息を漏らす。
「ようやく俺に構う気になったか?」
「……だってダンテが勉強させてくれないんだもん」
ものすごく不機嫌な声音を作ってダンテに言ったはいいけど、彼は全く堪えてないみたいだ。
俺を気にせず勉強しろ、なんて言っていたけど、本当は私に構って欲しかっただけなんだろう。
ダンテは私の頭に顎を乗っけたり、クッションだか抱き枕だかの代わりに抱えてみたりしながら、テレビを眺めていた。
私はと言えば、ダンテに好き放題にされながら一緒にテレビを眺めていたんだけど、お腹いっぱいで温かな体温に包まれていると非常に眠気を誘われる。
それに気付いたダンテが、苦笑しながらもゆっくりと体を揺らしてくれるので、ますます私の眠気が強まるのだ。
「……この状況で何で寝ちまうかな」
ちょっと呆れたような声が上から降ってくる。
けれど目蓋が半分閉じかけた私は、唸るような返事しかできない。
さっきまであんなにドキドキしていたのに、こうしてじっとダンテの体温に触れていると、ひどく落ち着くのだ。
かすかに香るダンテの匂いと、私を守ってくれる長い腕に包まれながら、私は微睡む。
「俺ん中でリラックスしてくれんのはいいんだけどさ。
これはこれで男としてはちょっとビミョーな気持ちになるんだけど……って聞いてないか」
すでに私は夢心地。
ダンテの声が遠くから響くようで、鼓膜を震わせるその音すら子守歌に聞こえてしまう。
彼に抱かれながら、私は幸せなぬくもりの中で眠りに落ちた。