1.結局は言うことを聞いてしまった時
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◆◆◆結局は言うことを聞いてしまった時◆◆◆
「これ、おいしそうだよね!!」
そう言って差し出されたのは、いかにも美味そうに撮影されたスイーツを特集した地元雑誌。
っていうか、ケーキの作り自体がちょっと芸術的で、いかにも女が好きそうな感じ。
……こいつ、生チョコといい、本当に甘いもの好きだな。
俺も嫌いじゃないし、そういうところが可愛いんだけど。
隅にちいーさく書かれている値段に目を凝らすと、まあ見た目相応にいい値段をしていらっしゃる。
俺が鼻で笑って突っ返そうとすると、彼女は何か訴えるような瞳で俺を見つめてきた。
「……そんなに食べたいなら買ってくれば。お前の給料どう使うか口出しできるほど、俺は金に真面目じゃねえぞ」
「うん。あのね、遠いの」
言われて改めて雑誌を見下ろす。
簡単に書かれた地図は、確かに彼女が言った通り、交通機関を利用しなければならない程度に距離がある。
「……バイク出せと?」
「だめ?」
「だめっていうか……」
「お願い」
……ああもう、俺ほんと弱いわ。
「一個奢れよ。それが条件」
「当然です!」
まあ別にそこまでケーキが食いたいわけじゃない。
雑誌で特集されるくらいなんだから、一度くらい食っとこう程度の出来心。
それにバイク二人乗りだと密着できるから、ケーキ屋に連れて行くことで双方ともにメリットが生じるわけだ。
……何だかんだと理由を連ねたはいいが、要はこいつが喜ぶ顔が見たいだけなんだけど。
* * *
彼女は宝石でも見るかのように、目を輝かせながらショーケースの中のケーキを覗き込んでいる。
……確かに果実のつやつやした所とか、ジュレのキラキラしたところは宝石に似ていると言えなくもない。
「どれにしようか迷うなぁ。シフォンケーキもおいしそうだし、あのヨーグルトケーキも可愛いし……。
やっぱりタルトかな……。あ、でもあっちも……」
「一個にしとけよ。カロリー表示見えてるか?」
「うん……。ダンテはもう決めた?やっぱり苺のやつ?」
俺は正直言って何でもいいんだけど。
「う~ん、タルトにしようかな……。でもチーズも捨てがたいし……。
一個かぁ……ならタルトで」
どうやらタルトにするかチーズケーキにするかで煩悶していたらしい。
タルトにすると決めたものの、彼女は名残惜しげにチーズにちらちら視線を送っている。
俺は苦笑して、彼女に言う。
「俺、チーズケーキにする」
「えっ?苺じゃないんだ」
「俺と半分ずつにすれば、どっちも楽しめてお前も満足だろ」
異論を唱える隙を与えないよう、俺はとっとと店員にケーキを注文する。
彼女はわたわたと財布を取り出し始めた。
ついでに店内で食べられるようにコーヒーと紅茶も頼んで、
プレートに乗せられたケーキを持って、俺たちはテーブルに移動する。
「ダンテ、ありがとう!」
「何でも良かったんだよ」
「うん、でも嬉しいから、ありがとう」
そう言って実に嬉しそうな顔でタルトを口にする彼女の皿に、俺は自分のケーキを分けてやりながら笑う。
「美味いか?」
「うん!幸せです!」
「お手軽な幸せだなァ、おい」
ケーキで彼女の笑顔が買えるんなら安いもんだ。
ま、財布を痛めたのはこいつ自身なわけだが。
彼女は不公平を嫌うから、きっちり半分ずつケーキを分けて、満足そうにそれを味わった。
俺の方は、ケーキよりもそんな彼女の顔が見れたことが嬉しい。
「……気が向いたらまた連れてきてやるよ。月一くらいで」
「ダンテはわたしを甘やかすの得意だね」
この距離で月一って結構な頻度だよ、と笑う彼女に俺も笑みを零す。
それでこいつが笑ってくれるんなら、バイクの運転くらい何でもない。
……本当にお手軽な幸せを味わってるのは、俺の方なのかもな。
暖かな日差しを受ける窓辺のテーブル。
紅茶についてきたハート形の砂糖にですら喜ぶ彼女を見て、
「幸せってこういうもんなのかな」と俺には不似合いなことをついつい考えてしまった。
「これ、おいしそうだよね!!」
そう言って差し出されたのは、いかにも美味そうに撮影されたスイーツを特集した地元雑誌。
っていうか、ケーキの作り自体がちょっと芸術的で、いかにも女が好きそうな感じ。
……こいつ、生チョコといい、本当に甘いもの好きだな。
俺も嫌いじゃないし、そういうところが可愛いんだけど。
隅にちいーさく書かれている値段に目を凝らすと、まあ見た目相応にいい値段をしていらっしゃる。
俺が鼻で笑って突っ返そうとすると、彼女は何か訴えるような瞳で俺を見つめてきた。
「……そんなに食べたいなら買ってくれば。お前の給料どう使うか口出しできるほど、俺は金に真面目じゃねえぞ」
「うん。あのね、遠いの」
言われて改めて雑誌を見下ろす。
簡単に書かれた地図は、確かに彼女が言った通り、交通機関を利用しなければならない程度に距離がある。
「……バイク出せと?」
「だめ?」
「だめっていうか……」
「お願い」
……ああもう、俺ほんと弱いわ。
「一個奢れよ。それが条件」
「当然です!」
まあ別にそこまでケーキが食いたいわけじゃない。
雑誌で特集されるくらいなんだから、一度くらい食っとこう程度の出来心。
それにバイク二人乗りだと密着できるから、ケーキ屋に連れて行くことで双方ともにメリットが生じるわけだ。
……何だかんだと理由を連ねたはいいが、要はこいつが喜ぶ顔が見たいだけなんだけど。
* * *
彼女は宝石でも見るかのように、目を輝かせながらショーケースの中のケーキを覗き込んでいる。
……確かに果実のつやつやした所とか、ジュレのキラキラしたところは宝石に似ていると言えなくもない。
「どれにしようか迷うなぁ。シフォンケーキもおいしそうだし、あのヨーグルトケーキも可愛いし……。
やっぱりタルトかな……。あ、でもあっちも……」
「一個にしとけよ。カロリー表示見えてるか?」
「うん……。ダンテはもう決めた?やっぱり苺のやつ?」
俺は正直言って何でもいいんだけど。
「う~ん、タルトにしようかな……。でもチーズも捨てがたいし……。
一個かぁ……ならタルトで」
どうやらタルトにするかチーズケーキにするかで煩悶していたらしい。
タルトにすると決めたものの、彼女は名残惜しげにチーズにちらちら視線を送っている。
俺は苦笑して、彼女に言う。
「俺、チーズケーキにする」
「えっ?苺じゃないんだ」
「俺と半分ずつにすれば、どっちも楽しめてお前も満足だろ」
異論を唱える隙を与えないよう、俺はとっとと店員にケーキを注文する。
彼女はわたわたと財布を取り出し始めた。
ついでに店内で食べられるようにコーヒーと紅茶も頼んで、
プレートに乗せられたケーキを持って、俺たちはテーブルに移動する。
「ダンテ、ありがとう!」
「何でも良かったんだよ」
「うん、でも嬉しいから、ありがとう」
そう言って実に嬉しそうな顔でタルトを口にする彼女の皿に、俺は自分のケーキを分けてやりながら笑う。
「美味いか?」
「うん!幸せです!」
「お手軽な幸せだなァ、おい」
ケーキで彼女の笑顔が買えるんなら安いもんだ。
ま、財布を痛めたのはこいつ自身なわけだが。
彼女は不公平を嫌うから、きっちり半分ずつケーキを分けて、満足そうにそれを味わった。
俺の方は、ケーキよりもそんな彼女の顔が見れたことが嬉しい。
「……気が向いたらまた連れてきてやるよ。月一くらいで」
「ダンテはわたしを甘やかすの得意だね」
この距離で月一って結構な頻度だよ、と笑う彼女に俺も笑みを零す。
それでこいつが笑ってくれるんなら、バイクの運転くらい何でもない。
……本当にお手軽な幸せを味わってるのは、俺の方なのかもな。
暖かな日差しを受ける窓辺のテーブル。
紅茶についてきたハート形の砂糖にですら喜ぶ彼女を見て、
「幸せってこういうもんなのかな」と俺には不似合いなことをついつい考えてしまった。